家を売却して利益が生じた場合は譲渡所得税が課税されます。家の売却では譲渡所得税がメインの税金として知られていますが、実は別の箇所で税金が発生することもあることを知っておきましょう。
この記事では家の売却にかかる税金をシミュレーションします。計算方法についても徹底解説しますので参考にしてください。
家の売却にかかる税金の種類
家の売却にかかる税金は主に次のような種類があります。
- 譲渡所得税
- 印紙税
- 登録免許税
- 消費税
それぞれの特徴について詳しく解説します。
譲渡所得税
譲渡所得税は、家の売却で利益を得たときに課せられる税金です。家を売却した翌年の2月中旬から3月中旬にかけて確定申告を行うことで納税します。譲渡所得税には所得税・住民税・復興特別所得税が含まれている点にも注目しておきましょう。
さらに家の所有期間に応じた税率がかけられる点も注意点です。具体的には所有期間5年が境目になります。譲渡所得税は所有期間5年を境に短期譲渡所得と長期譲渡所得に分けられています。5年を過ぎると税率が変動するため売却のタイミングをよく検討する必要が出てきます。税率については次のとおりです。
- 短期譲渡所得:所得税30%+復興特別所得税0.63%+住民税9%=合計39.63%
- 長期譲渡所得:所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%=合計20.315%
こうしてみると、短期譲渡所得と長期譲渡所得を比較すると税率が2倍近く異なることがわかります。5年を迎えそうなタイミングで売却を検討している場合には、少し待って5年を過ぎてから売却することも検討してみるとよいでしょう。
印紙税
印紙税は、不動産の売買契約書にかかる税金です。契約金額に応じた税額が課せられるため、いくらの税額になるかは次の表を参考にしてください。
契約金額 | 印紙税額 |
---|---|
1万円未満 | 非課税 |
10万円以下 | 200円 |
50万円以下 | 200円 |
100万円以下 | 500円 |
500万円以下 | 1,000円 |
1,000万円以下 | 5,000円 |
5,000万円以下 | 10,000円 |
1億円以下 | 30,000円 |
5億円以下 | 60,000円 |
印紙税は売買契約の金額によって変動するため表を参考に事前に確認しておきましょう。
参考:国税庁
登録免許税
家を売却する際にまだ住宅ローンが残っている場合には、住宅ローンを完済する必要があります。なぜなら、住宅ローンを利用している間は抵当権が金融機関にあるからです。抵当権がある状態では勝手に家を売却することはできません。抵当権を抹消するためには住宅ローンを完済して登記を変更する必要があります。
この抵当権抹消登記に必要なのが登録免許税です。ひとつの不動産に対しての税額は1,000円とされています。
消費税
家の売却で消費税が発生するのは疑問に感じる人もいるでしょう。消費税は家の価格に課せられるのではなく、不動産会社に支払う仲介手数料や司法書士に手続きを依頼した場合の報酬に課せられるものです。たとえば仲介手数料であれば次のような計算で上限が算出されます。
仲介手数料=売却金額×3%+6万円+消費税
税率はいずれも10%です。思わぬところにも税金が課税されるため売却の際には見落とさないようにしておきましょう。
家の売却にかかる譲渡所得税の計算方法
家の売却で課税される大きな税金といえば譲渡所得税です。譲渡所得税はどのように計算されるのでしょうか。ここでは譲渡所得税の計算方法を順を追って解説します。計算方法がわかっていると事前にある程度の課税額を算出することができるため参考にしてください。
譲渡所得を算出する
譲渡所得税を計算するにはまず譲渡所得を算出する必要があります。譲渡所得は、家の売却金額から取得費にかかった費用や経費を差し引いたものです。譲渡所得税は譲渡所得を基準に計算されるため、まずは譲渡所得を正確に算出することが大切です。譲渡所得の計算方法は次のとおりになります。
譲渡所得=譲渡価格-「取得費+譲渡費用」
譲渡価格は家を売却して得られた金額です。取得費は、家を購入したときに支払ったお金になります。具体的には家の金額と購入にかかった経費を含む金額が取得費となります。
家を購入した費用と取得にかかった経費が正確にわかる場合には実額法で取得費を計算します。実額法では、実際に支払った金額から減価償却費を差し引くことで金額を算出します。減価償却については次の項目で詳しく解説します。
取得費については次のようなものを含むことができるため、わかる範囲でしっかり確認しておきましょう。
- 不動産購入費
- 購入時にかかった印紙税
- 登録免許税
- 不動産取得税
- 仲介手数料
- 設備費
概算法は家を購入した際の費用が不明な場合の取得費の計算方法です。この場合には家の売却価格に5%を乗じた金額が取得費となります。
