アパートを売却するときには、なにが一番大切なのでしょうか。投資目的のアパートはいつまでも利益が出続けるわけではありません。収益性を見ながら常に経済状況や金融状況を確認し、売却のタイミングを見定めなければなりません。
ここでは、アパートを売却する際の価格の算出方法や高く売却するためのコツを調べてみました。アパートを売却する際の参考にして頂けたらと思います。
1. アパートの売却の仕方
アパートを売却するときの手順です。売却するタイミングを見極めることも大切です。
1.1 一棟アパート売却の流れ
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相場価格を確認する
査定を依頼する
不動産会社を選ぶ
売却活動開始
契約
決済・引渡
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1棟アパートを売却するときの流れは上記のようになります。一般の居住用の不動産を売却するときと流れはほぼ同じです。ただし、アパートの相場価格は収益性も考慮に入れながら計算されます。一般住宅のように簡単に相場価格を計算することができません。
1.2 1棟アパート売却の際に相場価格に影響するもの
アパートの売却価格に影響する一番の要因は収益性です。また、間取りや部屋数、築年数、立地なども影響します。そして、世界情勢や金融状況、周辺での都市開発などの影響も受けます。1棟アパートの購入は、投資家が投資目的で購入するため、特に収益性を重視します。
将来、どれくらいの収益がだせるかも購入の際の重要なポイントとなるため、アパートの入居率が売却価格に大きく影響してきます。また、アパートを購入の際には、売却するときの状態や価格など将来を見据えて購入を考えます。
そのため、アパートの売却価格には築年数が大きく影響します。また、新耐震基準を満たしているかどうかというところも投資家が購入を考えるポイントになります。そのため、アパート売却の際には、経済状況や築年数を考えてタイミングを見極める必要があります。
・入居率が影響する
・築年数も影響する
2. アパート売却前には相場価格を確認
アパートの売却をする前には、そのアパートの相場価格を知る必要があります。ネットを利用して調べることもできますし、収益還元法などを利用して計算することもできます。
2.1 アパートの相場価格を調べる
1棟アパートの相場価格を知るには、いくつかの方法があります。サイトで似た物件を探して比較することができます。また、一括査定サイトで依頼することもできます。
「土地総合情報システム」で調べる
「土地総合情報システム」は、国土交通省が運営する不動産に関する情報を提供しているサービスです。安定的な不動産投資の促進や、不動産市場の活性化、安心・安全な不動産取引を行えるように情報が提供されているサイトです。
不動産の所在地や地図から検索することができ、取引価格や面積、形状などを知ることができます。絞り込みが難しいのが難点ですが、収益用のアパートなら、中古マンションで検索して構造を選べば絞り込むことができます。
「レインズ・マーケット・インフォメーション」で調べる
「レインズ・マーケット・インフォメーション」は不動産流通機構が運営する不動産の成約情報を掲載しているサイトです。不動産会社が持つ不動産情報を登録することで、不動産取引の透明化を図っているものです。
所在地から調べることができ、直近1年の不動産取引の面積や間取り、成約価格などを知ることができます。「レインズ・マーケット・インフォメーションでは」マンションや戸建ての情報を得ることができますが、土地に関する情報はありません。
一括査定のサイトで調べる
不動産の一括査定を利用して、アパートの相場価格を知ることができます。一括査定のサイトでは、一度に複数の不動産会社に査定を依頼することができます。そのため、査定結果を比較して検討することができます。
収益用の物件の売却の際には、その実績があるかどうかが重要になります。一括査定なら多くの不動産会社が提携されているので、その中から収益用物件の扱いの多い不動産会社を選び、査定価格をだしてもらうことができます。
2.2アパートの価格の算出の仕方
アパートの価格は収益や築年数などを考慮しながら算出することができます。収益還元法は主に収益用不動産の価格の査定の際に使われる計算方法です。
