居住環境を変えたくないなどの理由から、財産分与の協議で、離婚後も妻が持ち家に住み続けるケースがあります。
当事者間で協議を重ねた上で、片方が持ち家に住み続けることは可能です。
しかし、家の住宅ローンの返済が残っている場合や、家の名義人が出ていった夫である場合、妻が住み続けるにはリスクが伴います。
本記事では、離婚後の持ち家に妻が住む場合のリスクと、その対策を詳しく解説します。
離婚後の持ち家に妻が住み続ける4つのリスク
持ち家や住宅ローンの名義人が夫である場合、離婚後の持ち家に妻が住み続けるには、主に次の4つのリスクが伴います。
- 元夫に持ち家を売却されるリスク
- 元夫が住宅ローンを返済しなくなるリスク
- 住宅ローン完済時に贈与税を課されるリスク
- 離婚後も連絡を取り続ける精神的負担のリスク
それぞれ順に解説していきます。
元夫に持ち家を売却されるリスク
持ち家を売却できるのは名義人の元夫のため、妻の知らない間に家を売却されるというリスクがあります。
たとえば、住宅ローンの返済や借金の返済が困難となった元夫が、返済資金のために家を売却するケースです。
売却された家は所有権も移るため、持ち家に住む妻は立ち退きを迫られる事態に陥ってしまいます。
元夫が住宅ローンを返済しなくなるリスク
離婚した元夫が、妻の住む持ち家の住宅ローンを返済しなくなるケースは少なくありません。
収入の減少や、新しい家庭を築いたためなど、理由はさまざまです。
住宅ローンが返済されなくなった場合には、妻が住む持ち家は、担保として差し押さえられたり、売却されたりするリスクを伴います。
また、妻が住宅ローンの連帯保証人である場合には、妻にローンの支払いが発生してしまうリスクもあります。
他にも、住宅ローンの契約には、名義人が持ち家に住み続けることが条件になっている場合が多く、元夫が住んでいないことで、契約違反としてローンの一括返済を請求されるケースもあるなど、住宅ローンが完済されるまでは、多くのリスクを抱えることになるでしょう。
住宅ローン完済時に贈与税を課されるリスク
離婚後、元夫が長い時間をかけて住宅ローンを完済した場合でも、リスクは伴います。
家に住んでいない元夫から、妻に家が贈与されたとみなされ、贈与税が課される可能性があるからです。
贈与税とは、お金や不動産などの贈与金額が1年間で110万円を超えたとき、超えた金額に対して課税される税金です。
離婚後も連絡を取り続ける精神的負担のリスク
上述してきたリスクを含め、多くの場合、元夫と連絡を取り続けることには精神的負担を伴います。
離婚の理由はそれぞれですが、中には関係を断ちたい夫婦も多いでしょう。
しかし、離婚後も妻が持ち家に住み続ける場合、元夫が住宅ローンや家の名義人である限り、連絡を取る必要性はなくなりません。
そのため、離婚後も持ち家に住み続けることは、精神的ストレスにもなることに注意が必要です。
離婚後も持ち家に妻が住むリスクへの対処法
離婚後も安心して妻が持ち家に住み続けるには、持ち家の名義人と、残債がある場合は住宅ローンの名義人を妻にすることで対応ができます。
先述したリスクは、夫が名義人のために起こり得るためです。
リスクの対策としては、下記に挙げた4つの方法があります。
- 家の住宅ローンが無ければ夫から妻へ「名義変更」
- 住宅ローンがあれば「住宅ローンの借り換え」
- 連帯保証人が妻の場合「新しい保証人を立てる」
- 共有名義は「金融機関と当事者間でじっくり協議」
それぞれ順に解説します。
家の住宅ローンが無ければ夫から妻へ「名義変更」
家の住宅ローンが残っていないケースでは、離婚時に持ち家の名義人を、夫から妻に変更することでリスクに対応ができます。
なお、離婚時の財産分与で分けられた財産には一般的に贈与税が課されません。また、財産分与を請求できる期間は、離婚した日から2年になります。
一般的な財産分与は、婚姻中に築いた財産(共有財産)を平等に2分するというものであるため、持ち家に相当する現金や財産を夫に譲ることができると、後のトラブルへの発展を防げるでしょう。
持ち家の対応を巡っては、当事者間で協議を重ねる必要があります。
住宅ローンがあれば「住宅ローンの借り換え」
住宅ローンの名義が夫であることによって起こり得るリスクは、妻名義の住宅ローンに借り換えることで対応ができます。
借り換えとは、妻が名義人として新たに住宅ローンを借り入れ、元夫の残債を引継ぎ返済していく方法です。
しかし、妻が融資の審査に通過しなければローンの借り換えはできないため、元夫の扶養を受けていたケースでは、この対応が難しくなります。
連帯保証人が妻の場合「新しい保証人を立てる」
住宅ローンの連帯保証人・連帯債務者が妻の場合、元夫のローン返済が滞った場合には、妻がローンの返済を請求されることとなります。
そのため、離婚に伴って妻が連帯保証人から外れたいときには、新たな連帯保証人を見つけて立てるという方法があります。
ただし、連帯保証人を変更するには、住宅ローンの債権者である金融機関の許可が必要になる点と、現実的には難しい対応であるため、この方法は参考程度としておきましょう。
