不動産を売り買いするには何が必要なのか、どのようなことをすればよいのか、疑問に感じて売却になかなか踏み切れずにいませんか。大まかにでも全体像を知っておくことで、自分がこれから何を調べておけばよいのか分かりやすくなります。
不動産売買に関する知識は、売り方や不動産そのものに関する内容、税金の支払いなど、さまざまです。この記事では不動産売却に関して、取引や売買方法、全体の流れ、必要な書類や費用、成功させるための秘訣を解説します。
不動産売却に関する知識を身に付けて、具体的な計画に反映させていきましょう。
不動産売買とは
基礎知識として、まずは不動産売却はどのような行為を指すのか、誰なら不動産を売却できるのかを知っておきましょう。
不動産取引のこと
不動産を手放す際に、不動産を売却したいと希望する所有者が、不動産の購入を希望する人へ売ることを不動産取引といいます。
個人が所有する不動産の場合は、購入希望者を見つけたり、購入時の法的手続きを漏れなく行ったりすることが難しいため、不動産会社が所有者と購入希望者を結びつける仲介に入るのが一般的です。売却希望者も購入希望者も、不動産会社へ仲介手数料という手数料を支払うことで成り立ちます。
また、購入者が個人ではなく、不動産会社になることもあります。こちらは不動産買取と呼ばれ、不動産を購入してほしい所有者が不動産会社へ依頼し、買取価格に納得できれば不動産会社に物件を買い取ってもらう方法です。不動産会社は買い取った物件をリフォーム・リノベーションし、再販売することで利益を得ます。
仲介と買取の違いについては、この記事でも詳しく説明していますので、どちらが自分にメリットのある不動産取引か判断したい方は参考にしてください。
名義人本人しかできない
不動産売買は、原則として名義人(不動産の持ち主)しかできません。極端なことを言えば、近くの家の持ち主や住所を知っていたとしても、他人名義の不動産のため売却することはできないのです。
では、相続した不動産や家族が長期入院していて誰も住まなくなった家、夫婦で不動産を共有している場合はどうなるのでしょうか。こちらも、基本的には不動産の名義人が手続きを行わない限り、家族であっても売買を自由に行うことはできません。
ただし、名義人を相続した人や家族に変更できれば、不動産売買を進められます。夫婦や兄弟で不動産を共有している場合は、自分の持ち分を相手に購入してもらうか、全員の同意を得たうえで売却するのがベストです。
また、名義人本人が次のケースに当てはまる場合は委任状で代理人を決めたうえで、売却を行ってもらうことも可能です。
- 不動産が遠距離にある
- 入院中など手続きを行えない
- 複雑な条件が絡んでいて個人で対応できない
注意したいのは、名義人本人の意思決定が可能な状況で作られた委任状のみ認められることです。たとえば、名義人が高齢者で判断能力に問題がある場合は、委任状が無効となります。
仲介と不動産買取の違い
不動産取引には、不動産会社を通じて購入希望者と不動産所有者がお互いを見つけあう仲介と、不動産会社に依頼して買い取ってもらう買取があります。ここではそれぞれの違いについて詳しく解説します。
売却するまでの期間の違い
仲介は購入希望者が見つかるまで、売却活動を続ける必要があります。期間も物件によってまちまちで、1ヶ月程度と短期間で終わることもあれば、1年以上かかることもあるため、計画通りに売却が進まない可能性も考慮しておきましょう。
一方、買取の場合は不動産会社が提示した査定額に納得できれば、すぐに売却できます。最短で3日から1週間ほど、長くても1ヶ月と、仲介に比べると短期間で売却できる点が特徴です。さまざまな事情で、短期間で不動産を手放したい場合には、買取の方が時間の面ではメリットが大きくなります。
売却価格の違い
売却価格では、仲介の方が高く売れる可能性があります。なぜなら、高値であってもぜひともこの不動産が欲しいという購入希望者が見つかる可能性があるためです。しかし購入希望者が見つからなければ売れ残ってしまい、値下げを余儀なくされることがあります。
