夢のマイホームを購入するとき、心強い味方となってくれるのが住宅ローンです。長期間の返済猶予を設けてもらえるだけでなく、毎月少しずつ返せます。しかしそれは適切な額を借りている場合だけです。もし自分の返済能力を上回る金額を借りてしまうと、住宅ローンは一気に負担へと変化してしまいます。
住宅ローンを借り過ぎた、と分かる状況では、精神的にも疲れ、どうしていいか分からなくなることもあります。事前に住宅ローンを借り過ぎているか判断する方法や、そもそも借りる前にどう対処すればいいのかローンのタイプごとに知っておきましょう。借り過ぎたときの対処法も合わせてお伝えします。
1.住宅ローンを借り過ぎたと分かる瞬間
借り過ぎた、と後悔する人が多い瞬間は、次の3つです。
1.1 頭金を多くし過ぎて後悔
頭金とは住宅ローンを借りる際に用意する自己資金で、頭金が多ければ確かにその後の支払い期間も短く、金利負担も低くなります。また「ローン審査での印象が良いかもしれない」と考え、貯金を崩してでも住宅ローンの頭金を用意する人は多いのです。
「頭金は2割は必要」という考えも根強く残っており、頭金を多くし過ぎた結果、日々の生活が苦しくなり、貯金にも頼れない状況になってしまったところで、住宅ローンを借り過ぎたと思う人がいるのです。
今の基準では「頭金は2割」は意味がない
現在の審査基準では、頭金の額で金利が変動することはありますが、2割も用意しなくてよいことが大半です。「頭金は2割」とよく言われますが、これは頭金を2割用意できるような人でなければ、住宅ローンの契約が難しかったことの名残と言えます。今では頭金を1割でも用意することができれば、フラット35などの一部の金融機関の住宅ローンの金利が低くなります。
これは用意できれば条件面で有利ということであって、実は頭金なしで契約する人もいます。自分自身の返済能力を考えた際に、頭金を少なくして当面の生活費を確保し、安定したタイミングで繰上返済をした方がお得なことも多いのです。
1.2 借金をしてまで住宅ローンを返済するようになった時
住宅ローンを組んだ当初は大丈夫でも、給与が突然下がったり、会社が倒産したり、今の時代全く起きないとは限らないことばかりです。そんな時に「何とか住宅を手放さないようにしたい」と住宅ローンを返済するために、さらに消費者金融から借金をしてしまう人がいます。
住宅ローンは1%以下の低金利だったとしても返済できずに困っている状況なのに、消費者金融の金利は少なくとも3%~15%近い金利が適応されます。すると住宅ローンは返せても消費者金融からの借金がどんどん膨らみ、結局家も何もかも手放さなくてはならないような状態になるまで精神的に追い詰められてしまう人も少なくありません。
こうなる前に住宅ローンの返済が滞ったら、まずは相談や家計の見直しを優先しましょう。そして住宅ローンの返済が転職や退職、倒産などで難しくなっていることを金融機関側に伝えると、返済スケジュールの見直しが相談できます。
1.3 貯蓄がなかなか増えなくなる
子供が生まれたり、進学したり、病気になって入院してしまったり、出費が増えるタイミングはこの先多々起こります。そんな状況で繰上返済を何度も行うと、確かに住宅ローンは早く返済できますが、貯蓄はなかなか増えません。繰上返済には「金利負担・住宅ローンが減る」かわりに「生活費用を削り家計破綻のリスクを招いてしまう」というデメリットがあるのです。
そうしたデメリットを深く考えず、早く返したい一心で何度も繰上返済を行うと、繰上返済自体に手数料もかかるため貯蓄が難しくなります。日々の支払いがストップしないように、貯蓄ができる範囲や、貯蓄を残した範囲で行うことが大切です。
・頭金を多くし過ぎない
・借金よりまず相談
・貯蓄も残して繰上返済
2.住宅ローンを借り過ぎているか判断する方法
では実際、今の住宅ローンは自分にとって借り過ぎなのか、これから借りる人はどうすれば借り過ぎと判断できるか知っておきましょう。
2.1 今現在住宅ローンを借り過ぎたか知る方法
住宅ローンが適切か見分けるには、3つのポイントがあります。
- 年収×5倍=借りている額
- 返済比率=年間比率÷額面年収=20%
- 完済年齢が65歳(定年)になっているか
借り入れた額が年収の5倍以上であれば、現実的な金額とは言えません。また返済比率が高すぎても、毎年の負担が辛くなってしまいます。完済年齢が65歳以上になってしまえば、その後は年金で暮らしながら住宅ローンを返す必要があり、長い目で見るとリスクが高くなってしまうことから、この3つをもう一度確認しましょう。
たとえ返済比率が20%、毎月の収入が30万円の過程の場合、大まかに考えれば毎月6万円を返済することになります。残りは24万円、このなかから光熱費や年金、保険料、食費、通信費などを引いたら、1人暮らしでもない限り生活に負担を感じても無理はありません。
