親族が亡くなって相続が発生したときは、相続税評価額を算出する必要があります。
土地や建物のほか、預貯金、株式、生命保険金などの金融資産から、貴金属に至るまで、資産額をすべて、それぞれの評価方法に従って算出することとなります。
特に土地の評価額は、土地の場所や状況によって評価が難しくなる案件です。
今回は相続税評価額についての説明と、それぞれの資産の評価額の算出方法を紹介します。
土地と建物の評価額を下げて節税するためのポイントや、節税の注意点についても解説するので、ご参考にしてください。
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相続税評価額とは
相続税評価額とは、財産の種類ごとに定められた計算方法で算出した、相続財産の価額のことです。
相続が発生したときに、故人が所有する資産の総額を計算する際に必要となります。
計算対象は、故人が亡くなったときに所有していた全ての財産で、土地や建物、株式、生命保険のほかにも、ゴルフ会員権などの権利や貴金属や骨董品などの実物資産を含みます。
各資産ごとに評価額を算出するための方法が定められているため、その方法により算出した相続税評価額に対して課税額が決定されるのが一般的です。
土地についての相続税評価額の算出方法
土地についての相続税評価額の算出方法はその土地が存在するエリアや状況によって変わってきます。
ここからはそれぞれの算出方法について詳しく解説していきます。
路線価方式の計算
道路に面する1㎡の土地の価値から算出する土地の評価方法を路線価方式と言います。
計算式で表すと以下の通りです。
相続税評価額(円)=路線価(円/㎡)×奥行価格補正率(%)×土地面積(㎡)
路線価は国税庁のホームページにある路線価図から、地域を選択することで表示ができます。
都市部を中心に、地面に面している土地の評価額を算出するときには、最も一般的に使われる計算方法です。
たとえば、路線価22万円・奥行価格補正率0.9%・土地面積200㎡(約60坪)の土地の場合、上の式に当てはめて計算すると、相続税評価額は3,960万円となります。
参考:国税庁「路線価図・評価倍率表」
倍率方式の計算
倍率方式とは、先述の路線価方式では評価額の算出ができない土地について、使用する土地評価方法です。
都市部は前述の路線価方式で評価することが多くなっていますが、地方の郡部や山林・原野などの多くは倍率方式での評価となっています。
計算式で表すと以下の通りです。
相続税評価額(円)=固定資産税評価額(円)×倍率(%)
倍率は、国税庁のホームページにある評価倍率表から地域を選択することで表示ができます。
計算に使われる固定資産評価額は、その土地のある市町村から送られてくる納税通知書に記載されているので確認ができます。
路線価は毎年更新されますが、固定資産評価額は3年に一度の改定のため、相続税評価額の変動頻度が両者で異なることを覚えておきましょう。
借地権が付いた土地の計算
第三者に土地を貸していて借地権が付いている土地は、借地権の付いていない土地(更地)に比べて相続税評価額が小さくなります。
借地権とは、土地所有者とは別に、建物を所有する第三者が土地を借りている場合の、土地に対する権利です。
土地の所有者とは別に建物の所有者がいる場合、その土地は完全な相続資産とは考えにくいため、借地権割合を掛けて評価額を算出します。計算式で表すと以下の通りです。
相続税評価額(円)=更地の評価額(円)×借地権割合(%)
借地権割合は国税庁によってあらかじめエリアごとに決められています。
都心部や主要道路周辺など土地の利用可能性が高い地域は借地権割合が高いのが一般的です。
貸宅地の計算
貸宅地の計算は、借地権が付いた土地と同じく更地の評価額と借地権割合で計算することができます。
そもそも貸宅地とは建物を建てるという目的のもと、第三者に貸している土地のことを言います。計算式で表すと以下の通りです。
相続税評価額(円)=更地の評価額(円)×(1−借地権割合(%))
