中古の戸建て物件の売却を成功させるためには、売り方をきちんと考えることが大切です。
売却の方法や手順、かかる費用などを把握しておかなければ、売却活動がスムーズに進められないことも少なくありません。
滞りなく売却活動を進めて、少しでも好条件で売るためにも、中古の戸建て物件を売却する際の各種ポイントを知っておきましょう。
中古の戸建てを売る流れ
実際の売却に備えて、どのような流れで売却活動を進めるのか、全体の手順を知っておくことが大切です。
仲介と買取、個人での売買それぞれで、売却時の流れは異なります。一部共通する部分もあるため、どこが同じでどこは違うのかを確認しておくとよいでしょう。
仲介で売却する場合
不動産会社に仲介を依頼して売却する際の流れは、次の通りです。
- 査定
- 媒介契約
- 売却活動
- 売買契約
- 決済・引き渡し
まずは査定をしてもらい、売却予定の物件は、どれくらいの値段がつきそうかを調べてもらいます。この結果を受けたうえで売り出し価格を設定しますが、査定額に納得がいかない場合は、別の不動産会社で査定を受け直してもよいでしょう。査定結果に納得して、その不動産会社を利用すると決めたら媒介契約を結びます。
媒介契約の種類 | 特徴 |
一般媒介契約 | ・個人での売買が可能 ・複数の不動産会社を利用できる ・不動産会社が売却活動に消極的になりやすい |
専任媒介契約 | ・個人での売買が可能 ・利用できる不動産会社は1社のみ ・不動産会社が売却活動に積極的になりやすい |
専属専任媒介契約 | ・個人での売買は不可 ・利用できる不動産会社は1社のみ ・不動産会社が売却活動により積極的になりやすい |
媒介契約は3つの種類があり、それぞれにメリットとデメリットがあるため、自分に合ったものを選ぶようにしましょう。
媒介契約締結後は本格的に売却活動がスタートし、不動産会社は物件情報の公開を行います。その後、購入希望者が現れ次第内覧をして、価格交渉などを経て売買契約の締結となります。
売買契約締結後は、定めた日時で決済と引き渡しをして、所有権の移転登記などの権利関係の手続きも済ませたら売却は完了です。取引終了後に、仲介手数料やその他売却活動にかかった実費などを、不動産会社に支払います。
買取で売却する場合
買取での売却は、仲介売買よりもステップが少ないです。
- 査定
- 契約条件の打ち合わせ
- 売買契約
- 決済・引き渡し
まずは査定を行い、その金額から売却金額の設定を行います。仲介売買と違って、買取では最初から契約条件の打ち合わせとなるため、スピード感は速いでしょう。売却金額に合意したあとは売買契約を結び、所定の日時で決済をし、引き渡しをして終了です。
売却まで1カ月未満で行えることが多いですが、これは「即時買取」という手法で、別に買取保証という売却形式もあります。買取保証は期間限定で仲介での売却活動を行い、それまでに売れない場合は不動産会社が買い取るというやり方で、次の通り即時買取とは手順が若干異なるため、買取を利用する際には、どちらにするか決めておきましょう。
- 査定
- 契約条件の打ち合わせ
- 期間限定の売却活動
- 個人の買主が見つかった場合は契約して売却
- 期間満了まで買主が見つからない場合は不動産会社が買取
- 決済・引き渡し
仲介売買の期間は3カ月程度が一般的のため、売却スケジュールを考慮して選ぶとよいでしょう。
個人で売却する場合
不動産会社を利用せずに、個人で売却する場合は次の手順で行います。
- 売却価格の決定
- 売却活動
- 売買契約
- 引き渡し
まずはいくらで売り出すのかを決めて、その後買い手を探します。買い手は、個人売買の希望者を募るサイトを利用したり、知人に打診したりすることが多いです。購入希望者を見つけたあとは、細かい条件のすり合わせを行い、双方合意のうえで売買契約を結びます。
契約時には売買契約書を作成しなければならず、売却後のトラブルを防ぐためにも、必要事項は全て書面で取り決めをしておかなければなりません。契約締結後は料金の精算を行い、引き渡しをして完了です。
利益がある場合は確定申告が必要
どの方法で売却する場合でも、家を売ったことで利益が出ているなら、翌年の2月16日から3月15日までの期間で、確定申告をしなければなりません。売却による利益が出たかどうかは、次の式で計算します。
売却益=売却価格-取得費-売却費用-特別控除
取得費は土地や物件の購入費、物件の建築費やリフォーム費用、その他契約時の手数料などが挙げられます。売却費用は売却活動にかかった費用で、特別控除は適用できる制度がある場合のみ活用しましょう。これらを差し引いてプラスになっている場合は、申告期間中に税務署や確定申告の会場で手続きを行います。