取得費が曖昧な場合は、2種類の計算方法を試して金額が大きいほうを選択することも可能です。両方があり、実際に計算して金額が大きい方を取ることが可能です。
減価償却費を算出する
譲渡所得を計算する際に必要となる取得費の計算には減価償却費が必要となります。減価償却費は、経年劣化によって下落した建物の価値を表す費用のことです。減価償却費の計算方法は次のとおりになります。
減価償却費=購入価格(取得価格)×0.9×償却率×経過年数
償却率は建物の目的や構造によって異なるため次の表を参考にしてください。
? | 居住用の不動産 | 事業用の不動産 | |||
---|---|---|---|---|---|
耐用年数 | 償却率 | 耐用年数 | 償却率 | ||
建物構造 | 木造 | 33年 | 0.031 | 22年 | 0.046 |
軽量鉄骨 | 40年 | 0.025 | 27年 | 0.0638 | |
鉄筋コンクリート | 70年 | 0.015 | 47年 | 0.022 |
参考:国税庁
所有期間に応じた税率をかける
前項でも解説しましたが、譲渡所得税は家の所有期間に応じた税率がかけられる点にも注意が必要です。所有期間5年を境目として短期譲渡所得と長期譲渡所得に分けられているため、5年を過ぎると税率が変動すると覚えておきましょう。税率については次のとおりです。
- 短期譲渡所得:所得税30%+復興特別所得税0.63%+住民税9%=合計39.63%
- 長期譲渡所得:所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%=合計20.315%
短期譲渡所得と長期譲渡所得では税率が2倍近く異なるため急いで売却する必要がない場合には、5年は所有してから売却すると節税になります。10年を超える家の場合はさらに税率が下がり、14.21%になることも覚えておきましょう。
ただし、新築といえるのは居住してから1年なので1年を超えない家の場合は高額で売却できるうちに売ってしまうという考え方もあります。売却のタイミングについては不動産会社によく相談して損がないようにすることをおすすめします。
家の売却にかかる税金を抑えるには
家の売却でかかる税金の計算方法がわかったところで、次に考えるのは家の売却にかかる税金をいかに節約するかという点でしょう。ここでは家の売却にかかる税金を抑えるためのポイントについて解説しますので、参考にしてください。
所有期間が5年を超えてから売却する
すでに解説していますが、譲渡所得税は家の所有期間に応じた税率がかけられます。所有期間は5年以下、5年超10年以下、10年超を境に考えましょう。大きな境目は5年です。所有期間が5年以下の場合は短期譲渡所得、5年超10年以下の場合は長期譲渡所得で税率が計算されます。
簡単に説明すると所有期間が5年を過ぎると税率が下がるということです。詳しい税率については、次のとおりになります。
短期譲渡所得:所得税30%+復興特別所得税0.63%+住民税9%=合計39.63%
長期譲渡所得:所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%=合計20.315%
短期譲渡所得と長期譲渡所得では税率が2倍近く異なります。少し待つだけの余裕があるのであれば所有期間4年を過ぎている場合には、5年が過ぎるのを待ってから売却すると節税対策となります。
10年を超えた場合はさらに税率が下がって14.21%になるため、10年の境目も重要なポイントです。売却のタイミングについては不動産会社によく相談して損がないようにすることをおススメします。
3,000万円の特別控除を活用する
マイホームを売却する場合には、3,000万円の特別控除が利用できるかどうかが大きなポイントになります。譲渡益から3,000万円が控除されるのはかなり大きな節税となります。3,000万円の特別控除は所有期間に関係なく活用できる特例であるためマイホームの売却であれば必ず適用するかどうかをチェックしましょう。
特例に関しては次のような計算式を用いて算出することができます。
譲渡所得=譲渡価額ー取得費ー譲渡費用ー3,000万円
この計算式を用いて譲渡所得から3,000万円を差し引くことで税金を減らすことができることになります。
軽減税率の特例を活用する
軽減税率の特例は、家の所有期間が大きく関係する特例です。売却する予定の家が所有期間10年を超えている場合、10年超所有軽減税率の特例が適用されます。
具体的には、譲渡所得のうち6,000万円以下の部分の税率が下がります。これが節税につながるということです。
まずは所有年数が関係ない3,000万円特別控除を適用します。3,000万円を差し引いた譲渡所得のうち6,000万円以下の部分については、所得税が10.21%、住民税が4%で合計14.21%で税率を計算します。6,000万円を超えた部分については、所得税が15.315%、住民税が5%で合計20.315%が税率となります。
