相続などで不動産を引き継いだ場合、名義が亡くなった方のもののままになっているというケースは少なくないでしょう。名義をそのままにしていると何か不都合が起きるのでしょうか。
この記事では家の名義変更をしておくべき理由と手続きに際しての注意点について解説します。家の名義変更の申請方法や必要書類についても紹介しますので参考にしてください。
家の名義変更を早めに済ませておくべき理由
一般的に家の名義は早めに変更しておくことが推奨されています。名義が別の人であることに何か問題があるのでしょうか。手続きが面倒などという理由で名義変更せずにいると時間の経過とともに不都合が生じる可能性が出てきます。
ここでは家の名義変更を早めに済ませておくべき理由を5点に絞って解説します。いざというときに困らないように、面倒だと思わずに名義変更は早めにすませることをおすすめします。
いずれ義務化される
相続した不動産の名義をそのままにしていても今はすぐに問題が起こることはありません。これは不動産の名義変更が義務ではないからです。名義変更をどのタイミングで行うかは相続した人に任されています。これは名義変更に費用がかかることも関係しているでしょう。
名義変更は無料でできるわけではなく、相続した不動産にあわせて必要な費用を支払って手続きをして行います。つまりすぐに費用が出せない人は名義変更を後回しにしがちということです。とくに義務ではないため名義変更の優先度が低くなるのも理由のひとつにあげられます。
ただ、現在は義務ではない名義変更もいずれ義務化される可能性があります。義務化されると、これまで名義変更を放置していた人が急いで手続きを行うため窓口が混み合うという問題が起こるでしょう。義務化を見越して、相続した不動産の名義変更はできるだけ早い段階で行うことをおすすめします。
名義変更手続きがスムーズにできる
名義変更は時間が経過すればするほど手続きが煩雑になる可能性が高くなります。相続したばかりであれば、自分の意志だけで名義変更できることも多いですが、時間が経過すると家族関係や相続人の関係が複雑になるでしょう。
たとえば、名義変更をしないうちに所有者が死亡してしまうということもあります。こうなると新たな相続人が関係者となります。相続人の人数が増えてしまうと相続の協議でトラブルが起こることもあるでしょう。
こうした家族間のトラブルを避けるためにも、相続したら名義を単独名義に素早く変更しておくことをおすすめします。
売却したいときに売却できない
名義変更をせずに放置しておくと起こる問題として、売却の際のトラブルがあげられます。他人名義の不動産は勝手に売却することはできません。相続して活用している不動産であればよいですが、活用していない不動産は急に買い手がつく可能性もあります。
また、まとまった現金が必要になり売却したいとなった場合も簡単に売却することができません。不動産を担保にして金融機関から借入を行う場合も名義変更していることが前提です。
このようにいざというときに困らないように名義変更は早めに行っておきましょう。
相続した家を失う可能性がある
名義変更をしておかなかったことで相続した家を失ってしまうことがあります。相続したのになぜ失うことになるのでしょうか。これは所有権と深く関係があります。
たとえば、遺産相続の際に協議を行い、家を相続したとします。相続したからと安心して、名義変更をせずに放置していると所有権を失ってしまう可能性が出てきます。相続には相続持ち分と呼ばれる法律で定められた遺産の取得分があります。
家を単独相続した場合でも、名義が亡くなった人のままだと相続持ち分を主張され、持ち分を所有している人に売却されて登記されてしまう可能性が出てきます。これは二重譲渡と呼ばれ、一見すると許されない行為に見えますが、判例では最初に登記した人が不動産の権利を取得することが可能であることが示されています。
また、共同名義になっている場合も注意が必要です。もしも共有者が借金をしていてすでに登記をすませていた場合、返済が滞ると不動産が差し押さえられてしまうこともあります。
遺産分割で協議して、不動産を単独取得した場合も共同名義になっている場合も、早めに名義変更して不動産の権利をしっかり主張できるようにしておきましょう。早期に名義変更をして、権利を主張できるようにしておきましょう。
