マンションを相続する時、「売却すべきか」「住み続ける」「賃貸に出す」など様々な選択肢があります。
自分がどの選択肢が正解なのか、分からない方が多いのではないのでしょうか。
この記事では、相続するマンションを売却すべきかを紹介しています。ほかにも、相続の基礎知識なども解説しているのでぜひ参考にしてみてください。
マンション相続の流れ
マンション相続は複雑で流れを掴めている方は多くはないのでしょうか?
以下では、マンション相続の流れと相続税の納め方について解説しています。
マンション相続の流れ
- 相続人を確定する
- 相続税の申告をして相続税を納める
- 相続したマンションの名義変更をする
相続人を確定する
マンションを所有する親や親族が亡くなった際に、マンションを誰が相続するか確定しなければなりません。
遺言書がない場合、相続人間で故人の「財産をどのように相続するか」話し合って決める、遺産相続分割協議を開きます。
遺産相続分割協議にてマンションの相続人が確定したら、相続税の申告をして相続税を納める義務が発生します。速やかに手続きを行いましょう。
相続税の申告をして相続税を納める
相続税が発生する場合、被相続人が亡くなった翌日から10カ月以内に相続税を申告しなければいけません。
申告や納付が遅れると延滞税が発生するので、必ず期限までに申告・納付を行いましょう。
相続税の申告書を作成・提出する
相続税の申告をして相続税を納めるまであまり時間がありません。被相続人が亡くなったことを知った翌日から10カ月以内に、税務署にて相続税に関する手続きを完了させる必要があります。
相続税の申告先は税務署ですが、遺産を相続した人の住所地を管轄する税務署ではありません。
被相続人の住所を所管する税務署に、申告用紙やマイナンバーの写し、全相続人の印鑑証明などの必要書類を提出します。
相続税を納付する
相続税の納付手続は、税務署だけではなく金融機関やインターネットバンキングでも行えます。
また相続放棄をする場合には、被相続人が亡くなったことを知ってから3カ月以内に手続きをする必要があります。
相続したマンションの名義変更を行う
マンションを相続したら、名義変更を行います。家主が亡くなったことによって発生する名義変更を「相続登記」といいます。
これまで、相続登記や不動産所有者の氏名や住所の変更登記は義務ではありませんでした。
ですが、「民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)の改正等に関する要網案」が2021年2月に決定しました。
法案が通れば2023年度から、相続するマンションの名義変更が義務化されます。
マンションの名義変更で必要な書類
権利関係を確認するために必要な書類は、以下の通りです。登記事項証明書は法務局で入手できます。
- 登記事項証明書
- 戸籍謄本(相続人全員分)
- 不動産の登記済権利書
また法務局に提出する書類は以下の通りです。
- 登記事項証明書
- 戸籍謄本(相続人全員分)
- 除籍謄本・改製原戸籍(被相続人のもの)
- 住民票除票または戸籍の附表(被相続人のもの)
- 住民票・印鑑(相続人のもの)
- 印鑑登録証明書
- 固定資産税納税通知書
- 遺言書や遺産分割協議書、相続関係説明図など
名義変更の期限はありませんが、名義変更しないとマンションの売却はできません。
もしもマンションを売却するつもりであれば、早めに名義変更を行いましょう。
マンション相続の遺産分割方法
マンション相続をする際に、遺産の分け方がいくつかあります。
この章では、マンション相続でおすすめの遺産分割方法を3つ紹介しています。
おすすめの遺産分割方法
- トラブルになりにくい「換価分割」
- 資金に余裕のある方は「代償分割」
- 「共有分割」はトラブルになる可能性!
トラブルになりにくいのは「換価分割」
換価分割は、相続財産のマンションを売却して売却益を相続人間で分ける分割方法です。
「マンションを相続しても住む予定がない」「他の分割方法では難しい」時に換価分割が用いられます。
マンションを手放すことになりますが、現金を平等に分配できるのでトラブルが起きにくい遺産分割方法と言えます。
資金に余裕のある方は「代償分割」
代償分割は、相続人1人がマンションをすべて相続して、残りの相続人に相続分の金額を渡す分割方法です。
代償分割を行う場合、現金の用意が必要で相続するマンションによっては高額になる可能性があります。
自己資金に余裕のある方は、代償分割で相続することも検討しておきましょう。
共有分割はトラブルになる可能性がある!
