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マンションの経営で節税することは可能か?他の物件との違いも比較

  • 更新日:2023年11月28日
マンションの経営で節税することは可能か?他の物件との違いも比較

マンション経営は、果たして節税対策になるのでしょうか。また、アパートを経営する場合と、どのような違いがあるのでしょう。不動産の運用とはいえ、経営することには違いはないため、しっかりとシミュレーションをしてから取り組むことが大切です。今回は、マンション経営で節税は可能か、またアパート経営との違いなど、お金回りについて検討していきます。

マンション経営の際に経費計上できるもの|注意ポイントについて

制度や会計の方法を利用した節税方法

制度を利用した節税は、主に相続に関するものが挙げられます。また、実質利益があるにもかかわらず、会計上では赤字にすることも可能な、減価償却費について詳しく見てみましょう。これらを理解することで、マンション経営で得られるメリットが見えてきます。

小規模宅地等の特例を活用する

小規模宅地等の特例は、相続税を節税する際に活用できます。貸付事業用宅地等に該当する場合は、限度面積を200㎡として、50%を減額してもらえる制度です。ただし、更地を相続して新たにマンションを建てた場合は該当せず、もともと貸付を行っていた土地に限ります。

貸家建付地の評価減を活用する

貸家建付地の評価減も、相続税を節税するために活用するものです。賃貸マンション等は、オーナーの所有物とはいえ、入居者にも借家権というものがあります。通常の賃貸契約では、オーナーの都合で勝手に立ち退きを迫ったりすることは許されていません。
つまり、土地活用の自由度は、自宅用にするよりも下がっています。その利用価値の低下を、減税によって補填するような考え方をしたものが、貸家建付地の評価減です。
貸家建付地の価額の計算式は、以下の通りです。

貸家建付地の価額=
自用地とした場合の価額-自用地とした場合の価額×借地権割合×借家権割合×賃貸割合

これだけ見ても、意味が分かりづらいので詳しく説明します。仮に、自用地として相続する場合の土地の評価額が、5,000万円だったとしましょう。さらに、路線価図や評価倍率表で確認できる借地権割合が40%、借家権割合は30%、賃貸割合は入居率とイコールなので、満室の100%と仮定します。これを先の式に当てはめまてみしょう。

5,000万円-5,000万円×40%×30%×100%=4,400万円

つまり、貸家建付地の評価減を用いなければ、5,000万円の評価額に対して、税金を支払わなければならなかったものが、600万円の減額によって、税金も抑えられるということです。

減価償却率を設定する

減価償却率や額は、自由に設定してよいわけではありません。1億円で建てた建物が、翌年には資産価値が0円になるということは、現実的ではないので、その建物の耐用年数を考えて設定します。国税庁が提示している耐用年数の中で、マンションに該当しそうな構造の一覧を見てみましょう。

構造細目耐用年数償却率
RC造・SRC造住宅用47年0.022
金属造住宅用・骨格の肉厚が(以下同)
4mmを超えるもの
※重量鉄骨造
34年0.030
3mmを超えて4mm下のもの27年0.038
3mm以下のもの19年0.053
建物付属設備電気・給排水・ガス等15年0.067
エレベーター17年0.059
消火・排煙・災害報知器等8年0.25

減価償却の計算方法は、もともとは定額法と定率法の2つが選べましたが、平成28年度4月1日以降に取得した物件に関しては、定額法に一本化されています。冷蔵庫等の設備は、定率法も選択可能となっているものの、住宅用の設備はエレベーターなどを含めて定額法です。よってマンション経営に関しては、定率法について考えなくて良いでしょう。
RC造の場合、47年で資産価値が0になるという計算です。償却率0.022で計算すると、0.022×47=1.034でほぼ一致します。建物の躯体部分の価値が、新築時に5,000万円であれば、償却率0.022をかけた毎年110万円を、経費として計上できるということです。
とはいえ、マンションは建物の躯体部分とエレベータなどの設備を分けて、計算しなければなりません。減価償却として申請できる項目に、抜け漏れがあると損をしてしまうので、しっかりと把握しましょう。

・相続税対策は可能
・制度を確認する
・減価償却を理解

副業としてのマンション経営は節税になるか

マンションに限らず、賃貸経営を副業とした場合の節税が、謳われることがあります。確定申告による控除等を利用して、会社員としての所得を会計上で減らし、所得税や住民税を節税しようというものです。しかし、実際にそううまくいくとは限りません。その理由を考えてみましょう。

控除額を利用して所得全体を減らすという節税方法

確定申告で青色申告を選択すると、本来は所得(利益)となる金額から、65万円を控除してもらえます。これを利用することで、マンション経営の会計上を赤字とすることも可能です。会社員として得た所得との損益通算を行い、所得税や住民税を節税できます。