買取の場合は、相場の7割から9割ほどの価格が目安となります。不動産会社側が購入後の物件を修繕したうえで再販するなど、購入後のリスクを負うため、修繕費用などを差し引いた額で買い取られることが多いからです。
売却する際にかかる費用の違い
不動産売却にかかる費用はさまざまで、印紙税や登録免許税などの税金や手数料が発生します。不動産仲介を選んだ場合の費用において、そのうち多くを占めるのが仲介手数料です。仲介手数料とは、その名の通り不動産会社が仲介業務を行ったことに対し支払われる成功報酬となります。
仲介手数料は、宅地建物取引業法において、売却代金に応じ不動産会社が請求してもよい上限額が決められ、それ以上を請求することはありません。このほか、書類の取得代金や税金、ハウスクリーニング費用などがかかります。
不動産買取の場合は、仲介業務が発生しないため、仲介手数料はかかりません。ただし物件の抵当権抹消にかかる免許税や司法書士の費用、利益が出た場合の譲渡所得税、印紙税など、複数の税金や報酬が必要になる点は変わらないため、こうした手続きを行うための費用は必要となります。
不動産売買の流れ
不動産を売ることを決める際に、具体的にいつ、何から手を付ければよいか分かっていれば計画も立てやすくなります。ここでは不動産を売却する側の流れを仲介と買取それぞれの視点から、あわせて不動産を購入する側の流れも解説します。
不動産を売却する側の流れ
売却する側(売主)の流れは、仲介と買取で次のように異なります。
仲介で不動産を売却する場合
- 売りたい不動産の相場を調べる
- 不動産会社の情報を収集
- 査定を依頼して不動産会社を選び媒介契約を結ぶ
- 査定額から売り出し価格を決定
- 販売活動開始
- 内覧の受け入れ
- 価格交渉をして売買契約締結・引き渡し
- 確定申告
媒介契約とは、不動産会社と不動産の売主が結ぶ、お互いの決まりごとを定めた契約のことです。契約の内容によって3種類に分かれており、それぞれ次のような特徴があります。
? | メリット | デメリット |
---|---|---|
一般媒介契約 |
| 不動産会社へ自分で売却活動について確認する必要がある |
専任媒介契約 |
| 1社としか契約できない |
専属専任媒介契約 |
|
|
媒介契約を選んだ後、不動産会社と共に売却活動を開始します。この時、売りたい不動産に合わせた広告の打ち出し方や内覧時の対応をアドバイスしてもらうには、売りたい不動産と同じジャンルの不動産を得意とする会社を選ぶことが大切です。
不動産の売却では、法律に基づく書類のやり取りもあり、売却する側として確認すべき点が多くあります。確認事項の説明など、さまざまな分からないことを営業担当者にすぐ確かめられるかどうかも重要視しましょう。
また相場の調べ方は不動産ポータルサイトなどを調べる方法もありますが、より正確なのは複数の不動産会社から査定を取り寄せることです。不動産会社を探すには、無料一括査定サイトを活用してみましょう。
おすすめの一括査定サイトは、すまいステップです。加盟企業は、累計100件以上の仲介実績や宅地建物取引士がいることなど、経験や実力、知識といった観点から厳しく審査されています。不動産取引を成功させたいが、どこへ依頼すればよいか迷っているという方は、まずは最短3分で行える査定依頼から不動産の相場を調べてみませんか。
買取で不動産を売却する場合
買取で不動産を売却する流れでも、相場を調べたり、必要書類を確認したりといった情報収集は同じです。ただし、不動産会社は買取に対応した会社から選ぶ必要があります。
- 売りたい不動産の相場を調べる
- 不動産会社の情報を収集
- 査定を依頼して不動産会社を決定
- 売却時の決まり事など条件を確認する
- 売買契約の締結
- 決済と引き渡し
- 確定申告
不動産買取の場合、査定額がそのまま買取価格となります。したがって、簡易査定や机上査定と呼ばれるオンライン上で依頼できる査定を行った後、担当者が直接不動産を確認する訪問査定を受けて、より正確な査定額を出してもらうようにしましょう。不動産会社によって査定額や査定額を決めた理由が違う場合もあるため、複数の不動産会社へ依頼することもポイントです。
