建物を解体しまっさらな状態の土地を更地と言います。
老朽化の激しい家や長く放置された空き家などは、倒壊の危険性や、放火・不審者の侵入など様々なリスクにさらされています。
加えて、売却を考える際に「買手が見つかりにくい」という理由もあり、古い家の更地化を考える方は多くいます。
しかし、古い家の更地化にかかる費用は非常に高額で、その後の売却の行く末にも影響するので、実施するかは慎重に考える必要があります。
この記事では、更地にかかる費用を始めとして、費用を抑える方法や更地の流れを解説します。
また、更地にする判断が正しいか正しいのか確認できるように、更地にする注意点と更地にせずに売却する方法を紹介しております。
古い家を更地にするか考える上でのポイント
更地にするということは、建物という不動産を無くすということです。
更地にするための解体工事が始まってから、「ああしておけば良かった」と後悔しないよう、以下4つの注意点を確認しておきましょう。
本当に建物に価値は無いのか
木造の建物は「築20年を超えるとほとんど価値がない」と言われていますが、売れないということではありません。
購入側にとっては、築30年を超えていても安く買える建物に魅力を感じる場合もあります。
解体しなくても売れる物件であることを見過ごさないよう、建物の価値が無いか確認してから更地化を決めましょう。
建物の価値は需要によるので、地域の特性・需要を理解した不動産会社に相談して決めましょう。
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再建築ができる土地か
一度更地にすると、再び建物を建てられない土地があります。
再建築できない土地は価値が低く、買手が見つかりづらいので、再建築ができる土地か確認してから更地を決めましょう。
再建築ができない土地とは
建築基準法の接道義務を満たしていない土地は再建築ができません。
接道義務は、「幅員4m以上の道路に2m以上接していないといけない」という決まりです。
また、接道義務が設けられているのは、都市計画区域と準都市計画区域内の土地に限られます。
土地の売却金額で解体費用を賄えるか
土地の価値が低い地方では、土地の売却金額より解体費用の方が高くなる場合があります。
更地を決断する前には、不動産会社に査定をしてもらい「解体して売却した場合いくらで売れるのか」を確認しておきましょう。
土地の売却金額が著しく低かった際は、更地にせずに行う売却も考えてみましょう。
固定資産税が高くなる可能性を考えているか
建物が建っている宅地には固定資産税の減税措置が適用されていますので、更地にすることで減税措置が適用されなくなり、固定資産税が高まる場合があります。
減税措置の内容は、「土地の固定資産税評価額を最大1/6にする」といったもの。そのため、減税措置が適用されなくなると土地の固定資産税が最大で6倍になります。
固定資産税は毎年1月1日の不動産の状況で計算されます。
例えば、売却が長引いてしまい翌年の1月1日を超えてしまったら、土地の固定資産税は高まります。
整地の方が売れやすいが、さらに費用がかかる
建物を解体した土地を更地と言います。
更地の土地に転圧作業を実施し、平坦に踏み固められた土地を整地と言います。
更地は、凹凸があったり雑草が生えたままの状態だったりするので、購入希望者の印象がいいとは言えません。
対して整地は、すぐに土地活用ができる丈夫で綺麗な土地なので、購入後の活用イメージを膨らませやすくなります。
そのため、整地の方が買われやすいと言えますが、解体費用等に加えてさらに整地費用が掛かります。
地中に埋没物などが無い場合は、1㎡あたり300~600円(粗整地)が相場です。
地中埋没物に加えて、雑草の除草等が加わると費用が高まります。
また、斜面などで作業が難しい場合も費用が高くなります。
古い家を更地にするのにかかる費用
家を更地にするには、解体費用が掛かります。
その他、庭木や池、門など建物以外の部分には付帯工事費用、工事で出た廃材の処理には廃材処理費用も掛かります。
合わせると、少なくても100万円。高くて300万円程費用が掛かります。
家の解体にかかる費用
- 解体費用
- 付帯工事費用
- 廃材処理費
