マンションが一斉に建てられていた頃の給水配管は、経年劣化による水質の悪化で今現在、リフォームを迫られていることが多いです。
現在はどのような材質の管が使われているのでしょうか。
この記事ではマンションの配管工事について説明していきます。
マンション配管材質の変遷 種類と寿命
配管材質 | 施工年代 | 寿命 |
配管用炭素鋼管、水道用亜鉛メッキ鋼管(銅管) | 1960~1970年代 | 10~15年程度 |
硬質塩化ビニル鋼管 | 1970年代~ | 20年~30年程度 |
ステンレス鋼管 | 1980年代~ | 30年~40年程度 |
架橋ポリエチレン管、ポリプデン管、耐衝撃性塩ビ管、塩ビ管HIVP | 1990年代~ | 30年~40年程度 |
1960年頃にマンション建築が進んでいた頃使われた給水配管は、1970年までの間、配管用炭素鋼管と、水道用の鋼管に亜鉛メッキを施した水道用亜鉛メッキ鋼管が屋内外の配管(小口径管)として普通の様に扱われていました。
1970年以降、給水管の直管部分は硬質塩化ビニルライニング鋼管が普及し、これに加え1980年頃よりステンレス鋼管も使用されるようになりました。
さらに、近年では配管の耐久性を高めるため、内外面を防食対策した架橋ポリエチレン管、ポリブデン管、耐衝撃性塩ビ管等が開発され、使用されはじめ、新しいもの程水質の保全と維持が図られるようになりました。
このようにマンションの水道配管にはこれだけの種類があり、古いもの程(水道用亜鉛メッキ鋼管は10年〜15年で取り替えが必要、硬質塩化ビニルライニング鋼管は30年〜40年で改修)水質に影響があると考えられています。
マンション配管の老朽化が進行した時
マンションの一室で老朽化による水漏れ事故が起こった場合、それをきっかけにして他の部屋でも漏水事故が続けざまに発生することがあります。
それは、同時期に作られた排水管なので、同時期に限界を迎えてしまったということです。水漏れの原因が老朽化である場合は、修理を行う際に水道管全体を塩ビ管の切り替えに検討する必要があります。かなり費用はかかりますが、長い目で見れば最も効率が良い方法です。
マンションの価値は、築年数や日当たりだけでなく、水周りの配管の種類、配管、継手の材質、水質や修繕履歴等によって異なりますので、それを1つ1つ解説していきます。
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マンションの配管劣化による価値の低下
1960年から1970年まで使われていた水道用亜鉛メッキ鋼管は15年くらい経つと経年劣化や水道水の原水が悪化し、殺菌のためにこれまでより多くの塩素の添加が必要になったことでメッキが剥がれ管内部に錆が発生して、赤水の被害が各地で出てきたことからマンションの価値の低下が問題となり対策が必要となりました。
対策は、同じ建物で使われ、劣化した直管だけでなく曲がり部、継手部分も、亜鉛メッキ鋼管から硬質塩化ビニルライニング鋼管となって、直管と同じで耐食性が求められるようになりました。
マンションの配管が劣化すると次のような影響が考えられます。
- 水漏れが発生する
- 水の流れが悪くなる
- 水質が悪くなる
- マンション内が下水臭くなる
水漏れが発生する
マンションの水漏れは、雨水管の詰まりや破損、屋上防水やバルコニーの防水シートの切れ目、外壁のひび割れなど、様々な原因によって起こり得ます。
マンションの水漏れは、築20年を経過すると起きやすくなり、築30年以上を経過すると発生率は2割以上になります。
水漏れが発生すると、原因箇所を特定し修理を行い、被害の部屋の普及作業が必要になります。
給湯管からの水漏れは、居住者に与える影響が大きい問題です。
水質が悪くなる
配管が劣化すると、水が濁ったり、水に赤さびが混ざるといった水質汚染が起こります。
水が白く濁る原因は、水道管に亜鉛メッキ鋼管を使用している際に、亜鉛が水に溶けだしてしまっていることが考えられます。
水が白く濁っている場合、水を火にかけてみて、一層白くなる場合は亜鉛が原因である可能性が高いです。
水に赤さびが混ざる原因は、銅管や鋼管など、金属製の配管を使用している際に、配管の腐食によって発生した錆が剥がれ落ちてしまっていると考えられます。
