低金利政策の影響で長い期間低金利状態が続いており、住宅ローンが組みやすくなったことで、家を購入する人が増えています。また、2019年10月からの消費税率の引き上げが、家の駆け込み需要へと繋がっています。
家を購入するにあたって住宅ローンを組む際に、火災保険への加入を勧められる場合があります。ここでは、火災保険の内容や相場に加え、住宅ローンとの関係性について解説していきます。
家の火災保険とは
家の火災保険は、購入家屋だけでなく賃貸の場合にも加入することがあるため、私たちに身近な保険の一つだと言えます。しかし、実際に火災が発生した経験がないと、補償内容などについて詳しく知らない人も多いのではないでしょうか。
火災保険とは
火災保険とは、自然災害や事故によって生じた損害を補償することを目的としている保険商品の一つです。代表的な保険商品には、自動車保険や生命保険が挙げられます。
その中でも火災保険は、火災だけでなく風水被害による損害も補償することを目的としており、住宅などの建物や家財用具などに対して補償されます。また、一般の住宅向け商品以外にも、企業を対象にした商品など幅広く展開されています。
なお、2013年に行った内閣府の調査では、火災保険に加入している世帯は4,500万世帯を超えており、その加入率は全体の85%だということがわかっています。都道府県別で見ると、最も加入率が高いのは東京都で63%、最も加入率が低いのは沖縄県の26%となっています。
火災保険の補償対象とは
火災保険の内容は、火災による一連の被害に対して補償されるというイメージが強いかもしれませんが、契約内容によっては台風で窓ガラスが割れた場合にも補償の対象となります。
また、近年は年間を通して異常気象と言われており、夏でも突然雹(ひょう)が降ることもあります。火災保険では、雹が当たって建物などに被害が出た場合も補償の対象となっています。なお、火災保険での補償は、以下のようなものが対象となります。
- 火災
- 落雷
- 爆発
- 風災
- 雹災
- 雪災
- 水害
この他にも、何かが落下してきたことによって建物などに被害があった場合や泥棒による盗難についても補償対象となっています。
火災保険の種類とは
火災保険には、大きく分けて住宅用と店舗用の2種類に分類されています。なお、住宅用の火災保険の中でも補償内容によって数種類に分類されていますが、この記事では、火災以外にもさまざまな損害が補償対象となる住宅総合保険に焦点をあてて解説していきます。
住宅総合保険は、建物と家財の両方の損害に対する補償を目的としており、一般的な火災保険よりも幅広い被害に対する補償が対象となっていることが特徴です。
幅広い被害に対して補償されることから、住宅総合保険の加入は、戸建てや分譲マンションを所有している人を中心に多い傾向にあります。その理由の一つに、戸建てやマンションを購入には多額の費用がかかっており、火災などによる被害が発生した場合は、その被害額も多額になりやすいことが挙げられます。
住宅ローンとの関係性
戸建てやマンションの購入で住宅ローンを組む場合、火災保険への加入を勧められることがあります。一般的に住宅ローンは、長期間に渡って少しずつ返済していくため、完済するまでに火事や地震などの災害に遭わないという保証がありません。
そのため、住宅ローンを返済中に火事や地震による被害を受けた場合、自宅を失ったにも関わらず、住宅ローンの残債はあるという状況に陥ってしまいます。
万が一、このような被害に遭った場合でも、住宅ローンを返済しなければならないため、火災保険に加入することで、住宅ローンでお金を借りた側と貸した側の両方が困らないことを目的として火災保険への加入が勧められていると考えられます。
・火災以外の補償もある
・住宅ローンと関係が深い
家の火災保険料の相場
火災保険は、他の保険と同様に保険料が低ければ、それなりの補償しか受けられないという仕組みになっています。それでは、火災保険料の相場はどのくらいなのでしょうか。
火災保険料の相場
火災保険料は、建物の種類や構造によって異なり、建物の価値によっても変動します。また、補償が受けられる保険の範囲や期間によっても変動します。
建物の構造や価値
