相続前後は葬儀や遺産分割など、やることがたくさんあります。その中で、土地の売却まで検討するのは大変なことでしょう。
しかし、土地は所有しているだけで維持費用がかかります。焦る必要はありませんが、すぐに売ったほうがよい場合もあります。とくに相続した土地は、すぐ売ることで控除が利用でき、売却後に支払う税金を抑えられます。
この記事では、相続後に売却を検討している方に向けて、すぐに売却するのがよいケースと、すぐ売ることで使える特例控除、売却した場合にかかる税金について解説しています。

- 監修畑中 学
- 不動産に関わる相続や債務問題のトラブルシューティングを得意とし、その真摯な取り組みがNHK、読売新聞、日本経済新聞などで紹介されている。武蔵野不動産相談室株式会社代表取締役。
- 【保有資格】宅地建物取引士、公認不動産コンサルティングマスター、マンション管理士、管理業務主任者
- 【URL】武蔵野不動相談室株式会社
相続した土地をすぐ売却するのがよいケース
この章では、相続した土地をすぐ売却するのがよいケースを紹介します。
▼相続した土地をすぐ売却するのがよいケース
- 相続税の納税資金がない
- 遺産分割を円滑にすすめたい
- 相続税を納税した
or 親が独りで住んでいた土地を売る - 土地を活用するつもりがない
①相続税の納税資金がない
相続税が発生した場合、納付は「相続開始から10か月以内に現金一括払い」で行います。手元に資金がない場合は、期限までに土地を売って、得た現金を支払いに充てることになります。
不動産売却にかかる期間は3カ月~6カ月が平均です。相続後すぐに活動を開始すれば納税期限に間に合う可能性はありますが、どうしても間に合わない場合は、不動産会社に直接買い取ってもらう「買取」で売るこもできます。ただし、市場で売るよりも価格は下がるので注意してください。
ただし、相続税の支払い義務は一部の資産家の方にしか発生しません。国税庁による「令和2年分 相続税申告事績の概要」によれば、相続税の納税対象者は全相続人の8.8%です。ほとんど方は税金を払わずとも相続できますので、まずはご自身に支払い義務が発生するか確認をしてみてください。
②遺産分割を円滑にすすめたい
相続後にすぐ土地を売って現金化してしまったほうが遺産分割を円滑にすすめられます。
土地を一人で相続するなら問題ありませんが、複数人でする場合、相続後に共有名義人同士でトラブルが発生しやすくなるためです。共有名義の土地は、共有者全員の合意がなければ活用も売却もできません。一方は売りたいが、多方は反対すると土地の処遇をめぐってトラブルがおこりやすくなります。
売却してしまえば、現金を所有者同士で分けあうことができるため、遺産分割もスムーズに進みます。
②相続税を納税した or 親が独りで住んでいた土地を売る
相続税の納税者、または親が独りで住んでいた土地の場合、相続開始(相続人が亡くなった日)から3年以内に売れば、売却後にかかる税金を特例によって控除できる可能性があります。
代表的にな特例として「取得費加算の特例」と「相続空き家の3,000万円特例」があげられます。要件の詳細は次章「相続した土地をすぐ売却すると使える特例」で解説していますので、ご確認ください。
④土地を活用するつもりがない
土地を活用するつもりがない場合も、早めに売却してしまいましょう。
土地は所有しているだけで固定資産税がかかります。特に更地の場合は、軽減税率の適用対象外となるため建物つき土地と比べて税金額が高額です。また、放置すれば荒れてしまうため、清掃や修繕などのメンテナンスを定期的にする必要もでてきます。
使っていない土地を維持する必要はありません。予定がないなら、思い切ってすぐ手放してしまいましょう。
相続した土地をすぐ売却すると使える特例
この章では、相続した土地をすぐ売却すると利用できる、特例と適用要件を解説します。
不動産売却で得た利益には税金がかかります。以下でご紹介する制度は、課税対象となる利益額からいくらかを控除することで、節税することができる特例です。
代表的なものとしては、次の2つがあります。
▼相続した土地をすぐ売却すると使える特例控除
控除 | 適用要件 |
---|---|
取得費加算の特例 | 相続税納税者 |
相続空き家の3,000万円特例 | 親が独りで住んでいた土地を売る |
※両者は併用不可となっています
1.取得費加算の特例
相続税納税者が相続後にすぐ土地を売却する場合、「取得費の特例」を利用できる可能性があります。「取得費加算の特例」とは、売却で得た利益を計算する際に、相続税の一部を経費として控除できる制度です。
不動産売却で得た利益には税金がかかります。取得費加算の特例では、課税対象となる利益額から相続税の一部を差し引くことで課税金額を減らし、節税することができます。
▼取得費加算の特例とは
適用要件は以下の通りです。
▼適用要件(一部)
- 相続開始から3年10ヶ月以内に売る
- 相続税の納税者である