固定資産税の送付先が変更されない
不動産を所有していると固定資産税が課税されます。相続した不動産も固定資産税はしっかりと支払う義務があります。ただ、名義変更をしていないと、固定資産税の請求がもとの所有者のところに届いてしまいます。
元の所有者の関係者が固定資産税を支払ってくれたり、通知を届けてくれるのであれば問題ありませんが、請求されていることに気が付かずに長期的に滞納していると問題が起こるでしょう。
税金を滞納すると督促が届くようになります。それも無視していると最終的には不動産を差し押さえられてしまうため注意が必要です。
家の名義変更の仕方
家の名義変更を行うにはどのような手続きを行えばよいのでしょうか。ここでは家の名義変更の方法について2点解説します。
司法書士に手続きの代行を依頼する
名義変更が面倒だと考えている人は、司法書士に手続きの代行を依頼することができます。司法書士に代行を依頼すれば必要書類の取得から代行してもらえるので自分で手続きをするよりも簡単に名義変更することが可能です。
ただし、司法書士に代行を依頼した費用を支払う必要があるため、手続きにかかる費用が高額になることは理解しておきましょう。司法書士に支払う費用は依頼する事務所によって異なります。事前にいくつかの事務所を比較してみるとよいでしょう。相場は5万円?とされています。
法務局で自分で申請する
司法書士に依頼しなくても、名義変更は自分で申請することが可能です。自分で手続きをすれば費用を節約することができるので、節約したい場合には自分で書類を揃えて窓口に申請しましょう。
ただし、必要書類は少し複雑な箇所もあるため、せっかく窓口に出向いても書類に不備があった場合は出直さなくてはならないこともあります。忙しい人は費用がかかっても司法書士に依頼したほうがスムーズに名義変更ができる点はポイントです。
名義変更手続きをするときのポイント
家の名義変更手続きをする際にはいくつか押さえておきたいポイントがあります。ここでは名義変更手続きのポイントを3つ紹介します。手続きをスムーズに行うために参考にしてください。
共同名義にすることは避ける
不動産の名義には単独名義と共同名義があります。可能であれば不動産は単独名義にしておくほうがメリットは大きいです。共同名義にももちろんメリットはあります。共同であるため住宅ローン控除を二重に受けられる点や、3,000万円の特別控除も二重に受けられるというのがメリットです。
とはいえ、共同名義はデメリットのほうが多いため可能な限り単独名義で名義変更しておくことをおすすめします。たとえば、共同名義にしていると売却する際に共同名義人の同意が必要になる点です。また登記の際は登記する人数分の費用がかかるため費用が高額になるという点にも注意が必要となります。
変更に1カ月ぐらいかかることを認識しておく
名義変更は手続きをしたらすぐに完了するわけではありません。申請に必要な書類を作成するのにも時間がかかりますが、申請してからも名義変更が完了するまで最低でも1カ月はかかると考えておきましょう。売却を機に名義変更を行う場合にはとくに注意が必要です。
活用していない不動産を急に売却してほしいと求められたとき、名義変更していないと購入希望者を待たせることになります。また、不動産価格は常に変動しているため、名義変更の手続きをしている間に購入希望者の気持ちが変わったり不動産価格が下落したりする可能性もあります。
こうした問題を回避するためにも不動産の名義変更は早めにすませておきましょう。
相続税を申告する前に名義変更をおこなう
相続を行うと相続税が課税されます。相続税の申告と名義変更では同じような書類が必要となります。必要となる主な書類は次のとおりです。
- 故人の戸籍謄本
- 相続する不動産の固定資産税評価証明書
- 相続する人の戸籍謄本
- 住民票
- 印鑑証明書
- 遺産分割協議書など
名義変更では書類が戻ってくるので、名義変更を先にすればその書類を使って相続の申告をすることができスムーズです。
名義変更をおこなう際の注意点
名義変更を行う際には手続きのためにいくつかの書類を用意する必要があります。また、名義変更には費用がかかります。ここではこれらを踏まえて名義変更をおこなう際に注意したい点について解説します。