また、配管の劣化以外にも、近くで水道工事を行っていたり、停電などの影響で浄水場のポンプの停止により、水道管内部の水流が急激に変化すると水道管に付着していた錆が水に混ざってしまうことがあります。
水の流れが悪くなる
配管劣化により、排水が詰まりやすくなると水の流れが悪くなります。
高圧洗浄などの配管洗浄を行っても改善されない、またはすぐに元に戻ってしまうような場合は、配管が原因である可能性が高いです。
下水臭くなる
マンションで排水口の配管に不具合が起きると水回りが下水臭くなることがあります。
排水口はは排水管を通して下水管とつながっています。
排水管には、排水管からのにおいや害虫の侵入を防ぐために、排水トラップがあり、排水トラップにたまった水(封水)が、においや害虫を上がってこないような仕組みになっています。
封水は水を流すことで循環し、排水トラップに水を溜まっている状態を維持しますが、配管の不具合で封水トラップにためられた水がなくなってしまうことがあります。(封水切れ、破封)
封水切れは水を何度か流すことで回復しますが、水を流しても封水がたまらない場合は排水トラップに不具合がある可能性が高いです。
配管の不具合によるメンテナンスの責任は誰に?
マンション内で配管に不具合が発生した場合、修理修繕の責任は誰にあるのでしょうか。
区分マンションを所有しているとき
区分マンションを所有している場合、責任はオーナーと管理組合どちらにあるのでしょうか。
マンションの一室から配管の不具合が生じた場合、メンテナンス責任は修繕箇所が共有部であるか、専有部であるかによって変わります。
修繕箇所が共有部か専有部かの判断は、専有部分から点検・修理を行うことが可能であるかが重視されます。
例えば102号室を所有しており、その部屋で水漏れが発生した場合、102号室の空間内にある配管が問題であった場合は専有部分、その部屋を貫通してほかの部屋や共有部分の配管に問題があった場合は共有部であると判断される可能性が高いです。
中古マンションを購入した時
中古でマンションを購入したとき、配管に問題があって交換が必要になる時、瑕疵担保責任によってどちらが責任を負うのかが問題になります。
中古マンションで購入者が引き渡し後に住んでから重要な瑕疵があることがわかった場合に、売主に損害賠償を請求できるという制度のことを瑕疵担保責任と言います。
マンションでは排水管が部屋と部屋の間に通っていて、普段見ることがないため、そこで何かが起こっても自分の部屋で起きたことではなくマンション全体で起きたことの1つと捉える人が多いためです。
共有部分にある配管は一般的な経年劣化分を考えて、マンションで計画された長期修繕計画によって補修や交換が行われます。
マンションの入居者同士で共有する部分は、上記の瑕疵担保責任の範囲でなければ個人個人の責任で負担するのが基本です。
売買契約の時に、売り主が責任を負うかどうか、対象期間はいつまでか、事前に確認をしておくことが重要です。
配管が部屋のどこを通っているかによる工事の難易度
躯体(マンションのコンクリ部分)にそのまま床材を張り付け、床として使用しているのと、躯体の上にある程度スペースを作って床を作っている二重床形式のものがあり、二重床であれば割と簡単に配管のリフォームが行えます。
昔のマンションは、基本的に直床(じかゆか)直天井(じかてんじょう)でした。これは、コンクリートの上にフローリングが直に貼られているということです。
直ぐにフローリングを貼ってある作りだと床のコンクリート部分に配管を通していて、水道等の配管は、キッチン下などの水回りの部分だけ二重床になっており、ガスや水道、電気などそこを通していることもあります。
コンクリートの寿命は60年~100年ほどと言われていて、寿命が15年程度と言われる設備配管類をコンクリートに埋めてしまうと、交換できなくなります。
その結果、コンクリート躯体の自室部分を破壊するか、建物ごと壊すしか方法がなくなってしまい、工事が大がかりになり、マンションが短命になる可能性があります。コンクリート部分に配管を通している場合だと、築30年目ごろに迎える大規模修繕で工事ができない場合があるので気をつけましょう。
