注文住宅に憧れを抱いている人は多いことでしょう。しかし、注文住宅は建売住宅と違い、建物が完成してみなければ、わからないことがたくさんあります。そのため、完成した家を見たら、想像と違うということもあるようです。
他にも、注文住宅にはさまざまなトラブルが起こります。注文住宅で失敗しないためには、よくあるトラブルの例や、トラブルを回避する方法を事前に知っておくことが大切。注文住宅のトラブルについての知識を学んでおくことで、満足度の高い注文住宅を建てることができます。
また、トラブルが起こってしまったときには、解決するためにどのように対処したらよいのかを知っておくことも重要です。トラブル対策を万全にし、納得のいく注文住宅を建てましょう。
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注文住宅でよくあるトラブルの例
ちょっとしたことから大きなことまで、注文住宅ではさまざまなトラブルが起こっているようです。その中でも、とくによくあるトラブルの例を厳選しました。トラブルを未然に防ぐために、どのようなことに注意したらよいのかを、確認しておきましょう。
工期が遅れる
工期とは、着工してから引き渡しまでの期間のことです。事前に交わしている契約書に、着工日と引き渡し日が記載されているので、本来であればその期日の通りに作業を終了しなければなりません。
一般的には、工期の平均は4カ月程度ですが、天候や天災などの予期せぬトラブルにより、スケジュール通りに作業が進まないこともあります。大震災が起こったときには、被災地ではなくても、全国的に工期は大幅に遅れていました。物流は救援物資を優先するので、建築資材が手に入らずに、作業を進めることができなかったためです。
本来であれば、そのようなトラブルがない限りは、しっかりとスケジュール管理をして作業は進められています。万が一、作業が進んでいないと感じたら、進行具合を担当者に確認しましょう。
図面・打ち合わせと仕上がりに違う部分がある
あってはならないことですが、図面と仕上がりに違う部分があることも、かなり稀なケースとしてあるようです。本来であれば、施主の合意がなければ勝手に変更してはいけません。このようなことをしてしまう悪徳業者を、選ばないように注意しましょう。
棚の位置や色などの細かい部分は、打ち合わせの際に合意のうえで、多少の設計変更をすることはよくあります。しかし、このように話し合いで決めたことは、とくにトラブルになりやすいです。話したことと違う仕上がりになっていても、図面や別紙などに記した証拠がないと、間違いを指摘しても説得力に欠けます。
思っていたイメージと仕上がりが違う
打ち合わせで、希望や仕上がりのイメージを細かく伝えたつもりでも、うまく伝えることは難しいものです。そのため、打ち合わせの段階から、施工業者とのイメージの相違が生じてしまうことがあります。
また、図面を見せられても、素人では仕上がりが想像しにくいものです。どのような仕上がりになるのかを細かく確認すればよいのですが、多くの人が「プロに任せれば大丈夫」だと施工業者任せにしてしまいます。そして、完成した家を見たら「思っていたイメージと違う」という事態になってしまうのです。
施工ミスや設備の不具合
注文住宅が完成していざ住んでみたら、気になるところが出てくることもあります。例えば、ドアや床の傷、壁紙の剥がれやズレ、汚れ、色むらなど。これらは、施工ミスや手抜きをした雑な作業によるものです。引渡し後に気になる部分を発見した場合、直しを依頼して作業をしてもらう時間を取らなければならず、面倒に感じることがあります。
施工ミスや設備の不具合も、引渡し前によくチェックしておきましょう。例えば、水まわりの設備の不具合や、窓や玄関の取り付け不良などのトラブル事例もあります。
着工後に近隣トラブルが起こる
施工中は、業者の車の出入りが頻繁になり、近隣住民の通行を妨げてしまう恐れがあります。また、業者の大きな作業者が入るスペースがある家ならよいのですが、道にはみ出して作業をする場合は、とくに注意が必要。原則として、道にはみ出す場合は「道路使用許可」の申請を行う必要があります。ただ届出を出すだけではなく、近隣住民にも断りを入れておくことが重要です。
さらに、施工中に発生するホコリや騒音の問題もあるので、近隣住民への配慮が必要です。そのために、近隣住民への挨拶をしっかりと済ませておかなくてはなりません。
・イメージの相違に注意
・引渡し前にチェックする
・近隣住民に配慮する
注文住宅はお金のトラブルも起こりやすい
注文住宅の場合は、自分の希望やこだわりを詰め込みすぎて、高額になってしまうことがあります。建て売り住宅とは違い、はじめに決まった値段が設定されているわけではないことも、お金のトラブルが起こりやすい要因です。具体的に、どのようなお金のトラブルが起こりやすいのかを、知っておきましょう。
値引きしたために質の悪い家になってしまった