収益還元法で計算してみる
収益用のアパートを売却するときには、収益還元法で売価価格の目安を知ることができます。収益還元法とは、収益用のアパートやマンション等の投資用不動産の査定価格を出すときに用いられる方法です。収益力に基づいて不動産価格を算出することができます。
不動産価格=1年間の純利益÷還元利回り |
このときの、還元利回りの設定方法は、周辺地域の類似物件を参考にして設定するのですが、正確な還元利回りを調べることは困難な場合があります。そのときには、想定利回りを使用して算出することができます。
純利益とは、1年間の総家賃収入から、固定資産税や管理費用、修繕費用、火災保険料などのアパート経営にかかった費用を引いたものです。
例えば、一年間の家賃収入が200万円、一年間の軽費が20万円、還元利回り5%の場合の式は以下のようになります。
200万円-20万円=180万円(純利益) 180万円÷5×100=3,600万円 |
取引事例比較法
不動産の相場価格を調べるときに使う方法としての1つが取引事例比較法です。この方法は、居住用のアパートやマンションの価格を査定するときの用いられることが多いです。周辺の類似物件の成約価格を調べて坪単価を計算します。
その坪単価に手持ちの不動産の面積を乗じて算出します。この金額に不動産の間取りや立地条件、方角などの条件を加味して不動産価格を算出する方法です。
原価法で計算してみる
原価法とは、一度その建物を取り壊し、再び立てなおしたときにかかる費用(再調達費用)を計算し、建物の老朽化している分だけ引き(減価修正)不動産価格を算出する方法です。
この方法は戸建ての建物部分の価格を算出するときによく用いられる方法です。収益用のアパートの建物部分の価格をだすときにも用いられることがあります。原価法で算出される価格を積算価格と言います。
再調達価格というのは、構造別に設定されており、その設定金額は金融機関によって異なります。まず、原価法で計算するには、再調達価格を算出することが必要になります。木造建築物で再調達価格が15万円/平方メートルとし、延床面積が100平方メートルの物件とします。
再調達価格 15万円×100平方メートル=1,500万円 |
ここから原価法での計算します。
積算価格=再調達価格×残存耐用年数÷法定耐用年数 |
築10年の木造アパートとして、積算価格を計算します。
1,500万円×10年÷22年=681万円 |
このようにして、積算価格を算出することができます。しかし、この方法は構造別に計算しているので、その中の設備などの状況は計算に含まれていません。また、資材の価格なども考慮されていません。そのため、実際の価格とは大きく異なることがあります。
・収益還元法で計算
・積算価格も考慮してみる
3. アパートの売却前の注意点
アパートを売却する前には、そのアパートの状態を確認しましょう。また、売り時を見極めるためにも、市場調査は大切です。
3.1 アパートの状態を把握する
アパートを売却する前に、アパートの状態を把握する必要があります。1棟アパートの売却先は投資家になります。投資家はその不動産で今後、どれだけの期間、どれだけの収益が見込めるかを考えて物件を購入します。そのため、アパートなら入居率を上げなければなりません。満室であるのがベストの状態です。
また、家賃滞納者がいないかも調べましょう。家賃滞納は収入に影響します。トラブルのある物件は敬遠されがちです。売却前に改善できるものは、改善することでより売却価格を上げることができます。
3.2 市場動向を確認する
国土交通省の「不動産取引価格指数」(商業用)をみても、指数は年々上昇傾向にあります。政府のゼロ金利政策以降、金利も超低金利を維持し続けているため、融資を受けやすくなっています。そのため、不動産市場の動きも活発な動きを見せています。不動産取引が活発に行われているかどうかは、売却するときの目安にもなります。
アパートの経営は、常にニーズを把握して、経済状況など市場の動きを観察しておく必要があります。また、アパートの売却には売り時を見極めることも大切です。売り時を見極めるためには、需要や市場動向の調査が必要となります。収益用のアパートは収益性が下がってしまうと、売却価格も下がりますし、売却しにくくなります。そのため、売却の時期は、収益性が落ちるまえで、不動産取引が活発に行われている時期がよいでしょう。
