自身で購入するだけではなく、相続によって所有する不動産が増えることがあります。
土地は一種の財産ですが、現在の住まいから離れた土地であったり、活用できる可能性が低い土地であったり、場合によっては「いらない」と感じることもあるでしょう。
いらない土地を所有することになったら、放置していると様々なデメリットが生じるため、対処法を考えることをオススメします。
本記事では土地の処分の方法と、2023年から新たに施行される「土地の所有権を放棄できる新制度」について解説しています。
いらない土地を所有し続けると生じる3つのデメリット
いらない土地を所有したまま放置し続けると、主に以下の3つのデメリットを生じます。
- 毎年固定資産税がかかり続ける
- 維持・管理の手間や費用がかかる
- 近隣とトラブルに発展する可能性がある
毎年固定資産税がかかり続ける
固定資産税や都市計画税は、土地を所有している限り、毎年支払わなければなりません。
使用していない土地でも、支払う必要があります。
家計の負担となる金額であればもちろん、納税額が少額だったとしても、使用していない土地に税金を支払い続けるよりも、早期に譲渡してしまった方がよいでしょう。
また自分の代で土地の所有権を譲渡してしまわなければ、さらに子どもの世代に問題を引き継がせてしまうことになります。
人口の減少や過疎地域の増加が進んでいて、子どもの世代では土地の譲渡はますます難しくなると予想できます。
なお、固定資産税評価額には免税点が定められています。
土地の固定資産税評価額が30万円未満であれば、固定資産税は課税されません。
(家屋の場合は20万円未満)
しかしながら、非課税の土地であれば放置していてよいというわけではありません。
維持・管理の手間や費用がかかる
土地は手入れをせずに放置していると、どんどん荒廃していきます。
そのため、定期的に雑草の草刈りや、樹木の剪定をして管理する必要があります。
遠方の土地の場合は、定期的に訪問して、点検や手入れをするのが難しいかもしれません。
自分で管理しきれない場合には、業者に管理を委託する必要があり、費用面のコストがかかります。
近隣とトラブルに発展する可能性がある
土地を放置して荒れ放題にしてしまうと、近隣へ迷惑がかかってトラブルに発展する可能性があります。
たとえば伸び放題になった草木が隣地に侵入すると、隣地の所有者に迷惑をかけてしまいます。
草藪になってしまうと害虫が発生しやすいほか、荒れている土地はゴミの不法投棄に遭いやすくなります。
また、建物が残っている場合、倒壊の危険性があるだけでなく、不審者が居着いたり、放火に遭ったりと犯罪に利用される恐れがあります。
こうした理由から土地を放置していると、近隣の住民や土地の所有者から苦情を受けることがあります。
万が一、放置していた土地が原因で近隣の土地や住民に実害を与えるような事態が起きれば、損害賠償を請求される可能性もあります。
予測できないリスクを回避するためにも、土地を所有している限りはきちんと維持と管理を行い、管理し続けられない場合は土地を手放す決断をしましょう。
相続した土地がいらない時の対処法
土地を手放すことを決めたら、以下のような方法で対処することができます。
- 仲介で売却する
- 買取で売却する
- 贈与する
- 相続放棄する(相続前の土地の場合)
農地については以下の記事をご参考にしてください
不動産会社の仲介で売却する
土地を譲渡したい時は、まずは不動産会社に相談しましょう。
自分にとってはいらない土地でも、他の誰かにとっては必要な土地である可能性はゼロではないため、一度売りに出してみましょう。
土地によっては譲渡費用の方が、売却価格よりも高くついてしまうこともあるかもしれません。
それでも他の相続財産で譲渡費用を賄うことができ、さらに手元に残る見込みがあれば、相続放棄するよりも、相続してから譲渡するのがオススメです。
土地を売却する時には、まずは不動産会社の査定を受けることになります。
不動産一括査定サイトを利用すれば、自宅に居ながらでも、遠方の土地の査定を受けられます。
すまいステップは、大手不動産会社から地元密着型の中小の不動産会社まで、多数の優良不動産会社が参加している不動産一括査定サイトです。一度に最大4社まで見積もりを依頼できます。
特に地方の土地は、地元の不動産会社の方が売却のノウハウを持っていることも多くあります。ぜひ利用してみてください。
いつまでも売却できない土地は買取で売却する