使い道による配管の違いと交換が必要になる配管
マンションは大体築30年を過ぎると配管の交換が必要になります。築年数が30年以上のマンションは配管が金属管なのが多いため、金属配管の劣化による腐食や錆による漏水やパイプの詰まりを起こします。配管改修工事とは配管が劣化した物と新しい配管を交換する事で、樹脂配管材料などに交換するのが普通です。
マンションの部屋はリフォームなどで配管の改修を行うとその部屋は更に、30~40年ほどは、安心して住むことが出来るようになります。
使用している配管の種類と交換の有無
マンション内の配管はどのような種類があるのでしょうか。使われている管の種類と使いみちを紹介します。
【給水管】
築30年になるマンションの建築当時では、給水管はビニールライニング鋼管を使用していて、鉄管の内側に塩ビ管を施したサビを起こさせない性能のものでした。しかし、継手との接続でネジ切りをするのでそこから、錆や漏水をが侵入してくるので、交換が必要となりました。
【給湯管】
給湯管では綱を使わずに被覆銅管という軟質銅管に保温被覆を施したものでした。銅管は銅を使っているので交換しないこともあるようですが、継手接続にロウ付けをすることで漏水する可能性が起こるので、出来るだけ交換するようにします。
【追焚き用ペアチューブ】
昔のマンションは、お風呂の追焚きをする家庭は少なかったようです。しかし材質は給湯の被覆銅管と同じで、往復の配管が一体の被覆に包んだものを使っていました。継手にロウ付作業をするところまで同じなので漏水する事があります。リフォームの時に交換すると良いでしょう。
【雑排水管】
キッチンや洗面、浴室などの排水管は30年前には、塩ビ管を使ってました。国の基準に沿った規格で造ったのですがマンションにはサビが発生し、排水の障害になる亜鉛メッキ鋼管を使用していたので、後に水質が心配な場合はリフォームの時などに塩ビ管に交換しましょう。劣化の場所によって、耐火被覆塩ビ管や耐火塩ビ管を使う必要が出てくるからです。
【汚水管】
マンション建築ブームの頃、汚水管は鋳鉄管や鉛管を使用していました。鋳鉄管は比較的錆が生じたり肉痩せに強いので交換しないこともありますが、便器との接続に鉛管を使用している部分が有るのでその場合、フレキ管(樹脂製)に交換するケースが見られます。鉛管は劣化が激しく、錆びて薄くなり漏水の危険性が大きくなるからです。
【ガス管】
ガス配管も鋼管を使用していますが、ガスには腐食させることや劣化させることが少ないようで、大概の工事で交換はしないようです。
マンション自室リフォーム時に必要な配管工事
築年数が古いマンションの水道からサビ混じりの赤水が出たり、何度もパイプ洗浄しても排水が流れにくいようなら配管の交換を考える時期がきたということです。
新しいマンションの場合、配管に樹脂管が使われており、経年劣化によって錆びてしまうことはありませんが、樹脂管だと熱に弱いので、台所の排水溝に熱い油や熱湯を頻繁に流していると配管の繋ぎ目が弱くなって水漏れが発生します。
また、知らずに排水管の高圧洗浄を頼んでやってもらっても傷んでしまうこともあります。樹脂管は軽くて痛みにくい性質ですが、基本的には鋼管と同様で、水の流れが悪くなってきたら交換のサインです。
マンション自室内の配管のされ方
マンションの場合はどうでしょうか。マンションの構造には、コンクリの土台にそのまま床材を張り付けて床として利用しているものと、コンクリの上にある程度スペースを空けて床を作っている二重床形式のものとがあり、二重床なら割合簡単に配管のリフォームが行えます。
二重床でない物件では、コンクリの中に配管を通す溝や穴が作られていることが多いです。その場合は途中から壁配管に切り替えるなどの方法をとって配管の位置を変更することができます。
リフォーム時の年数については、約20年が目安になっています。新築時から大体20年程度経過したら給排水管のリフォームを行った方が良いでしょう。ただ、どちらの場合も壁や床を取り外して新しい配管を設置する必要がありますので、一戸建ての場合と同じくらい大がかりな工事となってしまうことは注意してください。
マンションの配管工事費用の目安