以下で詳しく解説しますが、解体にかかる費用の多くは人件費であるため、工事期間が短ければ安く、長ければ高くなります。
解体工事事例
事例1(解体期間12日)
- 山梨県
- 木造2階建て
- 延べ床面積52.1坪
事例2(解体期間8日)
- 福岡県
- 木造2階建て
- 延べ床面積22坪
事例2(解体期間6日)
- 東京都
- 木造2階建て
- 延べ床面積18.9坪
また、解体費用は非常に高額なため、ローンで賄う方もいらっしゃいます。
空き家であれば空き家専門の解体ローン、建て替えであれば住宅ローンが利用できます。
解体費用相場
建物の構造が強固になるにつれて解体の手間がかさみ、費用もまた大きくなります。
以下は、解体費用坪単価の相場です。
家の構造 | 坪単価 | 解体費用の相場 |
---|---|---|
木造 | 3~5万円 | 30坪:90万~150万円 40坪:120万~200万円 50坪:150万~250万円 |
鉄骨造 | 5~7万円 | 30坪:150万~210万円 40坪:200万~280万円 50坪:250万~350万円 |
鉄筋コンクリート(RC造) | 6~8万円 | 30坪:180万~240万円 40坪:240万~320万円 50坪:300万~400万円 |
解体費用は業者による価格差が激しいので、3社を目安に見積もりとり比較するようにしましょう。
付帯工事費用
建物以外(庭木など)の解体には付帯工事費用が掛かります。
付帯工事の一例と費用相場
- 残置物撤去処分費用:1㎡あたり8,000円~1万円
- ブロック塀撤去処分費用:1㎡あたり2,000円~3,000円
- 門の撤去処分費用:約30,000円〜110,000円
- 庭木の撤去:高さ3~4㎡、太さ直系20cmの樹木1本で約1万円
- 庭石の撤去:1tあたり約1万円
- 倉庫・物置:一個あたり2~3万円
- 井戸の埋め戻し費用:3~5万円
- アスベスト除去費用:1㎡あたり2万~8.5万円(300㎡未満の場合)
付帯工事費は個人差が大きいため、一概にどのくらい費用がかかるという目安が提示しにくくあります。
例えば、アスベストが含まれる家では大幅に費用が高まることもあります。
廃材処理費用
解体時に出た廃材を処理するための費用です。
廃材の種類により異なりますが、1㎡あたり5,000円~20,000円が相場です。
古い家を更地にする費用を抑えるコツ
古い家を更地にするには100万円単位の費用が発生します。
この費用をできる限り抑えられれば、更地化をもっと現実的に考えられるでしょう。
以下では、更地にかかる費用を抑える4つの方法を解説いたします。
補助金を利用する
自治体によっては古家の解体に関する補助金を用意している場合もあります。
建物が対象となるか、また解体費用のいくらまで補助されるかは、『お住まい地域 + 解体補助金』で検索し確認しましょう。
解体業者を比較して依頼する
解体費用はどの会社も一律ではありません。
解体業者を選ぶ際は、面倒がらずに複数の会社から見積もりをもらい比較する様にしましょう。
ただし、査定額だけで業者を決めるのは注意が必要です。
最終的に見積もり額を大きく超える金額を請求してくる業者もいるためです。
信頼できる業者を見極める際は、以下のポイントを注視しましょう。
- 現地調査を丁寧に行ってから見積もりを取っていること
- 見積もりの根拠がしっかりしていること
- 質問に対してわかりやすく答えてくれること
- 知識や情報が豊富なこと
など
6~9月(閑散期)に依頼する
解体業者にも繁忙期と閑散期があり、閑散期は安い価格で見積もりしてもらいやすくなります。
具体的には、6月~9月は閑散期で費用が安いと言えます。
次に、12月~1月も安く依頼しやすい傾向にあります。
解体費用を買い手と折半する
更地化した後売却することを考えている場合、買手との交渉次第で解体費用を折半できることもあります。
解体を買主に任せ、その分値引きを考えるといった売却方法もあります。
売却に関わることなので、不動産会社と相談をしつつ、その地域の需要を考慮して考えていきましょう。
更地にする費用はいくら?更地にする場合のメリット・デメリット
古い家を更地にせずに売却する方法
古い家でも、更地にせずに売却できる可能性は十分にあります。
