相続した家を売却するなら、相続から売却までの全体の流れを把握しておくことが大切です。流れを知っておくと、スムーズに売却ができます。
また、相続した家を売るときには、いくつかポイントがあります。損なく売却するためにも、売却の流れや売り方のポイントを、詳細まで知っていきましょう。
家を相続してから仲介で売却するまでの流れ
相続した家をスムーズに売却するには、相続から仲介で売却するまでの大まかな流れを把握しておく必要があります。
- 不動産の名義変更を行う
- 通常の不動産売却と同じ手順で不動産を売却する
- 換価分割の場合は現金を分配する
- 確定申告を行う
全体の流れを理解して、滞りなく相続した家を売却しましょう。
不動産の名義変更を行う
不動産を相続したなら名義変更を行います。名義変更は法務局で行うことができ、所有権の移転登記を申請することで完了します。
所有権の移転登記は、司法書士に依頼することも可能です。司法書士に依頼する場合は、別途報酬の支払いが必要であることは覚えておきましょう。
通常の不動産売却と同じ手順で不動産を売却する
名義変更が完了した後は、通常の不動産売却と同じ手順で売却活動を進めます。
- 不動産会社による査定を受ける
- 仲介を依頼する不動産会社と媒介契約を結ぶ
- 売却活動を開始する
- 買主と交渉して売買契約を結ぶ
- 決済と引き渡しを行う
相続した家だからといって、不動産の売却手順は通常と変わりません。相続の場合は、相続手続きや売却後の利益分配などが、通常の売却とは異なるケースが多いです。
換価分割の場合は現金を分配する
家の売却価格を相続する人で分配する換価分割を選んだ場合は、対象となる人で現金を分配します。換価分割を選択しない場合は、相続した人がそのまま売却価格を手元に残せます。
相続の方法は相続前に決めるため、法定相続人全員で話し合って、どのように資産を分割するのかを決めておきましょう。
確定申告を行う
家を売却して利益が出た場合は、売却した翌年に確定申告を行います。利益の有無は、次の式で計算します。
- 売却価格-売却にかかった費用-不動産の取得費
上記の式で計算して、プラスになる場合は利益が発生しているため、譲渡所得税を支払うために確定申告が必須です。確定申告は2月16日から3月15日までの間に行う必要があり、期限を超過すると延滞税などのペナルティが課せられるため、注意しなければなりません。
相続した家を売却する際に活用できる特別控除
相続した家を売却する際には、活用できる特別控除が複数あります。
- 被相続人が居住用財産を売った時の3,000万円特別控除
- 自己居住用財産を譲渡した時の3,000万円特別控除
- 相続財産を譲渡した時の取得費の特例
- 特定のマイホームを買い換えた時の特例
それぞれどのような特別控除なのか、特徴の違いを含めて知っていきましょう。
被相続人が居住用財産を売った時の3,000万円特別控除
相続した人が1人で住んでいる居住用財産は、売却時に3,000万円の特別控除を適用できます。適用するには相続した家に1人で住むことに加えて、相続から3年以内に売却することが条件です。
また、上限はあるものの、別の3,000万円特別控除とも併用が可能です。他にも特定のマイホームを買い換えた時の特例とも、併用できます。相続財産を譲渡した時の取得費の特例とは併用ができず、どちらか一方を選択して適用することになります。
自己居住用財産を譲渡した時の3,000万円特別控除
相続した財産をマイホームとして利用していたなら、売却時に3,000万円の特別控除を適用できます。控除を適用する条件は、次の通りです。
- 現在主に居住している住宅の売却
- 取り壊した場合は1年以内に売却
- 空き家の場合は住まなくなってから3年以内の売却
- 家族など特別な関係の人への売却ではないこと
- 前年や前々年に同じ特例を受けていないこと
3,000万円の特別控除は、被相続人が居住用財産を売った時の3,000万円特別控除と取得費加算の特例と併用可能です。特定のマイホームを買い換えた時の特例とは併用ができず、選択制となります。
3,000万円の特別控除を適用することで、相続前に売却し、現金で相続することも可能です。ただし、現金で相続する場合は、税金が高くなるため、基本的には不動産で相続してから売却することがおすすめです。
相続財産を譲渡した時の取得費の特例
相続した不動産を相続から3年10ヶ月以内に売却することで、売却した家にかかった相続税を、不動産の取得費に計上できます。取得費加算の特例は、被相続人が居住用財産を売った時の3,000万円特別控除とは併用できず、どちらかを選択することになります。
また、自己居住用財産を譲渡した時の3,000万円特別控除と特定のマイホームを買い換えた時の特例とは併用が可能です。
特定のマイホームを買い換えた時の特例
相続した家をマイホームとして利用し、売却時にマイホームを購入する場合は、特定のマイホームを買い換えた時の特例を適用できます。特例を適用することで、売却時にかかった税金を将来に繰り延べることができ、買い替え時の税負担を減らせる点がメリットです。
買い替えの特例は相続財産の3,000万円特別控除と取得費加算の特例とは併用できますが、マイホームを売却した際の3,000万円の特別控除とは併用できず、選択制となります。
相続した家を売却せずに放置しておくデメリット
相続した家を売却せずに放置しておくことには、さまざまなデメリットがあります。
- 家を維持するために費用がかかる
- 特定空き家に指定されると固定資産税が上がる
- 近隣住民とのトラブルが発生する
- 不法投棄や放火のリスクが高まる
