農地を売却する方法は、「農地のまま売却する方法」と「農地転用して売却する方法」の2つです。
この記事では、農地売却の方法や流れをやさしく解説します。
農地の売却についてお悩みのある方は、是非ご参考にしてください。
農地の売却が難しい理由
農地は、宅地等の土地に比べると売却が難しいです。
農地を購入できるのが、地域の農業委員会によって許可を受けた個人の農家、あるいは農地所有適格法人に限定されているのが主な理由です。
更に、近年では農家の高齢化や後継ぎ不足によって、休耕地(遊休農地)や耕作放棄地が増加しています。
売却先が限られていて買主が見つかりづらいだけでなく、未活用の状態で眠っている農地も多く、高く売却しづらいという背景から積極的に売買を扱ってくれる不動産会社も限られているため、農地の売却は難しいと言わざるを得ません。
そもそも、農地を含めて土地を売ることの難易度が高いのです。
2023年12月28日から2024年1月10日にかけて、土地売却経験者81名を対象にすまいステップ行ったアンケートの結果では、土地の売却期間は平均8ヶ月でした。
農地売却を考えはじめたら、はやめに不動産会社に相談することをおすすめします。
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農地を売却する2つの方法
農地を売却するには、大まかに分けて2つの方法があります。
1つは、農地(田・畑)をそのまま農地として売却する方法です。
2つ目は、農地を宅地など他の地目に変更してから売却する方法です。農地を農地以外の用地に変更することを「農地転用」といいます。
どちらの売却方法も、農業委員会等への届出や許可申請が必要です。
この章では、それぞれの売却方法についてご紹介します。
農地のまま売却する方法
農地のまま売却する場合、買主は農家か農地所有適格法人の中から見つけなければなりません。
農地の買主を見つけるには、以下のような方法があります。
農地のまま土地を売る方法
- 近隣の農家に購入してもらう
- 農業委員会に相談する
- 最寄りの農協に相談する
- 農地売買を取り扱っている不動産会社に仲介を依頼する
農地の種類によっては、農業委員会に買主のあっせんをしてもらえます。
あっせんの特例事業に基づいて農地を売却すると、売却価格を自由に決めらることはできませんが、譲渡所得税の軽減措置(特別控除)を受けられます。
一般的な不動産会社は農地の売買を取り扱っていないことが多いです。仲介を不動産会社に依頼したい場合は、地元の農地の売買実績がある会社に依頼しましょう。
また、農地を売買するには、市町村の農業委員会に許可を申請する必要があります。
農業委員会への許可申請には、買主側の営農計画書等も必要になるため、買主が決まった後に申請手続きをします。
無事に許可を得られたら、買主に農地を譲渡できます。
相続をした農地だったので購入価格が全く分からなく、税金の手続きをする為の書類を準備するのが余計に手間がかかり大変でした。
引用:すまいステップの独自調査「農地を売却したことがある方へのアンケート」より
郊外の土地で住宅地にも出来ず、農地として売却しようとしても農業をする人がいないため買い手を探すのに苦労した。
引用:すまいステップの独自調査「農地を売却したことがある方へのアンケート」より
農地転用して売却する方法
農地転用して売却する場合は、農家以外の買主にも売却できます。
しかしながら、買主を仲介してもらうだけでなく、その後に農地転用の申請手続きまでしなければならないため、土地売買の仲介を不動産会社に依頼するなら、農地転用した土地の取扱いに慣れた会社に依頼するのがオススメです。
農地転用した土地を売る方法
- 不動産会社に仲介を依頼する
- 知り合いと個人売買する
- 業者に買取してもらう
買主が決まったら、農業委員会に農地転用の許可を申請します。
農地転用の許可は、農地売却の許可よりも審査基準が厳しくなっています。
「立地基準」と「一般基準」という2つの許可基準を元に、農地転用の可否が審査されます。
近所の不動産会社に依頼したら、農地売却は難しいと言われて困りました。そこで、ネット農地の売却実績がある不動産会社を探して何とか見つけることができました。
引用:すまいステップの独自調査「農地を売却したことがある方へのアンケート」より
農地として売却するのは非常に困難だとわかり、最終的に宅地にして売却することにしましたが奈良県からの許可を得るのに半年近くもかかってしまい、そこからの売却手続き開始という手順になって、かなり時間や出費が発生して面倒でした。
引用:すまいステップの独自調査「農地を売却したことがある方へのアンケート」より
農地転用できるのは「第2種農地」と「第3種農地」
市街化区域外にある農地は、立地と周辺の営農状況および市街化の状況に応じて5つの種類に区分されます。この土地の区分ごとに農地転用の許可の基準が決められています。これを「立地基準」と言います。
区分 | 概要 | 許可の可否 |
---|---|---|
農用地区域内農地 | 農業振興地域内の農用地区域(青地)に指定されている農地 | 原則不可 |
第1種農地 | 良好な営農条件を備えている農地 | 原則不可 (条件次第で許可されることも) |
甲種農地 | 市街化調整区域内の特に良好な営農条件を備えている農地 | 原則不可 (条件次第で許可されることも) |
第2種農地 | 第3種農地に近接する区域または将来的に市街化が見込まれる区域の農地 | 条件付きで可 |
第3種農地 | 市街化が進んでいる区域にある農地 | 原則可 |
農地転用できる基準に該当するのは「第2種農地」と「第3種農地」です。
