次世代マンションの代表として一時期ブームになったタワーマンション。
見た目がスタイリッシュであることや、セキュリティ面が充実していることから根強い人気をキープしていますが、一方では修繕コストが高いというデメリットがあり、建設ラッシュ初期の頃に建てられたタワーマンションの多くは、老朽化のリスクを抱えています。
一般的なマンションとタワーマンションの修繕内容の違い
2000年以降にかけてブームをむかえ、都市部を中心に現在も高い建設需要をキープしているタワーマンション。最近では地震の大きな揺れに強い免震構造の超高層マンションも増えてきており、人気が衰える気配はありません。
近代建築の象徴として知られるタワーマンションですが、一部の物件では老朽化のリスクを抱えており、大規模修繕による修繕コスト問題に直面しています。
一般的なマンションとタワーマンションの修繕コストの違い、修繕費の内訳を理解し、修繕積立金の活用方法についてシミュレーションしておきましょう。
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一般的なマンションであれば定期修繕のみでいい
修繕コストだけで見ても、タワーマンションと一般的なマンションでは大きな違いがあります。分譲マンションや木造アパート、あるいは低層マンションなどのいわゆる「タワーマンション以外の不動産物件」では定期的な修繕やメンテナンスなどがメインとなり、5年から10年というスパンで修繕を行えば当面のリスクはさけられるとされています。
一方、タワーマンションの場合、建物の構造がひとつひとつのマンションによって異なるため、「何年に一度メンテナンスを行えば安全」という統一した基準をあてはめることができません。
実際、バブル時代以降に相次いで建設されたタワーマンションでは老朽化による大規模修繕のリスクに迫られており、修繕積立金がメンテナンスのローテーションに追いつかない、という問題が起きています。
タワーマンション修繕の問題点
タワーマンションには、「標準設備が複雑すぎる」という問題があり、大規模修復を困難にしている要因ともなっています。エレベーター、エアコン、給湯、照明、セキュリティなど、タワーマンションの設備は特殊であり、それらはもちろん住民の暮らしの利便性を大きく向上させてくれますが、年月とともに設備は劣化し、一般的なマンション以上の頻度で修繕やメンテナンスを行わなくてはなりません。
タワーマンションでは、「大規模修繕工事のコスト+設備更新」を完全に最適化して管理する必要があり、不動産業界ではこの新しいアプローチは「計画的修理」とよばれています。タワーマンションの計画的修理にあたってはマンションの管理組合と設計会社、建設会社が緊密なコミュニケーションをとり、協力しなければ不可能であり、なおかつ住民ひとりひとりのコンセンサスも重要になってきます。
タワーマンションにつきまとう意外な弱点
多くのタワーマンションは、「排水管問題」という弱点をもっています。タワーマンション内部には多くの住居用ユニットが設計されているため、垂直配管は部屋の構造上ほとんどなじまず、下層フロアでは、排水管を水平方向に配置しています。排水管は季節を問わず腐食が進みやすく、配水管の寿命によってタワーマンション全体の修繕サイクルが決められると言われています。
また、工事のスケジューリングにも難点があります。排水管の改修で職人を手配するにしても、たとえば何日の何時であれば在宅しているのか、住民の予定を細かく把握しなければならず、それだけでもかなりの時間と労力を必要とします。
そのうえ、現場での予期せぬ変更にまで対応するとなると、管理組合の協力なしには不可能であり、結局は管理会社の都合を優先して一方的に押し切ってしまう、というパターンが少なくないようです。
タワーマンションブームから、10年以上の年月が経過しています。タワーマンションの修繕にはハードルが多いのも事実ですが、「大規模修理+設備更新」を基本とし、長期的なスパンで修繕積立金を見積もっておきましょう。
住民の理解も必要
不動産経営初心者にとってはわかりにくいかもしれませんが、タワーマンションの修繕においては住民のコンセンサスが大きなハードルとなる場合があります。
たとえば、上層階を中心としたメンテナンスの場合、下層階の居室ではどうしても窓がふさがれることになり、工事期間中は住民の不満が募ります。
また、タワーマンションならではの特徴として、比較的高所得層が集まりやすい、という点があります。大学教授や弁護士、官公庁の職員など専門性の高い職種に就いている人が割合として多く、なおかつ、いわゆる中流層の比率も多いため、修繕の方針についても多様な角度から要望が寄せられます。
たとえば廊下の電灯ひとつにしても、「変えるならLEDがいい」、「もっと省エネ効率の高い電灯を選ぶべきだ」などの意見が多く、管理者としてはそれらの要望に対応していく必要があります。