- 今後価格が下落する可能性がある
デメリットを理解して、相続した家は放置せずに早めに売却しましょう。
家を維持するために費用がかかる
相続した家は維持のために費用がかかります。家は所有しているだけで固定資産税がかかり、所有者は毎年支払わなければなりません。
また、ライフラインの契約をしているなら、水道やガス、電気代などの基本料金がかかります。保険に加入している場合は、毎年保険料も支払わなければなりません。空き家でも所有しているとさまざまなコストがかかり、劣化した家の修復費用なども考えると、高額な費用がかかることも多いです。
特定空き家に指定されると固定資産税が上がる
家を放置し続けると、自治体によって特定空き家に指定される場合があります。特定空き家に指定されると、50万円以下の過料が課せられたり、固定資産税の軽減措置が適用外となったりして、税負担が増えます。
土地にかかる固定資産税は最大6倍になるため、税負担は重くなりやすいでしょう。特定空き家に指定されるのは、倒壊リスクによって周辺住民に危害を及ぼす可能性がある場合や、景観を著しく損ねる場合です。
また、特定空き家に指定されたまま放置していると、行政代執行となり、空き家を強制的に売却、解体されることもあるため、早めに対処しなければなりません。
近隣住民とのトラブルが発生する
長期間放置された空き家は、雑草が生い茂ったり、害虫や害獣が発生したりすることも多いです。雑草の繁茂や害虫などの出現によって近隣住民に迷惑をかけてしまい、場合によってはトラブルが発生することもあります。
トラブルに巻き込まれないためにも、空き家はこまめに管理して、状態が悪化しないように管理、保全をしなければなりません。
不法投棄や放火のリスクが高まる
空き家のまま放置していると、不法投棄や放火など、犯罪に巻き込まれるリスクが高まります。不法投棄によってゴミ屋敷になると、周辺住民に迷惑がかかります。また、放火によって近隣に火が燃え移った場合は、損害賠償を請求される可能性も0ではありません。
空き家のまま放置すると、さまざまな犯罪に巻き込まれるリスクが高くなるため、犯罪者の温床を作らないためにも、定期的に管理するか早めに処分することが大切です。
今後価格が下落する可能性がある
将来的に売却を考えている場合は、今後の価格下落の可能性に注意しなければなりません。2023年現在では団塊の世代が高齢者となっており、今後多くの不動産が相続され、売りに出される可能性があります。
つまり、市場が供給過多となって需要を上回り、不動産の売却価格が下がってしまうリスクが高いです。少しでも高値で売却したいなら、供給過多にならないうちに家を売却することがおすすめです。
相続した家を売却する際にかかる税金
相続した家を売却する際は以下の税金がかかります。
払い忘れるとペナルティを受ける可能性があるため、しっかりと確認しておきましょう。
- 相続登記の登録免許税
- 譲渡所得税
- 印紙税
相続登記の登録免許税
家を相続した場合、被相続人から相続人への名義変更が必要です。
この名義変更手続きを「相続登記」と呼び、登録する際に税金が発生します。
税額は、相続した不動産の固定資産税評価額に0.4%をかけた金額です。
なお、相続登記はこれまで義務化されていませんでしたが、2024年4月1日から義務化されることが決定しました。
法務局の公式ホームページにも正式に記載があります。
(1)相続(遺言も含みます。)によって不動産を取得した相続人は、その所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければなりません。
引用:東京法務局
また、義務化に伴って、正当事由なく義務違反した場合は10万円以下の過料が課せられる可能性があります。
相続時は忘れずに登記しましょう。
譲渡所得税
譲渡所得税とは、不動産を売却して得た利益(譲渡所得)に対して課せられる税金をいいます。
具体的には、譲渡所得に対して「所得税」と「住民税」がかかり、不動産の所有期間によって税率が異なります。
種類 | 対象期間 | 税率 |
---|---|---|
短期譲渡所得 | 所有期間5年以下の土地・建物 | 39.63%(所得税 30% 、住民税 9%、復興所得税 0.63%) |
長期譲渡所得 | 所有期間5年を超える土地・建物 | 20.315%(所得税 15% 、住民税 5%、復興所得税 0.315%) |
5年を超えているかどうかで大きく税率が異なるため、できれば5年以上所有してから売却した方がよいといえます。
譲渡所得税の求め方は複雑のため、詳しくは以下の記事で解説しています。
印紙税
印紙税とは、売買契約書に貼る印紙にかかる税金をいいます。
税額は不動産の売買価格によって異なります。
記載金額 | 税額 |
---|---|
100万円超500万円以下 | 1,000円 |
500万円超1000万円以下 | 5,000円 |
1000万円超5000万円以下 | 10,000円 |
5000万円超1億円以下 | 30,000円 |
1億円超5億円以下 | 60,000円 |
印紙税を支払わないとペナルティとして通常の3倍の税金が課されるので注意しましょう。
必要のない家を相続したらできるだけ早く売却を検討しよう
必要のない家を相続したなら、できるだけ早く売却を検討しましょう。相続した家を放置し続けると、さまざまなデメリットが生じます。
場合によっては金銭的な負担が増えてしまうこともあるため、損をしないためにも早めに売却することがおすすめです。相続した家を売却する手順を把握して、必要のない家はスムーズに手放しましょう。