マンションの売却には、さまざまな準備や対応が必要です。
マンション売却の経験がそれほど多くない一般の方の中には、準備不足からマンション売却に失敗してしまったという方も少なくありません。
しかし、マンション売却に関する知見を深めることで、売却の失敗を防ぐことは可能です。
本記事では、マンション売却の失敗例と、併せて対処方法を解説します。
マンション売却失敗の主な3つの理由
マンション売却に伴う失敗には、主に次の3つの理由が挙げられます。
- 価格相場の調査不足
- 不動産会社の選び方
- 買主への対応ミス
マンション売却に失敗してしまう要因の多くは、知識不足によります。
特に、売却価格の適切な相場を把握できていなかったために、価格設定を誤ってしまった例が挙げられます。
売却価格は買主との交渉に備えて、やや高めに設定するのが一般的ですが、相場以上に高すぎる設定にしてしまったり、反対に、安すぎる設定にして利益がなくなってしまったりするなどのケースです。
そのほか、事情があって売り急ぐあまり、買主の言い値に応じて大きく値下げしてしまうケースなども失敗例としてあります。
いずれも、価格相場を把握できていなかったことによる失敗のため、マンション売却の際には、複数の不動産会社から売却価格の査定額を取り寄せ、比較検討することで防げるでしょう。
不動産会社は家を売却する際に、最も重要なパートナーとなります。
売却価格の適切なアドバイスや、物件の広告活動など、売却金額にも大きな影響のある存在です。そのため、信頼できる不動産会社を選ぶことが、マンション売却に失敗しないための第一歩です。
マンション売却の失敗9つのケース
マンション売却に失敗してしまう理由に、知識不足が挙げられることをお伝えしました。
ここからは、知識不足によって失敗してしまった9つのケースを解説します。
- 売却に時間がかかることを知らなかった
- 査定額と成約金額が違うことを知らなかった
- 「買取」では価格が下がることを知らなかった
- 売れやすい時期があることを知らなかった
- 面倒なので1社だけに依頼してしまった
- マンション価格の相場を知らなかった
- 媒介契約をよく理解していなかった
- 売却しても住宅ローンが残ってしまった
- 売却利益に課税されることを知らなかった
それぞれ順に解説します。
売却に時間がかかることを知らなかった
マンション売却には3ヶ月〜6ヶ月程度の期間が必要です。
理由は、次のようなマンション売却の流れによります。
売却の主な流れ | 必要な期間 | |
1 | 不動産会社に査定依頼後、査定結果が届く | 査定日から1週間程度 |
2 | 不動産会社と媒介契約 | 1週間程度 |
3 | 広告活動開始から、買主が見つかるまで | おおむね3ヶ月〜4ヶ月 |
4 | 価格交渉を行い、買主と売買契約を締結 | 1ヶ月程度 |
5 | 決済・引き渡し | 1ヶ月〜2ヶ月程度 |
売却期間は、売却するマンションの立地や築年数、状態、グレードなどによっても左右されるため、売却に1年以上かかるケースも珍しくありません。
なお、無事にマンション売却ができたら、売却した翌年の2月16日から3月15日の間に、確定申告を行いましょう。
査定額と成約金額が違うことを知らなかった
査定時に提示された金額と、実際の成約金額は一致するとは限りません。
査定額はあくまで概算(予想)であり、売却期間の延長や価格交渉などにより、価格を下げざるを得ないケースもあります。
このような査定額と成約金額に生じる差を「価格乖離率」と言います。
下記のグラフは、すまいステップが2022年6月に公表したマンションの価格乖離率を表したものです。
約20%の方が、査定額と売却額が10%以上乖離していることが分かります。
引用:すまいステップ『不動産売却に関するアンケート』の調査結果
「買取」では価格が下がることを知らなかった
マンション売却の際に、不動産会社から買主を「仲介」してもらうよりも、不動産会社に直接「買取」をしてもらう場合には、市場価格の6割〜7割程度まで価格が下がります。
不動産会社は、買い取ったマンションに、リフォーム費用やハウスクリーニング代をかけて売り出す準備をするため、どうしても買取価格は市場価格よりも低くなってしまいます。
買取は仲介に比べ、早ければ1ヶ月程度で現金化できる点がメリットです。しかし、売却価格が下がってしまうデメリットも理解した上で行わないと、失敗する要因となってしまうでしょう。
