地震大国といわれている「日本」。歴史をさかのぼっても周期的に大地震が発生しており、ここ数年でも震度5以上の地震が頻発しています。そんな状況のなか、マンションの購入や賃貸を検討している人で、建物の耐震について不安や疑問を抱いている人もいるのではないでしょうか。売り物件、賃貸物件のマンションを探すときに、「耐震」の基礎を知って、耐震性の高い物件を見分けがつくようになりましょう。
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耐震構造の種類
耐震には数種類の構造があるのをご存知でしょうか。マンションも含めた全ての建物に用いられる耐震構造には「耐震」、「制震」、「免震」があります。耐震構造について知っておきましょう。
耐震構造
耐震構造は、地震などの揺れに対して強い素材や補強材を柱および壁面、梁などに使用することで建物全体の強度を構造上高くし、建物全体に対して発生する揺れのエネルギーに耐える工事手法のことをいいます。
建物全体の強度を強くすることで、大地震などの大きな揺れに対しても倒壊などの被害を避けれる構造となっており、建物の中に人がいても非難できるように作られています。しかし、耐震では揺れの伝わりについては制震、免震にくらべて大きく、家具や家電などの転倒が起こりやすい構造です。
また、繰り返し発生する大きな揺れに対する強度は落ちていく構造です。費用は基本建物本体に含まれることが多いです。
制震構造
制震構造は、地震などの揺れに対してその揺れを吸収する「振動軽減装置」を建物の内部構造に組み込むことにより、建物全体に対して発生する揺れのエネルギーを吸収する工事手法のことをいいます。
地震が発生した場合でも地震などの揺れに対するエネルギーを装置が吸収するため20~30%ほど軽減でき、建物全体に対する負担を少なくすることができます。おもに高層ビルやタワーマンションなどの地震以外にも風などの揺れが激しくなる高層建物などに用いられることが多い構造です。
また、繰り返し発生する大きな揺れに対する強度は装置が壊れない限り落ちない構造です。費用は耐震構造に対して50万円ほど割高になります。
免震構造
免震構造は、地震などの揺れに対して直接建物に揺れを伝わらせない「免震装置」を建物と基礎地盤の間に組み込むことにより、建物全体に対して発生する揺れのエネルギーを直接建物に伝わらせず免れる工事手法のことをいいます。
地震が発生した場合でも揺れるのは免震装置経由となるため、非常に揺れが伝わりにくく、家具や家電などが転倒する可能性も減少し、建物全体に対する負担も40%~60%まで減少するため、負担を非常に少なくすることができる構造です。しかし、定期メンテナンスなどの維持費も発生してしまいます。
また、繰り返し発生する大きな揺れに対する強度は装置が壊れない限り落ちない構造です。費用は耐震構造に対して200万~300万円ほど割高になります。
・それぞれ耐震方法が違う
・耐震方法とコスト
耐震、免震、制震構造のマンション耐震性
耐震構造(耐震、免震、制震)のマンションだからと、安心していませんか。耐震構造ではないマンションよりは安心ですが、耐震には基準が設けられており、マンション自体の構造、建てられている土地(地盤)で耐震性は大きく変わってきます。耐震の基準やマンションの建築条件など耐震構造以外の要因について知っておきましょう。
耐震基準
建築基準法で定められている建物の耐震基準は、1981年に基準が改正され、高い耐震設計を義務付けました。改正前と改正後では、建物の耐震基準が異なり、改正前に建てられた建物を「旧耐震物件」、改正後に建てられた建物を「新耐震物件」といわれています。
また、1968年に発生した十勝沖地震をきっかけに、1971年には「改正旧耐震基準」として耐震基準の見直しが実施され、建物の柱に対する強度について基準が定められており、1995年の阪神淡路大震災が発生した際には、この基準で建てられた建物の多くが倒壊しなかったそうです。
建物構造と耐震性の関係
耐震性については、建物自体の構造、形状も大きく関わってきます。構造や形状でどのように耐震性に違いがあるのか知っておきましょう。
鉄筋コンクリート構造
鉄筋コンクリート構造(RC)は、圧縮する力に弱い鉄筋と圧縮する力に強いコンクリートを組み合わせることにより、相互補強をおこなうことで強度が高い構造となっています。RCはマンション設計でも最も多く用いられている構造で、コンクリートが多く使われるため、自由な形状の建物が作りやすいのも特徴です。
