- この記事のポイント
- マンションの売却では、状況に応じて譲渡所得税、印紙税、登録免許税、消費税がかかる
- マンションの所有期間によって譲渡所得税の税率は変わる
- 3,000万円控除を活用すると、譲渡所得税を大幅に抑えられる
「マンションを売却する時に、どんな税金がどれぐらいかかるのかな…?」
マンションを売って得たお金から、税金がどれくらい引かれてしまうのか、とても気になりますよね。
たとえば、3,000万円でマンションを売却した場合、かかる税金は以下の通りです。
【3,000万円でマンションを売却した場合の税金】
税金額の合計:72万3,025円
- 譲渡所得税:71万1,025円
- 印紙税:1万円
- 登録免許税:2,000円
※築20年、居住期間9年、購入価格2,500万円、譲渡費用150万円として計算。特例や控除は適用していない。
マンションの売却価格や所有期間、買った時の価格など様々な要素によって税金額は変動します。
場合によっては税金がかからないケースもあるので、どんな時にどんな税金がかかるのか1つずつ確認していきましょう!
マンションの売却にかかる税金
マンションの売却には、以下のような税金がかかります。
税金 | 税金がかかるケース |
---|---|
譲渡所得税 | マンション売却で利益が出た時 |
印紙税 | マンションの売却時 |
登録免許税 | マンションの売却時 |
消費税 | マンションを事業目的で売る時 |
それぞれのケースごとに、マンションの売却にかかる税金を詳しく見ていきましょう!
利益にかかる「譲渡所得税」
譲渡所得税とは、マンション売却で利益(=譲渡所得)が出た時にかかる税金です。
国に納める所得税と復興特別所得税、自治体に納める住民税を合わせて「譲渡所得税」と一般的に呼ばれています。
例えば、以下のようなケースでは譲渡所得が発生しないため、譲渡所得税はかかりません。
譲渡所得税がかからないケース
- マンションの売却価格が購入当時の価格を大きく下回った
- 控除を利用して譲渡所得が0円を下回った
マンション売却における利益(譲渡所得)とは、マンションの売却代金から、売却にかかった費用(譲渡費用)とマンションの購入費用の一部(取得費)を差し引いた金額です。
譲渡所得税の税率は、マンションの所有期間によって変わります。
マンションの購入から売却した年の1月1日までの期間が、5年を超える場合の税率は20.315%、5年以下の場合の税率は39.63%です。
▼所得税
所得税は、所得に応じて国に納める税金です。
マンション売却の所得税は、給与所得や事業所得など他の所得とは分離して税額を計算します。
譲渡所得にかかる税率は、売却したマンションの所有期間に応じて以下のようになります。
所有期間が5年以下 | 所有期間が5年超 |
---|---|
30% | 15% |
▼復興特別所得税
復興特別所得税は、東日本大震災の復興政策を目的として、所得税に上乗せして徴税される税金です。
所得税に対して、一律で2.1%分が追加で課税されるため、税率は以下のようになります。
所有期間が5年以下 | 所有期間が5年超 |
---|---|
0.63% | 0.315% |
▼住民税
住民税は、所得に応じてお住いの自治体に納める税金です。
所得税同様に、他の所得とは分離して課税されます。
譲渡所得にかかる税率は、売却したマンションの所有期間に応じて以下のようになります。
所有期間が5年以下 | 所有期間が5年超 |
---|---|
9% | 5% |
なお、給与所得者は、譲渡所得にかかる住民税の納税方法を源泉徴収で納めるか、自分で納めるかを選ぶことができます。
不動産売却をしたら翌年の住民税はいくらになる?計算方法や納税時期を解説!
売却時にかかる「印紙税」と「登録免許税」
印紙税と登録免許税は、売却手続き中にかかる税金です。
印紙税は、売買契約時に作成する売買契約書に対してかかる税金です。
売買契約書1通ごとに、収入印紙を貼付して納税します。
- 印紙税額を詳しく見たい方はこちらをクリック
売買契約書の記載金額 税額(※) 100万円を超え 500万円以下 1千円 500万円を超え 1,000万円以下 5千円 1,000万円を超え 5,000万円以下 1万円 5,000万円を超え 1億円以下 3万円 1億円を超え 5億円以下 6万円 5億円を超え 10億円以下 16万円 国税庁「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置」より抜粋して引用
※令和6年3月31日までの軽減税率が適応された価格
登録免許税は、法務局に登記を申請する時にかかる税金です。
マンションを売却する時には、借入しているローンの残債を全額繰上げ返済することが多いです。
ローンを完済したマンションの抵当権は自動的には抹消されないので、売却前に「抵当権抹消登記」をしなければなりません。
マンションの抵当権抹消登記にかかる登録免許税は、マンション1室につき2,000円です。
抵当権抹消登記を司法書士に委託する場合には、登録免許税は司法書士に支払う報酬に実費として含まれます。
マンション売却の登記費用を解説。司法書士の手数料など詳しく紹介
事業用のマンション売却にかかる「消費税」
貸付や店舗・事務所として用いるために購入した事業用のマンションを売却した場合には、マンションの建物部分の売却について消費税がかかります。
ただし、売主が「免税事業者」である場合には、消費税は課税されません。



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譲渡所得税はいくらになる?計算方法を解説
マンションの譲渡所得税は、いくらで売れたかによって変わってきます。
そのため、譲渡所得税がかかるかどうかや、いくらかかるか知るためには、税金を計算してみる必要があります。
マンションの売却益=譲渡所得の計算方法
まずは、譲渡所得を求めましょう。譲渡所得は、以下の式で求められます。
▼「譲渡費用」は売却にかかった費用
譲渡費用とは、マンション売却をするためにかかった費用のことです。たとえば、次のような費用が譲渡費用に当たります。
譲渡費用に含まれる費用の例
- 印紙税
- 不動産会社に支払った仲介手数料
▼「取得費」は購入時の費用の一部
取得費とは、売却したマンションを「購入した時」にかかった費用の一部です。
また、購入後にリノベーションや、バリアフリー化リフォームなど物件の価値を高めるリフォームをした場合は、その費用も取得費に含められます。
取得費に含まれる費用の例
- マンションの購入代金
- マンション購入時の仲介手数料や税金
(登録免許税や不動産取得税など) - リフォーム代金
取得費に当たるものについて、詳しくは以下の記事をご覧ください。
マンション売却時の取得費とは?譲渡所得の計算に必要な費用をわかりやすく解説!