火災保険料は戸建てか共同住宅の2種類で異なり、マンションなどの共同住宅の場合は、所有する専有部分が補償の対象となるため、戸建てよりも保険料が低い傾向にあります。
また、建物の構造で見ると、木造よりも鉄筋コンクリート造の方が火災が発生した際の火に強いため、鉄筋コンクリート造の方が保険料が低くなります。さらに、火災保険料は建物の価値に比例して高くなります。
保険の範囲や期間
火災保険料は、補償の対象となる災害の範囲によって異なり、補償の対象が広くなるほど高くなります。また、火災保険は1~10年の期間で選択できるのが一般的です。
なお、従来は最長で35年間となっていましたが、2015年10月に火災保険の見直しが行われた結果、最長で10年間になった経緯があります。また、火災保険を契約する期間が長いほど保険料が割引されるため、長期間で契約した方がお得になります。
火災保険料の金額は、建物の構造や保険の範囲などによって変動しますが、一般的な敷地面積の新築の戸建ての場合、10年契約で18~20万円が相場となっています。また、新築マンションでは10年契約で10万円程度が相場となっています。
特約をプラスすることで異なる料金
火災保険料は補償の範囲で変動し、範囲が広いほど高くなります。また、その他に基本の契約内容にプラスされる「特約」を付けることによって保険料が異なります。主な特約としては、以下のようなものがあります。
- 類焼損害特約
- 施設賠償責任特約
- 携行品損害特約
類焼損害特約は、自宅の火災が原因で隣接する住宅を延焼してしまった場合に、隣接する住宅などに対して補償されます。次に施設賠償責任特約は、火災保険の対象となる建物で火災以外の事故によって怪我人や物損事故があった場合に補償されます。
最後の傾向品損害特約は、火災保険の対象となる建物以外の建物に、自分の携行品をぶつけるなどして破損した場合に補償されます。なお、携行品とは、保険会社によって対象が異なりますが、日常的に使用するカメラやスーツケースなどが含まれます。
火災保険控除
2007年までは、火災保険で支払った金額に応じて、損害保険控除制度が設けられていました。また、損害保険控除制度は、より多くの人に火災保険に加入してもらうことを目的に創設されましたが、徐々に加入者が増加したことでその目的が達成されたと言えます。
このような経緯から、2007年をもって損害保険控除制度は廃止されましたが、同年から地震保険控除制度が新設されました。地震保険控除制度の新設は、損害保険控除制度と同様に普及率が低いことに加え、近年の頻発する大規模ば地震に備えるために、加入者を増やすことが目的とされています。
・特約の有無で変動する
・火災保険控除は廃止
家の火災保険料を少しでも抑えるには
火災保険料は、契約内容や特約の有無によって変動し、木造よりも耐火性に強い鉄筋コンクリート造の建物の方が金額が低くなります。それでは、家の火災保険料を少しでも抑える方法はあるのでしょうか。
特約を見直す
火災保険の補償内容は、基本的な補償内容に加えて、特約をプラスすることで金額が高くなります。そのため、現在加入している特約について、本当に必要かどうか一度見直すことで保険料を抑えることができます。
具体的には、戸建ての場合だと、隣接する住宅との距離が離れている場合、自宅が火災を起こしたとしても延焼するリスクは低くなります。そのため、延焼に関する特約を外す検討をすると良いでしょう。
また、マンションの上層階に居住している場合だと、床下浸水などの水災に遭う可能性は極めて低いと言えるでしょう。そのため、水災に関する特約を外す検討をすると良いでしょう。
支払い方法を見直す
火災保険料は、一括払いや分割払いなどの異なる支払い方法を選択できる場合がほとんどです。また、一般的に分割で支払うよりは一括で支払った方が保険料が低くなるため、分割で支払っている場合は、支払い方法を見直すことで保険料を抑えることができます。
なお、支払い方法の選択は保険会社によって異なるため、加入している保険会社に確認するようにしましょう。
保険期間を見直す
現在の火災保険は、1~10年の期間で契約することができます。また、契約期間が長いほど保険料が割引される仕組みとなっているため、契約期間を見直すことによって保険料を抑えることができます。