第三者に貸している土地は、所有者といえど簡単に使用することはできないため、更地の状態に比べて相続税評価額が小さくなっています。
貸家建付地の計算
貸家建付地とは自分の所有する土地に貸家として建築した建物がある状態の土地のことです。
つまり賃貸物件の大家さんが対象です。計算式で表すと以下の通りです。
相続税評価額(円)=更地の評価額(円)×(1 - 借地権割合(%) × 借家権割合(%) × 賃貸割合(%))
自分の土地の上に建てた建物が賃貸に出ている場合、所有者は土地を自由に使うことができません。
一方で、賃貸の物件が空室のときには、所有者が自由に使える面積があると考えられるため、相続税評価額が大きくなるという特徴があります。
相続税評価額の算出対象となるその他の資産
相続税評価額の計算対象となる資産項目として、土地以外に建物、上場株式、生命保険金、退職手当金、ゴルフ会員権、貴金属・骨董品などがあります。
ここからはそれらの個別項目についての算出方法を紹介します。
建物
建物の相続税評価額は固定資産評価額と同額です。
そのため、その建物が立っている土地の市町村から送られてくる「固定資産税課税明細書」を見ることで簡単に確認できます。計算式で表すと以下の通りです。
相続税評価額(円)=固定資産税評価額(円)
建物の場合にはそのまま固定資産評価額が相続税評価額となるのが特徴です。
上場株式
上場株式の評価方法は基本的には時価です。
しかしその中でも選択肢があるのが最大の特徴です。
上場株式の相続税評価額は以下の項目の中で最も低い価格のものとなります。
- 相続が発生した日の終値
- 相続が発生した月の終値の平均値
- 相続が発生した月の前月終値の平均値
- 相続が発生した月の前々月終値の平均値
生命保険金
故人の死亡によって遺族に支払われる生命保険金は、基本的には受取金額が相続税評価額として算出されます。
しかし、これでは遺族の負担が大きくなってしまうため、相続人1あたり500万円までの非課税制度が適用されます。
例えば妻と3人の子供を残して夫が亡くなった場合、支払われた生命保険金額が一般平均の2,000万円だったとすると、500万円×4人=2,000万円の全額が非課税となり、生命保険金は相続税評価額の対象外となります。
退職手当金
退職手当金とは、故人が生存していたら本人が受け取っていたお金です。
そのため故人の財産とみなされ、相続税の課税対象となります。
一方、退職手当金に対しても生命保険金と同様の扱いで、相続人1人あたり500万円までの非課税制度が適用されます。
ゴルフ会員権
ゴルフ会員権などの権利も、資産として相続税評価額の算出対象となります。
計算方法は取引価格の7割です。評価時点は相続開始日(故人の死亡の日)となります。
貴金属・骨董品
貴金属や骨董品のような実物資産の価額の算出方法は、専門家による鑑定価額です。
こちらも評価時点は相続開始日となります。
鑑定価格の相場をあらかじめ知っておきたい場合は、売買サイトでの類似品の取引価格を参考にしましょう。
土地と建物の相続税評価額を下げて節税する方法
相続税評価額を下げて節税するには、土地や建物などの不動産を使うことが効果的です。
ここからは不動産を使って相続税評価額を下げる方法を紹介します。
賃貸に出す
所有する土地や建物を賃貸に出すことによって、相続税評価額を抑えることができます。
例えば、自分で居住する土地の評価額は、路線価方式または倍率方式によって算出される価額となりますが、賃貸に出すことで30%程度評価額を抑えることができます。
余っている空き家や空き地を所有している方は賃貸に出すことを検討してみましょう。
入居者をつけて空室をなくす
すでに賃貸物件を所有している方は、その物件の入居率を上げることで節税となる場合があります。
貸家建付地の相続税評価額の計算では、賃貸割合が考慮されます。
そのため、入居者をつけて空室をなくすことで、評価額を抑えて相続税の税金負担額を抑えられるでしょう。
土地がそもそも広い場合
所有している土地が東京、大阪、名古屋を中心とした大都市圏であり、500㎡以上の広大な土地である場合には相続税評価額の大幅な減額措置がとられます。