鉄骨構造
鉄骨構造(S)は、鉄で骨組みをした後にその骨組みに合わせて天井や床、壁などを構成していく構造です。Sは鉄骨を用いているため、建物強度が非常に高くなります。さらにRCとは違いコンクリートを使用しないため建物そのものが軽量であり、工期も短く済むのが特徴です。
鉄骨鉄筋コンクリート構造
鉄骨鉄筋コンクリート構造(SRC)は、RCとSの長所を合わせ持った構造です。RCとSの長所を取り入れているため、建物強度も非常に高いため、中高層のビルやマンションなどに多く用いられています。
箱型形状
マンションには一般的に箱型の形状のものが多く、安定性のある形状のため、耐震性においても最も優れている形状といわれています。
斜め形状
土地の都合上、高さ方向へ建物を伸ばすことができず、斜め方向へ伸ばしているマンションが増えています。これは、建築基準法上の道路斜線制限による、中高層建築物の一部を後退させなければならない場合に用いられ、「セットバック」などといわれています。セットバック形状で空間が多い場合は耐震性に注意が必要です。
四角形以外の形状
マンションを平面図として見たときに、コの字型、Tの字型の四角形以外の形状になっているマンションがあります。デザイン性ではよいかもしれませんが、四角形のブロックをつなぎ合わせている場合が多く、耐震性となると優れているとはいえません。
1階部分に壁が無い形状
ピロティや駐車場など、1階部分が柱のみで構築されており壁が無い状態で上階を支えている構造のマンションがあります。一定の耐震性を確保した設計になっている物件もあるようですが、耐震性に優れているとはいえません。
新耐震基準を満たした物件でも、阪神淡路大震災、熊本地震のときには1階部分が柱のみの建物の倒壊が多く、被害が大きくなったようです。しかし、逆に東日本大震災のように津波の影響が大きい災害の場合は、水の通り道となり、建物への水害による衝撃が穏和されることにより、崩壊がほとんどなかったようです。
耐震性と地盤
耐震について、建物の構造、形状を中心に見てきましたが、地盤の強さも重要となります。マンションの構造、間取り、形状などに目線がいってしまい、見落としがちなのが地盤です。建物の耐震性がどんなに強くても地盤が弱ければ意味がありません。
地盤についての判断は固さで決まります。地盤が固ければ地震の揺れを軽減できますが、地盤が柔らかければ地震の揺れを増幅させてしまいます。地盤が悪い(柔らかい)と、耐震性においては優れているとはいえません。
また、「液状化現象」という単語をよく聞くと思います。液状化とは、地盤の土が砂質土のため、地震の揺れにより、砂と砂の結合度が弱くなり隙間ができるため、その隙間に地下水などが混じり合い泥水化することです。
砂質土は、建物を支える能力を備えており通常時では十分に地盤として使えるのですが、地震などによる揺れに弱く、砂質土であることが多い水辺や埋立地では液状化しやすくなります。
・構造と形状も影響あり
・地盤は耐震の基礎
築年数と耐震性の関係
耐震性に関係する建物の構造や形状、地盤などを見てきましたが、築年数も重要な判断材料となります。築年数からみえる耐震性について知っておきましょう。
築年数による耐震基準の違い
建物の耐震基準について、建築基準法が1981年に改正され、耐震性が高い建造設計が義務となっています。1981年前後で建築された建物の耐震基準は異なるため、築年数から逆算すると耐震基準の違いがわかります。
法改正される前の旧耐震基準と法改正後の新耐震基準の違いは、旧耐震基準は「震度5では倒壊しない」、新耐震基準は「震度7では倒壊しない」と明確に違いが示されています。
1981年以降に建設された建物は新耐震が基準となっているため、関東大震災クラスの震度7程度の地震ならば倒壊しにくい構造といえます。1995年の阪神淡路大震災が発生した際には新耐震基準(改正旧耐震基準含む)の建物では被害が少なく、旧耐震基準の建物の被害が多かったという調査結果もあります。
築年数の注意点
建築物は、建設をする前に設計図面などを役所に提出し、建築確認申請を行わなければならない決まりがあります。そのため、1981年の法改正の前後どちらで申請された建物なのか判断する必要があります。
建築年は販売図面などに記載されており、1982年と記載されていても、法改正前に建築確認申請を行っている可能性があります。仲介会社、不動産会社の担当者に調査を依頼すれば調べてもらえますので、1982年から3年間くらい(工事期間があるため)までに完成した建物について、新耐震物件に当てはまるのか必ず確認しましょう。