控除額を含めた損益通算を活用する

まずは、収入と支出の項目を把握しておきましょう。主たるものは下記の表の通りです。

収入必要経費
家賃
管理費
租税公課
・固定資産税
・都市計画税
・登録免許税
・印紙税
・不動産取得税など
損害保険料
ローンの金利分
減価償却費
修繕費
管理委託費
賃貸代行手数料
通信費
交通費
接待交際費
水道光熱費

収入から必要経費を引いたものを、所得として確定申告します。青色申告を選択すれば、さらに65万円が控除され、質の所得はプラスでも、会計上は赤字として申告できます。
副業の場合は、損益通算となります。会社員としての所得が600万円で、マンション経営の黒字が15万円だとすると、控除額65万円を適用して、550万円の所得が課税対象になるというわけです。これによって、所得税や住民税を節税することができます。

マンション購入初年度の節税効果は高い

マンション購入の初年度は、マンションの購入にかかった費用も、経費として計上できるため、大幅な赤字計上が可能でしょう。会社員としての所得も含めた損益通算をしても、マンション経営が大幅に赤字であれば、所得税や住民税の課税額を抑えられます。
さらに、負債は翌年にも繰り越せるため、うまくいけば翌年も節税効果が高いかもしれません。株の売買では、この損益通算ができないため、投資先として賃貸物件を所有する人が多いことも頷けます。

節税か否かのバランスは難しい

賃貸マンション経営の売り文句としては、節税対策などが挙げられますが、現実的に考えると、そのバランスは難しいです。控除額65万円を考慮して、ギリギリ赤字になるような経営を続ければ、修繕が発生した際に、持ち出し金になるリスクが高すぎます。
賃貸マンションの所有は、あくまで経営であって投資ではないことを覚えておきましょう。収支がプラスでない限り、空き室になった瞬間に経営は破たんします。節税対策になるとすれば、相続税を抑えられる点のみです。

マンション経営の際に経費計上できるもの|注意ポイントについて

・損益通算を申告
・控除額を活用
・バランスは難しい

ワンルームだけ所有するという経営方法

マンションの賃貸経営は、1棟を建てる以外の選択肢があります。それは、ワンルームだけ所有して貸し出す「分譲賃貸」と呼ばれる方法です。オーナーの中には、この1棟の中に自宅を構えている人もいれば、賃貸用として所有している人もいるという状況です。
建物自体のオーナーはおらず、各戸のオーナーによって組織された、管理組合が存在します。また分譲賃貸でも、賃貸契約の入居者は、管理組合に所属できないため注意が必要です。オーナーが管理組合に所属して、マンション全体にかかる修繕費の積立金などを支払います。

投資目的でワンルームだけ所有する

たとえば、東京に住んでいる人が大阪のマンションを購入し、賃貸経営を開始する場合は投資といえます。とはいえ、株取引のように売り買いだけでは済まないため、経営という考え方が適していると言えるでしょう。マンションの修繕などを決める際には、管理組合で話し合わなければなりませんし、入居者から苦情が入ればその処理もオーナーの仕事です。
物件を遠方に所有した場合、オーナー自らが出向いて処理することは大変なので、管理会社を入れることになります。その支出も含めた家賃や管理費を、設定することが一般的です。

定期借家という選択肢

良い物件が売りに出され、すぐに買わないと売り切れてしまうものの、自分はまだ引っ越せないという状況もあるでしょう。そこで、まず購入だけ済ませておき、自らが住める日がくるまで貸し出すという選択肢があります。こうすることで、購入の際の住宅ローンを、賃貸による収入で相殺することができます。
このとき、通常の賃貸契約にしてしまうと、自分が引っ越したいときに、入居者が出ていってくれないかもしれません。今はまだ引っ越せなくても、2年後には引っ越せるという場合は、2年契約の定期借家として貸し出しましょう。
定期借家の契約であれば、契約期間が経過すれば、入居者の希望があろうと契約更新を拒絶できることになっています。

 好立地であれば経営しやすい

自分で住む場所であれば、最寄駅までの徒歩距離や、主要駅までのアクセスの良さ、買い物をする場所、学校や病院の有無などを考えるはずです。賃貸経営用に所有する物件も同様に、好立地かどうかは、よく調査をしましょう。好立地であれば入居者が引っ越しても、次の入居者を確保しやすくなります