共有名義は「金融機関と当事者間でじっくり協議」
住宅ローンが夫婦共有名義のペアローンなどの場合、離婚によって単独名義に変更することは、金融機関によっては承諾されない可能性があります。
これまで2人で負っていたローンを1人がまとめて負うことになるため、返済負担が増すことから、返済が滞るリスクを伴うからです。
そのため、今後の返済について金融機関ともじっくり協議をしたり、あるいは別の金融機関で、単独でも融資の下りる住宅ローンに借り換えたりすることなどが対処法となります。
持ち家に妻が住むため離婚前に確認すべきこと
離婚に伴う持ち家のリスクに備えるため、妻が離婚前に確認しておくべき点は、主に下記の3点です。
- 家と住宅ローンの名義・連帯保証人の確認
- 持ち家の価格の確認
- 離婚公正証書の作成
それぞれ順に解説します。
家と住宅ローンの名義・連帯保証人の確認
まず念のために、持ち家と住宅ローンのそれぞれの名義人と、連帯保証人が誰に設定されているのかを確認しましょう。
離婚時の財産分与に備えて、現状の把握が必要となります。
確認する項目 | 確認するもの | 確認できる場所 |
持ち家の名義人 | 登記簿謄本 | 法務局(登記所) 登記情報提供サービス |
住宅ローン・連帯保証人の 名義人 | 契約書や契約内容が分かる書面・Webページ | 金融機関の契約書面や 金融機関サイト(個人ページにログイン) |
離婚に伴う持ち家のリスクは、名義人が妻ではないことや、連帯保証人が妻であることが要因です。そのため、先述のリスク軽減のための対応策を検討しておきましょう。
なお、登記情報提供サービスとは、Web上で登記情報を閲覧(有料)できるサービスです。
持ち家の価格の確認
離婚時の財産分与に備えて、家の価格(価値)も併せて確認しておきましょう。
財産分与の際の、重要な判断材料となります。
持ち家の価格相場を知るためには、国土交通省の 「土地総合情報システム」が便利です。ご自身の住居周辺の、過去の不動産取引の価格を閲覧することができるため、ご参考に調べてみてください。
また、もう少し具体的な価格を知りたい場合には、ウェブ上でのAIによる簡易査定の方法もあります。すまいステップの「匿名簡易査定シミュレーション」では、物件情報を入れると、想定売却価格を、最安値・平均価格・最高値の3種類、すぐに算出します。
なお、より具体的な査定額を知りたい場合には、複数の不動産会社から査定額の見積もりを取り寄せられる、一括査定サイトのご利用も便利です。
離婚公正証書の作成
離婚時の協議内容を記した離婚協議書を作成するケースはありますが、より高い信用力を得られる「離婚公正証書」の作成もおすすめします。
離婚公正証書とは、協議離婚の際に、お金に関する支払いについての取り決めを契約書として作成し、公証役場で、公証人の元で交わす書類です。
たとえば、夫が住宅ローンを返済し続ける旨の契約を公正証書に定めておけば、返済の履行について、より守られることが期待できます。
なお、作成には、当事者同士の合意が必要であることと、費用が伴う点にも注意しましょう。
日本公証人連合会によると、作成費用(手数料)は公正証書に定められた目的価格によって異なります。たとえば、住宅ローンの残債が、1000万円を超え3000万円以下であれば、公正証書の作成費は2万3,000円です。
引用:日本公証人連合会「法律行為に関する証書作成の基本手数料」
離婚後の持ち家に妻が住む以外の選択肢
持ち家に住む以外の選択肢としては、持ち家を売却することが最もトラブルの少ない方法となります。
円満な離婚のため、持ち家を手放したくない特段の事情がなければ、売却して現金化し、二分することが最善策といえるでしょう。
持ち家を売却することによる主なメリットは下記の3点です。
- 現金化することで財産分与がしやすい
- 持ち家に関連するトラブルを避けられる
- 離婚後も夫と連絡を取り続ける必要がない
とはいえ、持ち家を手放したくない方は多くいるため、当事者間でじっくり協議することが大切です。
離婚時の家の財産分与についての詳しい解説は、こちらの記事もご参照ください。
離婚時の家の財産分与ってどうやるの?名義変更の方法や注意点も解説!
離婚後も妻が持ち家に住み続けるためには?
離婚時の財産分与を巡り、当事者間でトラブルに発展するケースは多くあります。
中でも、具体的な金額の分かりにくい不動産は、価値が高いこともあり、難航しがちです。
離婚後も妻が持ち家に住み続ける選択をする場合、住宅ローンが残っていたり、ローンや持ち家の名義人が妻でないときには、常にリスクが伴います。家を売却されてしまう可能性があるためです。
そのリスクの軽減には、持ち家の名義を妻に変更するための対応や協議が必要となります。
なお、円満に離婚する選択肢の一つとして、売却も挙げられます。売却して現金化することにより、財産分与がしやすくなり、持ち家をめぐる今後のトラブルもなくなる点がメリットです。
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