・耐震基準の違い
・築年数でみる耐震基準
耐震性のチェック方法
建物について構造、形状、地盤、築年数など色々な視点から耐震性について見てきましたが、個人で耐震性をチェックするにはどうすればできるのでしょうか。チェック方法について知っておきましょう。
耐震基準適合証明書の有無
該当する建物が耐震基準を満たしていることを証明する書類を「耐震基準適法証明書」といいます。耐震に対する診断を行った結果、基準を満たしている建物に対し発行される証明書となり、この証明書が無い場合は耐震の改修工事が必要となる場合があります。
耐震の診断は、建物の設計図面や竣工図面、建築確認申請書、構造計算書などの書類を診断する一時診断から始め、二次診断、三次診断と進んでいき、建物全体の耐震性能を測った総合結果が耐震基準に適合しているかどうか判断されます。基準適合の場合に耐震基準適合証明書が発行されます。
また、耐震の診断では「構造部材」と「非構造部材」に大きくわけて診断されます。
構造部材診断とは
構造部材とは、柱や壁などの建物そのものを形成する部材のことをいい、形成される部材単品ごとに耐震性能を備えているか、部材すべてを診断します。
非構造部材診断とは
非構造部材とは、地震の発生により外壁などが崩れ落ちたりなどした場合に、人を傷つけない、避難経路を確保できる構造であるのかを診断します。
構造計算書の再検証
建築士は建築物を設計した段階で構造上の計算を行います。建築物の概要、構造計算結果、仮定条件をまとめた書類を「構造計算書」といいます。
構造計算書は、建物の構造上の安全性、使用上で支障がないことを証明する書類であり、建物を建築する前に役所へ提出する建築確認申請につけて提出します。しかし、一般的には耐震基準適合証明書を使用することが多いため、構造計算書を使用するケースはあまりありません。
・構造計算書の確認
・耐震性は書類でチェック
賃貸マンションは耐震性に気を使い探そう
マンションの購入ではなく、賃貸を検討している人はインターネットや不動産屋で探すことになると思いますが、賃貸でも住むことに変わりはありません。耐震性についてチェックする項目を知っておきましょう。
適用されている耐震基準の確認
賃貸マンションということは、すでに建築されているマンションということになります。築年数から逆算して完成年数により耐震基準が新耐震基準なのか、旧耐震基準なのか、しっかりチェックしましょう。微妙な完成年数のときは不動産屋の担当者に聞いてみましょう。
耐震構造、形状の確認
賃貸マンションを探しているときは間取りや、一部外観写真が掲載されているためそちらに目がいってしまいます。どのような構造で施工されているのか、上空からみたとき(平面図)のマンション全体の形状も確認するようにしましょう。また、1階部分が駐車場などの空間になっていないか、実際に物件を見に行くようにしましょう。
地盤地質の確認
賃貸マンションの物件が建立している地盤については、不動産屋でも解らない場合がほとんどです。担当者に聞いてみて解らないようであれば、インターネットの地盤情報を参考にマンションの所在地域を調べるようにしましょう。
築年数の確認
築年数によりマンションの完成時期が判るため、耐震基準が新耐震基準と旧耐震基準のどちらに該当するのか注意しましょう。賃貸マンションは古い物件が多く耐震基準を満たしていても劣化により耐震性が低くなっている場合がありますので、必ず物件を見に行きましょう。
また、まれにではありますが、耐震補強工事を実施している場合もありますので、詳しくは不動産屋の担当者に聞いてみましょう。
・構造、形状、地盤にも注意
・築年数で耐震基準が違う
耐震性に十分注意して、安心できるマンションで暮らそう
マンションの購入、賃貸、どちらにしても選んだマンションに住むことに変わりはありません。地震が多い日本では、いつ大地震が住まいの地域で発生するかわかりませんので、耐震性についても十分注意したうえでマンションを選び、個人でできる暮らしの安心感を保障していきましょう。
しかし、耐震性があるからといっても、建物そのものの耐震性が強いだけですので、個人の住居内での地震対策(家具の転倒防止、避難経路の確保)は必ずするようにしましょう。建物は倒壊しなくても対策をしていなければ、家具や家電が転倒してくる可能性はあります。