土地の売却にあたって、支払う税金がどれくらいになるのか、前もって知っておきたい方は多いのではないでしょうか?
土地を売却した時に納める税金のうち、売却益が出た場合に納付する所得税と住民税は、土地を所有していた期間に応じた税率を使って、計算で金額を算出できます。
また、特別控除の特例を利用するなどして、節税も行えます。
この記事ではそんな税金の計算方法について、詳しく解説していきます。
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土地売却でかかる税金とは
土地を売却した時にかかる税金は以下の通りです。
- 所得税
- 住民税
- 印紙税
- 登録免許税
この他に、仲介手数料や売却にかかる費用に対して、消費税がかかります。
【2023年4月最新】土地売却にかかる税金はいくら?計算方法や節税のための特例控除を解説
所得税
所得税とは、収入から経費を差し引いた所得に応じて、国に治める税金です。
土地を売却した時の売上げから、売却にかかった費用などを差し引いた利益(譲渡所得)にかかる税金は、分離課税が適用されます。
給与所得など、他の所得とは合算せずに、単独で税金の計算を行います。
住民税
住民税とは、収入から経費を差し引いた所得に応じて、地方自治体に納める税金です。
住民税も所得税同様、分離課税が適用されます。
また、所得税も住民税も、土地を売却した時の譲渡所得にかかる税金なので、まとめて「譲渡所得税」とも呼ばれています。
印紙税
土地を売却する時、買主との間で売買契約書を交わします。
印紙税とは、この売買契約書を作成する時に課税される税金です。
収入印紙を書面に貼り付けることで納付します。
契約金額(売却価格)に応じて税額は変化します。
令和6年(2024年)3月31日までは軽減税率が適用されています。
契約金額(土地の売却価格) | 本来の税率による税額 | 軽減税率による税額 |
---|---|---|
10万円を超え 50万以下 | 400円 | 200円 |
50万円を超え 100万円以下 | 1,000円 | 500円 |
100万円を超え 500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
500万円を超え 1,000万円以下 | 1万円 | 5,000円 |
1,000万円を超え 5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
5,000万円を超え 1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
1億円を超え 5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
(参考:国税庁「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置」から一部抜粋して作成)
登録免許税
登録免許税とは、「登記」を申請する時にかかる税金です。
不動産における登記とは、どのような不動産の権利を、誰が持っているか、といった内容を記録し、明らかにするものです。
土地を売却する時に売主が支払う可能性があるのは、「抵当権抹消登記」や「住所変更登記」の登録免許税です。
どちらも1件1,000円かかります。



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譲渡所得にかかる税金の計算方法
所得税や住民税は、課税の対象となる譲渡所得(課税譲渡所得)に、税率をかけて算定します。
よって、まずは「課税譲渡所得」を計算し、次に条件にあった税率をかけ合わせることで、所得税と住民税をそれぞれ算出できます。
Step1.譲渡所得を求める
土地を売却して得られる収入から、元々その土地を取得するのにかかった費用や、売却にかかった費用を差し引いた「利益」にあたる金額を、「譲渡所得」といいます。
譲渡収入金額
譲渡収入金額とは、土地の売却で得られる売上金額です。
譲渡価格、売却価格ともいいます。
土地の代金以外に、買主から支払われる「固定資産税の精算金」も譲渡収入金額に入ります。
取得費
取得費とは、土地の購入(または相続や遺贈による取得)にかかった費用です。
以下のような費用が取得費として計上できます。
- 土地の購入代金
- 購入時に不動産会社に支払った仲介手数料
- 登録免許税
- 不動産取得税
- 印紙税
- 固定資産税の精算金
- 司法書士報酬
- 建物付き土地の建物の購入代金や取り壊しの費用(土地の利用を目的に購入しておおよそ1年以内に取り壊した場合) など
参考:国税庁|取得費となるもの
また、相続の場合は以下の費用も取得費として計上できます。
- 相続登記にかかった費用(登録免許税や司法書士報酬など)
- 相続税のうち一定金額(相続税を支払っていて、相続開始を知ってから3年10ヶ月以内に売却した場合)
取得費がわからない・証明できる書類がない場合には概算取得費(譲渡価格×5%)を計上できます。
