登記事項証明書の中には、今の情報だけ閲覧できる現在事項証明書や主要な情報だけが分かる要約書、すでに過去の情報となってしまっているもの、つまり現在はそこにはない建物の情報を知ることができる閉鎖事項証明書など種類があります。
目的に応じて取得することでより不動産に関する情報を得やすくなります。過去の登記事項について活用する方法も知って、正しい情報取得に活用しましょう。
登記事項証明書の種類
不動産売買時に登記事項証明書が必要になるといっても、場合によっては取得すべき登記事項証明書の種類が変わる可能性があります。
登記事項証明書の種類
登記事項証明書には、基本として次の4つの種類があります。
- 全部事項証明書
- 現在事項証明書
- 要約書(登記事項要約書)
- 閉鎖事項証明書
登記事項証明書とは「全部事項証明書」と「現在事項証明書」の2つの書類の総称です。分からない場合は基本的に全部事項証明書を取得しておけば間違いありません。
また何度も持ち主が変わっていたり、相続人が極端に多かったりする場合は、一部の情報だけ抜き出した方が便利です。その場合は「一部事項証明書」というものを取得するという方法もあります。
場面別に必要な登記事項証明書を判断する
過去の権利関係から、現時点で効力を持っている登記事項まで全て分かるのが「全部事項証明書」です。基本的にはこれを取得しておけば問題ありません。何故なら過去から現在までの情報がすべて分かるため、不動産売買における必要な情報が不動産会社側にも分かりやすく伝わるためです。
売買の場面では建物の種別で異なる
不動産を売却する際には、一戸建てなら土地と建物それぞれ1通が必要です。一方マンションの場合は、専有部分に関するもの1通のみでかまいません。
土地の売却の場合も土地1通だけで大丈夫です。ただし昭和58年以前のマンションの場合は、共有部分の登記事項証明書とあわせて2通必要となる場合もあります。この時に必要となるのは『全部事項証明書』です。このほかにも、次の書類が必要です。
物件別に情報を見極めるとき
登記事項証明書は、人間で言えば履歴書のようなもので、住宅やマンションといった土地を購入する際に活用すると、不動産の基本的な情報や登記履歴がすぐに分かります。そのため現時点でその土地やマンション、住宅がどんな風に扱われているかといった情報だけを知りたいのなら「現在事項証明書」でも問題はありません。
ただ過去にどんな人が持ち主だったのか、どんな人がどんなローンを使っていたのか、という情報まで知りたい場合は「全部事項証明書」を取得することも視野に入れましょう。
融資を受ける際に金融機関に提出する書類
住宅ローンに必要な書類は、とにかく膨大です。個人が融資を受けるもののなかでは、最も書類の数が多くなると言われます。また長期間貸し出すため、銀行側も慎重になります。
住み替えの場合、住宅ローンの残債があっても家を売ることで得たお金を使い、新たな家の購入資金に充てることが可能です。家や土地の権利はしっかりと証明する必要があるため、この時に法的な証明能力がある登記事項証明書が必要となるのです。したがって「全部事項証明書」が望ましいとされます。
住宅ローンの対象物件は抵当権で担保設定することが必要なため、登記識別情報を担当の司法書士に預けることが必要です。また自分の土地に家を建てる場合は土地の登記事項証明書(登記簿謄本)に加え、請負契約書、土地建物の公図等が必要です。
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取得までかかる時間や費用
「できるだけ早く取得したい」「できれば費用を抑えたい」など取得したいシチュエーション別に活用できるよう、一覧で取得までの流れを見ていきましょう。
取得するまでの時間を一覧で見る
登記事項証明書の取得に必要な書類は「登記事項証明書交付申請書」です。しかし取得方法によっては、この書類自体が必要ではない場合もあるため、詳しく見ていきましょう。
取得方法 | 申請場所 | 受け取り場所 | 必要書類 | 申請方法 | 取得までの時間 |
法務局に直接取りに行く | 法務局 | 法務局 | 登記事項証明書交付申請書 | 法務局窓口で申請する | 最短30分前後 |
