土地の査定価格は、不動産会社に査定を依頼して知ることができます。不動産会社の査定のやり方は種類があるので、どのような方法があるのかを確認しておきましょう。
1. 不動産会社によって土地の査定価格が異なる理由
不動産会社によって、土地の査定価格が大きく異なることもあります。その理由について知り、不動産会社の査定について学びましょう。
1.1 不動産会社によって査定方法が違う
不動産会社によって査定価格に差が出る理由の一つは、査定方法が異なるからです。土地の査定方法はいろいろあるので、不動産会社により算出方法が異なります。
不動産会社は、対象となる不動産や目的により、査定方法を決定しますが、その査定法に従って査定結果を提示します。ただし、査定方法の違いにより、査定価格に大きな差が出るので、査定価格を比較するだけでなく、どのような査定方法があるのかを理解しておくことも大切です。
1.2 不動産会社の事情によって査定価格が異なる
不動産会社の戦略というよりも、顧客事情を踏まえて査定価格を出す(提案する)、という言い方の方が妥当かなと思います。
査定価格はあくまでも目安で、実際はその価格で売れる保証はありません。しかし、査定価格を参考にして、売却価格を決定することになるので、不動産会社選びは慎重に行いましょう。
- 査定方法の違い
- 不動産会社の事情
- 不動産会社選びは慎重に
2. 不動産会社の土地の査定方法の種類
不動産会社の土地の査定方法は、「収益還元法」「取引事例比較法」「原価法」があります。それぞれについて、詳しく説明します。
2.1 収益還元法
収益還元法とは、不動産で将来得られることが、想定される収益と現在価格を総合し、査定価格を割り出す方法です。収益還元法には「直接還元法」と「DCF方式」の2種類があります。
直接還元法は、1年間の収益を利回りで割る方法。「1年間の純利益÷還元利回り」で算出します。純利益とは、修繕費や固定資産税などの経費を引いた、実質的な利益のことです。
DCF方式は、毎期の収益をもとに計算します。「対象不動産が所有期間中に得られる純利益を、現在価値へと換算したもの+所有期間終了時に売却できる予定の価格を、現在価値に割り出したもの」で算出。日本語では「割引キャッシュフロー法」と訳されることもあります。
直接還元法=1年間の純利益÷還元利回り |
DCF方式=対象不動産が所有期間中に得られる純利益を現在価値へと換算したもの+所有期間終了時に売却できる予定の価格を現在価値に割り出したもの |
2.2 取引事例比較法
取引事例比較法は、対象不動産と、条件が似ている不動産の取引価格を比較して、価格を査定する方法です。市場全体の動きや売買された時期、立地条件などの違いを踏まえて、査定価格を決めていきます。査定の中でも、最も基本的な査定方法です。
取引事例比較法は、直接不動産を見なくても査定ができます。具体的な査定方法は、対象の不動産にもよりますが、過去の取引事例を集めて選択したら、個々の事情、時期、地域の要因、個別な要因等を加味して、査定額を修正したのち、査定額を決定します。
3. 土地の査定を依頼する方法
土地の査定を依頼する方法は、大まかに分けて「簡易査定」と「訪問査定」の2種類あり、どちらかの方法を選択します。
3.1 「簡易査定」なら簡単に知ることができる
「簡易査定」は、「ネット査定」や「机上査定」とも呼ばれています。不動産の簡易査定サイトがあり、サイト上で所在地、面積、間取り、築年数などの簡単な土地の情報を入力することで、簡易的に査定をしてくれるサービスです。
不動産会社が、売却物件を実際に見ることなく価格を算出するので、実質価格と大きな差が出るケースもあります。価格の決め方は、過去の売却取引事例、周囲で売り出された事例、市場の動向などを基に査定。早ければ約30分~1時間程度、遅くても数日はかからずに査定が完了するので、簡単におよその査定価格の目安を知りたい人におすすめです。
3.2 「訪問査定」ならより確実に知ることができる
簡易査定は概算価格なので、実際の売却価格と大きな差が生じることが多々あります。より正確な査定価格を知りたいなら、実際に見てから査定をする「訪問査定」のほうがよいです。
