離婚時にローン中の家を売却する場合、様々な困難や悩みに直面することがあります。
例えば「家の価値として適切な価格をどう決定するか」「適切な買い手が見つからない」などです。
本記事では、離婚時にローン中の家の売却を検討する方に向けて、下記内容を解説しています。
- ローン中でも家を売却できる方法
- ローン中の家の売却と離婚の際にしておくべき事項
- ローン中の家の売却で離婚後揉めないための公正証書
- 離婚後家に住み続ける方法
- ローン中の家を売却をしない時の離婚後のリスク
離婚後の生活への不安解消にお役立てください。
離婚で家の売却がしたい!ローン中でも売却できる方法
ローン中でも家を売却できる方法を紹介します。
住宅ローンの支払いが残ったままでお悩みの方は、下記内容を参考にしてください。
- ローンの完済が可能な時は売却を選択
- ローンの完済が難しい時は任意売却を検討
ローンの完済が可能な時は売却を選択
離婚後、住宅を売却したい場合、ローンの完済ができれば可能です。
住宅ローンの完済には、売却価格が住宅ローンの残債額を上回る「アンダーローン」であることが求められます。
アンダーローンであれば、マンションや持ち家の売却はスムーズに進みます。
売却価格がローン残高を超えるという事実は、ローンの完済後、余剰資金が手元に残ることを意味します。
これにより、新しい生活への資金を確保することが可能になるでしょう。
具体的な売却方法は下記の通りです。
売却方法①仲介で家を売却する
離婚で家の売却を検討する場合、仲介を利用する方法があります。
不動産会社が売主と買主の間に立って売買を助ける方法です。
仲介を通じて家を売却すると高い価格で売却が可能ですが、買主を見つけるまでに半年から1年ほど時間がかかる可能性があるので、早めの行動が重要です。
まず、一括査定を利用して家の市場価値を把握します。
一括査定とは、複数の不動産会社に家の価値を査定してもらい、それぞれの見積もりを比較することです。
査定を受ければ家の市場価値を正確に把握し、適切な売却価格を設定することができます。
さらに、住宅ローンの残債額も把握しましょう。
売却価格がローン残債額を上回ることが確認できれば、ローンの返済計画を検討することができます。
次に、仲介業者を選びます。
仲介業者選びは非常に重要で、家の売却成功の鍵を握ります。
信頼できる業者を選ぶためには、業者の実績、評判、専門性を確認し、自分にとって最適なパートナーを見つけることが大切です。
売却方法②買取りで家を売却する
離婚時に早期に家の売却を望む場合は「買取り」を選択する手段もあります。
買取とは、不動産会社に直接家を買い取ってもらう方法です。
買取りは仲介に比べて売却までの時間が短いというメリットがありますが、市場価格の7割から8割程度の価格で売却するケースが多いため、デメリットも踏まえて検討しましょう。
買取で家を売却する場合に必要な確認事項は以下の2点です。
- 一括査定を用いて家の市場価値を確認
- 住宅ローンの残債額を確認
以上の情報をもとに、売却価格がローン残債額を上回るかどうか、また、買取りによる早期の売却が適切な選択かを判断します。
買取りを選択する場合、査定後に直接不動産会社と売却価格を交渉します。
交渉には専門知識が必要なため、信頼できる専門家の助けを借りることも一つの方法です。
また、何社かの不動産会社に査定を依頼し、最高の価格を提示した会社に売却するという戦略もあります。
買取りは、時間が重要な要素であり、すぐに現金化する必要がある場合に有効な手段と言えるでしょう。
ただし、価格面での犠牲が伴うので、全ての状況で最適な選択とは限りません。
市場価格、ローン残債額、売却のタイミングなどを考慮に入れ、最適な選択をすることが重要です。
ローンの完済が難しい時は任意売却を検討
離婚後に家の売却を検討しているものの、住宅ローンの完済が難しい場合は任意売却が有効です。
ローン残高が家の市場価値を上回る「オーバーローン」の状態でも、任意売却を通じて家を売却できます。
