親から相続して持て余してしまっている農地を売却できないか頭を悩ませている方は多いのではないでしょうか。
基本的に、農地は農地法によって、農業以外の目的で利用することを制限されています。
しかし、立地や利用目的によっては、自治体から許可を得て農地以外の目的で使用できます。これを「農地転用」と言います。農地転用ができれば、土地の売却がしやすくなります。
この記事では、農地転用ができる土地とできない土地の基準について解説しています。また、農地転用できない土地を手放す方法や活用する方法についても紹介しています。
ご自身の所有している土地の利用について決める際に、是非お役立てください。
売却のきっかけ
孫が出来て、お嫁さんと遊びに来るには古い家だったので、予算的にリフォームするよりは住み替えようと。
古い家だったので更地にして土地として売却。
不動産会社を選んだ際の決め手
分からない事ばかりでしたが、持って来られた資料が豊富で近所での売却事例など分かりやすく説明して頂き、営業マンが信頼出来そうだった。
あと、査定も一番高かったので。
石川県金沢市 / 60代 / 住み替え / 土地 / /
査定額1,780万円→売却価格1,780万円
不動産会社 | ハウスドゥ!金沢バイパス店 株式会社アース(担当者:畑 定幸) |
---|---|
不動産会社の決め手 | 査定額が高かった |
担当者の特徴 | 積極的に販売活動を実施 |
満足度 | 4.7 |
農地転用できない土地とできる土地の基準
農地転用とは、農地(田んぼや畑)を農地以外の目的で使用できるようにすることです。
たとえば、田んぼを潰して家を建てたり、駐車場や資材置き場、太陽光発電所などにするためには、農地転用の手続きが必要です。
農地転用の可否は、所有している農地の立地によって決まります。
「市街化区域」は都市計画法によって定められた土地の区分で、市街化区域外の土地は市街化が進まないように建物の建築に制限がかけられています。
農地の多くは市街化区域外にありますが、市街化区域内にも緑を確保するために保護されている農地があります。
市街化区域外の農地の場合
市街化区域外の農地の場合、農地転用するには都道府県知事や農業委員会の許可を得なければなりません。
農地転用の許可が下りるかどうかは「立地基準」と「一般基準」によって決まります。
- 立地基準:土地の立地の区分
- 一般基準:転用がきちんと行われるかどうかや、周辺農地に悪影響をもたらさないかどうかの審査
立地基準による農地転用の可否について、以下の表にまとめました。
区分 | 概要 | 可否 |
---|---|---|
農用地区域内農地 | 農業振興地域内の農用地区域(青地)に指定されている農地 | 原則不可 |
第1種農地 | 良好な営農条件を備えている農地 | 原則不可 (条件次第で許可されることも) |
甲種農地 | 市街化調整区域内の特に良好な営農条件を備えている農地 | 原則不可 (条件次第で許可されることも) |
第2種農地 | 第3種農地に近接する区域または将来的に市街化が見込まれる区域の農地 | 条件付きで可 |
第3種農地 | 市街化が進んでいる区域にある農地 | 原則可 |
表の上段にいくほど、農地転用の許可を得るのが難しいです。
▼農用地区域内農地
農業振興地域内の土地のうち「農用地区域」に指定されている農地は、原則として農地転用が認められません。
日本国内の土地は、農振法によって農業を振興するべき地域(農業振興地域)とそうではない地域(農業振興地域外)に区分されています。
農業振興地域内の土地は、さらに「農用地区域(青地)」と「農用白地地域(白地)」に分けられています。
農用地区域(青地)には、農業振興地域の中でも特に高い生産性のある農地や、農業上の利用を確保するべきだと判断された土地が指定されています。
土地の指定が農用地区域(青地)か、農用白地地域(白地)か、農業振興地域外かどうかは「eMAFF農地ナビ」で大まかに調べられます。
▼第1種農地
農用白地地域(白地)あるいは農業振興地域外の農地の内、以下の「良好な営農条件」を満たす農地は「第1種農地」に分類され、農地転用が原則として認められません。
ただし、農業用施設や農業振興に役立つ施設、他の公共性の高い施設を建築する場合には、農業以外の利用が許可されることもあります。
▼甲種農地
「甲種農地」も、原則として農地転用が認められません。
甲種農地とは、市街化調整区域内で、以下の「特に良好な営農条件」を満たす農地です。
▼第3種農地
第3種農地とは、農用白地地域(白地)あるいは農業振興地域外の農地の内、市街化が進んでいる区域内の農地のことです。
具体的には、以下の条件のいずれかを満たしている農地です。
- 農地の前面道路に上・下水道またはガス管のうち2種類が埋設していて、かつ500m圏内に2つ以上の公共施設がある
- 300m圏内に公共交通機関やインターチェンジ、公共施設等がある
- 宅地化率が40%以上の区画内にある
- 用途地域が定められている区域内にある
第3種農地は、一般基準を満たしていれば農地転用が可能です。
▼第2種農地
