水は、私たち人間にとって欠かせないライフラインの一つです。近年、日本各地を襲う地震や豪雨などの災害時に、断水が長期間続くなどのトラブルが発生し、被災地の人々を苦しめてきました。
しかし、その水を運んでいる水道管自体に問題があったり、蛇口に送られてくる過程に問題があると、人体に悪影響を及ぼす物質が水に混ざってしまうなどして、環境や健康に被害が生じる可能性もあります。
ここでは、家庭用の水道管の仕組みについて理解し、土地を売却する際に確認しておきたい水道管のチェックポイントなどを順に解説していきます。
家庭用の水道管の仕組みについて
私たちが、普段使っている水は、「生活用水」と呼ばれており、料理や風呂などで毎日使っている水のことを「家庭用水」、飲食店やホテルなどで使われている水のことを「都市活動用水」と言います。
このような生活用水の衛生面において、世界的に見ても日本はトップクラスを誇っています。ここでは、普段使っている家庭用の水道管の仕組みについて順に解説していきます。
1日に使う水の量
トイレや洗面所などの生活設備に関する製品を製造しているTOTOのリサーチでは、国や地域、生活スタイルによって違いはありますが、1日一人あたりおよそ186リットルの水を毎日使っていることがわかっています。
また、各国別の使用量では、他国と比べて日本は、世界各国の平均のおよそ2倍の量を使用していることもわかっています。
水道管の種類
水道管は、用途によって違いはありますが、水が取水されてから蛇口までの過程には、主に以下のような種類の水道管が使用されています。
導水管
水を供給するための設備である「取水施設」に取り入れた水を、浄水場まで送る管のことを言います。
送水管
上水道へ供給するための施設である「浄水場」で 浄化・消毒された水を、配水場まで送る管のことを言います。
配水管
上水道の施設の一つである「配水場」から、各地域に水を送る管のことを言います。
給水管
配水管を起点として、各家庭に水を送る管のことを言います。
水道管の管種
水道管は、主に金属管・樹脂管・コンクリート管が使われており、以下のような多くの種類が普及しています。
金属管
ダクタイル鋳鉄管/水輸送用塗覆鋼管/亜鉛メッキ管/塩ビライニング鋼管/ポリエチレン粉体ライニング鋼管/ステンレス鋼管/鉛管/黄銅管/銅管
樹脂管
ポリエチレン管/ポリ塩化ビニル管/架橋ポリエチレン管/ポリブテン管/強化プラスチック複合管
コンクリート管
ヒューム管/石綿セメント管
従来の水道管は、サビなどの劣化によって、蛇口から赤い水が出ることがありましたが、現在の水道管は、さまざまな改良を経て耐久性が向上し、ダクタイル鋳鉄管やポリ塩化ビニル管が多く使われるようになっています。
水道管の仕組み
生活用水は、さまざまな種類の水道管を使い、水道水として「配水管」を通って各地域に送られており、その後、「給水管」を通って各家庭に送られています。
なお、水道本管は、主要道路などに埋められていることが多いですが、そこから枝分かれしている「引き込み管」が、他人の家の敷地を通っているかもしれないのが現状です。
・水道管の種類
・水道管の仕組み
なぜ土地の売却前に水道管のチェックが必要なのか
水道管は、電柱と違って地中に埋められており、各家庭に送られています。しかし、土地を売却する前に、なぜ水道管のチェックが必要なのでしょうか。
水道管の経路をチェック
水は、取水施設からさまざまな種類の水道管を通って、各家庭に送られています。しかし、その過程の中で、水道本管から自宅に水を送るための引き込み管が、他人の家の敷地を通っている場合があります。
このような場合は、土地の価格自体が落ちてしまう可能性があるので、水道管の経路を事前にチェックしておく必要があります。その詳しい理由は、以下の項目で順に解説していきます。
破裂や破損
水道管は丈夫に作られていますが、経年劣化や地震などの災害が要因となり、破裂や破損によって漏水する可能性があります。このようなトラブルが発生した場合、自分の敷地内だけのトラブルでは済まず、隣人や共有者にも迷惑をかけてしまうことになります。
水道の機能が低下
水道本管から引き込み管を共有している場合、水圧や容量に支障が生じ、水道自体の機能が低下してしまう可能性があります。このようなトラブルが発生した場合、土地の買い手とのトラブルに発展するケースもあるので注意が必要です。
維持管理問題
水道本管から引き込み管を共有している場合、破裂や破損などの水道管に関するトラブルに対して、隣人や共有者と話し合う必要が生じます。このような場合は、定期的なメンテナンスや修理費用について、事前に取り決めをしておくと、トラブルを回避できます。
新たに建物を建築する場合
土地を売却後、買い手が新たに建物を建築する場合、水道管の工事に支障が出る可能性があるので注意が必要です。建物を建築する上で、隣人や共有者と工事のスケジュールを調整したり、計画通りに工事が進まない可能性があるので注意が必要です。
このように、引き込み管を共有している場合は、さまざまなリスクを抱えており、トラブルを回避するためにも、事前に所有している土地の水道管について、チェックしておくことが重要です。
・水道管トラブル
・維持管理問題
相続等の土地で長年使用されていなかった水道管は危ない
相続した土地を売却するケースでは、水道管を長年使用されていなかったことが原因で、経年劣化などの問題に加え、以下のようなリスクが考えられます。
衛生面の問題
従来の水道管は、経年劣化によるサビなどが原因で蛇口から赤い水が出るというトラブルがしばしば発生していました。しかし、現在では、水道管の質が向上し、このようなトラブルが発生することは稀です。