建物部分に関する費用は「減価償却」が必要
建物の償却率は、以下の表の通りです。
建築方式 | 居住用マンション | 事業用マンション | ||
---|---|---|---|---|
耐用年数 | 償却率 | 耐用年数 | 償却率 | |
木造 | 33年 | 0.031 | 22年 | 0.046 |
軽量鉄骨 | 40年 | 0.025 | 27年 | 0.038 |
鉄筋コンクリート | 70年 | 0.015 | 47年 | 0.022 |
>マンション売却における減価償却について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
▼特別控除額
特別控除額は、譲渡所得税の特例を適用することで、譲渡所得から差し引ける金額のことです。
課税のベースとなる譲渡所得の金額を小さくできるため、高い節税効果があります。
特別控除を受けられる特例は、適用要件を満たす場合に、確定申告で適用を申請することで利用できます。
譲渡所得税の計算方法
譲渡所得税は、譲渡所得と税率をかけ合わせて計算します。
譲渡所得は、マンションの所有期間に応じて税制上の区分が異なります。
所有期間が5年以下の場合は短期譲渡所得、所有期間が5年を超えると長期譲渡所得となり、税率が変わります。
所有期間 | 譲渡所得の区分 | 所得税(※) | 住民税 | 合計 |
---|---|---|---|---|
5年以下の場合 | 短期譲渡所得 | 30.63% | 9% | 39.63% |
5年超の場合 | 長期譲渡所得 | 15.315% | 5% | 20.315% |
(※2037年12月31日までの復興特別所得税を含めた税率)
マンションの所有期間は、売却した年の1月1日時点を基準に数えます。
たとえば、2015年3月1日に購入したマンションを売却するケースで所有期間を見てみましょう。
所有期間は「2015年3月1日~2020年1月1日」で数える
⇒4年10ヶ月(短期譲渡)
⇒税率は39.63%
所有期間は「2015年3月1日~2021年1月1日」で数える
⇒5年10ヶ月(長期譲渡)
⇒税率は20.315%
マンション売却時に使える「3,000万円特別控除の特例」
住むための不動産の売却には、税金の負担が重くなりすぎないようにするために、節税につながる特例が各種設けられています。
そのうち「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除の特例」は、居住していたマンションを売却する時に、譲渡所得から最大3,000万円を控除することで大きな節税効果を得られる特例です。
3,000万円特別控除の特例とは
「3,000万円特別控除の特例」は、居住していたマンションの譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例です。
売却したのが住んでいたマンションであれば、所有期間の長さにかかわらず適用できます。
3,000万円特別控除の特例を適用すると、譲渡所得の計算式は以下の通りになります。
譲渡所得税は譲渡所得に税率をかけ合わせて計算するため、控除を適用すると課税額をぐんと下げられます。
3,000万円特別控除を利用した税金の計算方法
たとえば、7年間所有して居住したマンションを売却して、3,500万円の譲渡所得が出たとします。
3,000万円特別控除を適用すると、譲渡所得税額は以下のように計算できます。
= (3,500万円-3,000万円)×20.315%
= 101万5,700円(100円未満切り捨て)
一方で、3,000万円特別控除を使わない場合の譲渡所得税額は、以下のようになります。
=3,500万円×20.315%
=711万200円(100円未満切り捨て)
所有期間が10年超なら税率が更に安くなる
売却したマンションの所有期間が10年を超える場合、長期譲渡所得に適用される税率よりも、更に低い税率で税金を計算できます。
特例を用いると、課税対象となる譲渡所得が6,000万円以下までは所得税率は10.21%、住民税率は4%(合計した譲渡所得税率は14.21%)になります。
長期譲渡所得の税率と、所有期間が10年を超える時の軽減税率の比較を以下にまとめました。
所有期間 | 所得税率(※) | 住民税率 | 合計 |
---|---|---|---|
5年超え10年以下 | 15.315% | 5% | 20.315% |
10年超え | 10.21% | 4% | 14.21% |
(※2037年12月31日までの復興特別所得税を含めた税率)
軽減税率の特例は、3,000万円特別控除と併用できます。
そのため、譲渡所得から3,000万円を控除した上で、6,000万円まで14.21%の軽減税率を適用できます。
=1億円-3,000万円
=7,000万円
譲渡所得税
=6,000万円×14.21%+(7,000万円-6,000万円)×20.315%