軽減税率については3,000万円の当別控除と同様にマイホームを売却した場合という条件がつく点には注意が必要です。
家の売却で発生する税金の注意点
家の売却で発生する税金にはいくつかの種類があり、控除や特例が利用できることが理解できたでしょう。ここでは家の売却で発生する税金に関する注意点について3つ解説します。ポイントをしっかり押さえて損をしないようにうまく節税しましょう。
取得日と売却日の判定にはルールがある
家を売却した場合に発生する税金を節税するポイントとして、家の所有期間が関係していることはすでに解説しました。5年を境に税率が下がるため売却は5年を超えてからのほうが節税になるという点がポイントです。
ここで注意しておきたいのが、売却日と取得日の判定です。売却日は売却した年の1月1日時点で判定されます。つまり2022年5月に売却した家でも売却日は2022年の1月1日ということになります。
取得日が2017年の5月だった家の場合、2022年5月に売却すれば5年間所有したことになると考えて売却したとします。この場合、正確な売却日は2022年1月1日となるため、実際に所有していた期間は4年と8カ月となり5年を超えないことになります。
つまりこのケースでは長期譲渡所得が適用されそうにみえて、実際には短期譲渡所得が適用されることになるというわけです。こうなると4カ月の差で税金が2倍近くになってしまいます。そのため売却の際には不動産会社にしっかり相談して取得日と売却日をきちんと確認しておくことをおススメします。
税金を納めるタイミングは異なる
家を売却した際に発生する税金は種類によって納税のタイミングが異なる点には注意が必要です。家の売却時に発生する税金には次のような種類があります。
- 譲渡所得税
- 印紙税
- 登録免許税
- 消費税
譲渡所得税はすべての契約が成立して支払いや受け取りなども完了した後に納税します。納税方法は、売却した年の翌年の2月中旬から3月中旬の確定申告時に納税するようになっています。
印紙税は売買契約書に貼り付ける印紙代であるため、売買契約書を取り交わす際に支払う必要があります。売却額によっては数万円の費用が必要になることもあるため手元に現金を用意しておいたほうがよいでしょう。
登録免許税は引き渡しのタイミングで抵当権を抹消し登記を行う際に必要となる税金です。こちらも現金での支払いになるため事前の準備が必要です。
消費税は、仲介手数料や司法書士に支払う報酬にかかる税金であるため、それぞれの支払いの際に支払い金額に含めて納めることになります。こちらも現金払いとなる点には注意が必要です。
投資目的の場合は建物にも消費税がかかる
もしも投資目的で家やマンションを売却した場合には、売却した建物の価格に消費税が課税されます。消費税が課税されるのは建物だけで、土地には消費税がかからない点はポイントです。
投資目的の場合には、消費税が余分に必要となる点には注意しておきましょう。
シミュレーションとすまいステップをうまく利用しよう
家の売却で発生する税金の計算方法について解説してきました。税金のシミュレーションをしておくことで事前にどの程度の金額が手元に残るのかを算出することもできます。もしも住み替えを計画している場合には、手元に残る金額の目安がわかれば資金計画をより正確にたてることができるでしょう。
シミュレーションを利用する際には、実際に不動産会社に査定を依頼して家がどの程度の価格で売却できるかを提示してもらっておくとより売却価格が現実に近い金額で入力できるでしょう。
不動産査定は1社だけでなくできるだけ複数社に依頼することをおすすめします。提示された査定額を比較して信頼できそうな不動産会社が提示している金額をもとにシミュレーションを進めてみましょう。
複数の不動産会社に査定を依頼する場合には不動産一括査定サイトの利用がおススメです。すまいステップは、複数の不動産会社に不動産査定を一括で依頼できるサイトです。すまいステップは、無料一括査定を提供しており、独自の厳選審査を通過した不動産会社のみが参画しているため安心して利用することが可能です。
家の売却にかかる税金をシミュレーションしておこう
家の売却にかかる税金をシミュレーションしておくことで、家を売却した後に手元に残る金額の目安を算出することが可能となります。売却額で住み替えなどを検討している場合には、より正確な資金額がわかっていたほうがプランがたてやすくなります。
シミュレーションを利用する際には、自分の希望の売却額を入力しても問題ありませんができるだけ正確な数字を出したい場合には、不動産会社に査定してもらった金額を入力することをおススメします。
不動産会社に査定を依頼する場合は、すまいステップの利用が便利です。一度情報を入力することでまとめて4社に査定が依頼できるため手間がかからない点がメリットになります。