なお、契約できる最長期間は10年ですが、保険会社によって3年や5年など細かく設定されている場合があるため、加入している保険会社に確認するようにしましょう。
・支払い方法の見直し
・保険期間の見直し
家の火災保険を選ぶポイント
火災保険料は、特約や支払い方法を見直すことで抑えることができます。それでは、実際に家の火災保険を選ぶポイントについて解説していきます。
家の構造をチェックする
火災保険は、建物の構造によって料金が異なり、耐火性の低い木造よりも耐火性の強い鉄筋コンクリート造の方が低くなります。しかし、火災保険がこのような仕組みになっているのは、火災に対する損害を補償する目的であるので仕方ない部分ではあります。
しかし、火災はいつどのようなタイミングで発生するかわからないため、火災保険を選ぶ際には、先ず、建物の構造をチェックすることがポイントとなります。
保険の対象と補償内容を検討する
火災保険を選ぶ際には、保険の対象と補償内容を検討することがポイントです。保険の対象とは、建物と家財を選択できますが、賃貸物件の場合は建物への補償は含まれていないのが一般的です。
次にそれぞれの補償内容ですが、建物の場合は車庫や物置、建物の基礎部分が含まれています。一方の家財の場合は、現金や家電、生活雑貨などが含まれています。なお、保険会社によっては、室内に設置されたエアコンや庭木などが補償の対象になる場合もあります。
このように建物と家財の補償内容を確認し、保険の対象を検討するようにしましょう。
特約を検討する
火災保険は、火災や災害による被害で受けた損害に対して補償される商品であるため、その他の災害については基本的には補償されないのが一般的です。しかし、特約をプラスすることで以下のような事象で発生した損害も補償対象となります。
- 落雷
- 爆発
- 風災
- 雪災
- 水災
- 落下物
- 漏水
- 集団による暴力
- 盗難など
なお、これらの特約については、居住している地域の特性や気候条件によっても異なるため、自分が居住している地域の特性や気候条件を十分に考慮して特約をプラスすると良いでしょう。
契約期間や地震保険を検討する
火災保険の契約期間は、1~10年の間で選択できます。また、契約期間が長いほど保険料の割引が適用されて低くなります。従って、契約期間をできるだけ長くしたほうがお得になります。
次に地震保険ですが、火災保険の補償範囲には地震による水災は含まれていません。そのため、火災保険の特約で地震保険に加入すると、地震による災害や噴火なども補償対象となります。
・保険対象と補償内容
・契約期間や地震保険
家の火災保険を選ぶ際の注意点
火災保険への加入は、以前に比べると加入率も高くなっています。また、特約の有無にもよりますが、地震以外のほとんどの災害に対する補償があることが、加入者の増加に繋がっていると考えられています。
基本補償を確認する
火災保険には、基本補償があり、基本補償に特約をプラスすることで補償範囲が広がります。しかし、保険会社や契約内容によっては、基本補償の内容が薄く、特約をプラスし過ぎて保険料が高額になる場合があるので注意が必要です。
不動産業者に言われるがまま加入しない
火災保険の加入は、家を購入する際に仲介する不動産業者に勧められるケースがあります。しかし、特定の保険会社を勧められて言われるがままに加入すると、保険料が高額だったり、必要のない特約がプラスされていることがあるので注意が必要です。
複数の会社に見積もりを依頼する
火災保険は、料金や契約内容が保険会社によって異なります。そのため、火災保険に加入する場合は、1社だけでなく複数の会社に見積もりを依頼し、料金やプランを比較するようにしましょう。
・内容をきちんと確認する
・複数の会社で見積もり
内容や保険期間を検討して家に合った火災保険を選ぼう
火災保険の加入は、加入することで万が一の時に安心ですが、契約内容や特約をプラスすることで高額になる可能性があります。しかし、補償内容や保険期間をきちんと検討することで、必要のない特約を外すなどして料金を抑えることもできます。
そのため、火災保険に加入する際は、複数の会社に見積もりを依頼し、契約内容や料金を比較して、自分に合った火災保険を選ぶようにしましょう。
火災保険の見直しについて知りたい方は以下の記事を参考にしてください。