ただでさえ高い税金がかかる相続ですが、相続した家を売却する場合はさらなる税金が発生します。
2重の税負担に頭を悩ませている方も多いでしょう。
ただ、相続した家の売却では、個人の税負担を軽減するための節税方法が用意されています。
この記事では、相続した家の売却でかかる税金と、節税の方法について解説しています。
余計な税金を払ってしまわないよう対策をしていきましょう。
相続した家の売却にかかる税金
相続した家を売却する際、税金には非常に注意が必要です。
マイホームの売買は住み替え促進のため優遇されていますが、マイホームでない家の売却は税金が高くなりやすいためです。
相続する家が自分にとって居住用財産なのか認識しながら税金を確認していこう!
家の売却にかかる税金は、契約書作成にかかる『印紙税』と、売却で利益が出た場合にかかる『譲渡所得税』の2つです。
また、不動産の売却は名義人本人しかできないため、相続した家を一度自分の名義にする必要があります。その際に『登録免許税』がかかります。
印紙税
家を売却する際は、買い手と売買契約を結ぶため売買契約書を作成します。
印紙税は、売買契約書に記載されている金額(売却金額)の額に応じて課税されます。
契約金額(土地の売却価格) | 本則税率 | 軽減税率 |
---|---|---|
10万円を超え 50万以下 | 400円 | 200円 |
50万円を超え 100万円以下 | 1,000円 | 500円 |
100万円を超え 500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
500万円を超え 1,000万円以下 | 1万円 | 5,000円 |
1,000万円を超え 5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
5,000万円を超え 1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
1億円を超え 5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
令和4年3月31日までは、軽減税率欄の額が適用されます。
役所で納税する必要はなく、郵便局などで収入印紙を購入し、契約書へ貼付・消印をすることで納税したことになります。
節税ポイント
通常、印紙税は売主・買主の2部。場合によっては不動産会社を含めた3部作製されます。
印紙税は契約書の原本にのみかかるため、「1部のみを原本。後はコピー」とすることで、1部分の印紙税を折半することもできます。
買主はもちろん、不動産会社にも相談しておきましょう。
譲渡所得税
譲渡所得税は、不動産を売却して譲渡所得(利益)が発生した場合に、その譲渡所得に対して課税される税金です。
譲渡所得税は一つの税金を表しているのではなく、住民税と所得税(復興特別所得税を含む)をひとまとまりにした言葉です。
譲渡所得とは
売買のシーンでは、売却で得た利益のことを譲渡所得と呼びます。譲渡所得の算出方法は後ほど解説します。
譲渡所得税の税率
譲渡所得税は、譲渡所得に対し一定の割合で課税されます。
その家を所有している年数(所有期間)に応じて税率が異なります。
相続や贈与の場合は、前の持ち主の所有期間がそのまま引き継がれるので、多くの方が以下の長期譲渡所得に該当するでしょう。
分類 | 所有期間 | 所得税 | 住民税 | 合計税率 |
---|---|---|---|---|
短期譲渡所得 | 5年以下 | 30.63% | 9% | 39.63% |
長期譲渡所得 | 5年越え | 15.315% | 5% | 20.315% |
軽減税率 | ※10年越え | 10.21% | 4% | 14.21% |
※下段の軽減税率(10年越え所有軽減税率)は、居住用財産の売却で適用されます。詳しい要件についてはこちら。
例えば、譲渡所得1,000万円で所有期間20年(長期譲渡所得)の場合は、譲渡所得税額は2,031,500円となります。
相続前から自身もマイホームとして利用していた家(居住用財産)の場合は、軽減税率が適用できるため1,421,000円となります。
譲渡所得の求め方
譲渡所得税を算出するには、譲渡所得(利益)が分からなければいけません。
譲渡所得の求め方を確認していきましょう。
譲渡所得=
売却金額 -(取得費 – 譲渡費用)- 控除額
取得費とは
以下は取得費に含まれるものの例です。(参考:国税庁)
- 家の購入代金(減価償却相当額を差し引いた金額)
- 土地の購入代金
- 取得時の不動産取得税や登録免許税などの各種税金
取得費として計算するには、その金額を証明する書類が必要になります。
金額を証明できない場合は、取得費を売却金額の5%として計算します。
譲渡費用とは
以下は譲渡費用に含まれるものの例です。(参考:国税庁)
- 不動産会社への仲介手数料
