戸建て売却において、損失がでる場合とはどのような状況の時でしょうか。
またその損失にはどのように対応していけるでしょうか。
ここでは戸建てを売却したときの売却損の算出方法と損失を抑える有効な対策を紹介していきます。
【戸建て査定の基礎知識】見られるポイント・訊かれること・事前準備を徹底解説
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戸建て売却で損が出るケース
売却での利益を「譲渡所得」と呼び、譲渡所得で損をしてることを「譲渡損失」と呼びます。
譲渡損失の算出方法
不動産の税制では売却は「譲渡」として扱われます。そのため、戸建てを売却して譲渡損失(売却損)が出たかの計算は以下の算出方法で求めます。
譲渡損失 =売却金額-(取得費+譲渡経費)
計算式で算出された譲渡損失がマイナスになれば売却損をしていることになります。一般的には上記計算式がプラスになり、譲渡所得の金額から特別控除額などを差し引いた課税譲渡所得に税率をかけて譲渡所得税を算出します。
ここでは売却損になった場合なので、譲渡損失になっていることと譲渡損失額がいくらあるのかが重要になってきます。
譲渡損失が発生する場合とは
譲渡損失とは、以下のような場合に発生したといえます。
- 戸建て物件が経年経過により価値が下がり、取得費より売却価格が低い場合
- 物件周辺の土地の価値が、購入時よりも下がった場合
- 家を売却した利益で住宅ローンの残債が払いきれない場合
- 購入時と同じ価格で売却出来たが、諸費用を払ったらマイナスになった場合
戸建ての売却は譲渡損失が出ることが多いです。
それでは損失が出る場合、どのように対処していけるでしょうか、これから詳しく解説していきます。
戸建て売却損を抑えるための有効な対策
戸建ての売却で損失を抑えるようにするには、少しでも高く売るか、売却経費を見直すことです。譲渡損失の計算において、家を購入した時の取得費は変えられません。戸建てを少しでも高く売るのも、売却経費を抑えるのも不動産会社選びに重点が置かれます。
ここでは戸建ての家を売却した時の売却損を抑えるための有効な対策を見ていきましょう。
戸建ての査定依頼は複数社に依頼
戸建ての家を売却するにあたっては不動産会社に査定を依頼してどのくらいで売却できるか見込みを知りましょう。ここで同じ不動産でも査定額は不動産会社によってバラつきがあることを知っておきましょう。
不動産会社は物件を仲介して成約させた仲介料で利益を上げています。査定を出した不動産会社によっては数百万円の査定額に差が出ることもあります。ここで大切なのは、複数の不動産会社に査定を依頼して、適正な相場を把握することです。
査定額が高すぎても相場とかけ離れていれば値下げをしていって、最終的には想定よりも安く売れることもあります。売主は査定額を比較して相場を把握し、適切な売り出し価格で販売をして、値下げをしないで売り抜くことです。
信頼できる不動産会社に仲介依頼する
不動産会社は全国にたくさんあります。規模も大企業から個人経営までさまざまです。中には売主が初心者なのをいいことに、不当な仲介料を請求してきたり、安く売却を仕組むような業者もあります。
悪質ではなくとも、営業担当者とコミュニケーションがうまくいかないと、売却チャンスを逃したり、セールスポイントが伝わらずになかなか売れない事態も起きます。不動産会社の営業担当は売却活動から交渉、契約まで一手に担うだけに慎重に選ぶ必要があります。
そのため不動産会社選びで複数の不動産会社に査定を依頼する中で、信頼できる営業担当者を見つけるのが不動産売却で利益を上げる近道です。不動産会社に査定を依頼するには無料で利用できる一括査定サイトが便利です。
中でも「すまいステップ」は悪質な業者を排した上で、独自の基準に適合した不動産会社の中から、物件に最適な最大4社から査定が受けられます。作業は2分から3分で、誰でも簡単に登録できます。また、担当してくれる営業担当者は有資格のエース級がはじめから付いてくれます。不動産売却がはじめての人でも安心して相談ができます。
戸建て売却が得意な不動産会社を選ぶ
不動産会社は何でも取り扱う総合型から、中古マンションだけの分野特化型など得意分野でも種類があります。新築分譲が得意な不動産会社に査定を依頼しても、中古の売却に慣れているとは限りません。
戸建ての家を売却しようとするなら、持っている家がある地域で、中古物件の売却を得意としている不動産会社に依頼をするのが望ましいです。中古物件を得意とする中でも、全国展開しているところと、関東圏中心、地域密着など会社の規模で査定を取ると比較がしやすいです。