売れやすい時期があることを知らなかった
2月から3月にかけては、マンション購入の需要が最も高まるため、売却に適した時期です。
4月からの新生活に向け、引越しを検討する方が増えるためです。
一方で、8月は、お盆の時期の帰省や暑さの影響もあり、需要が下がります。
そのため、8月に売却を進めると、買主が見つからず売却期間が伸びる可能性が出てきてしまいます。
売却期間が伸びれば価格にも影響するため、需要の下がる時期の売却は失敗するリスクを高めてしまうでしょう。
面倒なので1社だけに依頼してしまった
複数の不動産会社への対応が面倒だから、という理由により、査定依頼を1社だけにしてしまうと、査定時点で失敗する可能性を高めてしまいます。
査定の基準は不動産会社によって異なるため、場合によっては300万円〜500万円ほどの差が生まれるからです。
やりとりの手間は発生しますが、複数の不動産会社に依頼することにより、査定額や対応などを比較・確認できるメリットがあります。
なお、高すぎる査定額を提示された場合にも注意が必要です。不動産会社が仲介手数料を目当てに、まずは契約を結んでしまうために提示している場合があります。
マンション価格の相場を知らなかった
売却するマンション価格の相場を事前に把握していないと、不動産会社から相場より低く見積もられた査定額を提示されても判断ができません。
そのため、低い価格を提示した不動産会社と媒介契約をしてしまい、安値で売却して失敗してしまうリスクを高めるのです。
マンションの相場は、国土交通省の 「土地総合情報システム」から確認ができます。
お住まいの地域の、過去の取引価格を閲覧することができるため、確かめてみてください。
媒介契約をよく理解していなかった
マンション売却の際に不動産会社と結ぶ媒介契約は、自分のプランに適した契約を選ばないと、失敗のリスクを高めてしまいます。
媒介契約の種類や特徴は下記の通りです。
種類 | メリット・デメリット | 向いているマンション |
一般媒介契約 |
| 築年数が浅くグレードも高い マンションなど |
専任媒介契約 |
| 築年数が長く、着実に売りたい 中古マンションなど |
専属専任媒介契約 |
|
なお、「囲い込み」については、詳しく後述します。
売却しても住宅ローンが残ってしまった
マンションを売却しても住宅ローンの残債が残ってしまう「オーバーローン」の状態になることで、売却に失敗するケースがあります。
住宅ローンで購入したマンションの場合には、債権者である金融機関から抵当権が設定されるため、住宅ローンを完済し抵当権を外さなければ、マンションを売却できません。
そのため、オーバーローンとなってしまった場合は売却が完了せず、新たに住宅ローンを借り直したり、他から資金を調達したりして完済した後、抵当権抹消登記を行う必要があります。
売却利益に課税されることを知らなかった
マンションを売却して利益が発生した場合に課される税金(譲渡所得税)の額は、所有年数が5年以内か、5年超かで、大きく異なります。
所有年数が5年以内の場合には、5年を超えている場合に比べると2倍近い税率となるため、注意が必要です。
マンションを売却した際に発生した利益は「譲渡所得税」と「復興特別所得税」、そして「住民税」の課税対象になります。下記の表は、所有年数が5年を境にして、税率が異なることを表したものです。
譲渡所得税 | 復興特別所得税 (令和19年まで) | 住民税 | 合計の税率 | |
所有期間5年以下 | 30% | 0.63% | 9% | 39.63% |
所有期間5年超 | 15% | 0.315% | 5% | 20.315% |
なお、譲渡所得税等の課税対象となるのは、売却利益が出た場合のため、売却利益が発生しなければ課税されません。
しかし、仲介手数料や司法書士に支払う報酬や消費税、印紙税などは売却利益に関係なく発生します。
不動産会社選びに失敗する4つのケース
マンション売却に失敗する理由の1つに、不動産会社選びに失敗してしまうことが挙げられるとお伝えしました。
納得できるマンション売却には、不動産会社選びが最も重要だと言っても過言ではありません。
下記は、不動産会社選びによって失敗してしまった3つのケースです。
- 不動産会社の実績を確認せず契約してしまった
- 囲い込みをされてしまった
- 対応が杜撰な担当者だった
それぞれ順に解説します。
