不動産を売った際の所得に所得税と住民税が課税されますが、所有期間によって税金に関わる税率が大きく異なります。短期の所有であれば税率が高く、長期の所有であれば税率が低い決まりになっており、10年超という長い所有期間に適用される長期譲渡所得軽減税率もあり、この税率は特例として大幅に低くなっています。
そこでこの記事では、そんな長期譲渡所得軽減税率についてさまざまな角度から紹介します。長期譲渡所得軽減税率の適用条件や軽減税率を使った税額の計算方法、軽減税率以外で適用できる特別控除や確定申告・不動産一括査定サイトなども取り上げますので、不動産売却を検討している人は参考にしてください。
また、「家を売る基礎知識を知りたい」方は家を売る記事が参考になります。
長期譲渡所得軽減税率とは不動産所有期間が10年超に適用される税率
譲渡所得の税率は所有期間によって異なり、詳細は次の通りです。
所有期間 | 所得税 | 住民税 |
短期譲渡所得(5年以下) | 30.63% | 9% |
長期譲渡所得(5年超) | 15.315% | 5% |
長期譲渡所得(10年超) | 10.21%~15.315% | 4%~5% |
長期譲渡所得軽減税率は、「長期(10年超)」に適用されます。ここでは、マイホームの定義や長期譲渡所得軽減税率の詳しい税率を見ていきましょう。
マイホームを売却しときに適用される税率
マイホームでなければ、長期譲渡所得軽減税率は適用されません。マイホームとは自分の住んでいる家のことで、非居住用の場合は、所得税15.315%・住民税5%となります。非居住用である仮住まいだった家や別荘などの娯楽のために所有する家などは、マイホーム(居住用)になりませんので注意しましょう。
6,000万円を境に税率が異なる
不動産所有期間が10年超の長期譲渡所得軽減税率は、6,000万円を境に税率が異なります。
所得税 | 住民税 | |
課税譲渡所得6,000万円以下の部分 | 10.21% | 4% |
課税譲渡所得6,000万円超の部分 | 15.315% | 5% |
このように6,000万円超の部分に関しては、通常の長期譲渡所得の税率が適用されます。
長期譲渡所得軽減税率の適用に必要な条件
長期譲渡所得軽減税率は、マイホーム以外にもさまざまな適用条件があります。詳細は次の通りです。
- 売主と買主の関係が、親子や夫婦などの特別なものではない
- 更地でない場合、売った年の1月1日時点で家屋や敷地の所有期間ともに10年を超えている
- 災害で家屋が無くなった場合、その敷地内に住まなくなった日から、3年を経過した日の年末までに売る
- 更地にして売却する場合、土地の譲渡契約が家を取り壊した日から1年以内に締結され、住まなくなった日から3年目の年の12月31日までに売却されている
ほかにもマイホームの買い換えや、マイホーム交換の特例など、マイホームの譲渡損失などの損益通算や繰越控除の特例などが適用されていないことを条件にしています。
あとの章で詳しく紹介する3,000万円の特別控除の特例や軽減税率の特例は、長期譲渡所得軽減税率と重ねて受けることができますので、活用されることをおすすめします。
長期譲渡所得の軽減税率を使った税額の計算方法
課税譲渡所得を計算して軽減税率をかければ、長期譲渡所得の税額を導き出せます。ここでは、長期譲渡所得の軽減税率を使った税額の計算方法を詳しく紹介します。
【STEP1】課税譲渡所得を算出する
課税譲渡所得を算出するためには、まずは譲渡所得を計算します。譲渡所得がわかったら、そこから特別控除をマイナスにして、課税譲渡所得が導き出せます。
譲渡所得=譲渡価格-(取得費+売却費用)
譲渡価格を調べるためには、不動産一括査定サイトを利用しましょう。不動産一括査定サイトでは、さまざまな不動産業者が所有している不動産に対してどれぐらいの金額なのか知らせてくれるため、非常に便利です。
取得費
「取得費」は、売った不動産を取得した時に必要であった費用のことです。具体的には、不動産の購入代金や仲介手数料、登記費用などです。また、不動産の購入代金は購入してからの年数に応じて減価償却する必要があります。
売却費用
売却費用は、売却する時に必要だった費用のことです。具体的には、仲介手数料や登記費用、印紙税などが該当します。ほかにも、貸家を売る際に支払った立退料や建物の解体費用、測量費用なども売却費用です。
ちなみに、抵当権を抹消するための抵当権抹消登記費用や固定資産税・修繕費といった維持管理費は、売却費用に含まれません。
【STEP2】譲渡所得の税額を算出する
課税譲渡所得がわかったら、そこに長期譲渡所得税率をかければ、譲渡所得の税額を算出できます。所得税・住民を合わせた長期譲渡所得税率は、課税譲渡所得6,000万円以下にたいして14.21%、6,000万円を超える部分は20.315%です。
参考:長期譲渡所得の税額の計算
費用総額シミュレーターで売却にかかる費用を算出してみよう
以下の費用シミュレーターを使って、あなたの不動産を売ったときにかかる費用を算出してみましょう!