それぞれの不動産会社のメリット、デメリットや営業担当者との相性なども見ながら仲介を依頼する不動産会社を選びましょう。
戸建て売却方法を吟味する
不動産会社が決まったら、仲介を依頼するために媒介契約を不動産会社と交わします。戸建ての家の売却方法としては、仲介で買主を探してもらうのが一般的です。その他にも売却方法としては即時買取や買取保証などの方法があります。
即時買取については不動産会社が売却できる見込みのある不動産を買取ってくれる方法です。買取価格は5割から7割程度と相場価格よりも安くなります。しかし、確実に売却ができるのでスケジュールに余裕がない場合や1戸では売却が困難な場合などに有効です。
買取保証は仲介と即時買取のいいとこどりな売却方法です。営業担当と決めた一定期間は仲介で売却活動を頑張り、売れなかった場合には買取をしてもらう方法です。仲介で売却できれば買取より高く売れますが、買取の場合には相場より安くなります。
住み替えなどで次の物件購入を控えている場合などに、少しでも高く売りたいけど期限が決まっているときに有効です。買取はすべての物件に対応できるわけではないので、営業担当者に選択肢を説明してもらい、よく検討して決めましょう。
戸建て売却に必要な経費も確認
事前に状況を確認しないで思いつきで売却をはじめると、必要な経費が膨らむ傾向にあります。あらかじめ戸建ての家を売却するのに必要な経費である譲渡費用を確認して、抑えられるところは抑えましょう。譲渡費用には不動産会社への仲介手数料や印紙代などが売買契約で必要です。
売却をするために行った修繕費や買主や不動産会社による測量費用、解体費用なども含まれます。戸建てを賃貸で利用していた場合には、入居者が残っていると立退料が必要です。また、売買契約後により高く購入してくれる買主に売りたくなった場合には売買契約者に違約金を払って解消することもあります。
その他に、確定申告で依頼した税理士報酬や売却物件の固定資産税・都市計画税、引っ越し費用などが売却にはかかりますが、これらは譲渡費用にあたらないので、注意しましょう。
戸建て売却損を少なくするためのポイント
戸建てで売却損を少なくするポイントとしては、販売価格の相場よりも高くすることにこだわりすぎないことと、物件の長所はできる限りアピールすることがあげられます。これらの点についてここではより詳しく紹介していきます。不動産売却は時間が経つほど値段が崩れやすいので、早いタイミングで売却を心がけましょう。
高値で売ることにこだわりすぎない
売却活動をはじめるにあたって売出し価格は売主が決めます。周辺相場や査定価格を参考にして営業担当者とも相談しながら決めましょう。相場よりも高い金額を設定することも可能ですが、購入希望者が検索したり、他の不動産会社が探す時に目に留まりにくくなります。
売却ができないまま時間だけが過ぎていくと戸建ての価値がどんどん下がっていってしまうので、結果的に安くなることもあります。
相場から大きく外れない範囲で、多くの購入希望者に目に留めてもらうことで、買主を見つけやすくなります。逆に価格を下げすぎると、買主からさらに値下げ交渉をされたときに利益が少なくなってしまうので注意が必要です。
内覧準備で長所はできるだけアピール
購入を希望する人の多くは内覧をしてから購入を決めます。内覧希望者が物件を見に来たときに、物で溢れていたり、汚れや傷が目立っていると悪い印象を与えてしまいます。売却活動をはじめるにあたっては、家の中の物を減らして、整理整頓をし、傷んでいるところは修繕しましょう。
内覧の日程はできるだけ買主に合わせて調整し、水回りを中心にこまめな清掃を心がけましょう。買主を受け入れた際には、物件を使用してきた経験から長所となるところをできるだけアピールして好印象を与えるように努めましょう。また、カーテンを開けるだけでなく、照明をつけて部屋を明るく見せるのもコツです。
2023年12月31日までの売却損は減税特例あり
家の売却で譲渡損失が生じた場合には、確定申告をすることで損した金額を最大4年間にわたってその他の収入から差し引いて損益通算ができます。これを「譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」と呼びます。
この特例は平成16年から令和3年までの期間に使える特例でしたが、令和4年度税制改正大綱により令和5年まで2年間の延長が決まりました。ここでは譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例について詳しく紹介していきます。