「農用地区域内農地」「甲種農地」「第1種農地」に区分される土地の農地転用は原則不許可です。
(画像引用:農林水産省「農地転用許可制度について」)
ご自身の農地が立地基準を満たしているかどうかは、市町村に設置されている農業委員会の担当者に問い合わせることで確認できます。
許可が下りなければ農地転用しての売買はできないため、売却を始める前に予め農地の登記情報を用意して、立地基準を照会しましょう。
農地転用できるのは「利用計画が十分に定まっている」場合
一般基準とは、農地転用の申請目的が、その土地を利用して実現できるかどうかを審査する基準です。
つまり、土地の利用計画が十分に定まっていなければ、農地転用の許可申請はできません。
農地転用の目的は、以下の基準で審査されます。
- 目的が必ず行われるか
- 周辺農地の営農に支障を生じさせないか
- 一時転用の場合、必ず農地に復元されるか
宅地として売却する場合には、買主側に資金を有することを証明する書類や、土地利用計画書、排水計画図、建築する戸建ての図面等を用意してもらう必要があります。
農地を売却する流れ
この章では、農地を農地のまま売却する流れと、農地転用して売却する流れについて、それぞれ解説します。
農地のまま売却する流れ
所有している農地を、農地のまま売却する流れは以下の通りです。
農地のまま売却する流れ
- 買主を探す
- 売買契約を結ぶ
- 農業委員会に農地売買の許可を申請する
- 農業委員会から許可通知を受け取る
- 農地を買主に引き渡す
農地を売却するには農業委員会の許可が必要となりますが、売買の許可の申請はまず買主を見つけてから行います。
農業委員会の許可が下りなかった場合には、売買契約が解除となります。許可申請の際には不備のないように進めましょう。
売買契約を締結したら、書類を準備して農業委員会に許可(農地法第3条許可)を申請します。
農地売買の許可は、各市町村の農業委員会の定例総会で審議されます。会議は月1回開かれていて、毎月申請の期限があるため注意しましょう。
売買の状況や申請する自治体によって必要書類は増減するため、詳しくは各自治体のHPをご確認ください。
なお、農地売買の取引金額が1億円を超えるような場合には、許可が下りる前に所有権移転仮登記をしておきます。
農地転用して売却する流れ
農地を農地転用してから売却する流れは以下の通りです。
農地転用して売却する流れ
- 農地の立地条件を確認する
- 買主を探す
- 売買契約を結ぶ
- 農業委員会に農地転用の許可を申請する
- 都道府県知事等から許可通知を受け取る
- 農地を買主に引き渡す
農地転用してから売却する時も、まずは買主を見つけてから許可申請の手続きをします。
まずは、所有している農地が農地転用可能か、立地条件を調べましょう。
農業委員会の窓口や市町村の担当課(農林課や農政課など)に電話で予約を取り、登記事項証明書や公図、航空写真等を持参して確認してもらいます。
買主が見つかったら、「農業委員会の許可が下りなかった場合は契約が解除となる」約束のもと、売買契約を交わします。
売買契約を締結したら、書類を準備して農業委員会に許可(農地法第5条許可)を申請します。
農地転用の場合、許可権者は都道府県知事となります。農業委員会の定例総会で審議された後、都道府県知事に意見が送付され、知事が許可を判断します。
なお、農地売買の取引金額が巨額である場合には、許可が下りる前に所有権移転仮登記をしておきます。
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農地売却にかかる税金と費用
農地の売却には、以下のような税金や費用がかかります。
税金の種類 | 費用 |
---|---|
譲渡所得税 | 譲渡所得 × 約20% (所有期間5年超の場合) 譲渡所得 × 約40% (所有期間5年未満の場合) |
印紙税 | 1000円∼6万円 |
行政書士費用 | 10万円~15万円 |
仲介手数料 | 売却価格×3%+6万円+消費税 |
譲渡所得税は、土地を取得した時と売却した時の差額にかかる税金です。
譲渡所得=売却価格-(譲渡費用+売却価格×5%)-特別控除額
合計税率 | |
---|---|
所有期間5年超 | 20.315% |
所有期間5年未満 | 39.63% |
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「売却価格」「購入価格」「物件の所有期間」「現在住宅として住んでいるか」をそれぞれ入力し、「費用を算出する」ボタンを押すと、売却時にかかる費用が自動で算出されます。
※購入価格が分からない場合は空欄で大丈夫です。
費用の内訳も表示されますので、まずはどんな費用がいくらかかるのかを把握しておきましょう。
土地売却時の税金について、詳しくは以下の記事をご参照ください。
使わない農地は早めに売却を検討しよう
農地の売却は一般的な土地の売却とは異なり、農家にしか売却できないという大きな制限があります。宅地に転用して売却する場合にも、厳しい許可基準を満たさなければなりません。
しかし、使わない農地を放置したまま所有することには大きなデメリットがあるため、早めに売却を検討しましょう。
農地転用して売却する場合は、買主を見つけて契約を結ぶ以外にも、農地転用のために様々な手続きが必要になります。
複雑な手続きをスムーズに進めるためには、農地の売買を得意とする不動産会社をパートナーに選びましょう。
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