「戸建てを売却しようと考えているけど、思っている価格では売れなそう…」
戸建てを売却することで「損をするかもしれない」と思うと不安になりますよね。
実は、戸建て売却で損失が出るのは珍しいことではないのです。
この記事では、戸建てを売却した時の売却損を抑える税金対策を紹介していきます。
戸建て売却における損失とは?
そもそも戸建て売却において、損失がでる場合とはどのような状況の時でしょうか。
売却での利益を「譲渡所得」と呼び、譲渡所得で損をしてることを「譲渡損失」と呼びます。
不動産売買では、「譲渡損失」が出た場合、損をする・赤字が出るということになります。
譲渡損失が出るかどうかは以下の計算式で求めることができます。
売却額 | 実際に不動産を売った価格(固定資産税・都市計画税も含む) |
---|---|
取得費 | 不動産を購入した際にかかった購入費用から減価償却費相当を差し引いたもの |
譲渡費用 | 不動産を売却するのにかかった費用(仲介手数料や印紙税など) |
計算式で算出された譲渡損失がマイナスになれば売却損をしていることになります。
戸建て売却で譲渡損失が発生する場合とは
譲渡損失とは、以下のような場合に発生したといえます。
- 戸建て物件が経年経過により価値が下がり、取得費より売却価格が低い場合
- 物件周辺の土地の価値が、購入時よりも下がった場合
- 家を売却した利益で住宅ローンの残債が払いきれない場合
- 購入時と同じ価格で売却出来たが、諸費用を払ったらマイナスになった場合
家は永久に使えるものではなく、経年とともに劣化していきます。
そのため、基本的には年を経過するごとに家の価値は下がっていきます。
戸建て売却は売却損益がでやすい
戸建て売却は売却損益がでやすいです。
家を購入した際と同じような価格が付くことは少ないのに加え、売却をするのにも費用が掛かります。
売却にかかる譲渡費用は、家を売った金額のおよそ3~5%が相場です。
そのため、戸建て売却はほとんどの場合で損失が出ています。
以下の図は、近年の戸建て売却で発生した売却損益の平均額です。
国土交通省「住宅市場動向調査」(pdf)を参考にすまいステップ編集部が作成
戸建て住宅の損益が近年上昇傾向にあり、1000万円以上の損失がでてしまうことも珍しくありません。
以下の費用シミュレーターを使って、あなたの不動産を売ったときにかかる費用を算出してみましょう!
「売却価格」「購入価格」「物件の所有期間」「現在住宅として住んでいるか」をそれぞれ入力し、「費用を算出する」ボタンを押すと、売却時にかかる費用が自動で算出されます。
※購入価格が分からない場合は空欄で大丈夫です。
費用の内訳も表示されますので、まずはどんな費用がいくらかかるのかを把握しておきましょう。
築古の戸建ては損をしやすい
戸建ては損をしやすいことを解説してきましたが、戸建て住宅は築年数が経てば経つほど価格が下がっていき、売却損が出やすいです。
上の図は、戸建て住宅の築年数ごとの不動産の成約価格を表したものです。
戸建て住宅は、築年数が経てば経つほど、売却価格の減少率も大きくなっていきます。
不動産の価格を査定する際は、その家の経年によって、減価償却によって計算していきます。
A.家や車のように、時間とともに劣化していく資産の価値を、経年によって減少させる会計上のルールのこと
売却損は減税特例が利用できる
家の売却で譲渡損失が生じた場合には、確定申告をすることで損した金額をその他の収入から差し引いて損益通算ができます。
損益通算とは、家を売ることで生じた損失を、同年の給与所得の利益と合算することです。
例えば1年間の給与所得が500万で不動産売却による損失が200万だった場合、年間の所得を300万として所得税や住民税の控除を受けることができます。
これを「譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」と呼びます。
この特例は平成16年から令和3年までの期間に使える特例でしたが、令和4年度税制改正大綱により令和5年まで2年間の延長が決まりました。
「譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」は、譲渡損失が出た場合には損失額をその年を含めて最大4年間の収入から差し引くことができます。
例えば1年の収入が500万円で、1800万円の譲渡損失が出た場合、3年間はその年の所得と譲渡損失と相殺し、4年目は収入を200万円として所得税の控除を受けられます。
この特例は、その年の所得が3,000万円を超える年は、繰越控除の特例が適応除外となります。