なお、確定申告は郵送による申告も可能で、「e-tax」というサービスを使えば電子申告もできます。期限内に申告をしないと、多数の追徴課税がかかるため注意しなければなりません。
また、売却損が出た場合には確定申告は必須ではありませんが、申告することで減税が図れることは覚えておきましょう。譲渡による損失は、給与所得など他の区分の収入と合算できて年間の所得額が減らせるため、税還付が受けられる場合があります。
中古の戸建てを売る際にかかる費用
不動産を売却する際には次のような費用がかかり、実際の利益を計算する際には、支出も考慮しなければなりません。
- 住宅ローン返済
- 仲介手数料
- 印紙税
- 譲渡所得税
- 登録免許税
- その他の費用
各種費用の内訳を知り、何にいくらくらいかかるのか把握しておくことが大切です。
住宅ローン返済にかかる費用
売却予定の物件の購入に住宅ローンを利用していて、まだ残債がある場合は一括返済が必要です。一括返済では残債額の支払いはもちろん、一括返済手数料が別途かかります。金融機関によって金額は異なりますが、手数料だけで10万円程度かかることもあるため、金銭的な負担は大きくなりやすいです。
不動産会社に支払う仲介手数料
仲介による売却だと、成功報酬として不動産会社に仲介手数料を支払わなければなりません。仲介手数料は、上限額が法律で決められており、売却金額によって変動します。中古の戸建て物件の売却では、400万円以上で売れることが多く、この場合は次の式で計算します。
仲介手数料=売却価格×(3%+60,000円)+消費税
法律で定められているのはあくまで上限額で、この範囲内なら不動産会社は自由に費用を設定できるため、値引きも可能です。しかし、成功報酬を値引きすると不動産会社の利益が縮小するため、基本的には上限いっぱいでの請求になると考えましょう。
売却時にかかる税金
不動産を売却する際には複数の税金がかかります。
- 印紙税
- 譲渡所得税
- 登録免許税
それぞれで金額が違うことはもちろん、課税対象も異なります。
売買契約書にかかる印紙税
売買契約書を作成する際には、記載している契約金額に応じた収入印紙を貼り付けなければなりません。この費用が印紙税で、税率は次の通りです。
契約金額 | 本則税率 | 軽減税率 |
10万円を超え50万円以下 | 400円 | 200円 |
50万円を超え100万円以下 | 1,000円 | 500円 |
100万円を超え500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
500万円を超え1,000万円以下 | 10,000円 | 5,000円 |
1,000万円を超え5,000万円以下 | 20,000円 | 10,000円 |
5,000万円を超え1億円以下 | 60,000円 | 30,000円 |
1億円を超え5億円以下 | 10万円 | 60,000円 |
5億円を超え10億円以下 | 20万円 | 16万円 |
10億円を超え50億円以下 | 40万円 | 32万円 |
50億円を超えるもの | 60万円 | 48万円 |
契約金額が上がるほど、印紙税も高くなります。また、2020年3月31日までは軽減税率が適用されているため、税負担は少しだけ軽いです。
利益があれば譲渡所得税がかかる
売却による利益が出た場合は、利益分に対して譲渡所得税がかけられます。これは所得税と特別復興所得税、住民税の3つで構成されており、それぞれで税率が異なります。また、所有期間によっても税率が違ってくるため、この点にも注意しなければなりません。
所有区分 | 所有期間 | 所得税 | 特別復興所得税 | 住民税 | 合計 |
短期譲渡所得 | 5年以下 | 30% | 2.1% | 9% | 41.1% |
長期譲渡所得 | 5年を超える | 15% | 2.1% | 5% | 22.1% |
所有期間は売却した年の1月1日で、5年を超えているかどうかを基準に判断します。
抵当権抹消にかかる費用
住宅ローンを組んでいる場合は抵当権が設定されているため、この抹消登記をしなければなりません。また、引き渡しの際には所有権の移転登記が必要で、それぞれで登録免許税がかかります。抵当権抹消の費用は、不動産1個に対して1,000円です。所有権移転登記の費用は、固定資産税の評価額に税率をかけて計算しますが、土地と建物で税率は違うため、注意しなければなりません。
また、これらの手続きを司法書士に依頼する場合は、別途司法書士への報酬も必要です。金額は依頼先や内容によって異なりますが、30,000~50,000円程度かかることも多いです。
その他の費用