所得税を最大4年間繰越控除できる特例
譲渡損失が出た場合には損失額をその年を含めて最大4年間の収入から差し引くことができます。これは「譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」と呼ばれ、買い換えた時に要件を満たしていれば適用ができます。
不動産の収入は給与所得とは分けて計算する分離課税方式を採用しています。そのため本来は不動産のマイナスはその他の収入とは関係なく税額が計算されます。しかし、平成16年から譲渡損失の損益通算の特例が登場したことで、不動産収入のマイナス分を給与などのその他の収入から差し引くことができるようになりました。
不動産売却をして損をした年の不動産以外の収入で損額を差し引くとその年の課税される所得が少なくなり、税金が減免されます。もし、売却した年の収入でも損額が残った場合には、繰越控除の特例で翌年以降最大で3年間の所得から差し引ける措置が受けられます。
不動産売却で損をした場合には確定申告をする義務はありません。しかし、譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例を受けるためには適用条件に合致していて、譲渡損失が出ていることを証明して申告する必要があります。
譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例の適用条件
譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例を利用して所得税の減税を受けるには適用条件があります。特例は住宅ローンが残っているマイホームを売却した場合と、買い換えのためにマイホームを売却して新居を購入した場合とに分けられます。それぞれについて適用条件をみていきましょう。
ただし、繰越控除については所得が3,000万円を超えている年は適用除外になります。また、譲渡年の前年または前々年に「3,000万円特別控除」、「特定の居住用財産の買換え及び交換の特例」、「居住用財産の買換等による譲渡損失の損益通算及び繰越控除」等の適用を受けていると適用ができないので注意しましょう。
住宅ローンが残っているマイホームを売却した場合
住宅ローンが残っているマイホームを売却した場合には「特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」が適用できます。適用条件には
- 2023年12月31日までに売却している
- 5年以上所有したマイホーム用の住居である
- 譲渡したのは親族ではない
- 10年以上の住宅ローンを組んだ残高が残っていること
が主な適用条件です。基本的にはマイホームを売却した3,000万円の特別控除の適用条件を満たしていれば、特定居住用財産についてのこの特例は受けられます。
参考:国税庁|住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき
買い替えのためにマイホームを売却した場合
買い換えをして新しい住宅ローンを組んで新居を購入した時に、売却した家の損失に適用する特例は「居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」と呼びます。
適用条件には
- 2023年12月31日までに売却している
- 5年以上所有したマイホーム用の住居である
- 譲渡したのは親族ではない
- 10年以上の住宅ローンを組んだ残高が残っていること
に加えて、
- 売却した前年1月1日から翌年12月31日の最大3年間の間に新居を購入している
- 購入した新居の床面積が50㎡以上であること
があります。
参考:国税庁|マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき
繰越控除は2年目以降も確定申告が必要
売却した翌年以降も繰越控除を受けるためには確定申告が毎年必要です。なぜなら所得が3,000万円以上ある年は特例が受けられないためです。確定申告では損失申告用の確定申告書第四表に記入して損して残っている金額を提出する必要があります。
記載例が国税庁のサイトでも紹介されているので、不動産会社から説明を受けた上で自分で記載して申告も可能です。不安な場合には税理士に依頼して申告を委任することも可能なので、相談してみましょう。
2年目以降の確定申告時に必要な書類