法務局から郵送してもらう | 自宅や会社 | 自宅や会社 | 登記事項証明書交付申請書 | 返信用封筒に切手を貼り、同封して申請する | 最短で1日、場所によっては2日以上 |
オンラインで交付申請 | 自宅や会社 | 自宅や会社 | なし | オンラインで申請し郵送受け取りを選択 | 翌日かその次の日 |
自宅や会社 | 最寄りの法務局か登記所 | なし | オンラインで申請し最寄りの法務局か登記所を選択 | 最短で3時間、込み具合ではそれ以上かかることもあり | |
証明書発行請求機 | 法務局 | 法務局 | なし | 法務局にある証明書発行請求機を操作して申請し窓口で受け取る | 最短で5分 |
必要な情報
法務局で手続きするのであれば、必要なものは認印だけです。身分証明書も必要いので、委任状も不要です。また誰でも閲覧可能なため、自分が持ち主の不動産でなくても請求可能出来ます。つまり時間が取れない場合は、友人や家族に依頼して取得してもらうことも可能です。
ただし登記事項証明書を取得したい不動産の住所や地番、建物であれば家屋番号が必須です。もしこれらの情報が分からなければ、事前に法務局で確認しておくことをおすすめします。
1通発行ごとに手数料がかかる
登記事項証明書は手続きの流れによって変わることをおぼえておきましょう。
- 書面請求:600円
- オンライン請求・郵送送付:500円
- オンライン請求・窓口交付:480円
- オンラインで情報のみ:450円
手数料は収入印紙(印紙税)で支払うか、オンラインで受付した場合はクレジットカードで電子納付することが可能です。大量に請求する場合は、印紙を貼らずに請求し、後で正確な金額で印紙を購入し納めることをおすすめします。
収入印紙は法務局内でも購入できますが、郵送する場合は郵便局やコンビニなどでも入手できるため、そちらを活用しましょう。
ただし注意したいのは、これはあくまでも手数料ということです。郵送請求の場合、普通郵便なら無料ですが、例えば速達や書留を利用すると、その分の費用がかかります。
また自宅から郵便で法務局へ申請する場合は返信用封筒の用意が必要で、往復費用が掛かります。例を挙げると普通郵便でも「82円×往復=164円」が別途かかり、速達ならプラス280円が必要です。
できるだけスピーディーに発行するために
「登記事項証明書をできるだけ早めに発行しておきたい」と思っても、その日のうちに手続きができないことが多いです。申請時の注意点についても、押さえておきましょう。
土地の地番と家屋番号は必須
「地番」や「家屋番号」とは、その土地や建物を登記簿で管理するために法務局側が割り振った番号であり、一般的に使われる「番地」といった住所とは全くの別物です。一般的な住所がその居住地の場所を表すものとすれば、地番や家屋番号は法律的な権利の範囲を管理するための番号といえます。
確認できるのは「固定資産税の課税明細書」もしくは「登記済権利証の不動産の表示」「登記識別情報通知」が最も手軽です。もしこれらで分からない場合は、法務局に実際に問い合わせるほか、法務局に備えられているブルーマップを活用しましょう。
共有名義の場合は全員分の登記事項証明書が必要
共有名義は、簡単言うと複数人で1つの建物の権利者となることです。たとえば夫婦でマンションを共同購入すれば、夫婦で1/2ずつ共有名義として扱います。もし売却したい不動産が共有名義であれば、全員分の登記事項証明書が必要です。
共有名義の建物の場合は、誰がどう建物を所有しているのか把握したうえで、登記事項証明書を申請することが大切です。
取得自体は他の人でも問題なし
また現在は登記事項証明書に関わる情報はデータ化されているため、全国どこの法務局でも申請することができます。たとえば新潟県にある実家の登記事項証明書を東京の法務局で受け取ることも可能です。離れた土地の不動産の査定を依頼する場合も、これで手軽に書類を取り寄せられるようになりました。
さらに登記事項証明書自体は、誰でも申請できる書類です。申請手続きだけインターネット上で済ませておき、家族に引き取りに行ってもらうことも出来ます。