マンションの配管には給水に関わるものでは給水管・給湯管、排水に関わる雑排水管・汚水管を工事することになっています。
マンション住人との共有部分に関しては、配管や構造が大きくかわります。床スラブ(構造躯体コンクリート)を貫いている床スラブ貫通配管タイプ、床スラブの上に配管が通っている床スラブ上配管タイプに大きく分けられ、交換の工事が大変な方は床スラブ貫通配管の構造です。
床スラブ上配管は共用部分の躯体にかからないので、自由に交換することができます。床下にあるために床は剥がさなければなりませんが、いつかは寿命が来ることを考えると、リフォームやリノベーションの時に交換してしまう方が効率的です。
また給水管に使用されているのは白鋼管、ライニング鋼管、塩ビ管の3種類に分かれます。特にライニング鋼管は、耐久性や耐食性が優れている上にコストも低いのが特徴です。
しかし、マンションの配管を改修したり移設したりする場合は、一戸建てに比べて大がかりな工事になりやすいのです。寿命が近い配管を交換した方が良いのは理解していても、床や壁を壊して配管工事だけして元に戻すのは効率が悪く、お金も工事費もかさんでしまいます。
マンション配管工事にかかる金額
一般的に、配管の交換にかかる費用は30万円程度が目安です。しかし交換工事の時、床や壁を解体し、元どおりに直すためにも大工工事や内装工事が必要です。そのためトータルでの工事費用は50万円から100万円が目安になります。
不動産業者が販売するリノベーション済マンションが若い世代に受けています。リノベーション済なので「きれいな所にすぐに入居出来る」事から人気が有るようです。ただ、配管の交換が済んでいるかどうかまでは明確にわかりません。
そこで、中古マンションでは、リフォームやリノベーションを行う際に配管交換することも多く見受けられます。効率的なのはもちろんですが、リフォームやリノベーションをした直後に、配管工事のために再び床や壁を壊すこととなって、改めて工事費が発生したという残念なことを防ぐことができるからです。
仮に配管の交換をしないでリノベーションをした時には、組合の配管改修に床壁のチェックや、キッチンを取り外してチェックすることもあるので覚えておいてください。
中古マンションを購入するなら気をつけるべきこと
これからは中古マンションにリフォームを行って購入し住む方が多くなるでしょう。購入される際にはマンション全体、リフォームした物件の配管改修工事が終わっているかの確認を必ずしてください。
まず、直床か二重床かの確認。築20年以上の古い場合は売買契約の際に、売り主が瑕疵担保責任を負うか、対象期間はいつまでかを確認することが重要です。また、中古のマンションでリフォーム済みの物件を購入する場合にも、マンション全体の配管改修工事はしたか、室内の古い配管の交換は終わっているかのチェックをしてください。
例えば、給湯器の設置場所がキッチンなど室内にあるマンションは構造的に給湯器を移設するのが大変困難ということがあります。こういったマンションでは間取りの変更や器具の交換などに制限がかかることが大きかったり、そうするとリフォームが非常に難しくなるケースがあります。
壁ピタやホールインタイプと呼ばれる風呂給湯器を使っているところでは、風呂給湯器の修理の度に浴槽を外さなくてはならず、その分の費用も多くかかって来ますので、購入の際には給湯器のチェックが欠かせません。
マンションを売却する時には一括査定サイトを利用しよう
自室の正確なリフォームの金額を知るためには、リフォーム前に現地調査を受ける必要があります。そのときに大切なのが、複数社に見積もり依頼して比較をすることです。
「調べてみたもののどの会社が本当に信頼できるか分からない」、「複数社に何回も同じ説明をするのが面倒くさい」、そんな方は、無料で簡単に数社の工事会社の比較見積もりができるサービスがありますので、ぜひご利用ください。
長年住んだか、新築に半年住んでいたかでもマンションの部屋の価値は変わります。リフォームをした部屋だと更に価値は変動します。扱っているマンションの買取不動産業者によっても売り価格が変わりますので、複数の業者の見積もりを取り寄せ、比較すると良いでしょう。