売却価格は市場価値よりも低くなりますが、裁判所による競売による売却価格よりは高く設定することが多いです。
任意売却を行う際、まずは信頼できる専門家に相談しましょう。
売却価格の設定や売却手続きなどの専門的な知識を必要とするためです。
また、ローン債権者(多くの場合は金融機関)との交渉も必要で、ローン債権者からの了承を得て抵当権の解除をしてもらえば売却は可能です。
ただし、売却後も、売却価格がローン残高を上回らない場合には、引き続き返済しなくてはいけません。
この場合もローン債権者との交渉により、残債の返済条件や期間の変更ができる可能性もあります。
オーバーローンとは
オーバーローンとは、不動産の評価額または売却価格が、その不動産にかかるローン残高を上回る状態を指します。
つまり、物件がいくらで売れるかよりも、返済すべきローンの方が多い状況を示しています。
通常、不動産を売却する際には、売却価格からローンを一括返済して残って金額を受け取るのが一般的です。
しかし、オーバーローン状態では、売却価格がローン残高を上回らないため、ローンを一括返済することが難しい「払えない」状態になります。
このような状況では通常の方法での売却が難しく、特殊な手続きを経る必要があります。
具体的には、ローン債権者との交渉を行い、任意売却などの手段を選択することが多いです。
【関連記事】住宅ローン返済中の家を手放したい。必要な確認と売却方法を解説
ローン中の家の売却と離婚の際にしておくべき事項
ローン中の家の売却と離婚の際にしておくべき事項を4つ紹介します。
- 名義人が誰なのかを確認
- 住宅ローンの残債を確認
- 住宅の査定額を確認
- 金融機関への連絡
名義人が誰なのかを確認
ローン中の家の売却を考える際、特に離婚の状況下では、名義人を確認することが重要なステップです。
名義人とは、不動産の所有者を示す人物で、名義人だけが家を売却する権利を持っています。
例えば、夫婦で共有していた家の名義が夫名義の場合、夫だけが売却を決定する権利を持ちます。
しかし、離婚により夫と妻が別居を始め、妻が家の売却を考えたとしても、名義人である夫の同意がなければ売却は実行できません。
そのため、離婚時は家の名義を確認し、必要なら名義の変更を行うことを検討するべきです。
名義変更は裁判所の判断、または名義人の同意によって可能ですが、名義変更には費用が発生するので注意しましょう。
名義人の確認や変更を怠ると、後で売却が難しくなるだけでなく、法的な問題にも直面する可能性があるので注意しましょう。
住宅ローンの残債を確認
住宅ローンの残債を確認することも必要です。
これは、あなたがどれだけローンを返済すべきか、家を売却した場合にどれだけの金額を受け取ることができるかを把握するためです。
例えば、ある夫婦が3,000万円の住宅ローンを組み、現在までに1,000万円を返済したとしましょう。
この場合の残債は2,000万円となります。
残債額を理解していれば、家を売却した際の収益を予測することができます。
住宅ローンの残債を確認する方法としては、返済予定表やネットバンキングを通じた確認、直接銀行窓口での問い合わせ、または残高証明書の取得などがあります。
住宅の査定額を確認
ローン中の家を売却しようと考えている場合、特に離婚の状況下では、住宅の査定額を確認することが重要なステップとなります。
住宅の査定額とは、現在の市場でその住宅がいくらで売れるかを示す値です。
例えば、ある夫婦が離婚を考え、共有していた家を売却しようとした場合、まず複数の不動産会社に家の査定を依頼することから始めます。
それぞれの会社から査定額を提供してもらうことで、現在の家の価値を把握することができるのです。
一括査定サービスを利用すると、一度の申し込みで複数の不動産会社から査定額を得られます。
これにより、手間を省きつつ、一般的な市場価格を把握することが可能になります。