売却時にかかる費用はこまごまとしたものも多く、例えば新居への引越し費用や、売却のためのハウスクリーニングなども考えられます。引越しは1回につき20~30万円程度かかることが多く、ハウスクリーニングは内容によって違いますが、数十万円単位の費用がかかることは少なくありません。
その他の費用だけでも50~100万円程度かかることはあるため、売却時の支出が多くなりやすいことは理解しておきましょう。
中古戸建てを売る際の5つの注意点
中古戸建てを売る際の注意点を5つ解説します。
注意点を理解できていないと、思わぬトラブルに発展する可能性があるため、しっかりと確認しておきましょう。
- 売却益で住宅ローンを返済できるか確認する
- 不動産会社は慎重に選ぶ
- 測量について不動産会社へ確認しておく
- 内覧対策する
- 契約不適合責任に気を付ける
注意点①:売却益で住宅ローンを返済できるか確認する
不動産は基本的に、住宅ローンを完済して抵当権を抹消しなければ売却できません。
抵当権を抹消するためには住宅ローンの完済が条件であり、売却益で完済できるかどうかを確認しておく必要があります。
もし、売却益だけでは完済できない場合、預貯金から不足分を追加したり親族に借りたりして完済しなければなりません。
確認せずに売却してしまい、不足分も補填できなければ、再度新たに住宅ローンを組む必要が出てきて余計に手間や時間がかかってしまいます。
スムーズに売却するためにも、売却益で住宅ローンを完済できるかどうかを売却前に確認しておきましょう。
注意点②:不動産会社は慎重に選ぶ
戸建て売却は不動産会社選びも重要です。
不動産を売却する際は不動産会社へ売却依頼し、仲介してもらって売却するのが一般的です。
ただし、不動産会社によって取引実績や対応エリア、得意分野などが異なるため、依頼する不動産会社によって売却が成功するかどうかも変わってきます。
「大手だから」「知人に紹介されたから」などの理由で選んでしまうと、失敗する可能性があるため、できれば自分で調べながら選ぶのをおすすめします。
なお、おすすめの選び方としては以下を参考にしてみてください。
- 戸建て売却の実績が豊富
- アフターサービスが充実している
- ユーザーからの評価が良い
- 該当する地域に詳しい
- 不動産一括査定サイトを利用する
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注意点③:測量について不動産会社へ確認しておく
測量とは、隣地との境界線を確定することです。主に土地の面積や形状などを測って確定させます。
戸建てを売却する際は土地も一緒に売却することになるため、隣地との境界を明確にしておく必要があります。
測量せずに売却してしまうと、売却後に買主と隣地所有者で境界についてトラブルに発展する可能性があるため、測量をしておくことで買主も安心して購入できるようになります。
なお、境界や土地の面積は登記簿に記載されていますが、必ずじも正しいとは限りません。
「確定測量図」や「境界確認書」などで確認しておきましょう。
注意点④:内覧対策する
中古戸建てを売り出して購入希望者が現れたら内覧を行いますが、内覧対策をしっかり行っておきましょう。
内覧では、購入希望者が実際に家を訪れて室内状況や周辺環境を確認して、実際に住んだ際のイメージをします。
この際に、極端に室内が散らかっていたり水回りが汚かったりすれば、内覧者の購入意欲を下げることにもなりかねません。
不用品を処分したり掃除したりして、内覧者が気持ちよく内覧できるように対策しておきましょう。
なお、内覧前の掃除については以下の記事で詳しく解説しているので参考にしてみてください。
注意点⑤:契約不適合責任に気を付ける
契約不適合責任とは、購入物件の構造耐力上主要な部分(家を支える柱や壁など)に瑕疵(不具合)があった場合に、売主が買主に対して課される責任のことです。
仮に売主が瑕疵に気づかず売却した場合でも、買主が瑕疵に気づいて1年以内に売主へ責任追及すれば責任を取る必要があります。
なお、事前に瑕疵に気づいているにもかかわらず、そのことを知らせずに売却した場合は期間制限はありません。
契約不適合責任に問われないようにするために、ホームインスペクションを受けておきましょう。
ホームインスペクションでは、住宅の瑕疵や欠陥がないか建築士に調査してもらえるため、買主に対しても安全性をアピールできます。
中古の戸建て売却を成功させよう
物件の状態によって売却の条件は異なりますが、売り方を工夫することで、よりよい条件で売ることはできます。
どのように売ればもっともよい結果が得られるのかをよく考え、工夫して取り組むことで中古の戸建て物件の売却成功を目指しましょう。