注文住宅に限ったことではありませんが、不動産の売買では、値引き交渉は当たり前のように行われます。しかし、行き過ぎた値引き交渉をしたために、あとでトラブルになるケースもあるので注意が必要です。
例えば、「大幅な値引きをしてくれたら契約する」と要求したとします。担当者は契約を勝ち取りたいために、値引き交渉に応じて契約。しかし、大幅な値引きをしたままでは儲けがないので、予算を削るために作業員を減らしたり、資材の質を落としたりして、成立させることがあります。その結果、雑な仕上がりや質の悪い家になってしまうことがあるのです。
追加工事で費用が見積もりより高くなった
施工業者に追加工事を提案された場合は、内容と費用をよく確認しましょう。その理由は、追加工事によるお金のトラブルが、多数報告されているためです。
追加工事を提案された際に、事情がよくわからないまま提案を受け入れてしまうと、あとで高額な費用を請求される可能性があります。そのようなトラブルを避けるためには、追加工事を提案されたときに見積もりを出してもらい、費用を確認することが大切です。
現金払いの諸費用を把握していなかった
かかる総費用の中には、現金払いが必要な諸費用があります。現金を用意しておかなければ、あとであせることになるので、事前にしっかりと確認しておきましょう。
現金で必要な諸費用は、税金、手数料、契約時に支払う手付金、工事開始時の着手金など。場合によっては、頭金も現金で必要です。総費用のうち、20~30%程度は現金で必要になると言われています。家が完成したら、引っ越しの費用や、家具などを購入する費用も必要になるので、なるべく余裕を持って現金を用意しておきましょう。
・大幅値引きはリスクもある
・追加工事は見積もりを確認
・現金は余裕を持って用意
注文住宅のトラブルを回避する方法
注文住宅のトラブルを回避するためには、すべてを施工業者任せにするのではなく、自分自身でも知識を学ぶことが大切。打ち合わせの内容を理解できるようになれば、イメージの相違によるトラブルなどを減らせます。
担当者とのコミュニケーションを密にする
図面を見ても、具体的にイメージしづらいために、「イメージ通りの家にならなかった」というトラブルもあります。そのようなトラブルを避けるためには、担当者と密にコミュニケーションをとり、具体的に根気よく話し合いをすることが大切です。
うまく説明できなければ、イメージに近い写真や手書きのイラストを使う手段もおすすめ。コミュニケーションを密にして、担当者との信頼関係を築いていくことが、トラブル回避につながるポイントです。業者によっては、全体のイメージ、窓の位置、天井の高さ、棚の位置、色などを具体的にイメージできるように、CGでシミュレーションしてくれたり、模型で立体的に提示してくれたりすることもあります。
着工前に近隣住宅に挨拶をしておく
近隣住民とのトラブルを避けるためには、着工前に丁寧に挨拶をしておきましょう。挨拶の内容は、自己紹介と完成予定日など。着工前の挨拶は、施工業者のみで行うケースが多いのですが、施主自身も挨拶をしたほうが印象は良いです。もし留守だった場合は、日を改めてもう一度挨拶に行き、再び留守だった場合には、ポストに自己紹介と工程の説明を記した手紙を入れておきましょう。
家が完成したら、その場所に住んで近隣住民との付き合いが始まります。着工後だけでなく、着工前にも挨拶をすることが、その後の住みやすさにつながるポイントです。
内覧時に隅々までチェックする
ほとんどの場合、引渡し前に内覧会を行い、一般の人や業者の顧客などに完成した家を披露します。もしくは、完成検査として施主が完成した家の事前確認を行うので、その際には隅々までチェックしましょう。
内覧時や完成検査の際には、カメラを持参するとよいです。気になる部分は、写真を撮って証拠として残しつつ、すぐに施工業者に確認します。引き渡し後に問題が発覚するよりも、引渡し前に問題を改善できたほうが、大きなトラブルにはなりません。
お金を一括で先払いしない
家が未完成なのに、お金を一括で先払いしてしまうと、大きなトラブルを引き起こす可能性があるので注意しましょう。例えば、お金を払ったあとに会社が倒産したら、返金は難しいです。家が完成することなく、お金も戻ってこないという最悪のケースも考えられます。
家が完成する前に支払うお金は、手数料、手付金、着手金などの必要なお金のみ。完成後に、残りのお金を支払うようにしましょう。
追加工事は見積もりを取ってから
追加工事を提案されたら、その場で見積もりを取って内容を確認します。工事の内容と金額を確認し、納得したうえで追加工事を受け入れることが大切です。遠慮することなく、必ず必要な追加工事なのかの説明を求めましょう。
・担当者との意思疎通が大切
・着工前に近隣住民に挨拶
・お金の支払いは慎重に
信頼できる施工業者を選ぶことも大切
信頼できる施工業者に依頼することで、トラブルが起こる確率は低くなります。信頼度の高い施工業者にも、悪徳業者にも特徴があるので、それぞれの特徴を確認しておきましょう。
信頼できる施工業者の特徴