- 支払った印紙税
- 売るために建物を解体した際の解体費用
固定資産税など、維持や管理にかかる費用は譲渡費用には含まれません。
あくまでも、売るために直接的にかかった費用です。
控除額とは
特別控除については次章で詳しく解説しますが、例えば以下のよう特別控除があります。
- マイホームを売却した際の3,000万円特別控除
- 相続した空き家を売却した際の3,000万円特別控除
譲渡所得税の計算例
以下の条件で譲渡所得税を計算してみましょう。
- 所有期間40年の非居住用財産(譲渡所得税率は20.315%)
- 売却金額3,000万円
- 取得費1200万円
- 譲渡費用150万円
- 控除額なし
まずは譲渡所得から求めます。
譲渡所得=
3,000万円 -(1,200万円 – 150万円)- 0円 = 1,650万円
譲渡所得は1,650万円となりました。
次に長期譲渡所得の20.315%をかけて譲渡所得税額を求めます。
譲渡所得税額=
1,650万円 × 20.315% = 3,351,975円
譲渡所得税額は3,351,975円となりました。
節税ポイント
取得費は、金額を証明する書類がないと、売却金額の5%で計算されてしまします。
相続後、または相続から相当な時間が経過すると書類を集めることが困難になりますので、事前に取得費関連の書類を確保しておきましょう。
費用総額シミュレーターで売却にかかる費用を算出してみよう
以下の費用シミュレーターを使って、あなたの不動産を売ったときにかかる費用を算出してみましょう!
「売却価格」「購入価格」「物件の所有期間」「現在住宅として住んでいるか」をそれぞれ入力し、「費用を算出する」ボタンを押すと、売却時にかかる費用が自動で算出されます。
※購入価格が分からない場合は空欄で大丈夫です。
費用の内訳も表示されますので、まずはどんな費用がいくらかかるのかを把握しておきましょう。
相続家の売却にかかる税金を抑える特別控除
譲渡所得を抑える手段として最も効果的なのは特別控除の適用です。
特別控除は、売却益を確定申告する際に自分で申請しなければ適用されません。
また、適用要件を満たしていない場合は特別控除を使うことができません。
ここからは、家の売却で使える特別控除と、その要件(重要部分のみ抜粋)を解説いたします。
マイホームを売った時の3,000万円特別控除の特例
マイホーム(居住用財産)を売却した場合、譲渡所得を最大3,000万円控除することができる特例です。
相続した家でも、自身が居住用財産として利用していた場合は控除を適用させることができます。
先ほどの、税額3,351,975円となった計算例を使って、特別控除を適用した場合の税額を計算してみましょう。
譲渡所得=
3,000万円 -(1,200万円 – 150万円)- 3,000万円 = 0円
譲渡所得が0円となるため、税額も0円になりました。
適用要件参考:国税庁
- 今自分が住んでいる家や土地の売却
- 売った年の前年および前々年に3,000万円の特別控除や譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例の適用を受けていない
- 住まなくなってから3年経過した年の12月31日までに売ることができる
- 売った家屋や敷地について、収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていない
- 売る相手が配偶者や査系血族、生計を一にする親族ではない
相続した空き家を売った時の3,000万円特別控除の特例
被相続人が生前一人で暮らしていて、相続後空き家となった家を売却した場合、譲渡所得を最大3,000万円控除することができる特例です。
先ほどの『マイホームを売った時の3,000万円特別控除』同様3,000万円の控除が受けられるため、譲渡所得3,000万円以下の売却では税金が発生しないことになります。
適用要件参考:国税庁
- 相続や遺贈によって取得した家や土地の売却
- 相続の時から譲渡の時まで貸付等、事業の目的で活用していない
- 相続の時から譲渡の時まで居住していない
- 一定の耐震基準を満たす家、あるいは取り壊した土地
- 相続の開始があった日から3年後の12月31日までに売る事ができる
- 売却代金が1億円以下であること。
不動産会社の査定で売れる価格を把握しておこう
売却を前向きに検討している方も、そうでない方も、まずは家がいくらで売れるかを知っておく必要があります。
不動産会社の行う査定は、売れるであろう予想価格を算出するものですが、目安となる価格が分かれば、おおよその印紙税、譲渡所得税を計算することができます。
査定額は不動産会社によって大きく異なる場合があるので、複数社を比較してより信頼できる不動産会社の査定額を参考にしましょう。
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