共有分割は、相続するマンションを共有名義にして相続する分割方法です。
遺産分割の中では一番簡単で手っ取り早く見える共有分割です。
しかし、マンションを売却する際や賃貸に出す場合は、名義人全員の同意が必要になるのでトラブルが起きやすい遺産分割方法と言えます。
マンション相続でかかる税金
マンションを相続すると以下の税金が発生します。
- 登録免許税
- 相続税
この章では、マンション相続でかかる税金と相続税を抑える方法について解説しています。
登録免許税
登録免許税は、相続するマンションの名義変更(相続登記)をする際にかかる税金です。
相続登記にかかる登録免許税は、以下のように算出します。
相続税
マンションなどの財産を相続した場合、相続税がかることがあります。相続税の計算は以下の通りです。
相続税は控除が使えることも
マンションなどの不動産を相続した時に、控除が使えるケースがあります。
控除を利用することで、相続税がかからなくなったり、支払う額を軽減ができます。
よく用いられる控除は以下の2つです。
- 基礎控除
- 配偶者控除
相続でかかる負担を少しでも軽減できるので、使える控除は使っておきましょう。
基礎控除
基礎控除は、相続をする人全員が受けれる控除です。
基礎控除額より相続税の方が高い場合は、控除分を差し引くことができます。
相続税の基礎控除は以下のように算出します。
配偶者控除
配偶者がマンションなどの財産を相続した場合、対象の財産が1億6000万円までは相続税が課税されません。
配偶者は相続税がかからないケースが多いので、利用できる控除は使っておきましょう!
▶マンション相続でかかる税金について詳しく知りたい方はこちら
相続するマンションの評価額の求め方
マンションは、評価額を算出した価値に基づいて相続税の金額が決まります。
この章では、相続するマンション評価額の求め方について解説しています。
マンション評価額の求め方は以下の通りです。
建物部分の評価額の求め方
建物部分の評価額は、「固定資産税評価額」を確認すれば求めることが可能です。
固定資産税評価額は、毎年4月に送られてくる「課税証明書」に記載されています。
土地部分の評価額の求め方
土地部分の評価額の求め方は以下の通りです。
- 路線価方式
- 倍率方式
路線価方式
路線価が定められてる市街地のマンションは、「路線価方式」によって求めることができます。
路線価方式で求める場合、以下によって算出できます。
倍率方式
郊外に建てられたマンションは、「倍率方式」によって求めることが可能です。
倍率方式で求める場合、以下によって算出できます。
相続したマンションを今すぐ売却するメリットとデメリット
相続してすぐに売却することに、どのようなメリットやデメリットがあるのかみていきます。今が売り時か、自分自身で判断しましょう。
相続したマンションを今すぐに売却するメリット
相続したマンションは、維持するだけでも大変です。ここでは維持費と売却額に着目し、早めに売却するメリットについて解説します。
維持費の負担がなくなる
自分たちで住んだり誰かに貸したりして活用できなければ、相続したマンションは無用の長物です。むしろ維持費が毎月かかるので、負担になることもあるでしょう。
戸建てと比較した場合、マンションのほうが駐車場代や管理費・修繕積立金などがあるため、維持費が高い傾向があります。庭がないからといって、決して維持費が安いわけではありません。
相続したマンションを早めに売却することにより、将来かかるはずだったマンションの維持費の負担をなくすことができます。
今なら比較的高く売却できる
マンションの価格は、その年によって変動します。売却を考えているのならば、マンション価格が高い時期を狙って売却したいものです。ここでは不動産価格の推移をみていきましょう。
不動産の価格ですが、2005年から2008年のリーマンショックまでは新築・中古に関わらず不動産が買いあさられ、「不動産ミニバブル」と呼ばれました。その後リーマンショックの影響で下落しますが、2013年頃からアベノミクスや東京オリンピック開催の影響により上昇に転じます。2019年も価格上昇は続き、新築マンションの平均価格は1990年代のバブル期に続く史上2番目まで上昇しました。
さて直近の2020年以降ですが、マンションの価格は変わらず上昇傾向にあります。マンション価格は上昇し続けているので、今のうちに売却すれば比較的高く売却ができるかもしれません。しかし不動産価格は常に変動を続けているので、下がる可能性もあります。
相続したマンションを今すぐに売却するデメリット
相続後すぐにマンションを手放して後悔するケースもあります。どのような場合に損が出やすいのかみていきましょう。
収益が得られなくなる
マンションをうまく運用すれば、収入を得ることが可能です。もしも人に貸すことができれば、維持費を相殺する以上の、安定した収入を得られるかもしれません。
しかし不動産の運用には、費用や手間がかかるのも事実です。人に貸すためには、リフォームや修繕をする必要があるかもしれませんし、不動産会社を通して入居者を探す必要も出てきます。
入居者が決まらない、建物や設備の劣化・故障、入居者のトラブルや災害が起きた場合のリスクなども考えた上で、マンションを慎重に運用する必要があります。
タイミングを間違えると大きな損失になる
マンションを手放す時期を間違えると、後悔することがあります。