=852.6万円+203.15万円
=1,055万7,500円
10年超所有軽減税率の特例って何?|譲渡所得の税金を安くする
3,000万円特別控除の適用要件
3,000万円特別控除を適用するには、以下の適用要件を満たす必要があります。
3,000万円控除の適用要件
- マイホームの売却であること
- 既に転居している場合は住まなくなってから3年以内に売却すること
- 配偶者や親族など特別な関係の人・法人への売却ではないこと
- 売却した年とその前年、前々年に3,000万円特別控除の特例や、その他の特例(相続空き家の3,000万円控除と所有期間10年超の軽減税率の特例を除く)を利用していないこと
以上の要件を全て満たしていると、マンション売却で3,000万円特別控除の適用を申請できます。
控除を適用できないケース
一方で、以下のケースに該当する場合は、3,000万円特別控除の特例を適用できません。
- 投資物件の売却
- セカンドハウスや別荘の売却
- 住み替え先の購入に住宅ローン控除を適用している
住み替えのためにマンションを売却する場合、住宅ローン控除と3,000万円特別控除は併用できません。
売却した年だけでなく、その前2年間と後3年間に住宅ローン控除を適用している場合は3,000万円特別控除の適用を受けられません。
住み替えで新たにローンを借入してマイホームを購入される方は、どちらの制度の方が節税効果が高いか比較・検討して決めましょう。
【2022年改正】マンション売却後の住宅ローン控除は?併用できる節税対策を解説
3,000万円特別控除の申請方法
3,000万円特別控除を受けるには、確定申告時に適用を申請する必要があります。
【2023年最新】マンション売却に関する税制改正の変更点
税金に関する制度は、国内外の政治・経済状況に応じて、毎年改正が行われています。
令和5年度(2023年度)の税制改正は2022年12月16日に大綱が発表され、2023年4月以降に順次施行されています。
【2023年改正】「マンション長寿命化促進税制」が創設
2023年度の税制改正では「マンション長寿命化促進税制」が創設されました。
この制度は、老朽化の進んだマンションの修繕工事が適切に行われないケースがあることを背景に、税制の優遇措置によって、中古マンションの寿命を延ばすような大規模修繕工事の促進を図るものです。
一定の要件のもとで長寿命化に資する大規模修繕工事を行されたマンションは、建物部分に課される固定資産税(翌年度分)が減額されます。
【2022年改正】住宅ローン控除が見直される
2022年度の税制改正では、住宅ローン控除制度の見直しが行われました。
税制改正による主な変更点
- 控除率の引き下げ(1.0%⇒0.7%)
- 控除期間の延長(最長10年間⇒最長13年間)
- 所得要件の引き下げ(3,000万円⇒2,000万円)
- 築年数要件の撤廃
また、控除額計算の対象となる限度額(借入限度額)は、購入する住宅の性能評価や入居年に応じて設定されています。
住み替えのためにマンションを売却する方は、3,000万円特別控除と住宅ローン控除はどちらか選択して適用しなければなりません。
税制改正以前に検討していた方は、改めて要件を確認しましょう。
マンション売却のお金のシミュレーション
この記事では税金の計算方法について見てきましたが、マンションがいくらで売れるか分からないと、計算してみようにも難しいですよね。
以下の簡易シミュレーターを利用すると、「いくらで売れた時に、いくら手元に残るか」が、この場でぱっと分かります。
また、売却時に支払う仲介手数料や税金の金額も併せて知ることができるので、是非ご活用してみてください。
手取り額を確保するためには、税金を抑えるだけでなく、マンションを高く売却することも重要です。
すまいステップの不動産一括査定では、独自の基準で厳選した売却力の高い不動産会社を査定依頼先としてご紹介しています。
マンション売却で失敗したくない方は、是非ご利用ください。



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記事のおさらい
マンションの売却にはどんな税金がかかる?
マンションの売却時には、印紙税と登録免許税がかかります。
また、マンションを売却して利益が出た場合は、譲渡所得税がかかります。
売却するマンションが事業用で、売主が課税事業者の場合は、消費税がかかります。
詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
マンションの売却益にかかる税金はいくら?
マンションの売却益にかかる税金は「譲渡所得(売却益)×税率」で求められます。
税率は、マンションの所有期間によって異なります。所有期間が5年以下の場合は39.63%、5年を超えている場合は20.315%です。
詳しくは譲渡所得税はいくらになる?計算方法を解説をご覧ください。