ただ手続きにかかる時間だけで言えば、最も早く受け取れるのは「証明書発行請求機」です。ただ法務局が身近にない場合は、行くまでの交通費がかかってしまうこと、時間や手間がかかることは念頭に置きましょう。
登記事項証明書は4種類!どれを取得すべきか必要な状況から判断しよう
費用を節約して情報を得るために
費用をできるだけ抑えたい場合には、確実に必要な場合のみ、登記事項証明書を取得することをおすすめします。そのために活用できるのが「登記情報提供サービス」です。
登記情報提供サービスを活用しよう
「登記情報提供サービス」は、インターネット上から登記所の保有する登記情報へアクセスできる有料サービスです。一時的な利用のほか、利用者登録をして情報を集めることも出来ます。クレジットカード決済が使えるため、スピーディーに情報取得を申請できるのもポイントです。取得した情報はPDFファイルとして作成されるため、印刷も出来ます。
不動産登記情報については申請する内容によって異なり、全体の情報が欲しい場合は1通あたり手数料も含めて335円が必要です。また利用する際に登録費用が掛かり、個人であれば1回もしくは1ヵ月につき300円がかかります。注意点として、法的な根拠のある書類にはならないため、契約の場面では活用できません。
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要約書を申請してみよう
現在の情報だけを欲しい場合、登記所で「要約書」を申請することでも手に入ります。要約書は誰が所有していて、どのくらいお金を借りているのか、現時点での最新情報だけをまとめたものです。登記事項証明書に比べると手数料は450円と安く、印刷せずに書面でも最新情報を確認したい場合に便利です。
申請方法については登記事項証明書と変わりません。ただしこちらも上記の登記情報提供サービスと同様に、法的な根拠のある書類ではないため注意しましょう。
過去の登記事項証明書を確認する方法
上記の登記事項証明書の種類として紹介した「閉鎖事項証明書」は、今はもうない建物の登記記録を確認するための書類です。
データ化されていない情報が読める
もうすでに建物が存在していなかったり、隣の土地と1つにまとめらていたり、そうした状況になった時建物や土地の情報を記した登記簿謄本は「閉鎖」されます。閉鎖された登記簿謄本は情報の追加や変更も出来ません。登記記録が情報としてコンピューター上で管理されるより前の情報については閉鎖登記簿謄本になります。
過去の登記事項の確認が必要になるケースについてです。例えば新たに土地を買う際に、以前の使われ方を調べようとしても年数的に遡り切れなかった場合に不安要素を解決する手助けになります。現在の登記事項証明書の記載内容は、コンピューター上でデータ化されたものに限られます。反対に言えば、過去の記録は分からないのです。
山間の田舎の土地といった物に関しては、過去に産業廃棄物処理業者が所有していたり、化学工場に使われていたりするケースがあります。現所有者の情報が分かってもデータ化されていないくらい過去にそうした利用方法の土地だった可能性はゼロではないのです。
遡る範囲を明確にすることが大切
欲しい情報が閉鎖事項全部証明書で得られる場合は、普通の登記事項証明書(全部事項証明書)と同様の取得方法です。取り壊されたため閉鎖された建物の登記記録といった記録も同様に得られます。郵送申請やオンライン申請も可能です。ただし壊された建物ですから、それに関する正確な情報が必要です。
しかしコンピューター化に伴う閉鎖だけではなく、それよりもっと前に閉鎖された情報については、縦書きの書面上でしか残っていません。「山の土地で今より30年前に現所有者が取得して、それ以来使っていないことは分かったけど、それより前の所有者や使用方法を知りたい」という場合には、その土地を管轄する法務局に出向いて取得する必要があります。
登記事項証明書を正しい情報取得に活用しよう
建物や土地の正しい情報は不動産売買には必須です。また公的な特例を活用するときにも登記事項証明書は必要になってきます。確定申告に関しては登記事項証明書をあらかじめ取得しておくことで、期限内に申請しやすくなります。申請方法も様々なタイプを選べることが出来るので、スケジュールに合わせて申請することが大切です。