安定収入が期待できるアパート経営。とくに土地を持っている人は、その期待値が膨らむことでしょう。本業または副業として、今後アパート経営を想定しているときに、気を付けなければならないことが税金に関してです。
アパートの建設から経営まで都度税金がかかるため、今後シミュレーションするためにも、把握しておきましょう。
アパート経営者が払う税金は5種類
アパート経営者が支払う税金には、購入にかかる2種類と、経営にかかる3種類の合計5種類があります。それぞれ算定方法や課税対象が異なるため、個別で解説します。
アパート購入にかかる2種類の税金
アパートを建てる土地や、建物を取得したときにかかる税金は2種類です。不動産取得税と登録免許税について見てみましょう。
不動産取得税
「不動産取得税」は、名前の通り不動産を取得したときにだけかかる税金です。固定資産税評価額対して、税率がかかります。固定資産税評価額は、自治体が公表する不動産の価格のことで、取得した後に送られてくる納税通知書で確認できます。実際に購入する金額を「実勢価格」といいますが、それよりは低い金額が記載されることが一般的です。
登録免許税
不動産取得税と同じく、固定資産評価額を基準として、「登録免許税」が設けられています。売買、相続、贈与などの取得の種類と、土地や建物といった種別で税率が違うことが特徴です。
アパート経営中にかかる3種類の税金
アパート経営には、事業をやっている限り、職種を問わずにかかる「所得税」と「住民税」、そして不動産にかかわる「固定資産税」の3種類があります。
所得税
所得税はアパート経営にかかわらず、収入があれば全員にかかる税金です。会社員にもかかっていますし、もちろん個人事業主にもかかっています。
会社員でアパート経営もしている人は、会社から出る給料と不動産収入を、確定申告して割り出されます。所得というのは利益分なので、収入と経費の申告を行いましょう。
住民税
住民税も所得税と同じように、所得から割り出される税金です。各自治体の教育や福祉、ゴミ処理などの行政サービスに使われています。税率は自治体によって異なるため、自分が住んでいる地域の自治体で確認しましょう。
固定資産税
固定資産税は、毎年1月1日までに不動産などの資産を持っている人が、固定資産の価格に対して課税されます。固定資産の価格は、3年に一度評価替えが行われるため、今の自分の資産がいくらなのかを確認しておきましょう。
・購入にかかる税金は2種
・経営中にかかる税金は3種
・税金を考慮しよう
税金計算に使われるアパート経営の収入と経費
所得税や住民税は、土地や建物の評価額ではなく、経営者の所得によって変動します。家賃収入を、すべて所得として計上してしまうと税金がとても高くなるため、経費とともに確定申告しましょう。そのために、収入と経費の種類について解説します。
まずは収入の種類を理解しよう
収入の種類は大きく分けて、家賃、管理費、更新料、敷金、礼金があります。会社員の副業として、アパート経営をする場合は、確定申告で会社からもらっている給料も記載しますが、今回の解説からは除外します。
家賃
収入で最もイメージしやすいのが家賃です。月々いくらと決めて、入居者が支払ってくれる金額が入ってきます。全10室あり、家賃が50,000円であれば、満室で月々50万円の収入となります。
管理費
管理費は家賃とは別項目ですが、家賃とともに支払われる金額です。物件情報などで「家賃50,000円+管理費2,000円」などの記載を見たことがあるのではないでしょうか。これは、管理会社への委託費や修繕費の積み立てとして使うことが目的のお金ですが、一度収入として計上します。
更新料
よくある契約では、2年ごとの更新制です。更新の時期に、入居者が更新を望む際に支払います。家賃1カ月分〜2カ月分を、更新料として設定することが多いです。
入居者としては、同時に災害保険の更新料も払うことが多いです。しかし、それは保険会社に入るお金です。アパートの運営を、管理会社に委託している場合は、オーナーが一度受け取ることなく保険会社に支払われるため、収入として計上しなくて済みます。
敷金・礼金