また、住宅の査定額と住宅ローンの残債額を併せて考えることで、返済計画を立てることができます。
例えば、査定額が高い場合、売却すればローンを完済し、更に余剰金が出る可能性があります。
しかし、査定額が低い場合は売却後もローンの返済が続くことを理解しておきましょう。
金融機関への連絡
ローン中の家を売却し、特に離婚の状況下では、金融機関への連絡は重要な手続きの一つです。
ローン契約によっては売却を行う前に金融機関への通知が必要な場合があるからです。
例えば、ある夫婦が離婚を決め、ローン中の家の売却も決定したとします。
まず、ローンを組んでいる金融機関へ連絡を取ることが必要となります。
ローン契約には売却に関する一定の規定が存在し、契約条件を遵守するためには、事前の通知が求められることが多いためです。
また、金融機関への連絡は、ローン返済のスケジュールや売却後の支払い計画をスムーズに進めるためにも必要です。
例えば、売却によって得られる利益をどのようにローン返済に充てるか、または売却額がローン残債を下回った場合の返済計画など、具体的な話し合いが必要となる場合があります。
ローン中の家の売却で離婚後揉めないための公正証書
公正証書は、公証人がその権限に基づいて作成する文書で、信頼性が高く証拠として扱われます。
離婚に関する公正証書では、当事者間の契約内容を明確に記載し、離婚の合意に加え、子供の養育費や慰謝料、親権者などについて契約を行います。
ローン中の家を売却する際は公正証書は特に重要となります。
なぜなら、住宅ローンと養育費を相殺するような契約や、離婚時に決めた約束や契約を公正証書に記載して残すことにより、離婚後のトラブルを避けることができるからです。
具体的には、ローンの完済ができずにローンの支払いを続ける場合、公正証書にその支払いについての取り決めを記載することで、支払いが滞った時に妻がその家に居られなくなるというリスクを回避できます。
また、ローンが完済した時に妻に名義を移すという取り決めも公正証書に記載することが可能です。
ローン中の家を売却せずに離婚後住み続ける方法
続いて、ローン中の家を売却せずに離婚後住み続ける方法を2つ紹介します。
- どちらかが住み続ける
- 共有名義の際には借り換えをする
どちらかが住み続ける
離婚後、ローン中の家に住み続ける方法の一つに、一方の配偶者(夫または妻)が家を維持しながらローン返済を続けるというものがあります。
この場合、家を離れる側は評価額の一部を現金で受け取ることが可能です。
しかし、名義人が変わらない場合、ローン契約者(借り主)の返済義務は変わらないため、名義人が変わらない場合でもローンの滞納には注意が必要です。
したがって、住宅ローンの名義人を変更するなどの対処が必要となります。
名義人を変更するためには金融機関との協議と、新たな名義人の信用情報の評価が必要です。
ただし、名義人の変更は常に可能とは限らず、金融機関の審査を通過する必要があります。
共有名義の際には借り換えをする
共有名義の住宅ローンにおいて離婚後も家を保持し続けるには、主に「借り換え」の手続きを考えます。
これは、共有名義のローンを単独名義に変更するための方法です。
借り換えは、新たなローンを取得し、その資金を使用して既存のローンを完済するものです。
これにより、名義が単独になり、一方のみがローンの債務者となります。
ただし、ローンを借り換えるには一定の条件が必要です。
新しいローンを承認するためには、借り換えを希望する妻または夫が十分な所得と信用を持っていることが必要となります。
これは、新たなローン契約により、全てのローンの支払いを単独で負担できることを保証するためです。
なお、このプロセス中に公正証書を作成することで、双方の約束を明文化しトラブルを防ぐことが可能となるでしょう。
借り換え時に必要な物
共有名義の住宅ローンを単独名義に借り換える際に必要な準備についてみていきましょう。
はじめに、収入証明書、住民票、印鑑証明書など金融機関が求める書類の用意が必要です。