すなわち、タワーマンションの管理においてはフットワークの軽さがポイントとなり、修繕においても「いかに入居者のニーズをピンポイントにすくいとれるか」ということが明暗を分けると言われています。
・タワマンは修繕頻度が高い
・住民の理解も重要
・ニーズを細かく汲み取る
修繕費の内訳
一般的に修繕費としてはいくつかの項目が含まれ、それぞれに意味と定義が異なります。タワーマンションでも必要になる修繕費の詳しい内訳について把握しておきましょう。
外壁塗装
タワーマンションの修繕費のうち、比較的高い比率を占めているのが外壁塗装です。高層化が進むタワーマンションではどうしても外壁も老朽化しやすく、早ければ3年~5年という短いスパンで大規模な塗装工事をすることになります。塗装工事の期間中は各居室の日当たりが悪くなったり、騒音問題が発生しやすくなるため事前に住民のコンセンサスをとっておく必要があります。
内部設備の点検
タワーマンションに必須のエレベータも広い意味では消耗品であり、数年おきというスパンで点検保守を行い、予期せぬトラブルが発生して住民が混乱しないように予防策を講じる必要があります。
エレベータだけでなく、タワーマンションの場合には浄化槽も点検の対象となりますので、内部の浄化システムに異常がないかどうかを細かくチェックし、大規模な災害時にも問題なく機能が維持されている状態を常時保っておくことが重要です。
タワーマンションの管理費・修繕積立費は高すぎる!一般的なマンションとの相場を比較
・外壁塗装は数年おき
・内部設備も要チェック
・予期せぬ災害にそなえる
タワーマンション経営で重要なポイント
タワーマンションは一般的な不動産物件と比較しても特殊な部分があり、経営や投資にあたってはいくつかのポイントを特に強く意識しておく必要があります。
共益費と管理費
共益費および管理費は、マンションなどの共有部分の保守および管理にかかる費用です。基本的に、アパートのエントランス、階段、エレベーター、廊下、ゴミの集積所などが共有部分に含まれます。共益費および管理費は住民が快適に生活するために必要な施設の維持管理費として定義されているため、これらの費用は居住者が負担しなければなりません。
法的には、共益費および管理費の用途に関する特別な規則はありません。物件によっては、自治会費が共益費に含まれている場合があったり、水道メーターが共有されている場合は、物件全体の水道料金が共益費に含まれていたりする場合があります。共益費の主な用途は、下記になります。
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共益費は前払い可能
共益費及び管理費は、所有者または管理会社から同意が得られた場合は、賃貸料とともに半年または1年分を前払いすることができます。
また、共益費を値下げしてしまうことも可能であり、居住環境の充実度と共益費の水準が釣り合っていなかったり、保守管理が適切でないと判断される場合は、契約破棄の前に共益費の値下げを試みるのもひとつの方法です。
共益費および管理費は毎月納付すべきコストであり、基本的には支払いを拒否することは不可能です。共益費を支払っていない場合は賃貸借契約が取り消される可能性があるため、仮に値下げを希望するとしても、共益費をきちんと支払ったうえで交渉を進めたほうが良いでしょう。共益費および管理費の法的正当性については、自治体の無料法律カウンセリングなどを利用して弁護士に相談する方法もあります。
エレベーターと駐車場の扱い
エレベーターは建物と一体化していると見なされるため、共有スペースとして定義されます。一方、駐車場は私有スペースとして見なされ、駐車場の使用料金は共益費に含まれません。原則として、駐車場は不動産とは異なる契約になり、不動産契約と連動して自動的に借りられるとは限りません。
定期的な修繕で利益率アップ
不動産の売却にとって最終的に重要なのは、日常的なメンテナンスです。法的にも、取引が成立するまで売り手側の責任となり、共有スペースの破損箇所については売り手側のコストとして修繕を行う必要があります。
メンテナンスが不充分なせいで高く売れるはずの不動産物件の価値が損なわれてしまうのは、もちろん、売り手側にとっても大きな損失です。業者との関係が揺らぐことになりますので、引渡しの前にはあらためてメンテナンスを行い、貴重な不動産物件を少しでも高く売れるように最善を尽くしましょう。
需要を長期的に予測
不動産物件の場合、各地域の特性に応じて不動産需要が変化する特徴があります。たとえば、分譲マンションの需要は周辺地域の人口比率や人口密度と密接に関係しており、「不動産投資は人口の多い都市部が有利」というのが不動産業界の常識となっていました。
しかし、リーマンショックを大きな潮目として、周辺地域の土地価値から見た各地域の需要バランスは劇的に変化しており、郊外でもはっきりとした売りがあれば地価が安定的に上昇し、むしろ都市部のほうが地価の面では頭打ちではないか、という見方が広がりつつあります。