敷金と礼金は、入居者が契約時に支払う金額です。敷金は、出ていくときのリフォーム代にあてられ、残りを入居者に返すことが一般的です。しかし、一度は徴収してその後に使うかもしれないお金なので、収入として計上しておきます。礼金は名前の通り、「入居のお礼のお金」なので、返却する必要がなく全額が収入です。
アパート経営の売上から差し引ける経費
アパート経営に関する経費は、多岐にわたります。アパート経営に必要であれば、ボールペン1本でも経費として計上できます。物品購入等のわかりやすい経費もあれば、不動産ならではの経費もあります。細かく把握しておきましょう。
修繕費
築50年のアパートなどは、たびたび修繕を行いながら、今日まで運営してきた物件です。そのため、ベランダの修理や退去時のリフォーム、排水などの整備などが必要になります。これらは、入居者の瑕疵による修繕の必要性でない限り、オーナーが支払うべきものです。
経費として計上できますが、修繕が必要になったときに支払える現金がないといけませんから、家賃収入から積み立てておく必要があります。ただし積立金は、実質手をつけられないお金だとしても、会計上で経費にはならないことに気を付けましょう。
減価償却費
減価償却費は、物の価値が下がったことを、経費として計上できるという特殊なものです。実際の支出はありませんが、簿記会計上は支払っているものとして考えられます。簿記会計上の「資産」という考え方に基づくものです。
たとえば、会社で使うパソコンを10万円で購入したとします。一般的な感覚では、10万円を支出したと考えるでしょう。しかし会計の上では、支払った金額と同等の資産を得た、と考えることになっています。しかし、このパソコンの価値がずっと10万円をキープできるわけではありません。
年々劣化していくことを考えると、価値が下がっていくため、資産もそれに応じて減少したとみなします。これが減価償却費です。購入したパソコンの耐用年数が10年だった場合、毎年10,000円を一定額として減価償却費に計上します。
アパート経営の場合も、新築時のアパートと築年数30年のアパートでは、資産価値が異なります。この差額を見越して、最初に一定額の割合を決め、毎年支出として計上することができます。
参考:アパート・マンション経営の減価償却費の計算方法を分かりやすく解説
損害保険料
入居者が個別で契約する災害保険とは別に、万が一地震や火災などでアパートに損害があった場合の補填を見込んで、オーナーが加入する保険料です。地域によっては、風災や水災の保険へ加入しておいたほうが良いこともあります。保険料は、保険会社やどのオプションをつけるかで、大きく異なるので相談をしてみましょう。
外部の管理会社への委託費や広告費
アパートを自分だけで経営することは、とても難しいです。隣人の騒音に対する苦情や、設備の不具合に関する相談の電話が、たびたびかかってきます。これに四六時中対応しなければならないことは、個人では無理があるため、管理会社へ委託することが一般的です。
また、空き室が出た際の広告や、その後の契約を個人で行うこともかなり難しいでしょう。これも管理会社を通して、不動産会社に依頼することが基本です。委託や広告料にかかる費用は、もちろん経費になります。
ローンの金利
アパートの建設などを、現金で一括支払いできるケースはそう多くありません。土地を保有していても、上物となる建物は、ローンで支払うことが多いです。ローンの場合は金利が上乗せされるため、その分は費用として計上します。ただし元本については、受け取っている金額との相殺になるため、費用としては勘定されません。
諸経費
諸経費には、水道光熱費、業者との打ち合わせにかかった喫茶店代などの接待交際費、文房具などの備品代、現地へ行くときの交通費などがあげられます。アパート経営にかかったものであれば、計上できます。領収書を、都度もらっておきましょう。
委託費は不動産会社によって違う
管理委託や広告掲載は、不動産会社によって委託料が異なります。安ければ悪い、高ければよいということではなく、サービス内容と比較して検討することが大切です。そのうえで、委託費と釣り合いがとれた優良企業に依頼しましょう。
・収入の内容を把握
・収入から経費を引く
・外部委託費が肝心
種類別アパート経営の税金の計算方法
税金はその種類によって、税率や課税対象が異なっています。アパート経営に必ず関わってくる、税金の計算方法について紹介します。しかし、下記で紹介する税金以外にも、地域によっては特別な税金があったり、逆に免税できることもあるため、事前確認は忘れないようにしましょう。