地方の場合には1,000㎡以上の土地が対象です。
近隣の土地を分筆して保有している場合には、合筆などの対策を講じることで相続税評価額を下げることが可能な場合があります。
相続税評価額を下げて節税するときの注意点
相続税評価額を下げて節税するときには、注意すべき点がいくつかあります。
ここからはその内容について詳しく解説していきます。
過度な節税は税務署が認めないことがある
土地や建物を購入すると、現金や実物資産で保有しているよりも相続税評価額を下げることができるため、一般的に節税対策として行われています。
しかし相続の直前に不動産を購入するなどの強引な節税対策は税務署が認めないケースもあるでしょう。
実際に相続税評価額を減額する目的で、相続の直前に不動産を購入した方が追加徴収となった事例もあります。
贈与税の追加徴収の対象となることがある
相続税評価額の減額を目的として、子供や孫に対して、数年に分けて非課税額内で贈与をした場合、税務署の調査が入り贈与税の対象として追加徴収となることがあります。
贈与税は、1年の贈与額が110万円未満であれば課税されません。しかし、たとえば1200万円の現金を、非課税内で、孫に11年に分けて毎年贈与し続けることなどは、避けた方が良いでしょう。
何年にも渡って、非課税枠のぎりぎりの範囲内で同じ人への贈与を行うと、税務署の調査対象となり、場合によっては贈与税が追加徴収されることとなります。
贈与税の税率は相続税よりも高く設定されているため、税務署の指摘によって徴収が発生した場合には、むしろ相続税よりも支払いが増えてしまう場合もあるでしょう。
数年にわたって同じ人への贈与を行う場合には、少しでも贈与税を支払うことをおすすめします。
相続税評価額とその他の土地評価額の違い
土地の値段を示す方法として、相続税評価額のほかに、固定資産税評価額と地価公示価格、実勢価格があります。ここからはそれぞれの違いについて簡潔に解説していきます。
固定資産税評価額の場合
固定資産評価額は市町村が算出する価額です。3年に一度の頻度で評価替えされるのが特徴で、相続税評価額の路線価方式と比べて価格変動の頻度が小さくなります。
相続税評価額の倍率方式においても使用される数値であるため、相続税の計算に際してはよく使われる数値です。
地価公示価格の場合
地価公示価格には、毎年1月1日時点の評価額を算出する公示地価と、毎年7月1日時点の基準値の価格を算出する基準地価があります。
相続税評価額とは公表元と算出目的が違います。
評価額 | 公示地価 | 基準地価 | 相続税評価額 |
---|---|---|---|
公表元 | 国土交通省 | 都道府県 | 国税庁 |
算出目的 | 土地取引価格の目安 | 土地取引価格の目安 | 相続税、贈与税の計算のため |
国土交通省のホームページにある地価公示・都道府県地価調査では、地図上から調べたい土地を選択・検索することで公示地価を知ることができます。
地価公示価格とは?路線価・実勢価格との違いや国土交通省サイトの閲覧方法を詳しく解説
実勢価格の場合
実勢価格とは実際に土地取引を行った契約価格です。
個別の諸事情によって、実勢価格は、公示地価や路線価とは乖離する場合が一般的です。
相続税路線価(円)×0.8=実勢価格(円)
上記の式で実勢価格の目安を出すことができます。
評価の時点や個別の諸事情を考慮するかどうかの違いによって価格に違いが出ます。
土地と建物の相続税評価額を算出してみよう
親族が亡くなって相続が発生した場合は、相続税評価額によって、土地や建物、株式、生命保険金などの資産をすべて算出する必要があります。
特に土地の評価額は土地の位置する場所や現在の形態や状況によって評価が難しくなる範囲です。
一方で、土地と建物は、評価額を下げて節税をしやすい資産でもあります。あなたもぜひ一度実家の相続税評価額を算出してみてはいかがでしょうか。
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