登録免許税がかかる
名義変更を行う際、登録免許税を支払う必要がある点に注意しましょう。名義変更に必要な登録免許税の計算方法は次のとおりです。
- 土地と建物の固定資産税評価額×0.4%=登録免許税
登録免許税を計算する際、固定資産税評価額の1,000円未満の端数は切り捨てる点にも注意しましょう。また、相続で受け継いだ不動産の登録免許税の税率は0.4%ですが、遺言で相続人ではないけれど不動産を相続した場合は税率が異なります。
遺言で相続人以外の人が相続することを遺贈と呼びます。遺贈の場合の税率は2.0%と通常よりも高くなる点も注意点です。
自分が相続した不動産の登録免許税を事前に知るには、不動産の価値を調べるとよいでしょう。無料一括査定サイトを利用すれば手軽に相続した不動産の価値を調べることが可能です。
すまいステップの無料一括査定サイトは、独自の基準で全国の優良な不動産会社のみと提携しているため安心して利用することができます。一度情報を入力するだけで複数の不動産会社に査定を依頼できるため忙しい人にもおすすめです。
名義変更の理由によって必要書類が異なる
名義変更の手続きには複数の書類が必要になります。用意する書類は名義変更の理由によって異なるため、事前にどのような書類が必要かを確認しておくことが必要です。名義変更の主な理由には、売却や相続、財産分与、生前贈与があります。
これらの理由ではどのような書類が必要になるのか、次の項目で詳しく解説します。書類の不備があると何度も窓口に足を運ばなくてはならなくなるため、事前にしっかりと準備しておくことをお勧めします。
ケース別家の名義変更に必要な書類
前の項目でも簡単に紹介しましたが、名義変更をする理由はいくつかあげられます。名義変更は理由によって用意する書類が異なるため、理由が明確になったらどのような書類が必要になるか事前にしっかり確認しておきましょう。
ここでは、主な理由となる売却、相続、財産分与、生前贈与の4つのケースについて必要書類を解説します。
家を売却での名義変更
住み家を売却して新居に引っ越す、活用していない家を売却してほしいと言われたなど家を売却することになった場合、自分名義の不動産でなければ売却することはできません。そのためもし相続した不動産などで、まだ自分名義に変更していない場合には、先に自分の名義に変更する必要があります。
自らの意思で売却する場合には、名義変更に時間がかかっても問題ないでしょう。ただ、急に売却してほしいという申し出があり、売却することになった場合には注意が必要です。
名義変更には少なくとも1カ月程度かかります。書類の不備があるとさらに時間がかかることもあるため、売却のタイミングを逃してしまう可能性が出てきます。書類はしっかりと用意して何度も窓口に足を運ばなくてもよいようにしっかり準備しましょう。
売却で必要となる書類は次のとおりです。
- 不動産売買契約書=不動産の売買価格の確認のため
- 登記識別情報または登記済証
- 固定資産税評価証明書
- 印鑑証明
ここまでは売主が用意する書類になります。売却を希望しているけれど、売却先はまだ決まっていない状態で名義変更をする場合には不動産売買契約書は必要ありません。
もしも売却先が決まっている場合には名義変更の際に、買主にも書類を用意してもらう必要があります。自分の名義に変更してから、新しい所有者の名義に変更する必要があるからです。買主に用意してもらう必要がある書類は次のとおりになります。
- 住民票
売却の際には自分以外の人も関わってくるため不備があると迷惑をかけてしまうことになるでしょう。そのためとくに書類の不備には注意が必要です。
相続での名義変更
不動産を相続した場合にはできるだけ早く自分の名義に変更しておくことをおすすめします。名義変更せずに放置していると、売却するときに困ったり所有権を失ってしまったりすることもあります。
相続が理由で名義変更する際に必要な書類は次のとおりです。相続での名義変更は、被相続人が亡くなっているため相続した人が書類を用意しましょう。
- 戸籍謄本
- 除籍謄本
- 改製原戸籍
ここまでは被相続人の書類となります。相続人が用意するのは次の書類です。
- 戸籍謄本
- 住民票
- 名義変更する年の固定資産評価証明書
- 相続関係説明図