負担を感じている人は半数以上
現に住宅ローンに対して負担感を感じている人は、国土交通省による「平成29年度住宅市場動向調査」によると、注文住宅の場合「非常に負担感がある」あるいは「少し負担感がある」と答えた人が合計72%でした。
分譲マンションでは合計63.1%、分譲戸建て住宅で58.6%と、半数以上の人が実際に負担感をおぼえています。住宅とは長い付き合いになり、時にはリフォームも必要になるでしょう。そうした費用も咄嗟に出せるかどうかを考えて、今現在の住宅ローンのプランを見つめなおすことも必要です。
2.2 借りる前ならライフプランも含めてシミュレーション
借りる前でまだ「借入金をどのくらいにするか悩んでいる」「頭金は1割用意できそう」といったプランを練っている段階なら、まだ見直しのチャンスはたくさんあります。次のポイントを押さえて、返済シミュレーションを行いましょう。
- 今後1年分の生活費を確保しよう
- 頭金は生活費に負担がかからない範囲で用意しよう
- ボーナスをあてにしない
- 住宅ローンの仕組みをしっかり押さえる
- 他の金融機関の住宅ローンと比較する
- 維持費も含めて住宅のことを考える
住宅ローンの仕組みや比較、住宅の維持費の検討は短期間で行うのは難しいものです。実際に自分の家を取得するまでの時間が短すぎたあまり、不動産会社や金融機関を十分に比較できず、家に住んでから暮らしが苦しくなってしまうケースは多々あります。
住宅ローンを借りることを急ぐよりも、しっかり返済できるか検討する時間を十分に確保した方が、変化の激しい現代では堅実な手段といえます。
・世帯年収2割以内
・時間をかけて検討
・十分な比較が鍵
3.金利タイプ別の借りる前のチェックポイント
金利には3つのタイプがあり、それぞれ借りる前に重点的に比較したい点が異なります。王道としては、金利が高いときは固定金利型を選び、金利が低いときは変動金利型を使うことが一般的です。
3.1 将来の見通しがしやすい「全期間固定金利型」
借り入れてから完済まで金利が固定されているため、将来までの見通しが立てやすく返済額が確実に分かります。毎月の住居費がすぐに分かるので、家計状況に変化があっても柔軟に対応でき、金利が上がるか下がるか心配する必要もありません。チェックポイントは次の3つです。
- 借りる予定の月の金利が高くなりそうか予測
- ライフプランの見通しが立つことにメリットを感じる
- 長期間返済予定で途中で家計に変化が起きる可能性がある
全期間固定金利のデメリットとして、借りた月の金利が高ければ、借りている間ずっとその金利で支払うことが挙げられます。つまり、金利変動時に金利が下がった場合の恩恵を受けにくいのです。
3.2 一定期間だけ固定金利「固定金利選択型」
固定金利選択型は、たとえば借りてから2年、3年、5年、10年、15年など一定の期間は特約期間として、金利を固定できるタイプです。特約期間が終了するときに、改めて固定金利のママ継続するか、変動金利型に変更するか、自由に変えることができます。一定期間は確実に同じ金利なので、たとえば借りてから5年のうちに子供の学費を貯めたり、他のローンの返済を終わらせたりできます。
- 特約期間終了時の金利変動に影響されるリスクがある
- 返済額が大幅に上がるリスクがある
- 金融機関によって「特約期間の種類」と「その後の金利タイプの選び方」が違う
固定金利選択型は、固定金利型に比べると比較的金利が低い傾向にあります。一方で、変動金利型に変えたとき、金利が高いと月々の返済額が大幅に上がる可能性があります。変動金利型の場合は返済額の上限を決めることができますが、固定金利選択型は決められないため、多額の返済を求められるリスクもあるのです。
3.3 市場金利の影響を受ける「変動金利型」
固定金利型と比較すると金利が低く、半年ごとに金利の見直しが行われるのが変動金利型です。メリットとしては、やはり金利の安さが挙げられます。低金利だと返済できるぎりぎりまでお金を借りることができるため、より多くの資金が得られます。しかし、それが落とし穴でもあるのです。
- 金利の変化に気が付きにくい
- 大幅に金利が上がる傾向があると見抜けないと損をする
この2点が、変動金利型を検討する際のチェックポイントとなります。変動金利型で借り過ぎてしまうと、もし住宅ローンを借り換えようとしても、多額のローンがあると審査に通らない可能性が高くなります。低金利がこの先どのくらい続くのか、見通しを持つことが大切です。
・将来の見通し
・金利タイプの使い分け
・低金利に惑わされない
4.住宅ローンを借り過ぎたときはどうすればいい