訪問査定の場合は、土地の現在の状況やエリア事情を調べて査定を行うため、実態に即した成約想定価格を提案してくれます。さらに、登記簿などで権利関係や法令上の制限等も調査したり、土地の形状を見て、法務局や行政庁などで詳細に調査したりするので、より査定価格の精度が高いです。現地調査に加えて、役所の調査も行うため、査定に数日はかかります。
【訪問査定とは】訪問査定を受けるべき理由や不動産会社を見極めるポイントを解説
3.3 「簡易査定」と「訪問査定」はどちらがよいのか
「簡易査定」のメリットは、査定に時間がかからないこと。また、しつこい営業を受けないという点を、メリットに感じる人も多いようです。デメリットは、実際に見ることなく査定をするので、正確な査定価格とは言えないこと。現況によっては、実際の売却価格と大きな差が出ることもあります。提示された価格は、あくまでも概算だということを忘れないようにしましょう。
「訪問査定」の最大のメリットは、査定価格の精度の高さです。実査定ともいわれているくらい、実際の売却価格に近い査定価格を、知ることができます。そのため売却することが前提であれば、簡易査定よりも、より現実的な査定価格がわかる訪問査定のほうがよいでしょう。
3.4 「簡易査定」と「訪問査定」の注意点
「簡易査定」の注意点は、専任媒介契約を結びたいために、現実的な価格よりも高く提示する、悪徳な不動産会社が稀ですが存在することです。そのままの高い価格では売れ残ってしまいます。
そして売れないことを理由に、最終的には価格の引き下げを申し出てくるのです。簡易査定は参考値なので、より正確な査定価格を望んでいるなら、もう一つの方法である「訪問査定」を依頼することをおすすめします。
業者か不動産会社によっては、しつこい営業にあうという声もあるので、事前に業者の評判を、口コミ等で確認しておいたほうがよいです。また、訪問査定は周辺環境の調査も行うので、近隣の人に迷惑がかかる可能性があるため、近隣の人への配慮も忘れないようにしましょう。
戸建て付きの土地を売る場合は、築年数により査定価格が大きく変わるので、注意が必要です。築浅の物件であれば、土地のみで売るよりも高く売れますが、築20年を超えている戸建て物件は価値が築20年を超えている建物付きの土地では、建物の価値を0円で計算することが多いようです。
そして、どちらの査定でも言えることですが、提示された査定価格は、あくまでも参考値です。査定価格と売却価格は違うということも、頭に入れておきましょう。
- 簡易査定は概算
- 訪問査定は精度が高い
- 査定価格と売却価格は違う
4. どの不動産会社に土地の査定を依頼したらよいのか
どの不動産会社に土地の査定を依頼するかは、売却を成功させるかどうかを左右する重要なポイントです。それぞれの不動産会社ごとに特徴があります。
4.1 大手の不動産会社に依頼する
大手の不動産会社に、土地の査定を依頼するメリットは、取引実績が豊富で信頼度が高いことです。ネームバリューがある大手の不動産会社には、買い手も集まりやすいので、売れやすくなります。
一概には言えませんが、大手の不動産会社は都心に強く、地方の不動産には弱い傾向もあるようです。ほとんどの大手の不動産会社のサイトには、無料の査定フォームが用意されています。簡単に査定価格のイメージを知るために、まずは無料査定フォームを利用してみるのもよいでしょう。
4.2 地域密着型の不動産会社に依頼する
地域に密着している不動産会社は、大手のようにサイトが充実していない可能性があり、状況がつかみにくいかもしれませんが、地元に特化していることが最大の特徴。大手が見逃しやすい、地域ならではの情報を持っています。
地元の人々の需要やライフスタイル、住宅事情等を細かく把握しており、適正価格で土地を査定。郊外のエリアでも、責任を持って仲介に入ってくれることが多いです。
4.3 不動産一括査定サイトを利用する
大手の不動産会社も、地域密着型の不動産会社も、どちらにも利用するメリットがあります。大手と地域密着どちらかに絞ることが難しいのなら、複数の不動産会社に一括で査定を依頼できる「不動産一括査定サイト」を利用するとよいでしょう。
一括査定サイトであれば、情報入力が一度で済むので手間がかかりません。ただし、一括査定サイトも複数あります。自分が売りたい土地のエリアが、対象になっているかを確認してから利用しましょう。
- 大手は取引実績が豊富
- 地域密着型の不動産会社
- 一括査定サイトを活用する
不動産一括査定サイトおすすめ10選を比較!デメリットや体験談も解説!