譲渡費用
土地を売却するときにかかった諸費用です。
以下のような費用が譲渡費用として計上できます。
- 売却時に不動産会社に支払った仲介手数料
(売却価格×3%+6万円+消費税) - 印紙税
- 土地の測量費用(売却にあたって実施した場合)
- 建物の取り壊し費用(建物を取り壊して売却する場合)
(建物構造による 例:木造90~150万/坪) - 建物の滅失登記費用(建物を取り壊して売却する場合)
土地売却の費用はいくら?手数料や税金など仕訳や計算方法を紹介
Step2.控除が適用できるか確認する
特定の要件を満たしていれば、譲渡所得から一定の金額を控除できる特例があります。
課税対象となる譲渡所得が減るため、控除を受けられれば税額が下がります。
確定申告をした上で、課税額がゼロになります。
▽控除を受けられる特例の一覧
- 相続空き家を譲渡した場合の3,000万円特別控除の特例
(被相続人の居住用財産(空き家)に関わる譲渡所得の特別控除の特例)
:相続した空き家を解体して売却した場合に適用可能 - 居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除の特例
:売主が住んでいた家を解体して売却した場合に適用可能 - 低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の100万円特別控除
- 公共事業などのために土地建物を売った場合の5,000万円特別控除
- 特定土地区画整理事業などのために土地を売った場合の2,000万円特別控除
- 特定住宅地造成事業などのために土地を売った場合の1,500万円特別控除
- 農地保有の合理化などのために土地を売った場合の800万円特別控除
- 平成21年及び平成22年に取得した土地等を譲渡した場合の1,000万円特別控除
適用を受けるための詳細な要件については、以下の記事にて解説しています。
Step3.課税譲渡所得に税率をかけ合わせる
譲渡所得税の税率は、売却した土地の所有期間によって異なります。
売却した年の1月1日時点で土地の所有期間が5年以下なら短期譲渡所得、所有期間が5年を超えていれば長期譲渡所得となり、それぞれ以下の税率を適用します。
土地の所有期間 | 所得税率 | 住民税率 | |
---|---|---|---|
短期譲渡所得 | 5年以下 | 30.63% | 9% |
長期譲渡所得 | 5年を超える | 15.315% | 5% |
※所得税率には復興特別所得税率が上乗せされています(所得税額の2.1%相当)
例えば、父親が10年所有していた土地を相続から1年後に売却する場合、所有期間は11年とみなされ、長期譲渡所得での税率が適用されます。
(所有期間が10年超の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例)
6,000万円までの部分 | 6,000万円を超える部分 | |
---|---|---|
所得税率 | 10.21% | 15.315% |
住民税率 | 4% | 5% |
参考: 国税庁|マイホームを売ったときの軽減税率の特例
譲渡所得税の計算方法のまとめ
Step1~3までの工程を1つの計算式にまとめると、以下のようになります。
具体例でわかる!譲渡所得税の計算
この章で紹介している税金の計算例の中で、どれが一番参考になるかがわかるフローチャートを作成しました。
ご自身の売却のケースに近しいものを選んで、回答してみてください。
ケース①10年以上住んでいた家を取り壊して売却した場合
住んでいた家を取り壊して売却する場合、居住用財産の3,000万円特別控除の特例を受けられます。
また取り壊した家屋の所有期間が、取り壊した年の1月1日時点で10年を超える場合、税率が更に安くなります。
課税譲渡所得が6,000万円以下の部分について、所得税、住民税ともに軽減税率が適用されます。
以下のケースで税額を試算していきます。
- 譲渡価格:1億円
…土地の売却代金など - 取得費:不明
…土地の購入代金などが分からない - 譲渡費用:406万6000円
…売却時の仲介手数料や印紙代など - 所有期間:24年
…所有期間10年超の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率を適用可能
ステップ1:譲渡所得を計算する
取得費が分からないため、譲渡価格の5%で計上します。
=譲渡価格-(譲渡価格の5%+譲渡費用)
=1億円-(500万円+406.6万円)
=9,093万4000円
ステップ2:特別控除を適用して課税譲渡所得を求める
譲渡所得から控除額を差し引いて、課税譲渡所得を求めます。
=譲渡所得-控除額
=9,093.4万円 ー 3,000万円
=6,093万4000円
ステップ3:課税譲渡所得に税率をかける
課税長期譲渡所得金額 | 所得税 | 住民税 |
---|---|---|
6,000万円以下の部分 | 10.21% | 4% |
6,000万円を超える部分 | 15.315% | 5% |