これらの書類は、借り換えの審査に必要なもので、申請者の信用情報を確認するために使用されます。
また、一部の金融機関では、借り換えの審査に費用が発生する場合があり、費用は金融機関や審査内容により異なります。
スムーズに手続きを進めるためにも、金融機関に問い合わせを行い、具体的な必要書類や手続きの流れ、必要な費用などを確認することが重要です。
借り換え時の主な流れ
住宅ローンの借り換えは、新しく組んだ住宅ローンで元のローンを完済した後に抵当権を抹消し、新しい金融機関からの住宅ローンの返済を開始するというのが主な流れです。
借り換えを考える際は新しい金融機関を探します。
金利、サービス、契約条件などを比較して、自分に最も合う金融機関を選びましょう。
次に選択した金融機関に対して借り換えの申し込みを行います。
この際、収入証明書や借入金額、返済計画など、金融機関が求める書類を提出し、審査を受けます。
審査が通れば、新しい金融機関と住宅ローン契約を結びます。
契約する際は契約内容をしっかり確認しましょう。
ローン中の家を売却をしない時の離婚後のリスク
ローン中の家を売却をしない時の離婚後のリスクを3つ紹介します。
- 住宅ローンを滞納してしまう
- 話し合いをせずに家を売却されてしまう
- 期限を過ぎても住み続ける
リスク①住宅ローンを滞納してしまう
離婚後に住宅ローンを滞納してしまうリスクはとても深刻な問題です。
例えば、夫が主な収入源であったが離婚により妻がローンの返済義務を持つことになった場合、妻の収入だけではローンの返済が困難になる可能性があります。
また、離婚後に生活環境が変化し、子育てや新たな職を探す等の理由で返済が難しくなる場合もあるでしょう。
ローンの滞納が続くと最悪の場合、自宅を失う可能性もあります。
これらのリスクを回避するためには、離婚時に公正証書や離婚協議書を作成し、ローンの返済に関する具体的な取り決めを明確にすることが重要です。
支払い義務者の明確化、支払い計画の策定など、予め具体的な計画を立てておくことが求められます。
リスク②話し合いをせずに家を売却されてしまう
離婚後に家を売却されるリスクについては、共有名義の住宅ローンである場合に特に存在します。
両者が共同借入人となっている場合、片方のパートナーが売却に進むと、住んでいる方は突然住む場所を失うケースもあるでしょう。
さらに、共同借入人は離婚後もローンの返済義務が残るため、売却後の返済義務も生じる可能性があります。
話し合いをせずに家を売却されるリスクを回避する方法の一つとして、離婚協議書や公正証書を作成することがあります。
これらの文書は離婚後の財産分割、子供の養育費、住宅ローンの返済義務など、離婚後の生活を明確にし、紛争を避けるためのものです。
リスク③期限を過ぎても住み続ける
離婚後にローン中の家に住み続ける場合、一方の配偶者が期限を過ぎても退去しないリスクがあります。
名義人は、住宅ローンの返済義務だけでなく、不渡りのリスクや物件の維持管理負担も背負うことになります。
また、退去しない配偶者による家屋の破損や不法行為も考慮すべきリスクです。
これらのリスクを軽減するためには、離婚協議書や公正証書を作成し、両者の合意を明確に記録することが有効です。
公正証書は、公証人が作成し信頼性が高く、紛争が生じた場合の有力な証拠となります。
【関連記事】離婚後の持ち家に名義人ではない妻が住むのはリスク?リスクのポイントと対策を解説
離婚時にローン中の家があればまず売却を検討してみよう【まとめ】
離婚時にローン中の家の売却を検討する方は「ローンの完済が可能な時は売却」「ローンの完済が難しい時は任意売却」のいずれかを検討しましょう。
また、ローン中の家を売却する際は「名義人が誰なのかを確認」「住宅ローンの残債を確認」「住宅の査定額を確認」「金融機関への連絡」を忘れないようにすることが大切です。
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