第2種農地とは、農用白地地域(白地)あるいは農業振興地域外の農地の内、第3種農地に近接する区域や将来的に市街化が見込まれる区域の農地、または生産性の低い小規模の集団の農地(10ヘクタール以上の集団農地から外れている農地)のことです。
周辺の他の土地や第3種農地では転用の目的が達成できないと判断される場合に農地転用が許可されます。
▼一般基準
第2種農地、第3種農地であったとしても、「一般基準」を満たさない場合は農地転用は許可されません。
農地転用の一般基準は、以下のような視点で審査されます。
- 農地転用後の事業が確実に行われるか
- 周辺農地の営農に支障を生じさせないか
- 一時転用の場合は必ず農地に復元されるか
具体的には、土地の利用計画がきちんと立てられているか、資金が確保されているか、農地転用によって周辺農地に悪影響が出ないか、土砂流出や崩壊などが起こり得ないか等を審査します。
一般基準を満たさない場合には、区分の条件はクリアしていても、農地転用はできません。
市街化区域内の農地の場合
市街化区域内にある農地は、生産緑地と特定生産緑地、宅地化農地に分類されます。
- 生産緑地:都市内の緑地保護のために開発等が制限されている農地
- 特定生産緑地:生産緑地の指定の延長を選択した農地
- 宅地化農地:固定資産税・都市計画税が宅地並みに課税されている農地
宅地化農地は、農業委員会に届出をすれば農地転用できます。
生産緑地と特定生産緑地は、緑地保護を目的として、土地に対する課税の軽減措置を受ける代わりに開発等を制限されています。
制度の指定期間が経過した後に、行為制限解除を選べば農地転用できるようになります。
- 生産緑地の指定:30年間
- 特定生産緑地の指定:10年ごとに更新
(生産緑地の指定から30年経過後に申請可能)
ただし、売買や住宅の建設等は制限されていますが、農業用施設や農産物の直売所、加工販売施設、農家レストランなどを敷地内に建てることは例外的に認められています。
農地転用できる土地は宅地として売却できます。
しかし、ただ買主を見つけるだけでなく、売買成約後に農地転用の手続きまで行わなければならないため、スムーズな取引を目指すなら農地売買の経験がある不動産会社に依頼するのがオススメです。
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農地転用できない土地を手放す方法
農業振興地域内の「農用地区域内農地(青地)」や、営農に適していると認定された農地である「第1種農地」と「甲種農地」は、原則的に農地転用できない土地です。
また、周辺の市街化が見込まれる第2種農地の場合でも、転用後の土地の利用目的が他の別の土地でも達成できると判断される場合には、農地転用は許可されません。
このような農地転用できない土地は農家相手にしか売却できないため、宅地化できる農地と比べて売却の難易度が高いですが、手放す方法がないわけではありません。
1つずつ詳しく見ていきましょう。
農地のあっせん事業を利用する
利用できる農地 | 難しさ |
---|---|
農用地区域内農地 | ★★★ |
土地の利用に関して特に厳しく制限されている「農用地区域内農地」は、要件を満たせば行政機関による売買のあっせんを受けられます。
あっせんできる買主が見つからないものの、将来的に認定農業者に売り渡すことが望ましいと判断される農地であると認定される場合には、買入協議によって農業中間管理機構に売却できることもあります。
あっせん事業制度を利用したい場合は、まずは市町村の農業委員会事務局に相談します。
あっせん事業によって農地を売買する場合、売却価格は自由に決められませんが、譲渡所得税の特別控除を受けられます。
- あっせんにより売却した場合:最大800万円まで譲渡所得を控除
- 買入協議により売却した場合:最大1,500万円まで譲渡所得を控除
農振除外を受けて農地転用して売却する
利用できる農地 | 難しさ |
---|---|
農用地区域内農地 | ★★★★★ |
「農用地区域内農地」の指定を解除してもらうことで、農地転用して売却する方法です。
農振除外を受けるには、以下の要件が満たされていると判断されなければなりません。
- 転用後の土地の利用計画に必要性・妥当性・緊急性があると認められること
- 農用地区域外の他の土地で利用の目的が代替できないこと
- 農振除外によって他の農地の利用に支障を及ぼす恐れがないこと
- 周辺農地の集団化に支障を及ぼす恐れがないこと
- 土地改良事業の対象だった農地の場合、工事完了から8年が経過していること
基準は厳しく、たとえば周辺を農地に囲まれている農地は農振除外を受けることは難しいでしょう。
農振除外の申請は、市町村の農林課や農政課で行います。
申請から手続きには半年から1年程度かかり、そこから更に農地転用の手続きに1ヶ月半以上かかります。申請できる機会は年に数回しかなく、申請できる期間も限られているため、計画的に準備を進めましょう。
近隣の農家や知り合いの農家に売却する
利用できる農地 | 難しさ |
---|---|
すべて | ★ |
手放したい農地の周辺で営農している農家の方がいる場合は、農地を購入してもらえないか打診してみましょう。
土地の売買は、両者の合意があれば個人間でも可能です。しかし、農地の所有権を変更するには、農業委員会への許可申請や届出が必要です。