5. 土地を高く売るコツ
土地を高く売るためには、さまざまなコツがあります。コツを知って少しでも高く売りましょう。
5.1 自分で相場を調べておく
査定価格が適正かを判断するためにも、自分で相場を調べておくことが大切です。不動産会社により、査定価格に高額な差が生じることもあるので、提示された査定価格が適正かどうかを、自分で判断できるようにしておきましょう。相場を調べるためには、「路線価を調べる方法」「土地総合情報システムを利用する方法」があります。
路線価を利用して相場を調べる
路線価とは、相続税や贈与税などの課税額を算出する際に、指標になる価格です。一般的に、市場で取引されている売買価格の7~8割が路線価だといわれています。路線価はサイトで公表されており、自由に閲覧可能です。土地の形や、道路に面する窓口の広さなどの土地の状況により、評価が補正されます。
土地総合情報システムで相場を知る
土地総合情報システムとは、国土交通省が提供しているサービスです。「不動産の取引価格情報検索」または「地価公示都道府県地価調査」を検索して、土地の相場を調べることができます。不動産取引価格情報検索は、不動産を取引した人のアンケート、実際の成約事例を基にした情報です。
地価公示都道府県地価調査は、国・都道府県が地域ごとに算出している地価。年に1回の算出で、実際の取引価格以外の要素も加味しています。ただし、実際の価格から離れていることもあるので、あくまでも参考として調べておくとよいでしょう。
5.2 高く売れる時期を見極める
不動産は、1年の中で売れやすい時期、売れにくい時期があることも知っておきましょう。高く売れる時期を見極めることができたら、売却成功の確率が上がります。
時期によって不動産の需要に差があることは確かですが、最近ではインターネットの普及でいつでも売買情報が入手できるようになったので、価格への影響は小さくなっているようです。しかし、参考として売りどきを知っておいたほうが売買時に役立ちます。
1~3月が売り時
不動産の需要が高まるのは、新生活が始まる前の1~3月で、とくに2~3月が需要のピークです。4月になると新生活が始まってしまうので、売却が難しくなります。また9~11月も、不動産の需要が高くなる時期です。
高く売れる時期を狙って売却することで、売りやすくなります。ただし、最近では1年を通して常にインターネットで情報をチェックし、良い不動産が見つかったら購入するという人が多くなっています。そのため、時期による価格への影響は、小さくなっているようです。
売却時期を、意識しすぎる必要はありませんが、不動産の需要が高くなる時期であることは確かなので、1~3月が売り時だということは、頭に入れておくとよいでしょう。
5.3 土地の価値が上昇するタイミングを見極める
都市の開発が予定されている地域は、地価が上昇する傾向があります。再開発がすすむと、土地の自体の利便性が高まるため、土地自体の需要があがるからです。
もし売却予定の土地で、再開発の話が出ているなら、その話が真実かを確認しましょう。
5.4 複数の業者の査定を比較して高く売る
不動産会社によって、戦略や得意分野が異なるので、査定価格に差が出ます。10%以上も査定価格に差が出る場合もあり、1社のみの査定で判断すると、損をする可能性があるので注意が必要です。損しないために、必ず複数社の査定を比較しましょう。
複数の業者に、自分で査定を依頼するのは手間と時間がかかるため、不動産の一括査定サイトを利用すると便利です。最近は、無料で一括査定ができるサイトがあり、気軽に利用することができます。
- 相場を調べておく
- 1~3月が売りどき
- 複数の業者の査定を比較
6. 無料査定と有料査定はどちらにするべきか
査定を依頼する際に、無料査定か有料査定のどちらにするべきか悩む人が多いです。それぞれの特徴を確認しておきましょう。
6.1 無料査定とは
不動産会社に査定を依頼する場合は、基本的に無料です。不動産会社は、過去の取引実績や現在の状況等を基に、査定価格を算出します。
なぜ無料で実施できるのかというと、査定は営業の一環だからです。査定から不動産の仲介につなげ、最終的には契約をして仲介手数料を獲得し、収入を得ることを目的にしています。専任の媒介契約を獲得することが目的なので、査定価格は高くなりがちです。よって、実際の売却価格は、査定価格よりも少し低くなる傾向があります。
6.2 有料査定とは
有料査定になる場合は、不動産鑑定士に査定を依頼したときです。不動産鑑定評価基準により行う評価は「不動産鑑定」、その簡易版が「不動産査定」で、いずれも不動産鑑定士に査定を依頼するので有料になります。
不動産鑑定評価書の費用は、およそ20万~90万円、不動産査定書の費用は10万~15万円程度です。料金体制は明確な指標がなく、場合により異なるので相場には幅があるのです。有料査定は、実際の価格より低めの査定価格になることが多く、実際の売却価格は少し上がる傾向があります。
不動産鑑定については以下の記事で詳しく解説しています。
6.3 有料査定を選ぶ人の理由