相続税の納税者であること以外に、相続開始から3年以内に売ることが、適用要件のひとつとなっています。
2.相続空き家の3,000万円特例
親が独りで住んでいた土地を相続後にすぐ売却する場合、「相続空き家の3,000万円特例」を利用できる可能性があります。「相続空き家3,000万円特例」とは、課税対象となる利益額から最大3,000万円分を控除できる制度です。
▼相続空き家の3,000万円特例とは
適用要件は以下のとおりです。
▼適用要件(一部)
- 相続開始から3年目となる年の12月31日までに売る
- 被相続人が独りで住んでいた土地
- 相続から売却までの期間、居住や事業の目的で利用されていない
- 昭和56年5月31日以前に建築された建物である
相続空き家3,000万円特例の場合、相続開始から3年目となる12月31日までに売ることが原則となります。建物付きの場合は、昭和56年5月31日以前に建築されてたものであるかを確認しましょう。また、相続から売却までに一度も住んだり貸し出したりしていないことも条件となりますが、相続した後すぐ売却すれば、問題なく満たすことができます。
相続した土地の売却にかかる税金
相続からすぐに土地を売るのであれば、どんな税金がかかるのか今から知っておいたほうがよいでしょう。
本章では、相続した土地の売却にかかる税金について解説しています。
土地を売却すると、次の3種類の税金がかかります。
▼相続した土地の売却にかかる税金
種類 | 概要 |
---|---|
譲渡所得税 | 売却で得た利益にかかる税金、控除で節税可能 |
登録免許税 | 相続の名義変更手続きにかかる税金 |
印紙税 | 売買契約手続きにかかる税金 |
譲渡所得税
「譲渡所得税」とは、不動産を売却して得た利益に課される、以下の3つの税金の総称です。
▼譲渡所得税の内訳
- 所得税:国に納める税金
- 住民税:自治体に納める税金
- 復興特別所得税:令和19年まで所得税に上乗せされる税金
不動産を売却して得た利益は「譲渡所得」と呼ばれ、売却価格から、売却にかかった費用(譲渡費用)や、不動産の入手にかかった費用(取得費)を差し引いて求められます。
取得費には土地の購入金額が該当しますが、相続した土地の場合、不明なことが多いです。取得費がわからないのであれば、「概算取得費(売却価格×0.05)」で代用します。
また、譲渡費用と取得費を差し引いて譲渡所得がゼロになる場合、税金は発生しないため、注意してください。
▼譲渡所得とは
譲渡所得税は、譲渡所得に税率を掛けて計算します。
特例を利用する際は、譲渡所得から控除額を差し引きます。
▼譲渡所得税の計算式
税率は不動産の所有期間によって変わります。売却年の1月1日時点で所有期間が5年以下の場合は「短期譲渡所得」、5年超えの場合は「長期譲渡所得」の税率が適用されます。具体的な数字は以下のようになります。
▼短期譲渡所得と長期譲渡所得の税率
種類 | 短期譲渡所得 (5年以下) | 長期譲渡所得 (5年超え) |
---|---|---|
所得税 | 30% | 15% |
住民税 | 9% | 5% |
復興特別所得税 | 0.63% | 0.315% |
※長期譲渡所得(所有期間が5年超え)のほうが税率は低いです。
相続した土地の場合、被相続人の所有期間を引き継ぐため、ほとんどは長期譲渡所得になります。例えば、亡くなった父親が30年、自分が1年所有している場合、所有期間は31年なので長期譲渡所得です。
登録免許税
登録免許税とは、土地の名義変更にかかる税金です。土地は売主本人でなければ売却できません。
相続した土地は被相続人名義になっていることが多いので、相続人である売主へ変更する手続きを行う際に、登録免許税を支払います。
相続を目的とする場合、登録免許税は「固定資産税評価額×0.004」となります。
印紙税
印紙税とは、契約書や領収書に課される税金です。
不動産の売却では、売主と買主が交わす「売買契約書」に課税されます。
印税税額は、売却価格に応じて次のように決まります。
▼印紙税額
売却代金 | 印紙税額(※) |
---|---|
10万円超え50万円以下 | 200円 |
100万円超え500万円以下 | 1,000円 |
500万円超え1,000万円以下 | 5,000円 |
1,000万円超え5,000万円以下 | 10,000円 |
5,000万円超え1億円以下 | 30,000円 |
1億円超え5億円以下 | 60,000円 |
※令和6年3月31日までの軽減税率を適用した税額
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ただでさえ複雑な手続きが必要な相続から、さらに売却するには相当の労力が必要になります。
心労が大きすぎたり、理解が難しい場合は専門家に相談することも必要です。
売却に関する相談はまず不動産会社にしてみましょう。
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