仲介で売り出してもいつまでも売却できない土地は、不動産会社の「買取」で売却しましょう。
仲介による売却は個人の買主を探しますが、買取は不動産会社自身が買主となることが特徴です。
不動産会社との合意のみで契約が締結できるため、仲介よりも素早く確実に売却できる点がメリットです。
ただし、買取価格の相場は低く、仲介で売るよりも安値での取引になります。
無償で譲渡する(贈与する)
代金はいらないから土地を処分したいという場合には、親族や第三者に贈与するという手段もあります。
ただし、土地を個人や法人に贈与する場合、相手に様々な税金の負担が発生します。
たとえば個人から個人に贈与する場合は、贈与された相手が贈与税や登録免許税、不動産所得税を支払う必要があります。
また、個人から法人への譲渡の場合、譲渡された法人には法人税が課せられ、譲渡した個人には所得税が課税される場合もあります。(みなし譲渡)
【相続前の土地】相続放棄する
いらないと考えている土地がまだ相続前であれば、「相続放棄」によって所有権を手放すことができます。
ただし、被相続人(亡くなった人)の全ての財産を放棄することになります。
相続放棄をするには、相続開始から3ヶ月以内に所定の手続きをする必要があります。
手続きの流れは、以下の通りです。
- 財産調査を行う
- 相続放棄に必要な書類を集める
- 家庭裁判所に相続放棄の申し立てをする
- 相続放棄申述受理通知書を受け取る
相続放棄申述受理通知書を受け取ると、相続放棄は完了となります。
国に土地を引き取ってもらえる新制度は2023年から
2022年現在では、一度相続した土地の所有権の放棄はできません。
ただし、2023年の4月27日からは段階的に「相続土地国庫帰属制度」が施行されるため、相続後に所有権を放棄できるようになります。
相続土地国庫帰属制度とは
相続土地国庫帰属制度とは、相続や贈与で土地の所有権を有する人が、権利を放棄して、国(国庫)に土地を帰属させることを可能とする制度です。令和5年(2023年)4月27日から施行されます。
所有者がわからないまま放置されている土地の増加を背景に、相続登記の義務化と合わせて、不要な土地を国庫に帰属させる制度の新設が決まりました。
相続土地国庫帰属制度の利用条件
制度の利用には、まず土地を取得した相続人が申請書と必要書類を提出し、引き取りの可否の審査を受ける必要があります。
(共有の土地の場合は、持ち分の所有者全員で申請します。)
注意点として、すべての土地を無条件に国が引き取ってくれるわけではありません。
以下は国庫帰属が認められない土地の例です。
- 建物、工作物、車両などがある土地
- 土壌汚染や埋設物がある土地
- がけ地
- 境界が不明確な土地
- 担保になっている土地
- 通路など他人に使用される可能性がある土地
参考:法務省民事局パンフレット
引き取り可能な土地の具体的な要件は制定中ですが、「通常の管理または処分にあたり、過分の費用・労力を要する土地」の引き取りは行わないという方針のようです。
制度を利用するにあたっては、解体工事や土壌調査、境界確定の手続きが必要になる可能性が高いと心得ておきましょう。
負担金がかかることに注意
相続土地国庫帰属制度を利用するには、まず審査手数料を申請時に支払わなければなりません。
また、土地の国庫帰属が承認された場合は、負担金を納付する必要があります。
この負担金は、10年分の土地管理費相当額になる予定です。
今後、具体的な金額の算定方法が政令で定められていきますが、無償で引き取ってくれるという制度ではないことには注意が必要です。
施行までに手放すには別の対処法を取ろう
制度が施行されるまでは、所有権を手放す方法は第三者への譲渡や贈与に限られます。
2023年度の固定資産税の支払いを避けたい方は、今年中に譲渡や贈与を行いましょう。
いらない土地は早めに処分方法を決めよう
土地を売却するには手間や時間がかかるため、特に遠方の土地の場合には、なかなか取りかかれないかもしれません。
しかし、いらない土地を所有したままだと、税金を支払い続けなければならず、土地の維持や管理もし続けなければなりません。
2023年に土地の所有権を放棄できる新制度が施行されますが、こちらも無償で利用できるものではありません。
売却するか贈与するか、相続放棄をするか新制度による所有権放棄をするか、どの方法を選択するのがご自身にとって最善になるか迷う場合には、まずは不動産会社に相談してみましょう。