「売却価格」「購入価格」「物件の所有期間」「現在住宅として住んでいるか」をそれぞれ入力し、「費用を算出する」ボタンを押すと、売却時にかかる費用が自動で算出されます。
※購入価格が分からない場合は空欄で大丈夫です。
費用の内訳も表示されますので、まずはどんな費用がいくらかかるのかを把握しておきましょう。
長期譲渡所得の軽減税率以外で適用できる特別控除
長期譲渡所得の軽減税率以外にも、さまざまな特別控除があります。
特別控除の種類 | 条件 |
3,000万円の特別控除 | マイホームの売却 など |
特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例 | マイホームの譲渡価額が住宅ローンの残高を下回っている など |
特定期間に購入した土地の売却で1,000万円控除 | 平成21年1月1日~平成22年12月31日までに土地などを取得している など |
公共事業で土地建物の売却で5,000万円の控除 | 固定資産である土地や建物を売却 など |
再開発のための土地売却で2,000万円の控除 | 再開発など国や地方公共団体等がおこなう「土地区画整理事業」のために土地を売る など |
特定住宅地造成事業による土地売却で1,500万円の控除 | 地方公共団体などが行う「住宅の建設」あるいは「宅地の造成」のために土地を売却 など |
農地保有の合理化による農地売却なら800万円の控除 | 認定農業者などに農地を譲渡 など |
それぞれの控除について詳しく見ていきましょう。
3,000万円の特別控除
マイホームを売却した場合には、所有期間と関係なく譲渡所得から3,000万円までの控除が受けられる特別控除があります。
しかも長期譲渡所得軽減税率と併用可能ですので、3,000万円控除後に利益が出ている場合でも、節税できるでしょう。ちなみに長期譲渡所得軽減税率のように、マイホーム以外は適用されませんので、注意が必要です。
特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
マイホームなど売って損失が出た際、他の所得から差し引ける特例もあります。それが「特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」です。損益通算でも控除しきれなかった損失においては、譲渡した年の翌年以後3年内に繰越控除も可能です。
損益通算対象の所得は、次の通りです。
- 不動産所得
- 事業所得
- 譲渡所得
- 山林所得
マイホームを譲渡することだけではなく、マイホームの譲渡価額が住宅ローンの残高を下回っているなどの適用条件があるため、住宅ローンの残高を必ず確認しておきましょう。
参考:住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき(特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)
特定期間に購入した土地の売却で1,000万円控除
- 平成21年に取得した土地などを平成27年以降に譲渡
- 平成22年に取得した土地などを平成28年以降に譲渡
上記条件の場合、譲渡所得から1,000万円を控除できる特例もあります。譲渡所得1,000万円未満であれば、その譲渡所得の金額が控除額です。ほかにも、親子や夫婦などから取得した土地ではないことも、適用条件に含まれます。
参考:平成21年及び平成22年に取得した土地等を譲渡したときの1,000万円の特別控除
公共事業で土地建物の売却で5,000万円の控除
- 固定資産である土地や建物を売却
- 売った年に公共事業のために売った資産の全部について課税の特例を受けていない
- 買取りなどの申し出があった日から6カ月経った日までに土地や建物を売却
- 公共事業側から初めに買取りなどの申し出を受けた人が譲渡している
上記の適用条件であれば、5,000万円までの特別控除を受けられます。5,000万円は、他の控除額よりも高いため、公共事業に興味のある人は検討してみましょう。
再開発のための土地売却で2,000万円の控除
再開発など国や地方公共団体などが行う「土地区画整理事業」のために土地を売る際、2,000万円の特別控除の特例を受けられます。