例えばマンション周辺が再開発地域だった場合を考えてみましょう。再開発の工事が完了すると、通常周辺の不動産価格は上昇します。もしも価格が上昇する前にマンションを売却をしていたら、「あのときに売るんじゃなかった」と後悔するでしょう。またマンションの賃貸価格も高くなるので、マンションを人に貸して上手に運用すれば、より多くの収入が得られたはずです。
マンションを売却しようと思ったら、自分自身でも情報を集める必要があります。不動産会社の担当者のいいなりにならず、適正価格や売却のタイミングを自分で見極められるよう、情報収集をしっかり行いましょう。
相続したマンションを売却する時のポイント
マンション売却は、ポイントを押さえれば高く売却することも可能です。ここでは売却時のコツについて解説します。
相続やマンション賃貸に詳しい不動産会社を選ぶ
不動産会社には、それぞれ得意分野があります。その土地に詳しい担当者がいる不動産会社もあれば、マンション売却に強い不動産会社もあります。
相続マンションの売却を考えているのならば、相続物件に詳しい不動産会社に依頼するとよいでしょう。不明な点があり相談したいときに、相続に必要となる手続きのサポートをしてくれる可能性があります。
また売却をするか、賃貸として人に貸し出すか決めかねているのならば、賃貸に詳しい不動産会社にしておくと安心できます。
どちらにしても、不動産会社に査定を依頼する段階で最初から1社に絞り込むのは危険です。複数の不動産会社を回ったりインターネットの無料一括査定サービスを活用したりして、自分にとって最適なサービスを提供してくれる不動産会社を選びましょう。
立地条件やマンションで売却方法を決める
仲介にするか、買取にするかで悩んでいるのならば、物件の立地を元に検討してみましょう。
一般的にマンションを購入する人は利便性を重要なポイントとして考えています。そのため駅近や利便性のよい立地条件の場合、仲介でも比較的早く買手がつく傾向があります。
反対に駅から遠かったり、古すぎる物件は買手を見つけるのが難しく、不動産買取で売却した方がよいケースが多いです。
迷ったら、物件の立地で売却方法を決めてもよいかもしれません。
基本的にリフォームは行わない
「リフォームしたら、早めに買主が見つかるかもしれない」と、リフォームをしてしまう人がいますが、後悔することが多いようです。
リフォームをした場合、そのリフォームにかかった費用は自分自身で負担するか、売却金額に上乗せされることになります。上乗せした場合、適正価格よりも高くなってしまうのでなかなか買主が見つからないのです。
また中古マンションを購入する人は、クロスやフローリングなどのリフォームを自分たちで行うことを前提として考えている人が多いです。気になるようでしたら、内覧のときに「入居後に好きなようにアレンジしてください」と伝えればよいでしょう。
しかしデザイン上の問題ではなく、故障や修繕が必要な箇所は、内覧者の心証もよくないので内覧前に直しておくことをおすすめします。
相続したマンションを売却する時の注意点
相続したマンションは、相続税の申告をする必要があります。ここでは相続税の節税の観点から、売却のタイミングについて解説します。
相続税の申告期限から3年以内に売却する
マンションを相続すると、相続税がかかります。またこのマンションを売却すると譲渡所得税を支払う義務も発生し、多くの税金を取られてしまいます。
しかし税制度の特例を活用すると、この税負担を軽減することが可能です。相続したマンションを売却する際に関わる特例には、「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」があります。
これは相続税の申告期限から3年以内に物件を売却すれば相続税を費用として差し引けるというもので、譲渡所得税を安く抑えることができます。相続人の負担を減らす目的で作られた特例なので、上手に活用しましょう。
小規模宅地の特例なら相続税の申告期限後に売却する
相続税評価額の減額幅が大きい特例に、「小規模宅地等の特例」があります。この特例の要件に該当すると、相続した土地にかかる相続税を最大80%に減額できます。
この特例はあくまで「土地」の相続評価額が減額される制度ですが、マンションの土地に対しても行えます。しかし一般のサラリーマンは適用要件から外れやすいので、注意が必要です。
大前提として、亡くなった人や生計を一にする人が居住していた土地でなければなりません。さらに、相続人が「配偶者」「同居親族」「家なき子」に該当する必要があります。
つまり親と子どもで別居および生計を一にしないで生活していた場合には、適応から外れてしまうのです。小規模宅地等の特例に該当するかどうか不安がある場合には、専門家に相談するとよいでしょう。
また相続税の申告期限は相続を知った翌日から10ヶ月以内ですが、申告期限以前に売却をすると小規模宅地等の特例が適用されないので注意してください。
相続したマンションの売却は慎重に検討することが大切
相続税や、相続したマンションの維持費は決して安くありません。そのため相続したマンションの売却までの流れを知らないと損をしてしまうことがあります。
納税のポイントを押さえること、そして売却を仲介してくれる不動産会社選びは重要です。不動産会社を選択する際には査定先を一社に絞らず、一括査定サービスを活用したり複数の不動産会社を回って、複数の不動産会社に査定を依頼しましょう。
自分自身でも情報収集を行い、売却まで慎重に進めていくことが相続マンション売却の秘訣です。