個人での書類作成が難しい場合は、売買契約書の作成は司法書士、農地売買の許可申請や届出のための書類の作成は行政書士に依頼できます。
農業委員会や農協に相談する
利用できる農地 | 難しさ |
---|---|
すべて | ★★ |
農地の購入を頼めるあてがない場合は、市町村の農業委員会や地域の農協に相談してみましょう。
必ずしも紹介を受けられるとは限りませんが、地域の農家の情報が集まってくる機関なので、買主となってくれる人が見つかるかもしれません。
農業委員会に相談する場合も、地域の農協に相談する場合も、まずは事前に電話でアポイントメントを取りましょう。
相続後に買取申し出する
利用できる農地 | 難しさ |
---|---|
生産緑地・特定生産緑地 | ★ |
生産緑地や特定生産緑地を相続した場合、相続発生時に営農を継続するか、自治体に農地の買取り申出ができます。
手放したい農地が相続前の生産緑地や特定生産緑地である場合には、相続発生から10ヶ月以内に市町村の担当課(農政課や農林課など)に申請しましょう。
相続国庫土地帰属制度を利用する
利用できる農地 | 難しさ |
---|---|
基準を満たす土地すべて | ★★ |
令和5年4月から、所有者が維持・管理できない土地を国が引き取る「相続土地国庫帰属制度」がスタートしました。
審査を受けて土地の引き取りが認められれば、負担金を支払うことで土地の所有権を国に移譲できます。
土地に建物が建っていなかったり、担保権が設定されていなければ、田畑であっても申請できます。
審査にかかる費用は14,000円、負担金は面積にかかわらず20万円(※)です。
(※)立地等の条件によっては面積に応じて金額が算定されます。
始まったばかりの制度で、認可の状況など実際の運用はまだ不透明な部分もありますが、お金を払ってでも土地の処分をしたい方は利用を検討してみてください。
農地転用できない土地を活用する方法
農地転用できない土地を売却して手放すのが難しい場合は、農地のまま活用することも検討してみましょう。
ご自身で農業に従事する以外に、以下のような方法で農地の維持ができます。
休耕地になってしまっている農地を所有し続けている方は、ぜひご参考にしてください。
近隣の農家に農地を貸し出す
所有している農地の近隣で営農している農家がいる方は、農地を貸し出せないか打診してみるとよいでしょう。売買は難しくても、貸借して使用はしてもらえる可能性はあるかもしれません。
休耕地は放っておくと雑草が生い茂り、すぐに荒れ果ててしまうものです。しかし、他の農家の方に農作してもらえれば、土地の状態を維持できます。
農地の貸借には、農業委員会の許可を得る必要があります。
市民農園を開設する
農地を市民農園にして利用してもらうという方法もあります。
市民農園の開設方法には、市民農園整備促進法による方法、特定農地貸付法による方法、農園利用方式による方法の3種類があります。
開設方法 | 概要 |
---|---|
市民農園整備促進法による方法 | 市街化区域・市街化調整区域の農地が対象。農機具の収納施設や休憩施設、トイレ等の設置が必要だが、施設の整備は農地転用の許可なく行える。市町村に申請する。 |
特定農地貸付法による方法 | 開設場所に関するに定めはないが、農業委員会に申請して許可を得る必要がある。 |
農園利用方式による方法 | いわゆる「体験農園」。始めるにあたって法律上の手続きは不要だが、所有者が農園を管理し、利用者に農作業の指導を行う必要がある。 |
市民農園の経営も、農業をしてもらうことで土地の状態の維持に繋がります。
市民農園の開設について詳しくは、農林水産省のHPをご参考にしてください。
農地バンク(農地集積バンク)に登録する
農地を貸し出す相手をご自身で見つけられない場合には、農地バンク(農地集積バンク)に登録するのがオススメです。
農地バンクとは、農地を貸したい人と農地を借りて利用したい人・法人を、行政機関が仲立ちしてマッチングする仕組みです。
農地バンクを利用して10アール以上の農地を10年以上の期間で貸し付けると一定期間、支払う固定資産税が半額になるという税制上のメリットもあります。
農地バンクを利用したい方は、まずは市町村の農業委員会や担当課(農林課・農政課など)に問い合わせてみましょう。
不動産会社は全国どこにでも街中にたくさんありますが、全ての会社が農地を扱っているわけではありません。農地の売買を扱っている不動産会社を見つけることが大切です。
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土地が農地転用できなくても活用することはあきらめない
農地転用の許可が下りずに農地転用できなくても、農地のまま活用したり、農地として売却する道もあります。耕作放棄地にして所有し続けていると、住宅ほど高額ではないものの毎年固定資産税の経済的な負担が続くことになります。
農地転用できないからといって活用を諦めるのではなく、農地を借りたいという人を探してみたり、自分ができる範囲内で活用する方法はないか、活用法を探ってみましょう。
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