第一種市街地再開発事業や住宅街区整理事業、防災街区整備事業などのために土地譲渡をした場合でも、控除額は2,000万円です。また、建物の取り壊し費用も控除内に含まれますが、建物に対する移転補償金は控除の対象になりません。
参考:第65条の3 《特定土地区画整理事業等のために土地等を譲渡した場合の所得の特別控除》関係
特定住宅地造成事業による土地売却で1,500万円の控除
- 地方公共団体などが行う「住宅の建設」あるいは「宅地の造成」のために土地を売却
- 収用などの事業を行う人にその収用の対償地に充てる目的で土地を売却
- 「特定の民間の宅地造成事業」あるいは「住宅建設事業」に土地を売却
- 公有地の拡大の推進に関する法律の規定により土地を売却
上記いずれかの条件を満たせば、特別控除額の1,500万円が適用されまが、交換または買換え、あるいは優良住宅地の造成で減税を受けている人は対象外です。
参考:第65条の4 《特定住宅地造成事業等のために土地等を譲渡した場合の所得の特別控除》関係
農地保有の合理化による農地売却なら800万円の控除
認定農業者などに農地を譲渡した際、特別控除として控除額800万円が適用されます。 農地保有者であれば、もっと知っておきたいことは、「農業経営基盤強化促進法の規定」による買入れ協議に基づいた農地の譲渡のケースです。
こちらの条件の場合、1,500万円控除が適用されますので、農地保有の合理化による農地売却に興味のある人は、事前に調べておきましょう。
参考:譲渡所得の特別控除の種類
売却益が出た場合は確定申告を行って納税する
不動産を売却して、利益が出た場合は、翌年の2月16日~3月15日までに確定申告を行って納付しなければなりません。ここでは、確定申告についてさまざまな角度から解説します。
住民税は手続きはいらない
確定申告は所得税のみで、住民税の手続きは不要です。確定申告をすれば、自動でその翌年6月から住民税を支払うようになっています。住民税納付書は5月頃に送付され、納税のタイミングは6月、9月、10月、2月末日を期限にしている年4回です。
確定申告を期限内に対応していない場合、税金を納められないだけでなく遅延金も発生しますので、注意が必要です。
利益が出なかった場合は確定申告は不要
不動産を売却して、利益が出なかった場合は確定申告をしなくても問題ありません。しかし、損益があった場合、所得と損益通算することで税金を抑えることができるため、確定申告することをおすすめします。
ちなみに、確定申告は自分でも行えますが、別途費用を支払い税理士に依頼して任せることも可能ですので、「忙しくて申告できそうにない」「やり方がよくわからない」という人は、税理士に相談してみましょう。
不動産売却を検討している場合は一括査定サイトが必須
不動産一括査定サイトを利用すれば、失敗しない不動産売却を目指せます。なぜなら、さまざまな不動産会社を見つけて査定依頼する手間・時間を省け、優秀な不動産会社の担当者を見つけられるメリットがあるからです。複数の不動産会社を比較検討することで、適正価格がわかることも特徴として挙げられるでしょう。
「すまいステップ」という不動産一括査定サイトであれば、ネット最短1分で査定依頼が可能であり、最大4社と比較できるようになっています。しかも、大手不動産会社を含め全国の不動産業者が加盟しているため、対応エリアも広いです。インターネットさえあれば自宅で一括査定が受けられることも特徴です。
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長期譲渡所得軽減税率を理解して不動産売却時の税額を抑える
長期譲渡所得軽減税率は、マイホームを売却しときに適用される税率で、6,000万円を境に税率が異なります。そんな長期譲渡所得軽減税率の適用に必要な条件はさまざまありますので、適用されたい人は、事前に条件を確認しておきましょう。
長期譲渡所得の軽減税率を使った税額の計算方法は、「譲渡価格-(取得費+売却費用)-(特別控除)」に長期譲渡所得税率をかけるだけです。所得税・住民を合わせた長期譲渡所得税率は、6,000万円以下には14.21%、6,000万円超には20.315%です。
3,000万円の特別控除や特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例など、長期譲渡所得の軽減税率以外で適用できる特別控除もたくさんあります。長期譲渡所得軽減税率や特別控除を理解して、不動産売却時の税額を抑えませんか。