売却する不動産会社が定まってきたら、いつごろまでに不動産を引き渡すのか、必要書類はあるのかなど、細かな条件を確認します。仲介売却と同じく、念入りに確認しましょう。
不動産を購入する側の流れ
購入する側の流れは、大まかには物件を探して申込・契約したうえで、入居する形になります。さらに詳しく見ると、以下のようになります。
- 購入したい不動産の情報を収集する
- 資金計画を立てる
- 不動産会社へ問い合わせ内覧を行う
- 住宅ローンを利用する場合は事前審査に申し込む
- 購入申し込みを行う
- 細かな条件を売主と話し合う
- 重要事項説明・売買契約の締結
- 住宅ローンの本申込・承認・契約
- 支払いと引き渡し
- 確定申告
内覧は、不動産を実際に見学する段階です。室内だけでなく、周辺環境も確認できる機会となるため、接する道路や車の通り具合なども見ておきましょう。建物の状態に対し疑問がある場合は、第三者から住宅の状態を調べてもらうホームインスペクションを受ける手もあります。
住宅ローンを利用する場合は、融資を希望する金融機関を調べておくことも大切です。必要な書類は金融機関によってそれぞれ定められているため、早めに集めておきましょう。
また、住宅ローン控除を使う場合は、年末調整を受ける会社員であっても1年目は確定申告を自分で行う必要があるため、忘れずに行いましょう。
不動産売買で必要になること
不動産売買において、買主と売主どちらも必要となるのは書類の用意と税金の支払い、そして所有権移転登記の手続きです。
書類の準備
不動産売買に必要な書類は、不動産を売りたい人を確かめるための書類と、売りたい不動産を確認するための書類の2種類に大別されます。具体的には、必須となる書類は以下の通りです。
- 登記済権利証(登記識別情報)
- 建築確認済証・検査済証
- 固定資産税評価証明書
- 地積測量図・境界確定書
- 身分証明書(運転免許証など顔写真付きのもの)
- 印鑑証明書
- 実印
- 住民票の写し・印鑑証明書(発行3ヶ月以内のもの)
また、契約時にあれば不動産会社へ提示したほうがよい書類は、以下のとおりです。
- 新築販売時の広告やパンフレット
- 建築設計図書
- 耐震診断報告書
- アスベスト使用調査報告書
- 地盤調査報告書・住宅性能評価書
- ローン償還表(住宅ローンが残っていた場合)
マンションの場合は、追加で以下の書類を用意しておきます。
- 管理規則・使用細則
- 重要事項に関する調査報告書
不動産の売買が完了した後、翌年に確定申告が必要となります。この時、売却価格は収入として計算され、もし経費よりも収入が上回れば譲渡所得税が発生します。正確に計算するために、次の書類が必要です。
- 売却時の売買契約書コピー
- 購入時の売買契約書コピー
- 領収書(仲介手数料など)
- 戸籍の附票の写し
- 売却した不動産の登記事項証明書
領収書が発生した際は、こまめにコピーを取って保管しておきましょう。
税金の支払い
不動産を売却した際にかかる税金には、次の3種類が挙げられます。
- 印紙税
- 登録免許税
- 譲渡取得税・住民税(利益が出た場合のみ)
また売却で不動産会社へ仲介を依頼した、司法書士へ書類作成を依頼した際には、仲介手数料と報酬にそれぞれ消費税が発生する点にも注意しましょう。住宅ローンの繰り上げ返済を行う場合は、手数料に対し消費税が発生します。
ただし、土地の売却に関しては消費税は非課税です。これは消費税が消費されるものに対し発生する税金とされており、個人でも事業者でも、土地を売却しても消費されるわけではないため、消費税は発生しないことになっています。
所有権移転登記の手続き
不動産の所有者を定める所有権移転登記は、不動産を購入・売却した後すぐに行いましょう。正確に所有権移転登記を行うために、売主・買主がそれぞれ司法書士へ代行を依頼し、法務局で手続きを行ってもらう場合が多いです。
必要書類を取り寄せ法務局で自分で手続きを行うことも可能ですが、相続や贈与、財産分与、離婚などが絡む場合は、トラブルの原因になるかもしれません。買主と売主双方が、お互いを信頼でき、やり取りがスムーズに進む場合のみ、自分で手続きを行うことも視野に入れるとよいでしょう。
不動産売買を成功させるための秘訣?
