マイホームの購入は一生の中でも大きな買い物であり、これ以上高額の買い物を経験しない人も多いでしょう。物件によって金額は異なりますが、数千万円単位になることが多く、購入時には多くの人が住宅ローンを使用します。
ローンを組むことで高額な家でも購入できますが、問題はその後の支払いです。あまりに高すぎるローンを組むと、審査には通っても購入後に負担が大きくなる可能性もあるため、注意しなければなりません。住宅ローンは無理なく組むことが大切で、計画を立てて組むことで、余裕が生まれることもあるでしょう。支払いに余裕が生まれた時に考えたいのが、住宅ローンの繰り上げ返済です。
1. 住宅ローンの繰り上げ返済とは
住宅ローンの返済で余裕ができた場合は、繰り上げ返済へ回すのがおすすめですが、そもそもこれがどのような制度なのか知らない人もいるでしょう。繰り上げ返済も、ローン返済の方法のひとつであり、通常の返済方法とは若干異なります。繰り上げ返済の基本を知って、どのようなメリットがあるのか知りましょう。
1.1 余分にローンを返済する
住宅ローンの繰り上げ返済とは、簡単に言えば余ったお金を使って、余分にローンを返済することです。住宅ローンの返済額は月々に決められており、毎月固定で支払います。返済額は収入や生活コストを考えて算出しますが、時には余裕ができてお金が余ることもあるでしょう。
月々の収入の余剰分を使って、固定の返済額に上乗せをするのが繰り上げ返済であり、余分な支払いのため、自分の意思で行うかどうかは調整できます。
1.2 返済までの期間が短くなる
住宅ローンを組む際には、毎月の支払額を決め、いつ払い終えるのかを決めます。毎月固定で支払っているなら、契約時に決めた時期にローンを払い終えますが、繰り上げ返済を行うことで、ローン完済の時期を前倒しにできます。
どれくらいの期間が短縮できるかは、繰り上げ返済額によって異なりますが、金額が多くなるほどローン完済の期間も短くなると考えましょう。
1.3 利息が引き下げられる
住宅ローンの繰り上げ返済では、支払い時期が短くなるだけではなく、金利による利息を減らせるメリットもあります。通常ローン契約の場合、契約年数に応じて金利が決められており、購入価格に金利の利率をかけて利息を算出します。
いわば長期間に分割して支払うための手数料であり、金額が大きいほど利息だけでも高額になると考えましょう。繰り上げ返済を行うことで、金利がかかる部分をより早く減らせるため、当初予定していたよりも少ない利息で完済が可能です。
繰り上げ返済を行うことで、その月の出費は増えるものの、長い目で見ると返済額は少なくなり、お得になる場合が多いでしょう。
・追加でのローン支払い
・返済期間が短くなる
・返済金額が減らせる
2. 住宅ローンを繰り上げ返済する方法
住宅ローンの繰り上げ返済には、心理的・金銭的メリットがあるため、できるだけ行いたいと考える人は多いでしょう。ローンはいわば借金のため、少しでも額を小さくし、早く返済できるに越したことはありません。本来なら一括で支払えるのがベストですが、それができないため、やむを得ずローンを組んでいることは理解しておきましょう。
ローンによる負担を少しでも減らすには、繰り上げ返済がおすすめですが、問題はいかに余剰分の支払い額を生み出すかです。ローン契約時には返済プランを立てて組んでいるため、繰り上げ返済をしようにもなかなか余分な支払いに回せるお金が捻出できないことも多いです。
また、日常生活では思わぬ出費があり、場合によっては固定ローンの支払いだけでもいっぱいいっぱいで、マイナスが出る場合すらあります。返済状況が厳しく住宅ローンで繰り上げ返済をするには、何が必要なのか、心がけるべきポイントを知っておきましょう。
2.1 まずは貯金
住宅ローンの繰り上げ返済を行うには、金銭的な余裕を持つことが大切なため、まずは貯金をすることが先決です。月々の生活費から、余剰分が出たなら、それを繰り上げ返済に回すことも可能ですが、余った分を返済に回すと、いざという時の貯えがなく、困ることも多いです。
ある程度貯金を作っておくと、出費がかさんだ場合でも問題なく対処でき、より負担を減らして繰り上げ返済ができます。貯金を作らず繰り上げ返済で月々のお金を全て使ってしまうのは危険度が高いため、保険をかける意味でも貯金は作っておきましょう。
固定費の見直し
月々安定して貯金をするには、固定費を見直すことが大切です。固定費は生活に必要なお金のため、ゼロにすることはできませんが、現時点で余計にかけ過ぎている可能性があります。固定費では、家賃や電気ガス水道代、通信費などが挙げられ、電気ガス水道代と通信費なら、工夫次第でコストダウンは可能です。