ただ、もちろん、2020年東京オリンピック・パラリンピックを視野に入れている東京都、そして関東近郊では物件に対する需要はそれほど極端には減少しておらず、周辺の土地価格についても今後ますます長期的に上昇していくだろうと専門家は分析しています。
タワーマンションの今後
タワーマンションについては2000年以降、都心を中心にブームになり、30階を超える超高層マンションの建設ラッシュが起き、居住用としてはもちろんのことハイリターンな投資商品としても注目された時期がありました。
現在は災害リスクも考慮に入れ、低層マンションのニーズに追い越されつつありますが、投資商品としての魅力は依然として失っておらず、都市部だけでなく郊外エリアでも購買需要の増加は当面の間維持されるだろうと見られています。
・メンテナンスはこまめに
・時代の流れを読もう
・今後は郊外に注目
タワーマンションよりも修繕費が割安な物件
修繕費の高騰がデメリットと言われているタワーマンション。修繕費の高さをネックに感じている場合は、よりランニングコストの安い物件に目を向けてみるのもひとつの方法です。
フリーレント物件
次世代型の賃貸経営として注目されているのが「フリーレント物件」です。入居時から一定期間内の賃料が無料になる賃貸契約のことで、1カ月から3カ月分の賃料が無料になるのが一般的なケースとされています。
フリーレント物件については、オーナーにとっては「物件の空室リスクを軽減できる」というメリットがありますし、入居者側には「入居後当面の初期コストを削減できる」という利点があると言われています。
入居時のコストが圧倒的に安いフリーレント物件は今後も都市部を中心に広まっていくと言われており、オーナーの選択肢としても有力視されています。
シェアハウス
都市部を中心に広がりを見せ、現在は郊外エリアでも主流になっていくと見られているシェアハウス。時代とともにシェアハウスのコンセプトも多様化しており、高齢者介護に特化した介護付きシェアハウスや学生限定のシェアハウス、若者とお年寄りが共同生活をしてお互いを支え合う「共同シェアハウス」など、その時々のニーズをピンポイントに汲み取ったシェアハウスが長期的に生き残っていくと予測されています。
サブリース契約
賃料収入を安定的に受け取ることができ、物件の管理の手間を大幅に省くこともできるサブリース契約。一方では賃料低下や倒産のリスクもありますが、信頼できる親会社をピックアップし、長期的なリスクヘッジをしていけば収入水準も安定してきますので、今後の日本でもスタンダードな不動産経営の形態として定着していく可能性が高いと言えます。
・フリーレント物件も急増
・将来性ならシェアハウス
・賃貸経営は多様化
万一にそなえて修繕積立金をしっかりと確保
不動産経営において、修繕積立金は重要なポイントとなります。タワーマンションの場合は特に大規模な修繕工事が頻繁に必要となりますので、想定される工事について具体的にシミュレーションし、修繕積立金が不足しないようにしっかりと準備しておきましょう。
修繕費は敷金から徴収
賃貸契約書を注意深く読んでみると、必ずしも「修繕費」という名目で徴収されているわけではないことがわかります。修繕費の項目がない場合は、敷金から充填される仕組みとなっており、基本的にオーナー側が修繕費を補填することはありません。
マンションなどの入居時には敷金と礼金を納めることになり、このふたつは一見すると同じようにも思えますが、実は根本的な違いがあり、法律上も明確に区別されています。
まず、敷金は「将来の修繕にそなえてあらかじめ備えておくべきコスト」であり、入居期間中に何らかの損傷や破損が生じた場合には積み立てた敷金から修繕が行われることになります。基本的に、入居期間中に使用しなかった分の敷金については退去時に返還してもらうことができ、この点でも礼金とは異なります。
一方、礼金は「入居者側が大家や管理人に個人的に支払うコスト」と見なされており、修繕積立金としてプールされるかどうかはオーナーごとの裁量に委ねられています。原則として礼金は退去時に返還されることはなく、敷金のように明確な用途が定まっていないという特徴があります。
敷金礼金は日本独特のしきたりとして長くつづいていますが、ここ数年は敷金礼金ゼロを謳ったいわゆる「ゼロゼロ物件」が都市部を中心に主流になりつつあり、入居時のコストを大幅に削減できるメリットがあるとして注目されています。
・修繕積立金を確保する
・敷金は修繕に備えるため
・礼金は大家や管理人のため
コストシミュレーションをしっかり行えば修繕費も割安に
タワーマンションの修繕費が割高になってしまうのは、長期的なコストシミュレーションが不充分で、予定外の支出がかさんでしまうためです。
場当たり的な修繕を繰り返すのではなく、5年後、10年後を見据えた資金計画のもとに物件を管理することで、収支バランスが見えやすくなり、利益率も安定しやすくなります。修繕費について詳しく把握し、事前に備えておきましょう。