有料査定を選ぶ人の理由は、「税理士に鑑定書を出すように言われたため」「相続や離婚で財産についてもめたため」「立ち退きでもめたため」「企業間での取引のため」「裁判所や税務署に不動産の価値を立証するときに必要だから」「無料査定の結果に不信感があるため」など。
有料査定は、国家資格である不動産鑑定士の資格を持つ人が、土地の査定をしてくれるので、信用度が高いです。また、土地の価値だけではなく、有効活用などのコンサルティングを行ってくれるというメリットもあります。査定価格の信用度は、有料査定のほうが上ですが、査定で算出した価格は参考値にすぎません。そのため、実際の売却価格とは異なります。
6.4 基本的には無料査定でも十分
税務署や裁判所への証拠資料として、必要な場合であれば有料査定が必要になりますが、基本的には不動産会社の無料査定でも十分です。最近はオンライン査定が浸透しており、気軽に査定を依頼できるようになりました。
無料で行える不動産一括査定を利用すれば、簡単に複数の不動産会社の査定価格を比較できるので便利です。不動産会社の査定価格には差が出てしまいますが、一括査定なら複数社の査定を比較できます。
- 不動産会社の査定は無料
- 有料査定は証拠資料のため
- 無料査定で十分
7. 土地売却の流れ
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- 査定依頼
- 媒介契約
- 販売活動
- 売却条件の交渉
- 情報の開示
- 売買契約
- 引き渡し
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実際に土地を売却することになった際には、どのような流れで手続きが行われるのかを、一つずつ見ていきましょう。
7.1 査定依頼
売却を成功させるためには、信頼できる不動産会社を見つけることが大切です。なるべく複数の不動産会社に査定を依頼し、査定価格を比較しましょう。査定を比較するなら、一括査定が便利です。簡易査定と訪問査定がありますが、できるだけ現実的な査定価格に近付けたいなら、訪問査定をおすすめします。
7.2 媒介契約
複数社の査定を比較し、取引したい不動産会社を見つけたら、仲介を正式に依頼するために、媒介契約を結びます。媒介契約は、「専属専任媒介契約」「専任媒介契約」「一般媒介契約」の3種類があるので、どの媒介契約がよいのかを相談しながら考えていきましょう。
例えば、専属専任媒介契約と専任媒介契約は、他の不動産会社に売却依頼ができないなど、それぞれに特徴があります。
7.3 販売活動
査定価格が、そのまま売却価格になるわけではありません。売り出し価格は、売れるかどうかを左右する重要なポイントです。したがって、自分が希望する売却価格だけではなく、不動産会社の査定価格、市場の動向、周辺の売却事例なども加味し、慎重に価格を決める必要があります。
7.4 売却条件の交渉
購入希望者がいたら、売却条件の交渉をします。価格の値引きなど、どこまで譲ってもよいのかを考えておくと、交渉がスムーズに進みます。値引き交渉には、なるべく応じたほうが良いですが、損をしないように慎重に判断しましょう。
7.5 情報の開示
売買契約を結ぶ前に、対象不動産の情報をなるべく正確に購入希望者に伝えます。とくにマイナスな情報は、隠さずにすべて伝えておくことが重要です。建物に不具合や欠陥がある、周辺環境が良くないなど、マイナスな情報を伝えておかないと、売買契約後にトラブルになってしまいます。
不動産売却時の瑕疵担保責任とは?トラブルを起こさないための対策
7.6 売買契約
売買条件が両者の合意に至ったら、買主と売買契約を結びます。このときに、手付金を受領。手付金の額は、契約金の10~20%程度が基本です。
売買契約を結ぶ際には、入念に契約内容を確認しましょう。不動産会社から、登記簿上の権利関係、法的制限などの説明があります。難しい話ではありますが、知らないと後で困ることになるので、不明な点があればその場で確認することが大切です。
7.7 引き渡し
最後に引き渡しを行ったら、売却完了です。引き渡しの際には、売買代金の残りの受領と、登記申請の手続きを行います。建物付きの土地であれば、一戸建てやマンションの鍵を渡したら、引き渡し完了です。
引き渡しの際は、設備や備品の取り扱いなどを、買主と一緒に立ち会ってよく確認しましょう。また、引き渡し後の税務申告の手続きも必要です。
- 査定の比較は一括査定で
- マイナスの情報も伝える
- 売買契約時に手付金を受領
8. 信頼できる不動産会社を選ぶ
不動産の売却に成功できるかどうかは、いかに信頼できる不動産会社と、媒介契約を結べるかどうかがポイントです。焦って適当な不動産会社に決めてしまうと、後で後悔することになります。
信頼できる不動産会社を選ぶためには、なるべく複数の不動産会社に査定を依頼し、比較して検討することが大切。そのためには、不動産一括査定サイトを利用すると便利です。無料で簡単に一括査定ができるサイトがあるので、利用してみましょう。