電気ガス水道代は、基本的には節約を心がけ、無駄なく使うことが大切です。部屋の電気はこまめに消す、お湯を沸かす時は蓋をしてスピードアップを図る、水を出しっぱなしにしないなど、細かいことを気をつけるだけで、節約はできます。
また、利用する電気会社やガス会社を変える、あるいはプランをまとめることでも、基本使用料が下がる場合もあるため、これも検討しましょう。通信費はスマホ代が高くつきやすく、大手のキャリアなら月1万円程度かかることも多いです。
格安スマホに変えると、費用を半分以下に下げられる場合もあるため、契約会社やプランの見直しを行い、少しでも安く済ませられるよう使い方を工夫しましょう。
出費の削減
固定費以外の出費に目を向けることも大切で、無駄遣いをしないよう心がけましょう。例えば毎月数回外食していたのを1回に抑えるだけでも、月数千円から数万円程度の節約になります。出費の中では交際費は特に削りやすい部分のため、見直しが大切です。
また、食費の見直しも重要で、可能な限り自炊を心がけましょう。昼食を毎日外に食べに出ている場合、安くても数百円、高いと1,000円程度かかりますが、弁当を持参すると半分以下の出費に抑えられます。外食の回数を減らすだけでも出費はかなり抑えられるため、どこなら無理なく節約できそうか考えることが大切です。
2.2 早期返済のメリットを考える
繰り上げ返済にメリットを感じているものの、なかなか費用を捻出するモチベーションが湧かない場合は、早期返済するメリットを考えるのがおすすめです。繰り上げ返済によるメリットは大きく、返済後に得られる利益をイメージすることで、より積極的に行えるようになります。
返済後の生活が楽になる
繰り上げ返済で素早く住宅ローンを払い終えると、完済後の生活がぐっと楽になります。ローン支払いがなくなるということは、これまで固定で必要だった費用が一気になくなるため、余裕を持って貯金もしやすいでしょう。
例えば毎月5万円の支払いがあった場合、完済すると毎月5万円の余裕は確実に確保できます。完済時期が早いほど、支払う金額も少なくなるため、より金銭的なメリットは感じやすいでしょう。
ローン支払い分贅沢ができる
ローンがなくなると、これまでに支払いに充てていたお金を使って、贅沢をすることも可能です。余ったお金の使い道は自由であり、ローン支払い分の月々の生活をグレードアップすることもできます。急に贅沢をすると無駄遣いをしているように感じる人もいるでしょうが、これまでローン支払いに消えていたことを考えるなら、使用しても問題はありません。
ローン返済金額分は、仮に無駄遣いになっても、生活に支障をきたすことは少ないため、より大胆なお金の使い方ができるでしょう。
2.3 無理をしないのが鉄則
住宅ローンの繰り上げ返済のメリットは大きいですが、メリットを得ようとして無理をするのは禁物です。無理に繰り上げ返済をすると、ローン完済は早くなりますが、その分直近の生活が苦しくなります。繰り上げ返済をするため、生活を切り詰めて負担が増えてしまうと、本末転倒なため注意しなければなりません。
繰り上げ返済は、もともと将来的な負担を少しでも少なくするために行うものです。返済を焦るあまりに負担が増えると、メリットがなくなってしまうため、必ず無理のない範囲で行いましょう。
・貯金を作ることが大切
・早期返済の魅力を考える
・無理をしないことが大切
3. 住宅ローンの繰り上げ返済は本当に必要か
住宅ローンの繰り上げ返済にはメリットがありますが、あくまで余分な支払いのため、強制されるものではありません。そのため、必要性に疑問を感じ、月々に自由に使えるお金が少なくなるなら、繰り上げ返済はデメリットになるのではないかと考える人もいるでしょう。繰り上げ返済の必要性を知り、本当に行うべきかよく考えることが大切です。
3.1 必須ではない
繰り上げ返済は強制的なものではないため、必須ではありません。繰り上げ返済をしないからと言って、デメリットが生じるわけではなく、契約当初の取り決め通りにローンの返済は進みます。住宅ローンは金額が大きいだけに、契約時に明確な返済プランを考えていることがほとんどです。
最初に決めた返済プランで納得しているなら、無理に繰り上げ返済を行う必要はなく、仮にお金に余裕ができても規定通りの支払いで構わないことは理解しておきましょう。ただし、繰り上げ返済によるメリットも忘れてはいけません。
繰り上げ返済をしないことにデメリットはありませんが、同時にメリットが得られないことは、頭に入れておく必要があります。
3.2 長期ローンで不安なら必要