※所得税率に復興特別所得税として所得税額の2.1%相当が上乗せされています
今回のケースでは、6,000万円以下の部分と、超過した部分それぞれに税率を適用して、税額を算出します。
=(6000万円×10.21%)+(93.4万円×15.315%)
=612万2000円+14万3042円(1円未満切り捨て)
=626万5042円
=(6000万円×4%)+(93.4万円×5%)
=240万円+4万6700円
=244万6700円
かかる税金の合計金額は、871万1742円です。
ケース②所有期間が5年を超える、住んでいた土地を売った
- 譲渡価格:5500万円
…土地の売却代金など - 取得費:2000万円
…土地の購入代金や登録免許税、不動産登録免許税など - 譲渡費用:305万円
…売却時の仲介手数料や取り壊しの費用、印紙税など - 所有期間:20年
ステップ1:課税譲渡所得を計算する
住んでいた家を取り壊して売却する場合は、居住用財産の3,000万円特別控除の特例を受けられます。
=5500万円-(2000万円+305万円)-3000万円
=195万円
ステップ2:課税譲渡所得に税率をかける
所有期間は20年間なので、税率は「長期譲渡所得」の税率を用います。
税金 | 税率 |
---|---|
所得税(+復興特別所得税) | 15.315% |
住民税 | 5% |
それぞれの税率を課税譲渡所得にかけ合わせて、税額を算出します。
=195万円 × 15.315%
=29万8642 円(1円未満切り捨て)
=195万円 × 5%
=9万7500円
かかる税金の合計金額は、39万6142円です。
ケース③所有期間が5年以下の、住んでいた土地を売った
- 譲渡価格:5500万円
…土地の売却代金など - 取得費:2000万円
…土地の購入代金や登録免許税、不動産登録免許税など - 譲渡費用:305万円
…売却時の仲介手数料や取り壊しの費用、印紙税など - 所有期間:4年
ステップ1:課税譲渡所得を計算する
住んでいた家を取り壊して売却する場合は、居住用財産の3,000万円特別控除の特例を受けられます。
=5500万円-(2000万円+105万円)-3000万円
=195万円
ステップ2:課税譲渡所得に税率をかける
所有期間は4年間なので、税率は「短期譲渡所得」の税率を用います。
税金 | 税率 |
---|---|
所得税(+復興特別所得税) | 30.63% |
住民税 | 9% |
それぞれの税率を課税譲渡所得にかけ合わせて、税額を算出します。
=195万円 × 30.63%
=59万7285円
=195万円 × 9%
=17万5500円
かかる税金の合計金額は、77万2785円です。
ケース④取得費がわからない土地を売却した
- 譲渡価格:3000万円
…土地の売却代金など - 取得費:不明
- 譲渡費用:106万6000円
…売却時の仲介手数料や印紙代など - 所有期間:20年
ステップ1:課税譲渡所得を計算する
取得費がわからないため、譲渡価格の5%で計上します。
=3000万円-(150万円+106.6万円)
=2743万4000円
ステップ2:課税譲渡所得に税率をかける
所有期間は20年間なので、税率は「長期譲渡所得」の税率を用います。
税金 | 税率 |
---|---|
所得税(+復興特別所得税) | 15.315% |
住民税 | 5% |
それぞれの税率を課税譲渡所得にかけ合わせて、税額を算出します。
=2743.4万円 × 15.315%
=420万1517円(1円未満切り捨て)
=2743.4万円 × 5%
=137万1700円
かかる税金の合計金額は、557万3217円です。
ケース⑤相続した家を取り壊した土地を売却した
控除や特例によって譲渡所得税の節税ができますが、適用可能な特例が複数あり、併用できない場合は、特例適用後の税額をそれぞれシミュレートして検討しましょう。
今回は以下のケースで「相続空き家の3,000万円特別控除の特例」と「取得費加算の特例」のどちらを適用した方が有利になるか、見ていきます。
- 譲渡価格:3000万円
…土地の売却代金など - 取得費:不明
…土地の購入代金などが分からない。 - 譲渡費用:106万6000円
…売却時の仲介手数料や印紙代など - 被相続人が土地を所有していた期間:20年
- 相続人の所有期間:2年
- 納付した相続税額:680万円
- 土地の相続税評価額:4,000万円
- 相続税の課税価格(相続財産の総額):8,000万円
- 債務控除額:0円
▼3,000万円特別控除を適用する場合
ステップ1:譲渡所得を計算する
取得費が分からないので、譲渡価格の5%で計上します。
=3000万円 ー(150万円+106.6万円)
=2743万4000円
ステップ2:譲渡所得から控除額を差し引いて課税譲渡所得を求める
=2743.4万円ー3000万円
=(0円を下回る)
譲渡所得が控除額を下回る場合、全額控除となり、譲渡所得税の金額が0円になります。(確定申告は必要です。)
▼取得費加算の特例を適用する場合