また、特例は住宅ローンが残っているマイホームを売却した場合と、買い換えのためにマイホームを売却して新居を購入した場合とに分けられます。
それぞれについて適用条件をみていきましょう
マイホーム買い換えの譲渡損失の損益通算と繰越控除の特例
マイホームを売却し、買い替えのために新居を購入した場合は、マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算と繰越控除の特例を適用することができます。
この特例は、売却をする戸建ての家が、住宅ローンの残債よりも低い価格で売却されたときに利用できます。
この特例には以下の二つの特徴があります
- 買い替えあたりの住宅ローンの控除が併用できる
- 住民税の所得の計算でも繰越控除ができる
▼特例の適用条件
譲渡する不動産と買取をする不動産において合計8つの条件を満たしていることが必要になるので注意してみてください。
▼譲渡する資産の条件
- 自分自身が住んでいる家であること
- 所有期間が譲渡年の1月1日時点で5年を過ぎていること
- 敷地の面積が500平米以下であること
▼買い替えをする不動産
- 売却年の1月1日または、その前年から売却の翌年の12月31日までに借入により取得すること
- 取得した翌年12月31日まで居住すること
- 床面積が50平米以上であること
- 繰越控除を受ける年末に所得の住宅ローンの残債があること
- 借入先は親族以外の所定の金融機関であること
以上すべての条件に当てはまっていることが適用条件になります。
また、以上すべての条件を満たしていても、以下の場合に当てはまらない場合は適用除外となります。
▼適用除外となる条件
- 売却年の翌年12月31日までの間に買取のための住宅ローンの借り入れを行う
- 買替資産(住み替え先の物件)を取得した年の翌年12月31日までに、居住用に供する、または供する見込みである必要がある。
- 居住先の家屋の床面積が50平方メートル以上であること
- 住宅ローン控除はあくまで控除すべき所得税があることが前提であるため、譲渡した年以降、譲渡資産の譲渡損失の損益通算・繰越控除により所得がない場合には、住宅ローン控除による減税はできない。
- その年の所得が3,000万円を超えているとき
住宅ローンが残っているマイホームの譲渡損失の損益通算と繰越控除の特例
住宅ローンが残っているマイホームを売却した場合には「特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」が適用できます。
この特例は、買い替え用の不動産を購入していなくても、売却による損失を繰越控除・損益通算することができます。
▼特例の適用条件
「特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」の適応条件は以下の通りです。
- 2023年12月31日までに売却している
- 譲渡した不動産が自身が住んでいる家であること
- 住宅を売却した年の1月1日現在で、5年以上所有していること
- 譲渡したのは親族ではないこと
- 10年以上の住宅ローンを組んでおり、ローンの残高が残っている状態であること
参考:国税庁|住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき
戸建て売却の減税特例の適応には確定申告が必要
今紹介した減税特例は、確定申告をすることで適応されます。
それでは確定申告の流れや必要事項について解説していきます。
確定申告の流れ
確定申告は以下の流れで行います。
- 必要書類の準備
- 確定申告書類の作成
- 書類の提出
- 還付を受ける
確定申告は、売却をした翌年の3月15日が提出期限です。
売却をして、損失が出ることを確認したらすぐに準備に取り掛かりましょう。
確定申告に必要な書類
確定申告には多くの書類が必要になります。
漏れがあると控除が受けられなくなる可能性があるのでしっかりと確認しておきましょう。
確定申告に必要な書類と書類の入手方法は以下の通りです。
必要な書類 | 入手方法 |
---|---|
確定申告書B | 国税庁のWeb、または税務署 |
青色申告決算書または収支内訳書 | |
所得税の減価償却資産の償却法の届出書 | |
賃貸借契約書 | 管理会社や、不動産会社 |
送金明細書 | |
借入返済表 | 金融機関 |
固定資産税通知書 | 市町村の役所 |
源泉徴収票 | 勤務先 |
保険会社の書類 | 保険会社 |
管理費・修繕積立金などの領収書 | 管理会社 |
書類の作成でなにかわからないことがあれば、税務署に相談し魔法。