相続した土地を売却するケースでは、引き込み管を共有している場合のリスクに加え、水道管の老朽化や耐震性の問題も生じます。また。古い鉛管を使用している場合は、衛生的ではないため、蛇口から出る水に臭いや味が生じるなど、健康に被害が生じる可能性もあるので注意が必要です。
引き込み管の太さ
従来、引き込み管を共有する場合は、引き込み管の太さを直径13ミリか20ミリのどちらかを使用するのが一般的でした。しかし、近年では、昔と比べても水を使う量が増えたことに加え、水圧を一定にすることで安定して使用できる給湯器の登場などが理由で、20ミリの引き込み管が一般的になっています。
しかし、古い引き込み管は、未だ13ミリのものが多く、給湯器の動作が安定しないというトラブルが生じる可能性があります。
水道管の引き直しや交換
長年使用していなかった水道管は、水道管自体の経年劣化などによって、さまざまなトラブルが生じやすくなっていると言えます。しかし、水道管の引き直し工事や交換工事を行う場合は、高額な出費となることは言うまでもありません。
また、水道管の一部を交換する場合でも、工事する箇所や土地の状態によって費用が変わってくるため、事前にしっかりと打ち合わせした上で依頼することをおすすめします。
なお、蛇口周りのトラブルに関しては、ホームセンターなどに行き、自分で部品を調達して交換することもできます。
自然災害で破損しているケースも
長年使用していなかった水道管は、経年劣化の問題だけでなく、近年、日本で頻繁に発生している地震などの災害によって、水道管自体が破損している可能性も考えられます。そのため、災害があったエリアに土地を所有している場合は、水道管に破損や破裂がないか、しっかりとチェックしておきましょう。
・衛生面の問題
・引き込み管の太さ
水道管に問題のある土地は売却価格が下がる
引き込み管を共有していることに加え、水道管に問題がある土地は、売却価格に大きく影響するのが現状です。ここでは、売却価格にどのようなリスクが発生するのかという点を順に解説していきます。
買い手がつかない
引き込み管を共有している土地は、破損などのリスクが高いため、他の土地と比較しても売却価格は下がります。また、土地の周辺環境やエリアによっては、売価を下げても買い手がつかないことも考えられます。
なかなか買い手がつかない場合は、不動産業者に買い取ってもらうという選択肢もありますが、売却希望価格よりも下がってしまうのが現状です。
工事費の負担
水道管の引き直し工事を行う場合、工事費の負担は原則として売主にあるのが現状です。周辺環境やエリアによって工事費に違いはありますが、相場は30〜50万円程度かかります。
なお、リフォーム業者などに直接依頼せずに、中間マージンを通した場合は、工事費に仲介手数料を上乗せされる可能性があるので注意が必要です。
しかし、事前に水道管に欠陥が見つかった場合、工事を行った上で売却し、工事費を売価に上乗せすると良いでしょう。
土地の売却はすまいステップで
不動産の一括査定サイト「すまいステップ」では、戸建てやマンションだけでなく、土地の売却を応援しています。すまいステップは独自の運営方針に従って厳選された優良企業のみと提携を組んでいるため、信頼して仲介を依頼できる不動産会社のみに査定依頼ができます。
なお、サイトの利用は無料なので、いつでも安心して利用することができます。もし、土地の売却でお悩みなら、一度、すまいステップを利用してみてはいかがでしょうか。
・工事費の問題
・一括査定のすまいステップ
水道管に問題がある状態で土地を売却したらどうなるか
引き込み管を共有している水道管などに問題がある状態では、土地の価格も下がり、思うように売却できない可能性もあります。ここでは、このような状態で土地を売却した場合、どのようなリスクが生じてしまうのかを解説していきます。
瑕疵担保責任
不動産を売却する際に、売り手は「瑕疵(かし)担保責任」という責任を負わなければなりません。瑕疵担保責任とは、不動産に欠陥などがあった場合に、買い手は売り手に対して契約の解除を申し出たり、損害賠償の請求をすることができる仕組みです。
売り手が、事前に水道管の状態を知らずに売却してしまった場合でも、知らなかったでは済まされず、瑕疵担保責任を負う必要があるため、売却後に多大な工事費を請求される可能性もあるので注意が必要です。
新築物件を建設できない
無事に土地を売却できたとしても、引き込み管を共有している水道管が原因で、新築物件の建設ができない可能性もあります。現在の建築基準法では、引き込み管を共有している水道管が原因で、新築物件の建築ができないケースもあるので注意が必要です。
また、引き込み管を共有している水道管が原因で、新築物件を建築する際に、隣人に許可を得なくてはならず、なんらかの事情で許可がなかなか下りない間は、新築物件の建設はできなくなってしまいます。
損害賠償請求
引き込み管を共有している水道管だということを知らずに土地を売却してしまった場合、欠陥を隠したとみなされてしまい、損害賠償請求される可能性もあります。このような場合、水道管の引き直し工事や交換工事を行うことで、工事費用などを併せて数千万円の損害賠償金が発生したケースもあるので注意が必要です。
・新築物件の建設
・損害賠償請求
土地売却は水道管の相談にも対応可能な不動産会社を選ぼう
土地の売却を検討している場合、古い建物を解体して、高額の解体費用が発生したケースもあります。土地の売却のためにさまざまな工夫をしたとしても、引き込み管を共有している水道管に関するリスクを知らないと、後から高額な費用を請求される可能性もあります。
従って、売却を検討している土地が、どのような状態であるのかということを事前にしっかりとリサーチしておく必要があると言えるでしょう。
しかし、このような土地に対しても、親身になって相談に応じてくれる不動産業者を見つけることで、できるだけ費用をかけない選択肢を提案してくれるのではないでしょうか。