住宅ローンは長期間契約になることが多く、20年、30年になることも少なくありません。長期ローンで支払いが長きにわたって続き、将来の生活が心配なら、少しずつでも繰り上げ返済をしておくと良いでしょう。繰り上げ返済の金額次第では、ローン完済を数年、数十年早めることもできます。
いつまでもローンが残って、将来の生活に不安を抱えたくない人は、貯金よりも繰り上げ返済の割合を多くしたほうが良いでしょう。
3.3 返済予定年齢に注意
住宅ローンは契約時に年数が決まるため、いつ完済するかも決まります。通常通りの支払いで、完済予定が定年を超えている場合は、繰り上げ返済をしたほうが良いでしょう。定年後に働くことも可能ですが、再雇用だと給料が大幅に減少し、当初の計画通りの支払いが難しくなる場合もあります。
また、そもそも再雇用してもらえるとは限らず、就職先が見つからず困ることも少なくありません。退職金が出る場合でも、それでローンを完済しきれないと、返済の不安は残り続けます。完済予定が定年を過ぎていると、後々リスクを抱えやすいため、少なくとも定年前には払い終えるようにすることが大切です。
・希望する場合のみでOK
・将来に不安があるなら
・返済予定年齢で決める
4. どうしてもローン返済できない場合
マイホーム購入時には、無理のない返済プランを立てていたものの、急な出費がかさんだり、ライフスタイルの変化によって、返済が難しくなる場合もあります。繰り上げ返済は希望者のみが行うもののため、無理にする必要はありませんが、固定のローンが支払えない場合は注意が必要です。
基本的には万が一に備え、固定分は払えるようにするのが大切ですが、どうしても払えない場合は、別の対処法を考えましょう。
4.1 売却を視野に入れる
どうしてもローンを返済できない場合は、売却も視野に入れましょう。ローンが残っている場合でも、売却で一括返済できるなら問題ありません。一度家を手放し、ローンをクリアにしてから、再度負担の少ないローンを組み直すのもひとつの手です。
滞納せずにきちんと完済しているなら、住み替えのローン審査でも不利にはならないため、支払いが滞らないうちに売却を考えることが大切です。
4.2 売却額で一括返済できない場合
ローンが残っている物件の場合、売却額で残債が一括返済できることが基本です。一括返済できないと売却の許可が下りないこともありますが、これも交渉次第です。自宅の評価が低く、安くでしか売却できない場合は、ローン先に掛け合って残った分の返済プランを提示しましょう。
仮にローンが残っても、滞りなく返済できるなら問題ありません。残債額が大きくても、返済プラン次第では売却の許可が下りる場合もあります。自宅売却後も、きちんとローンを支払えることを証明することが大切なため、返済プランは明確に説明しましょう。
4.3 賃貸での収益化は危険
ローン返済が苦しくなると、自宅を収益物件に変え、賃貸経営で利益を得ようと考える人も多いでしょう。賃貸経営はうまくいくと不労所得が得られますが、リスクも高いため、ローン返済が厳しい場合はやめたほうが無難です。
賃貸経営はあくまで資金や資産に余裕がある人がやるもので、一発逆転で利益を出すのには向きません。賃貸にするまでの初期投資が高くつき、費用回収もできずに損失を広げるだけで終わる危険性が高いため、注意しましょう。
4.4 ローン滞納はさらに危険
ローンの滞納は非常に危険なため、支払いが厳しい場合は、滞納する前に対処することが鉄則です。ローンを滞納すると、2カ月目には支払いの督促状が届き、3カ月目には残債額の一括返済が求められます。一括返済できないと競売にかけられ、家を失ってしまうため、注意しなければなりません。
競売での売却価格はローン残債から差し引かれますが、それでも残る場合は家がないのにローンを払い続ける必要があります。競売だと相場よりも低い金額でしか売れないことがほとんどのため、同じ手放す場合でも、自身で売却を目指し、少しでも高く売ったほうが良いでしょう。
・返済できないなら売却
・売却後は一括返済が基本
・滞納リスクの高さに注意
5. 繰り上げ返済を使って上手に住宅ローンを返済
住宅ローンは長期間にわたってコツコツ返済しますが、繰り上げ返済をすることで、返済期間を短くできます。さらに契約当初よりも支払い額が減るため、直近での負担は増えるものの、お得な返済方法と言えます。ただし、繰り上げ返済で無理をすると、生活が苦しくなり、デメリットが大きくなるため、注意しなければなりません。
無理な返済で余裕がなくなり、次回以降の支払いを滞納するのは本末転倒です。住宅ローンは滞納せず、スムーズに完済するのが基本です。繰り上げ返済はいわば返済のオプションのため、必要に応じて使い、上手な返済を心がけましょう。