・ニーズを把握する
・売り時を見極める
4. アパート売却の際の費用や必要書類
アパート売却の際には、譲渡所得に対して税金がかかります。そのほかにも登録免許税や印紙税、ローンの一括繰上返済の手数料などがかかります。手続きに必要な書類は事前に準備しておきましょう。
4.1 アパート売却の際の費用
アパートの売却をするときに、不動産会社に売却を依頼すると仲介手数料がかかります。この仲介手数料は売却価格の3%プラス6万円に消費税がかかります。
また、アパートの購入の際にローンを組んでいると、売却のときに一括繰上返済をすることになるので、一括繰上返済の手数料がかかります。これは金融機関や金融機関との契約によって金額が変わるので、事前に確認が必要です。
ローン完済時の抵当権抹消登記費用は、不動産1件につき、1,000円の登録免許税がかかります。そのほか、譲渡価格に対して、譲渡所得税、住民税、復興特別所得税などがかかります。譲渡所得税は、アパートの所有期間によって、税率が変わるので所有期間も確認しておきましょう。なお、売買契約書には、売買価格に合わせて、収入印紙を貼らなければなりません。売却の際にはこれらの費用を用意しておく必要があります。
4.2 アパート売却の際の必要書類
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アパートの売却のときに必要な書類などです。レントロールや固定資産税の納税通知書は利回りを計算するときに必要になります。また、検査済み証は、居住者が安全にその建物に居住できる証明であるとともに、売却するときにあると売却しやすくなるため、用意するとよいでしょう。
・そのた諸費用もある
・必要書類を揃えておく
5. アパートを高値で売却するためのコツ
収益用のアパートを売却するときには、不動産会社選びが大切です。また、アパートを収益性を保ち、投資物件としての価値を上げておきましょう。
5.1 適切な不動産会社を選ぶ
収益用のアパートを売却するときの不動産会社選びはとても重要です。一般の住宅の売買と違い、売却先のターゲットが変わります。そのため、収益用のアパートの売却実績があるかないかで、売買取引がスムーズに進めることができるのかや取引価格にも大きく影響します。
不動産会社には得意分野があって、収益用のアパートを売却する場合には、収益用物件の取り扱いを得意とする不動産会社を選びましょう。それらの不動産会社は、懇意にしている投資家と常に連絡を取っているため、売却先を見つけやすいというメリットがあります。
5.2 アパートの投資物件としての価値を上げる
1棟アパートの購入は、居住目的ではなく投資目的で購入されることが多いため、一般的な居住目的の物件の売買のときとは、買主が購入するときのポイントが変わってきます。まず、買主は投資家であることがほとんどです。そのアパートを賃貸として利用することで利益を出すことを目的としています。
そのため、購入するアパートを選ぶときには、そのアパートでどれくらいの利益がでるのかということを一番に考えます。したがって、入居率が高い物件か、家賃を高くとれる要素があるのか、利益が下がる家賃滞納者がいないかなどがポイントになります。もちろん、築年数や建物の使用状況、部屋数、間取り、利便性など影響します。
5.3 1,000万円の特別控除
平成21年から平成22年に取得した土地なら、1,000万円の特別控除が受けられる可能性があります。適用条件は以下のようになります。
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上記のことを満たすことで、譲渡所得から1,000万円の控除を行うことができ、税金の支払いを抑えることができます。この特別控除の適用を受けるには、確定申告をしなければなりません。
・アパートの価値を保つ
・特別控除を確認する
6. アパートの売却は時期を適切に見極めて売却しよう
投資用のアパートを売却するときには、利益がでなければなりません。そのためにはより高値で売却することが必要となります。高値での売却には、アパートの状態や不動産会社選びが大きく影響します。そして、売るタイミングを逃さないことも大切です。
アパートを売却するときには、アパートの管理状態をよい状態で保ち、信頼のおける不動産会社に仲介を依頼することでより高値で売却することができるでしょう。