不動産会社の実績を確認せず契約してしまった
不動産会社の実績や口コミなど、評判を確認しないことで失敗するケースがあります。
過去に行政処分を受けたり、良くない口コミが多かったりする不動産会社は、少なからずあります。
他にも、土地や戸建の売却には強みがあっても、マンション売却には不得手な不動産会社と契約してしまうケースもあります。
マンション売却実績が多く、売却するマンションの地域に詳しい、質の高い不動産会社を選ぶことが大切です。
囲い込みをされてしまった
専属専任媒介契約などによって、囲い込みを受けることで売却期間が伸びてしまい、結果的に売却価格が下がってしまうケースがあります。
囲い込みとは、不動産会社の利益のために、意図的に不動産情報の公表や紹介を制限する行為です。
囲い込みを受けると物件情報の広がりが制限されるため、買主に情報が届きにくくなります。
しかし、囲い込みをされていると明確に判断するのは難しいため、媒介契約時には複数の不動産会社を精査して、物件情報を広く公開しているかなど、売却活動の内容をよく確認した上で契約に臨みましょう。
対応が杜撰な担当者だった
担当者との人柄や態度、販売能力の程度、相性などによって、トラブルや失敗につながるケースがあります。
例えば、対応の遅い担当者であれば、売却に伴う対応も遅くなるため、売却期間や価格に悪影響を及ぼしかねません。
また、仮に対応は良くても、知識や経験が浅く、販売能力が低い担当者でもリスクが伴います。
マンション売却は長期に及ぶため、担当者との相性が悪いとストレスにもなるでしょう。
できるだけ最初に複数の不動産会社に査定を依頼し、各事業者の対応が信頼できるかどうか、見極めるようにしましょう。
買主とのやり取りに失敗する3つのケース
マンション売却に失敗する主なもう一つの理由に、買主とのやり取りによる失敗が挙げられます。
- 内覧当日までに掃除が間に合わなかった
- 内覧時に伝えるべき情報を伝えられなかった
- 買主側の住宅ローン特約によって白紙にされた
3つのケースについて、それぞれ順に解説します。
内覧当日までに掃除が間に合わなかった
内覧日までに部屋の清掃が行き届いていないと、魅力的なマンションでも良くない印象を与えてしまうケースがあります。
内覧が急に決まるケースもあるため、媒介契約以降は特に部屋を綺麗にしておきましょう。
特に買主が注目する部分は下記の通りです。
- 玄関
- リビング
- キッチンの広さ・使いやすさ
- 給湯器など設備の交換履歴
- 水回り(お風呂・トイレ・洗面所)
- バルコニー(眺望を含む)
汚れや臭いなどは、マイナスイメージとなるので特に注意して取り除きましょう。
内覧時に伝えるべき情報を伝えられなかった
内覧で伝えるべきアピールポイントを伝えられなかったり、伝えるべきデメリットを伝えられなかったことによって失敗するケースがあります。
例えば、騒音について伝えそびれてしまい、引き渡し後に騒音トラブルによって買主からクレームが発生するケースです。
騒音については、次のようなトラブルが考えられます。
- 近くを通る車や電車の騒音
- マンション住民による騒音
- マンション近くで行われるイベントの騒音
住民でないと分からない不満や悩みがあるため、デメリットも正直に伝えましょう。
買主側の「住宅ローン特約」によって白紙にされた
マンション売却に失敗する要因は売主だけでなく、買主側による要因もあります。
それは、買主側の住宅ローン審査が通らなかったために契約が白紙となってしまう、住宅ローン特約のケースです。
住宅ローン特約とは、買主が金融機関の住宅ローン審査に通らなかった場合、無条件で契約を解除できる特約です。
もし住宅ローン特約によって契約が解除された場合は、手付金の返還を求められる点にも注意しましょう。
マンション売却に失敗しないために必要なこと
これまで解説したように、マンション売却の査定依頼などは手軽にインターネット上から依頼できるものの、売却は簡単にできるわけではありません。
3ヶ月〜6ヶ月程度の期間が必要になり、不動産会社選びを誤れば最終的な価格にも影響します。
そのため、マンション売却に失敗しないためには、売却に伴う知見を深め、質の高い不動産会社を選ぶことが大切です。
失敗する原因を把握しておけば、失敗しない売却が可能です。
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