また、国税庁のホームページでは、パソコンを使って確定申告をする「確定申告書等作成コーナー」があります。
書類の作成や、所得や損失の計算を自動で行うことができるのでお勧めです。
また、確定申告に必要な書類については以下の記事でも詳しく解説していますので、併せて参考にしてみてください。
繰越控除は2年目以降も確定申告が必要
売却した翌年以降も繰越控除を受けるためには確定申告が毎年必要です。
なぜなら所得が3,000万円以上ある年は特例が受けられないためです。確定申告では損失申告用の確定申告書第四表に記入して損して残っている金額を提出する必要があります。
記載例が国税庁のサイトでも紹介されているので、不動産会社から説明を受けた上で自分で記載して申告も可能です。不安な場合には税理士に依頼して申告を委任することも可能なので、相談してみましょう。
2年目以降の確定申告時に必要な書類
2年目以降の繰越控除を受ける場合には確定申告で申告書以外にも必要な書類があります。損した金額が残っている間は提出が続くので用意しておきましょう。
- 確定申告書
- 譲渡損失の金額の明細書(確定申告書付表)
- 譲渡損失の損益通算及び繰越控除の対象となる金額の計算書
- 登記事項証明書や売買契約書の写し
- 住宅借入金等の残高証明書
「確定申告書」「譲渡損失の金額の明細書(確定申告書付表)」「譲渡損失の損益通算及び繰越控除の対象となる金額の計算書」はその年の収入と売却損で生じた損金とその残高の計算をして税務署に提出します。
「登記事項証明書や売買契約書の写し」は売却した家が居住している、または居住していた家屋であることを示すために提出します。
買い換えの場合には、新居の分も用意して、床面積が適用範囲か証明するために必要です。
「住宅借入金等の残高証明書」は住宅ローンが残っていることを証明するために必要で、買い替えのためなら控除を受ける各年12月31日時点での、新居購入で利用した住宅ローンの残高証明書を提出します。
マイホームの売却と買い換えのための売却とではやや書類が異なる部分もありますが、基本的には両者で必要になる用途の書類は同じです。
詳しくは国税庁のホームページで紹介されています。
難しいと思う場合にはまず不動産会社の営業担当者に聞いてみましょう。
確定申告が不安なら毎年1月ごろに税務署や役所で無料の税務相談会が開かれているので相談してみるのもいいでしょう。また、税理士に依頼すれば有料ですが代理で申告をしてくれます。
確定申告はe-Taxを利用すると便利
e-Taxは平成16年から導入されていますが、マイナンバーカードの導入やスマートフォンの機能進化に伴い確定申告の電子申告が便利になっています。
インターネットを利用できる環境にあるのならば、自宅のパソコンやスマートフォンで確定申告書を作成できます。
作成した確定申告書はそのままインターネットから税務署に申告もできるので、税務署に行く必要も、印刷して郵送する必要もありません。
また、e-Taxを使って書類を電子申告すると、書類で確定申告をするより早く還付金を受けられる可能性があります。
国税庁の確定申告書作成コーナーで詳しく紹介されているので、わからないことは電話でも相談できます。
戸建て売却損を抑えるための有効な対策
いかがでしたでしょうか。
戸建て売却での損失を少なくするために、家を売るにあたって意識しておくことで対策することもできます。
ここでは戸建ての家を売却した時の売却損を抑えるための有効な対策をいくつか紹介します。
戸建ての売却で損失を抑えるようにするには、少しでも高く売るか、売却経費を見直すことです。譲渡損失の計算において、家を購入した時の取得費は変えられません。戸建てを少しでも高く売るのも、売却経費を抑えるのも不動産会社選びに重点が置かれます。
それでは戸建て売却で損失を抑えるためにできる対策をいくつか紹介します。
戸建ての査定依頼は複数社に依頼
戸建ての家を売却するにあたっては不動産会社に査定を依頼してどのくらいで売却できるか見込みを知りましょう。
ここで同じ不動産でも査定額は不動産会社によってバラつきがあることを知っておきましょう。
不動産会社は物件を仲介して成約させた仲介料で利益を上げています。
査定を出した不動産会社によっては数百万円の査定額に差が出ることもあります。ここで大切なのは、複数の不動産会社に査定を依頼して、適正な相場を把握することです。
査定額が高すぎても相場とかけ離れていれば値下げをしていって、最終的には想定よりも安く売れることもあります。売主は査定額を比較して相場を把握し、適切な売り出し価格で販売をして、値下げをしないで売り抜くことです。