「更地にしなくても売れたのでは…」と後悔を残さないよう、更地にせずに売却する方法について詳しく見ていきしょう。
ポイント
- そのまま売却する
- リフォームして売却する
- 不動産会社に買取してもらう
そのまま売却する
古い家でも、更地にせずにそのまま売却した方が買われやすい場合があります。
なぜなら、中古物件を買いたい人の多くは、「安く買って、自分好みにリフォームやカスタマイズしていきたい」と考えているからです。
売却前に更地化やリフォームをしてしまうと、その分売却価格は高まります。また、購入希望者の好みと合致しなくなる可能性もあるのです。
不動産流通経営協会の調査では、戸建て中古住宅の買主の内、売主が個人でリフォーム済みだった物件を購入した人は5.6%と少ないことが分かります。
反対に、購入後に自らリフォームをした買主が51.0%となっています。
不動産流通経営協会「不動産流通業に関する消費者動向調査」
を元にすまいステップ編集部が作成
人が住めないような家(旧耐震基準の家や、柱が腐食し倒壊の危険がある家)でなければ、まずはそのまま売却してみるのがおすすめです。
簡単なリフォームをして売却する
更地にしてから建て替えるより、リフォームをした方が建物の価値を高められるので高く売れる場合もあります。
外壁や水回りのリフォームだけでも、印象がずいぶん変わるため購入されやすくなる場合もあります。
中古住宅には安さを求める人が多いので、更地に比べると、建て替える必要が無いのは買主にとってもメリットと言えます。
ただし、前項で解説した通り、売主がリフォームした家を購入する人が少ない点に注意が必要です。
リフォームして売却するよりは、リフォームにかかる費用を安くして、そのまま売却した方が買主にとって自由度が高いと言えるでしょう。
不動産会社に買取してもらう
買取とは、不動産会社に直接家を買取してもらう方法です。
不動産会社を通して第三者に売却する方法は、仲介と呼びます。
仲介で売却できない物件でも、買取では売却できるケースはよくあります。
また、買取は購入希望者を探す必要がないため、早くて1週間程度で売買が成立し、仲介手数料もかかりません。
ただし、市場価格で売却する仲介に比べて、7割程の価格で取引されます。
売却方法 | 売却期間 | 仲介 |
---|---|---|
買取 | 1~14日 | 市場価格の7割以下 |
仲介 | いつ売れるか不明 | 市場価格 |
買上げ後は転売するから、できるだけ安く購入したいんだ。
買取のメリット
- 最短で確実に売れる
- 売却を周囲に知られにくい
- 契約不適合責任が免責になる
買取のデメリット
- 売却価格が安くなる
- 安く買いたたかれる可能性がある
買取は、全ての不動産会社が実施しているわけではありません。
また、どんな家でも必ず買取してくれるとあ限りません。
一括査定サイトのすまいステップでは、仲介・買取いずれも実施する不動産会社に査定を依頼できます。
一度に最大4社まで依頼ができるため、買取の可否や査定価格を簡単に比較できます。
そのまま売り出し、売れなかったら買取
仲介でそのまま売りに出し、売れなかったら不動産会社に買取してもらう方法もあります。
不動産会社が買取保証というサービスを提供している場合にのみ使える方法です。
買取保証は、「期間内に仲介で売れなかったら、不動産会社が買取することを保証する」サービスです。
買取してもらえる補償があるため、わざわざリスクをかけて更地化やリフォームをする必要はありません。
仲介で売り出し中に購入希望者が現れればより高値で売却できますし、万が一売却できなくても買取が保証されるので売れ残りのリスクもありません。
買取保証を提供しているかどうかは、不動産会社のホームページを確認するか、査定時に直接聞くようにしましょう。
まとめ
古い家や空き家の場合、建物を解体して更地にすると購入希望者に与える印象が良くなり、早期の売却が期待できます。また近隣とのトラブルや、放火・事件を未然に防ぐことも可能です。
建物を解体する費用はかかりますが、更地にすると、建物を維持管理する手間を抑えたり、修繕費などの維持費の負担が軽減したりと、多くのメリットがあります。
更地を検討する場合は、まず専門職である不動産会社に相談しましょう。どのような売却方法が自分にとってベストなのか知ることが、売却成功の第一歩です。