価値の上昇で売り抜くという手段がとれる

投資目的で、まずは賃貸物件として所有し、資産価値の上昇とともに売却することは、分譲賃貸経営ならではのメリットといえます。1棟で経営すると、売値が億円規模になってしまいますが、数千万円のマンションの1室なら、個人が買い手になりやすいためです。
とはいえ、価値が下がってから売るのでは意味がありません。新たな駅や商業施設の建設が見込まれるエリアの物件は、価値上昇の可能性が高いことから、投資先として人気です。

・ワンルーム経営
・定期借家を検討
・転売も考慮する

マンション経営とアパート経営の違い

保有している土地があれば、賃貸経営を考えることもあるでしょう。新築するなら、マンションとアパートのどちらが良いかが悩みどころです。建物の特性が異なっているため、かかる費用にも大きな違いが出てきます。マンション経営について掘り下げる前に、自分が所有するべき物件を検討するところから始めましょう。

マンションの建設費用

マンション1棟を新築して、賃貸物件にする場合の費用を考えてみます。設備や構造でも金額は大きくなるため、一概に述べることはできませんが、坪単価と延べ床面積の想定で、概算することは可能です。

マンションの建築の坪単価の相場

マンションの場合、重量鉄骨造または、鉄筋コンクリート(RC)造が一般的です。新築する際の坪単価は、重量鉄骨造が60~80万円、RC造が70~100万円といわれています。

建ぺい率を考える

敷地面積と延べ床面積は、イコールではありません。建ぺい率という制限があって、敷地ギリギリまで建物を建てることはできないためです。建ぺい率は土地によって異なりますが、仮に60%とすると、100坪の敷地面積なら、60坪が1階あたりの床面積となります。

建設費を概算する

敷地面積100坪、建ぺい率60%の土地に、5階建てのマンションを建設する場合、60坪×5階=300坪が延床面積です。RC造の坪単価を80万円として計算すると、2億4,000万円が建築費用の見込みとなるでしょう。

アパート経営とマンション経営の違い

アパート経営とマンション経営では、初期コストからして違いが生じます。また、維持管理費や会計上の費用も異なってくるため、両者を比較シミュレーションしてみることが重要です。

構造が異なるためマンションは初期費用が高い

マンションなら、重量鉄骨造の坪単価60~80万円、またはRC造の坪単価70~100万円が相場です。しかし、アパートの場合は木造という手段がとれるので、坪単価は40~60万円です。
敷地面積100坪として、木造3階建てアパートと、RC造3階建てのマンションの相場を比較してみましょう。前者は7,000万円台から1億円程度、後者は1億~1億8,000万円程度です。建築費用の差は最大で倍以上となるため、その後の収入が見込める立地かどうかが、重要な判断基準になります。

マンションは減価償却の償却率が低い

建物は築年数が経てば、老朽化していきます。新築の資産価値が1億円あっても、30年後の資産価値も、1億円といは考えづらいです。老朽化によって下がっていく資産価値を、会計上では損失として扱うことができ、これを減価償却という考え方で計上します。
木造アパートと比較すると、RC造のマンションのほうが頑丈なので、老朽化は木造アパートよりも進行しにくいと考えられます。つまり、耐用年数が長いため資産価値が下がりづらく、毎年の減価償却で計上できる金額も、マンションのほうが低くなります。

修繕費に関してはマンションが有利

木造アパートのほうが老朽化が進行しやすい分、減価償却費は多めに計上できます。一方、実際に老朽化しやすいわけなので、修繕コストもかさみやすいことが難点です。マンションであれば、重量鉄骨造またはRC造になるため、造りは頑丈ですし、白アリ被害なども防げます。修繕費がまったくかからないというわけではありませんが、実費が出て行くリスクは、木造アパートより少ないといえるでしょう。

都心部のマンションの空き室率はアパートより低い

都心部だけで、マンションとアパートを比較した場合、空き室率は、マンションのほうが低いというデータがあります。これは、マンションの建設費が高いため、立地を考慮して選ばれるということが大きな理由ですが、単純にマンションの設備が人気という理由もあります。
オートロック等の防犯設備および防熱、防音はマンションのほうが優れています。これらの点を気にする入居希望者は、アパートと比べて高額な家賃設定でも、マンションに入居してくれる可能性が高いです。

・初期コストが高い
・減価償却率は低い
・空き室率は低い

マンション経営は長期的な計画が重要

マンション経営は、相続税以外の節税対策にはならないと言えます。経営である以上、利益を出さなければ、損失が大きくなるリスクが高いです。
初年度だけは赤字になりやすく、所得税や住民税も抑えられますが、2年目からは黒字経営をする必要があります。そのため、修繕費の積み立てや管理会社への委託費、その後の転売の可否も含め、長期的な計画を立ててから始めましょう。

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