信頼度が高く、評判が良い施工業者を選びたいなら、まずは実績をチェックしましょう。注文住宅の実績が豊富な業者であることは、重要なポイントです。話をしたり、メール等で相談したりした際に、明確な回答ができるかどうかもチェックポイント。スムーズに話ができる相手であれば、頼りがいがあり、なおかつ打ち合わせも円滑に進みます。
また、依頼者側の都合に合わせてくれる業者であることも重要なポイント。希望する予算の範囲内で、最善策を提案してくれる業者であれば、信頼できます。また、万が一トラブルが起こったときに、どのように対応してくれるかも、事前に確認しておきましょう。
悪徳業者を見極める
失敗しないためには、悪徳業者の特徴もつかんでおきましょう。例えば、担当者がすぐ変わる、または担当者と連絡がつかない業者はおすすめできません。一度担当についたら、責任を持って最後まで真摯に対応してくれる業者であることが大切です。
また、見積もりが雑、追加工事の提案が多すぎる業者も要注意。無駄な支払いを要求される可能性があります。さらに、契約を急かしてくるような業者も、評判が良くないことが多いです。利用者の口コミも参考にし、評判が良くない業者であれば、避けたほうがよいでしょう。
・注文住宅の実績をチェック
・担当者の対応をチェック
・利用者の口コミも参考に
注文住宅のトラブルを解決できないときの対処法
トラブルは避けたいものですが、仕方なく起こってしまうこともあります。そんなときのために、トラブルが起こってしまった場合の対処法も、知っておくとよいです。トラブルについての悩みを、相談できる機関もあるので、抱え込まずに相談しましょう。
住宅瑕疵(かし)担保責任保険について確認する
施工不良など、住宅の不具合に関するトラブルであれば、まず「住宅瑕疵(かし)担保責任保険」について確認しましょう。住宅瑕疵担保責任保険は、法律で義務付けられている保険です。
施工業者は、引き渡したときから10年の間に、雨漏りと基本構造部分に問題が発生したら、無償で修復をする必要があります。住宅瑕疵担保責任保険の内容に当てはまるトラブルであれば、保険を適用させることで、問題を解決することが可能です。
ただしクロスの剥がれなど、内装の問題や外観の問題などは、この保険を適用させることはできません。保証内容が限られていることに注意が必要です。
第三者検査機関や専門家に相談する
トラブルが起こった場合は、どうしたらよいのかわからずに、悩みを抱え込んでしまう人も多いです。しかし、トラブルの相談窓口はあるので安心してください。適切な対応方法を教えてくれます。
トラブルの相談窓口はいろいろありますが、まず「国民生活センター」が代表的な例です。日本全国の近くの消費生活相談窓口を知りたい場合は、局番なしの「188」に電話すると案内してもらえます。
法律が絡むトラブルであれば、国が設立した法的トラブル解決の総合案内所の日本司法支援センターである「法テラス」に相談することもおすすめ。電話の通話料はかかりますが、利用料は無料です。
他にも、相談できる専門機関はいろいろあります。トラブルの内容が悪質な場合は、第三者検査機関に相談する手段もあるので、検討してみましょう。客観的にチェックしてもらうと、状況を冷静に判断できます。
身近な人に相談することも大切
相談窓口はいろいろありますが、身近な人に相談することも大切です。直接トラブルを解決してくれる相手ではありませんが、話を聞いてもらえることで安心感を得られます。注文住宅のトラブルに対応することは大変で、ストレスがたまる作業です。ストレスを溜め込まないように、身近な人に話を聞いてもらいながら、冷静に対応していきましょう。
住み替えを検討する
注文住宅のトラブルが解決できず、どうにもならない場合は、思い切って住み替えを検討するのもよいでしょう。建ててから新しくきれいな状態であれば、思ったよりも高く売れる可能性が高いです。また、賃貸物件として貸し出すという手段もあります。
住み替えを検討するなら、信頼できる不動産会社を見つけて相談してみましょう。査定に出し、どれくらいの値段で売れそうか知ってから、売却を考えることもできます。一括査定サイトを利用すれば、簡単な入力で複数の不動産会社の査定価格が、まとめてわかるので便利です。
・保険で解決できるか確認
・相談窓口を利用して相談
・思い切って売却する
注文住宅のトラブルの悩みは周りに相談しよう
注文住宅は、自分の希望やこだわりを詰め込んだ家ができるので、とても素敵なことです。しかしその一方で、さまざまなトラブルが起こる可能性もあります。トラブルを回避できるように、施工業者を選ぶ作業、打ち合わせ、確認作業など、一つずつ慎重に進めていくことが大切です。
それでもトラブルは起こった場合は、相談できる窓口がいろいろあります。トラブル解決のために、まずそれらの相談窓口や周りの人に相談しましょう。どうしてもトラブルが解決できなければ、思い切って売却して、新しい家に住み替えることも悪いことではありません。一括査定に出し、思ったよりも高額な査定価格だった場合は、売却を選択肢に入れるのもよいでしょう。