- 遺産分割協議書
- 印鑑証明書
相続が理由の場合の名義変更は書類の数が多くなるため不備が出やすくなります。間違いがないように丁寧に準備を進めましょう。とくに被相続人の書類については遠方に住んでいた場合などは取り寄せに時間がかかることもあるため、余裕を持って用意するようにしましょう。
被相続人が亡くなっているため、どうしても書類を揃えることができないというケースもあるでしょう。この場合には次のような書類を用意すれば申請可能です。
- 不在籍証明書
- 不在住証明書
- 登記済権利証
- 上申書
被相続人が亡くなっていることを証明し、登記済権利書を示すことで申告が可能となるということになります。
離婚の財産分与での名義変更
離婚をして財産分与で家をもらうことになった場合、名義はしっかりと自分のものに変更しておきましょう。名義が離婚相手のままだと、もしも相手がお金に困ったときなどに勝手に売却されてしまうこともあります。稀なケースではありますが、こうしたトラブルを避けるためにも名義変更は早めに行いましょう。
離婚の財産分与での名義変更で必要となる書類は次のとおりです。
- 登記識別情報または登記済証
- 固定資産税評価証明書
- 有効期限3カ月以内の印鑑証明書
ここまでは今の名義人が用意する書類になります。次の名義人が用意する書類は次のとおりです。
- 住民票
- 名義変更する年の固定資産評価証明書
- 財産分与契約書
- 戸籍謄本
- 離婚が分かる書類
財産分与ではトラブルが起こることもあるため、財産分与契約書はしっかりと用意しておきましょう。
家を生前贈与された時
生前贈与で家を受け取ることもあるでしょう。生前贈与の場合でも名義変更は早めに行うことをおすすめします。贈与と財産分与は用意する書類がほぼ同じです。贈与する側と受贈者で用意する書類が異なるためお互いに不備がないようにきちんと用意してから手続きを行いましょう。
財産分与よりもトラブルは少ないと考えられますが、スムーズに手続きを進めるためにも書類の準備は重要です。生前贈与で贈与者が用意する書類は次のとおりになります。
- 登記識別情報通知
- 有効期限3カ月以内の印鑑証明書
受贈者が用意する書類は次のとおりです。
- 住民票
- 名義変更する年度の固定資産評価証明書
- 贈与契約書
- 贈与証書
財産分与と同様に贈与を受けることをはっきりと示した契約書が必要となります。
名義変更は義務ではないが早く済ませたほうが良い
名義変更の手続きにはさまざまな書類を用意する手間と、高額な費用を支払うという費用がかかります。そのため、生活に支障がないのであれば名義変更をせずにそのまま生活してしまっている人もいるでしょう。活用していない不動産であればとくに普段はあまり関与しないため名義をそのままにしている人もいます。
名義変更をしないと固定資産税が元の名義人のところに届くため、元の名義人から名義変更を促されて仕方なく名義変更をするというケースも少なくありません。ただ、こうしたことがないとなかなか名義変更のために時間を割くことができないこともあるでしょう。
とはいえ名義変更はできるだけ早いタイミングで行っておくことをおすすめします。表向きは何も問題がないようにみえても、いざというときに名義が他人のままだと困ったことが起こります。
たとえば活用していない土地が急に売れることになった場合、自分名義でなければ売却することはできません。名義変更には少なくとも1カ月はかかるため名義変更をしている間に価格が下落してしまうことも考えられます。また、購入者が気変わりしてしまう可能性もあるでしょう。
このように名義変更をしないでいると損をしてしまうこともあります。手間と費用はかかりますが、トラブルにならないためにも名義変更はできるだけ早く行うことをおすすめします。
名義変更にかかかる費用は不動産価格からある程度算出することができるため、まずは無料一括査定サイトなどを活用して不動産価格の査定を行いましょう。すまいステップの無料一括査定サイトは一度情報を入力するだけでまとめて複数の不動産会社に査定を依頼することができるためおすすめです。
査定価格は複数社に出してもらって比較することでおおよその目安を算出することができます。可能な限り複数社で査定を依頼してより正確な費用を算出しておきましょう。