信頼できる不動産会社に仲介依頼する
不動産会社は全国にたくさんあります。規模も大企業から個人経営までさまざまです。中には売主が初心者なのをいいことに、不当な仲介料を請求してきたり、安く売却を仕組むような業者もあります。
悪質ではなくとも、営業担当者とコミュニケーションがうまくいかないと、売却チャンスを逃したり、セールスポイントが伝わらずになかなか売れない事態も起きます。
不動産会社の営業担当は売却活動から交渉、契約まで一手に担うだけに慎重に選ぶ必要があります。
そのため不動産会社選びで複数の不動産会社に査定を依頼する中で、信頼できる営業担当者を見つけるのが不動産売却で利益を上げる近道です。
不動産会社に査定を依頼するには無料で利用できる一括査定サイトが便利です。
中でも「すまいステップ」は悪質な業者を排した上で、独自の基準に適合した不動産会社の中から、物件に最適な最大4社から査定が受けられます。作業は2分から3分で、誰でも簡単に登録できます。また、担当してくれる営業担当者は有資格のエース級がはじめから付いてくれます。不動産売却がはじめての人でも安心して相談ができます。
戸建て売却が得意な不動産会社を選ぶ
不動産会社は何でも取り扱う総合型から、中古マンションだけの分野特化型など得意分野でも種類があります。新築分譲が得意な不動産会社に査定を依頼しても、中古の売却に慣れているとは限りません。
戸建ての家を売却しようとするなら、持っている家がある地域で、中古物件の売却を得意としている不動産会社に依頼をするのが望ましいです。中古物件を得意とする中でも、全国展開しているところと、関東圏中心、地域密着など会社の規模で査定を取ると比較がしやすいです。
それぞれの不動産会社のメリット、デメリットや営業担当者との相性なども見ながら仲介を依頼する不動産会社を選びましょう。
戸建て売却方法を吟味する
不動産会社が決まったら、仲介を依頼するために媒介契約を不動産会社と交わします。
戸建ての家の売却方法としては、仲介で買主を探してもらうのが一般的です。
その他にも売却方法としては即時買取や買取保証などの方法があります。
即時買取については不動産会社が売却できる見込みのある不動産を買取ってくれる方法です。
買取価格は5割から7割程度と相場価格よりも安くなります。
しかし、確実に売却ができるのでスケジュールに余裕がない場合や1戸では売却が困難な場合などに有効です。
買取保証は仲介と即時買取のいいとこどりな売却方法です。
営業担当と決めた一定期間は仲介で売却活動を頑張り、売れなかった場合には買取をしてもらう方法です。仲介で売却できれば買取より高く売れますが、買取の場合には相場より安くなります。
住み替えなどで次の物件購入を控えている場合などに、少しでも高く売りたいけど期限が決まっているときに有効です。
買取はすべての物件に対応できるわけではないので、営業担当者に選択肢を説明してもらい、よく検討して決めましょう。
戸建て売却に必要な経費も確認
事前に状況を確認しないで思いつきで売却をはじめると、必要な経費が膨らむ傾向にあります。あらかじめ戸建ての家を売却するのに必要な経費である譲渡費用を確認して、抑えられるところは抑えましょう。
譲渡費用は不動産会社への仲介手数料や印紙代などが売買契約のことを指します。
売却をするために行った修繕費や買主や不動産会社による測量費用、解体費用なども含まれます。戸建てを賃貸で利用していた場合には、入居者が残っていると立退料が必要です。また、売買契約後により高く購入してくれる買主に売りたくなった場合には売買契約者に違約金を払って解消することもあります。
その他に、確定申告で依頼した税理士報酬や売却物件の固定資産税・都市計画税、引っ越し費用などが売却にはかかりますが、これらは譲渡費用にあたらないので、注意しましょう。
戸建て売却損には有効な対策をとろう
所有する戸建ての家を売却した際に売却価格が購入価格を下回ったら売却損となります。売却損にならないためには少しでも高く売れるようにしましょう。
不動産の売却には営業担当者の力量が大きく影響するので、査定を依頼したら、査定価格だけでなく、担当者の応対やコミュニケーション力もしっかり比較しましょう。
売却損になってしまったら、譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例を利用してマイナスになった金額を他の所得から差し引いて税額を軽減できます。その年の収入から損額を差し引いても損金が残ったら翌年以降に繰り越せます。
特例を適用するのには確定申告が必要なので、必要な準備をして、申告期間内に税務署へ提出しましょう。