相続した土地を3年10カ月以内に売却すると「取得費加算の特例」を適用できます。
不動産を相続してから3年10か月以内に売却した場合に、相続税額のうち一定金額を取得費として換算してもよいという特例。相続税を納付している場合に適用可能。
参考:国税庁|相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
ステップ1:課税譲渡所得を計算
取得費がわからないため、譲渡価格の5%で計上します。
さらに、この土地は相続してから3年10カ月以内に売却しているため、「取得費加算の特例」が適用できます。相続税額のうち、取得費に加算できる金額は以下の式で求めます。
※相続税の課税価格…課税の対象となった相続財産の総額
=680万円×4000万円/(8000万円+0万円)
=340万円
=譲渡所得-{(譲渡価格×5%+相続税のうち取得費に加算できる金額)+譲渡費用}
=3000万円 ー(150万円+340万円+106.6万円)
=2403万4000円
ステップ2:課税譲渡所得に税率をかける
相続人の所有期間は2年ですが、相続した土地なので、被相続人の所有期間と通算して「長期譲渡所得」の税率が使えます。
税金 | 税率 |
---|---|
所得税(+復興特別所得税) | 15.315% |
住民税 | 5% |
それぞれの税率を、課税譲渡所得にかけ合わせます
=2403.4万円 × 15.315%
=368万807円(1円未満切り捨て)
=2403.4万円 × 5%
=120万1700円
かかる税金の合計金額は、488万2507円です。
ケース⑥所有期間が5年を超える土地を売却した
- 譲渡価格:3000万円
…土地の売却代金など - 取得費:2500万円
…土地の購入代金など - 譲渡費用:106万6000円
…売却時の仲介手数料、印紙代など - 所有期間:20年
ステップ1:課税譲渡所得を計算する
=3000万円-(2500万円+106.6万円)
=393万4000円
ステップ2:課税譲渡所得に税率をかける
所有期間は17年間なので、税率は「長期譲渡所得」の税率を用います。
税金 | 税率 |
---|---|
所得税(+復興特別所得税) | 15.315% |
住民税 | 5% |
それぞれの税率を課税譲渡所得にかけ合わせて、税額を算出します。
=393.4万円 × 15.315%
=60万2492円(1円未満切り捨て)
=393.4万円 × 5%
=19万6700円
かかる税金の合計金額は、79万9192円です。
ケース⑦所有期間が5年以下の土地を売却した
- 譲渡価格:3000万円
…土地の売却代金など - 取得費:2500万円
…土地の購入代金など - 譲渡費用:106万6000円
…売却時の仲介手数料、印紙代など - 所有期間:4年
ステップ1:課税譲渡所得を計算する
=3000万円-(2500万円+106.6万円)
=393万4000円
ステップ2:課税譲渡所得に税率をかける
所有期間は4年間なので、税率は「短期譲渡所得」の税率を用います。
税金 | 税率 |
---|---|
所得税(+復興特別所得税) | 30.63% |
住民税 | 9% |
それぞれの税率を課税譲渡所得にかけ合わせて、税額を算出します。
=393.4万円 × 30.63%
=120万4984円(1円未満切り捨て)
=393.4万円 × 9%
=35万4060円
かかる税金の合計金額は、150万9044円です。
土地売却の税金が計算できたらいつ支払うかを確認しよう
譲渡所得税を納付する場合以外にも、控除や特例の適用を受ける場合は確定申告が必要です。確定申告と納税のスケジュールを確認しておきましょう。
売却した翌年2月~3月に必ず確定申告
譲渡所得が発生したら、売却した年の翌年2月16日~3月15日(※2月16日、3月15日が土日祝日に該当する場合は翌平日となる)に確定申告を必ず行いましょう。
確定申告書類は国税庁サイトの「確定申告作成コーナー」や会計ソフトを使って簡単に作成可能です。期限内に申告と納税を行う必要があるので、確定申告の書類は早めに準備しておきましょう。
土地売却後の確定申告の必要書類が全てわかる!【チェックリスト付き】
所得税は確定申告のタイミングで納税
所得税(復興特別所得税を含む)は土地を売却した翌年の確定申告の期間中に納税をします。
振替納税の手続きをすることも可能で、利用する場合は4月頃に銀行口座から自動引き落としとなります。納税場所は税務署または金融機関となります。
住民税を支払うタイミング
住民税の納税は所得税のタイミングとずらして行われるので、忘れないように注意しましょう。住民税については所得税の確定申告を行えば改めて申告をする必要はありません。
確定申告をした年(土地を売却した翌年)の5月に各自治体から納付書が送られてくるので、指定された金融機関やコンビニエンスストア、各自治体で納付を行います。
原則現金での支払ですが、自治体によってはクレジットカードを利用することもできます。一括払いでも、年4回の分割払いでも納付できます。