不動産の売却には書類や決まり事、税金など多くのものごとが絡むため、成功させるためには事前準備が大切です。ここでは不動産売買を成功させるための5つの秘訣を解説します。
綿密なスケジュールを立てる
不動産売買は、戸建てなら半年以上、マンションなら3ヶ月近くかかることもあります。立地や物件の条件次第では、1年近く待っても売れない可能性も否定できません。したがって、何のために売るのか、いつまでに手続きを行い売買したいのか、スケジュールを綿密に立てることが大切です。
適切なタイミングで売却へつなげる行動が起こせるように、計画の際にいつまでに何をすべきか、逆算して考えていきましょう。たとえば「4月までに売却完了、新しい我が家で生活する」という計画を立てるのであれば、戸建て住宅なら前年の10月には売却活動を始めておきたいところです。売却活動を始めるには不動産会社へ査定依頼をする時間も必要となるため、9月ごろには動き出しておく必要があります。
また、不動産の最低価格も決めておきましょう。売り出してから長期間売買が成功しなかった場合や、値引き交渉を受けた場合に備えておくことで、損をしない値下げを行いやすくなります。
不動産会社を慎重に選ぶ
高額な不動産を売却するからこそ、不動産会社は担当者を信頼できるかどうかも含め、慎重に選びましょう。実際、不動産売買の成功は、仲介も買取も、不動産会社次第で決まると言われています。なぜなら、不動産会社によって持っている買手や売手の情報は全く異なり、対応の悪い不動産会社に依頼してしまうと、せっかくの良いチャンスを見過ごすことにもつながるからです。
将来的にどうしても売却がうまくいかなければ、担当者や不動産会社の変更を検討するという手もあります。しかし、中にはタイムリミットがあり、いつまでに売れないと困るというケースもあるかもしれません。時間に限りがある場合ほど、不動産会社選びは慎重に行いましょう。
売り出すタイミングを見極める
新生活が始まる2月から3月ごろは、不動産の需要が高まるため売り出しやすい時期と言われています。逆を言えば、需要がない時期、つまり1月や8月など、人があまり動かない、外出しづらい時期は、不動産を売り出しても買手が見つからない可能性があるのです。
また、不動産価格は株価と連動して常に変動する傾向があります。少しでも高く売却したい時は、売り出すタイミングもしっかりと考え、いつごろから行動を始めればよいか計画に取り込んでみましょう。
適正な売り出し価格で売り出す
不動産の売り出し価格は、相場に合わせた適切な価格から決めることが重要です。あまりにも高いと買手が見つからず、安すぎると「何か事情があるのではないか」と勘繰られてこちらも買手がつかないばかりか、安く売りすぎて損をする可能性があります。
早く売りたい場合も、相場を考慮して適切な価格を決めることが重要です。売れる見込みがなかったり、買手に警戒されかねない安い価格をつけてしまうと、期限までに物件が売れなくなる恐れがあります。
相場(市場価格)を調べる方法として、実際に売却が行われたデータが公表されている国土交通省の土地総合情報システムや国税庁の公表する路線価などを参考にする方法が挙げられます。ただし、あくまでも参考価格しか分からないため、まだ売却の意思を完全に固めていないときには有効です。
売却を前向きに検討していきたい時は、複数の不動産会社へ査定を依頼しましょう。依頼先を検索する際には、不動産会社があらかじめ厳選されており、豊富な加盟会社から最大4社まで選べるすまいステップがおすすめです。
売却する理由をまとめておく
不動産売買の理由は、必ずしもポジティブな理由とは限りません。しかし、内覧を引き受けた際に「どうして売却を決めたのですか?」と理由を尋ねられることがあります。たとえば、まだ住めそうな築浅の物件や、相場よりも価格が安く設定されている場合は、尋ねられることも多いでしょう。
個人的な理由を積極的に明かす必要はありませんが、売却する理由をまとめておくことで、スムーズに答えられます。ネガティブな理由を言い替えて伝えることで、購入希望者の購買意欲を必要以上にそがずに済む可能性があるからです。
ただし、ネガティブな状況であっても、しっかりと伝えておかなくてはならないこともあります。それは以下の2つに当てはまる内容です。
- 過去に事件や事故、自殺者が出たという心理的瑕疵
- 白アリや雨漏りのような、不動産の構造に直接関係する物理的瑕疵
これらは、事前の告知が法律で義務付けられています。契約後に明らかになると契約解除になる恐れもあるため、不動産会社の担当者とよく相談し、どのように告知するのか、しっかりと打ち合わせを行っておきましょう。
不動産売買を行うにはさまざまな知識が必要
不動産売買は、不動産を売却したいと希望する所有者が、不動産の購入を希望する人へ売ることを指します。売りたい不動産に合わせて不動産会社を探したり、売る理由を整理したりと、さまざまな準備が必要です。
今の準備に何が足りないのか把握し、計画を綿密に立てて、スムーズに売却を成功させるためには、不動産会社の協力が不可欠となります。信頼できる不動産会社を探すには、すまいステップがおすすめです。優良な不動産会社と信頼できる担当者に出会い、不動産売買を成功させていきましょう。