不動産取得税
不動産を購入してから半年〜1年後を目処に、「不動産取得税」の納付書が届きます。これは地方税です。相続した場合は例外ですが、売買以外での新築や増改築、贈与にはかかります。
税額は、固定資産税評価額に4%の標準税率をかけることで算出できます。ただし、土地や住宅であれば、令和6年3月31日までなら3%です。アパートの場合は、自分が住まなくても住宅の税率で計算して構いません。
例えば固定資産税評価額が5,000万円、令和6年3月31日までに取得した場合、不動産取得税は下記のようになります。
固定資産税評価額5,000万円×3%=150万円 |
宅地の課税標準は2分の1
宅地の課税標準額が固定資産税の2分の1になるという特例があります。また、増改築を含む新築アパートの場合、課税床面積1戸あたり40m2以上240m2以下であれば、建物の固定資産税評価額から1,200万円を差し引けるという特例もあります。
この制度を利用する場合、建物と土地で分けて計算をします。土地も宅地であれば、固定資産税は2分の1になり、そこに税率3%をかけた金額から、さらに控除額を差し引きます。控除額は45,000円か、下記の計算方法で算出した金額の多い方を採用します。
(土地1m2当たりの固定資産税評価額×1/2)×(課税床面積×2(200m2限度))×3% |
これらをすべて活用できる条件が揃っていれば、単純に固定資産評価額に3%をかけた不動産取得税よりも、大幅に軽減することができます。
登録免許税
登録免許税は、税率の種類が細かく分かれています。まずは表で見てみましょう。
不動産の種類 | 取得の種類 | 税率 |
土地 | 売買 | 1,000分の20 |
相続 | 1,000分の4 | |
贈与等 | 1,000分の20 | |
建物 | 所有権の保存 | 1,000分の4 |
売買 | 1,000分の20 | |
相続 | 1,000分の4 | |
贈与等 | 1,000分の20 |
上記の表に記載の税率を、固定資産税評価額にかければ税額がわかります。ただし、土地の売買に関しては、令和5年3月31日までに登記を受ける場合、1,000分の20ではなく1,000分の15で良いとする軽減税率が設定されています。
建物に関する軽減税率は、「自己の居住」に用いた場合のみですから、アパート経営に関しては該当しません。仮に土地の固定資産税評価額が3,000万円、建物の固定資産税評価額を2,000万円とした場合、売買による取得で、令和5年3月31日までに登記を受ければ下記の計算式になります。
45万円+40万円=85万円 |
所得税
所得税は確定申告で決定します。累進税率となっており、収入から経費を差し引いた金額、つまり利益に対してかかります。この利益のことを所得とよび、所得金額に応じて税率が5%〜最大45%まで分かれています。計算方法が特殊なので、まずは税率を表で見てみましょう。
課税所得金額 | 税率 | 控除額 |
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円超え〜330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円超え〜695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円超え〜900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円超え〜1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円超え〜4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
計算方法が特殊だと記載しましたが、単純に課税所得金額に対して税率を掛け算したときの計算式が、ややこしいからです。まず控除額を考えずに計算してみましょう。たとえば500万円の課税所得金額だった場合の計算式は、下記のようになります。
1+2+3=所得税額572,500円 |