住宅ローンを借り過ぎてしまった、と後悔をし始めたら、まずは行動に移せることから少しずつ変えていく必要があります。
4.1 家計を見直し生活レベルを下げる
余分な出費を抑え、生活レベルを把握して支出を減らすことで、相対的に住宅ローンの負担を下げることも1つの方法です。家計簿をこまめにつける癖がないという人は、毎月必ず支払う額の大きなお金の見直しから始めてみましょう。車の維持費や携帯の基本プランの見直しも、意外と効果を発揮してくれます。
また毎月住宅ローンや貯金を先に済ませてしまい、残ったお金で生活をやりくりするのも1つの方法です。あわせて収入源を増やすことも検討しましょう。夫婦で働くことを視野に入れたり、在宅ワークを始めてみたり、少しでも稼げれば負担はぐっと減ります。この時、住宅ローンの負担をお互いに把握するためにも、夫婦間で相談し合うことが重要です。
4.2 住宅ローンの借り換えやリスケジュールを考えてみよう
今現在の住宅ローンを検討する場合は、すでに借入している金額や返済年数、住宅ローンのタイプ、返済方法と、別のより金利が低く柔軟な住宅ローンを比較します。住宅ローン返済額シミュレーションができるサイトが便利です。
借り換えを行うことで、新たに借りた住宅ローンで元から借りていたローンを返済しても、今返済している住宅ローンより負担が軽くなる場合があります。
元から1%以下の低金利で借りている人にとっては、金額面ではメリットが少ないかもしれませんが、変動金利型から固定金利型に借り換えて、今後のライフプランの見通しが持てるようにするという借り換えもあるのです。
リスケジュールで返済を滞らせない
もし借り換えや収入アップ、生活費の見直しをしても返済が滞りそうになっていたら、まずは金融機関にその理由を相談しましょう。理由が会社の倒産で収入が減少してしまったり、病気で働けなくなったり、金融機関が認めるものであれば返済期間自体を延ばしてくれる可能性があります。
また一定期間利息のみの返済にし、その後返済期間も伸ばすという対応をしてくれる場合もあるため、相談して損ではありません。返済が滞る前に相談した方が、金融機関側も対応しやすく、心証が良いというメリットもあります。
4.3 家を早い段階で売却してしまう
しかしリスケジュールや借り換えなども対応できない状況であれば、最終段階として家の売却を検討しましょう。家を売ると住宅ローンをすべて返済できる場合は、自分で不動産会社を見つけ、住宅ローンを返済するとともに新たな住まいへ引っ越すこともできます。
ですが、中には住宅ローンを返済しきれないこともあります。家の代金を全額ローンで支払っている場合や、家自体の価値が低くなり住宅ローンを下回ってしまっている場合です。
住宅ローンが残るなら任意売却を検討しよう
任意売却は、金融機関側に合意を得たうえで家を売却する方法で、たとえ売却額以上にローンが残っていても抵当権という金融機関側がもつ家の権利を外してもらえるのが特徴です。売却金で支払いきれなかったローンもその後、状況に考慮した条件で返済していくことができます。
しかし早めに相談することが大切で、タイミングが遅いと任意売却の手続きが行えず、住宅が金融機関側から競売にかけられてしまい、家を手放すことになります。
4.4 他の借金がかさんでいるなら任意整理を検討
もし住宅ローン以外の借金が家計を圧迫しているのであれば、任意整理を検討しましょう。借金の減額や金利の見直しを、貸金業者側に弁護士や司法書士が代理人となって交渉することで、最終的な返済を生活に支障のない範囲に抑える方法です。
ただし「減額した後の借金を3年ほどで完済できる」こと「今後も収入の見込みがある人」に限られるため、使えないケースもあります。もう1つの方法が民事再生です。自己破産とは異なり、財産を処分されることがありません。そのため、今の住居にそのまま住み続けながら、借金の金額を減らすことができます。
どちらも可能な条件が異なり、民事再生は手続きに6か月ほど時間がかかるため、住宅ローンを滞納する前に早めに相談しましょう。
・家計を見直す
・借り換え検討
・滞納前の相談が吉
5.住宅ローンを借りる前に徹底シミュレーション
住宅ローンは借りる前にどれだけ徹底的にシミュレーションし、将来に柔軟な対応を持てるかが1つのポイントでもあります。2018年現在、住宅ローンの金利は低い状態が続いており、住宅ローンを借りること自体が難しくないため、ついつい借り過ぎてしまう人も多いのです。
しかし住宅ローンは長期間の猶予が付いた借金であり、必ず返すべきものです。返済がきちんとできるか、もし収入が減った場合にはどう対応するか、あらかじめシミュレーションしておきましょう。そしてその情報を夫婦間など、住宅ローンを借りる者同士で共有しておくことが大切です。