2年目以降の繰越控除を受ける場合には確定申告で申告書以外にも必要な書類があります。損した金額が残っている間は提出が続くので用意しておきましょう。
- 確定申告書
- 譲渡損失の金額の明細書(確定申告書付表)
- 譲渡損失の損益通算及び繰越控除の対象となる金額の計算書
- 登記事項証明書や売買契約書の写し
- 住宅借入金等の残高証明書
「確定申告書」「譲渡損失の金額の明細書(確定申告書付表)」「譲渡損失の損益通算及び繰越控除の対象となる金額の計算書」はその年の収入と売却損で生じた損金とその残高の計算をして税務署に提出します。
「登記事項証明書や売買契約書の写し」は売却した家が居住している、または居住していた家屋であることを示すために提出します。買い換えの場合には、新居の分も用意して、床面積が適用範囲か証明するために必要です。
「住宅借入金等の残高証明書」は住宅ローンが残っていることを証明するために必要で、買い替えのためなら控除を受ける各年12月31日時点での、新居購入で利用した住宅ローンの残高証明書を提出します。
マイホームの売却と買い換えのための売却とではやや書類が異なる部分もありますが、基本的には両者で必要になる用途の書類は同じです。詳しくは国税庁のホームページで紹介されています。難しいと思う場合にはまず不動産会社の営業担当者に聞いてみましょう。
確定申告が不安なら毎年1月ごろに税務署や役所で無料の税務相談会が開かれているので相談してみるのもいいでしょう。また、税理士に依頼すれば有料ですが代理で申告をしてくれます。
譲渡損失の繰越控除で知っておきたいこと
譲渡損失の繰越控除は譲渡所得がマイナスになった場合に適用できる特例です。譲渡所得がプラスになった場合に適用できる特例は併用できないので注意しましょう。また、確定申告は税務署に行かなくてもe-Taxを利用すればインターネットを利用してどこからでも提出が可能です。
ここでは売却損が出たときの譲渡損失の繰越控除で知っておきたいことについて紹介していきます。
売却時の税金優遇特例と併用できない
譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例は譲渡所得がマイナスになった時に利用できる特例です。売却したときの損を軽減するための措置です。この他にも税金優遇特例はありますが、譲渡所得がプラスになった時に適用できるので併用はできません。
譲渡所得がプラスになった時に適用できる特例には以下のものがあります。
- 3,000万円特別控除
- 所有期間10年超の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例
- 特定の居住用財産の買換え特例
これらは家を売却して得た利益に対する譲渡所得税を軽減するための措置です。3,000万円の特別控除と10年以上所有物件売却の軽減税率は併用できます。不動産を売却して利益が出た場合には、税金を軽減するための措置があるので忘れずに申告しましょう。
税金の優遇特例はいずれも確定申告をして適用する必要があります。しっかり準備をして忘れずに申告しましょう。
確定申告はe-Taxを利用すると便利
e-Taxは平成16年から導入されていますが、マイナンバーカードの導入やスマートフォンの機能進化に伴い確定申告の電子申告が便利になっています。インターネットを利用できる環境にあるのならば、自宅のパソコンやスマートフォンで確定申告書を作成できます。
作成した確定申告書はそのままインターネットから税務署に申告もできるので、税務署に行く必要も、印刷して郵送する必要もありません。国税庁の確定申告書作成コーナーで詳しく紹介されているので、わからないことは電話でも相談できます。
戸建て売却損には有効な対策をとろう
所有する戸建ての家を売却した際に売却価格が購入価格を下回ったら売却損となります。売却損にならないためには少しでも高く売れるようにしましょう。不動産の売却には営業担当者の力量が大きく影響するので、査定を依頼したら、査定価格だけでなく、担当者の応対やコミュニケーション力もしっかり比較しましょう。
売却損になってしまったら、譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例を利用してマイナスになった金額を他の所得から差し引いて税額を軽減できます。その年の収入から損額を差し引いても損金が残ったら翌年以降に繰り越せます。
特例を適用するのには確定申告が必要なので、必要な準備をして、申告期間内に税務署へ提出しましょう。