これでは計算しづらいですが、そこで登場するのが控除額です。課税所得金額500万円だった場合に、税率20%を500万円と掛け算して、該当する控除額を当てはめてみます。
500万円×20%-427,500円=572,500円 |
課税所得金額の段階に合わせて計算したものと、同じ金額になりました。このように、控除額を用いれば簡単に計算できます。
住民税
住民税に関しては、自治体によって税率が異なるため、計算式で求めることはできません。自分が住んでいる地域の自治体で確認する必要があります。
固定資産税
固定資産税の税率は1.4%となっており、課税標準額に掛け算をして求められます。土地や建物などの資産に対してかかるため、仮に5,000万円の課税標準額を持つ資産であれば、税額は次のようになります。
課税標準額5,000万円×1.4%=70万円 |
・計算方法は異なる
・各種税率を把握する
・シミュレーションをする
アパート経営をするべき?土地を売るほうが良いかも
土地を所有している場合、何も建物がなければ、固定資産税の税率が上がってしまうことを、懸念する人もいるでしょう。そこでアパートを建てて経営してみたいと思ったときに、一度立ち止まって考えてみる必要があります。その土地の状況を、冷静に見直しながら読み進めてみましょう。
経費が家賃収入を上回るケースがある
建物は修繕や管理、ローンの返済で一定のコストがかかり続けます。満室であれば賄うことができても、空き室が目立つようになると、経費が収入を上回る恐れがあります。また家賃設定も、競合に勝てる金額にしなければ入居者が見つからない一方、下げ過ぎても、修繕費の積み立てができないという状況が考えられます。
アパート経営は、物件への需要と家賃のバランスを上手に設定しないと、なかなかうまくいかないというのが正直なところです。
固定資産税はかかり続ける
入居者の有無と固定資産税評価額には、関連性がありません。土地と建物を合わせて、5,000万円の資産価値を持つ同地域の物件であれば、全満室の物件であろうと入居者0の物件であろうと、同じ固定資産税がかかります。
建物は実際の資産価値より高い評価額になる恐れあり
建物は、経年劣化で資産価値が下がっていきます。しかし、税金を決定する際に用いられる評価額は、役所が建物1軒ずつ調査して回れるわけではありません。「経年減点補正率」というものを用いて計算され、新築時から何年経っているかで一律評価します。
アパートの構造や設備などによって、補正率が異なりますが、補正率の高低によらず、いずれも新築時の2割の価格までしか下がらないということがポイントです。つまり、アパートを新築したときの評価額が、2,000万円であれば、100年経過しようと2割で計算され、400万円の評価額になってしまいます。その際には、実際に建物が400万円で売れるかどうかは、考慮されません。
そして、優良な物件ほど経年劣化は少ないのですが、その分資産価値を下げてくれる補正率も、高いままキープされる年数が長いです。そのため、評価額がなかなか下がらずに、税額も高いままです。この状態で困るのが事故物件です。実勢価格は事故物件になると下がってしまいますが、評価額はそれによって下がりません。入居者も入りづらく、赤字転覆する恐れがあります。
土地を売るほうが良いという判断もできる
収入のシミュレーションを綿密に行った結果、収入、経費、税金のバランスに不安が出ることもあるでしょう。発展した地域の駅前の土地であれば、入居者を確実に見込めますが、不便な土地ではリスクが高いです。
シミュレーションをして不安があるなら、アパートを建てて固定資産税を増やしてしまうよりは、土地として素早く売却することで得をする可能性が高いです。土地を売るときは、複数社から見積もりをとりましょう。複数社に一括依頼ができるすまいステップがおすすめです。
・収支計算は必須
・未来の計画をする
・土地の売却を検討
土地を売却するなら一括見積がおすすめ
アパート経営と土地の売却を天秤にかけ、得をする選択をしましょう。土地は建物が建っていない状態だと、固定資産税が高くなるため、次の手段へ素早く出ることが大切です。土地の売却を選択したら、迅速に業者と話ができるように、複数社一括見積もりを行いましょう。
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