所有している不動産に対してかけられる固定資産税は、持ち主が支払うことが基本です。しかし、不動産売却時のように、年度の途中で持ち主が変わる場合は、売主と買主のどちらが負担するのか、ややこしくなることも少なくありません。
不動産売却によって所有権が移動した場合は、固定資産税は誰がどのように負担するのか知っておきましょう。
不動産売却時の固定資産税は買主・売主どちらが負担するのか?
そもそも固定資産税とは、土地や家屋などの固定資産にかけられる税金で、他にも多数の課税対象があります。課税条件は1月1日時点で所有しているかどうかで、該当時点で不動産を所有している人に、支払いの義務がかかると考えましょう。しかし、年度途中で売却する場合は、売主と買主が切り替わり、誰が納税するのか不明瞭になりやすいため、この時の取り決めを知っておかなければなりません。
納税義務者は途中変更されない
固定資産税は、課税された時点で納税者が確定するため、年度の途中で不動産を手放したとしても、納税義務者が変更になることはありません。つまり、1月1日時点での所有者が売主なら売主が納税義務者となり、同時点で買主が所有者になっていれば、買主がその年の固定資産税を支払うと考えましょう。
また、地域によっては固定資産税だけでなく、都市計画税がかけられることもあります。都市計画税は、固定資産税の一部に含まれるもののため、この納税義務者の取り決めも固定資産税と同じです。都市計画税がかけられる地域では、固定資産税と都市計画税の両方が、課税時点の所有者が負担することになります。
課税対象日は翌年3月31日まで
固定資産税の課税対象となるのは、当該年度の4月1日から翌年の3月31日分までです。基本的には、その年の初めに納税者が決まり、当該年度にかけられた税金を支払うと考えましょう。
ただし課税対象日については、1月1日から12月31日までの1年間で決めるのか、4月1日から翌年3月31日までの年度単位で考えるかは明確に決まっていないため、買主と売主の両者で共通認識を持つことが大切です。
不動産売却時の固定資産税の計算方法
不動産売却時に固定資産税の負担を決めるためには、まずは税額そのものを計算しなければなりません。固定資産税は、該当不動産の評価額を元に計算しますが、売却時の負担を決める際には、日割りや月割りでの税額も考える必要があります。
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「固定資産税評価額×1.4%」で算出される
固定資産税の税額を決定する際には、「固定資産税評価額」という基準を用います。これは、不動産取得時に市区町村の担当者が不動産会社などとともに調査をして、税額を決めるための基準です。固定資産税額に1.4%をかけたものが年間の税額で、土地と家屋のそれぞれで計算されます。
詳細な金額は、固定資産税の納付通知書で確認できますが、概算で出すなら土地の場合は時価の70%程度、家屋は新築取得時の50~60%程度になると考えましょう。
ただし、家屋は経年劣化なども考慮しなければならないため、評価額は建物によって異なることが多いです。そのため、土地以上に概算になると考え、詳細な金額は固定資産税の納付通知書により確認することが一般的です。
起算日により税額が異なる
不動産売却時における固定資産税の扱いは複雑で、いつを起算日とするかによって税額は違ってきます。課税対象になるのは1月1日時点ですが、実際に納税通知書が所有者の手元に届くのは4月ごろです。
そのため、納税通知書が届くまでの間に売却が決定したり、引き渡しが終わったりした場合は、誰がどのように負担することになるのかも、違ってくると考えましょう。
不動産売却時の固定資産税の扱い
固定資産税について理解を深めるためには、売却時にはどのような扱いになるのかを知っておかなければなりません。基本的には、所有者のみに関係する事柄ですが、不動産売却時においては所有者である売主と、これから所有者になる買主の両方に関係するため、お互いが理解を持っておきましょう。
一般的には売主と買主が分担する
固定資産税は分割での納付ではなく、1年分をまとめて納付します。そのため、年度途中で不動産売却を行った場合は、当該期間で日割り計算して、売主と買主の両方が税負担をすることが一般的です。
1年の3分の1の期間の所有者が売主なら、税額の3分の1を売主が、残りの期間が買主のものとなるなら、税額の3分の2が買主負担になると考えましょう。固定資産税を両者で分担し、翌年分が新たに課税対象になってからは、買主が完全に1年分を負担することになります。
起算日がポイント
不動産売却時の固定資産税の分担を決める際には、いつを起算日とするかが重要です。起算日の考え方は地域によって異なり、関東では1月1日、関西では4月1日を起算日にする傾向にあります。
ただし、どちらも確定的なものではなく、関東でも4月1日、関西でも1月1日を起算日にするケースもみられます。起算日は売主との合意で決まるため、どちらで計算するのかは、あらかじめて確認しておかなければなりません。起算日を決定した場合は、起算日から引き渡しまでの期間分は売主が、引き渡しから当該期間終了分までは買主が負担します。
法律上決められた手続きではない
不動産売却時に、固定資産税を売主と買主のどちらがいくら負担するのかといった取り決めは、法律上必須の手続きではありません。そのため、ややこしくなりそうであれば、固定資産税についての取り決めは除外して、単純に取引をする不動産の価額だけで金銭授受を行っても構いません。
清算しないと売主が損する
固定資産税の清算は、必ずしも行わなければならないわけではありませんが、やっておかなければ売主が損をすることになるので注意しましょう。例えば1月1日時点の所有者が売主で、1月2日に買主に引き渡すとします。この際に納税通知書は売主の元に届き、清算をしていない場合は、売主が手放した分の固定資産税を支払わなければなりません。
また、4月以降で納付したあとの引き渡しでも、同じことがいえます。1年分をまとめて支払うことになるからこそ、途中で清算しておかなければ売主だけが税負担を負い、買主は一定期間税負担なしで不動産を所有できることになります。
不動産売却時の固定資産税の「清算」について
売主が損をしないためには、不動産売却時に固定資産税の「清算」をしなければなりません。固定資産税の清算とは、年度途中分からの固定資産税額を買主から受け取り、お互いに対等な税負担を負う取り決めです。清算について、注意点も含めて詳細まで知り、損なく不動産売却を行いましょう。
清算行為はあくまで慣例
固定資産税の清算は、法律上定められているものではなく、あくまで不動産売却時における慣例でしかありません。そのため、清算によって買主から固定資産税額の一部を受け取った場合は、清算金という区分で計上されるわけではなく、単純に売却価格が上がったことになると考えましょう。
取引上の名目としては清算として考えますが、税制上は売却価格に含まれるため、譲渡所得が増えるだけに過ぎません。反対に清算をしなかった場合は、売却価格が取り決めた通りになるだけです。実質は値引きをしていることになりますが、税制上の区分では何も変わらないと考えましょう。
「清算」で収益が出た場合でも確定申告が必要
不動産売却によって利益が出た場合は、売却した翌年の申告期間に確定申告をしなければなりません。これは、固定資産税の清算金によって利益が出た場合も同様で、申告しなければペナルティを課せられるため注意が必要です。
固定資産税の清算は、単に売却価格に上乗せされるだけのため、当然のことながら譲渡所得税の課税対象になります。税金の一部を回収しているからといって、特別に所得の対象外になるわけではないということです。
万が一申告漏れがあると無申告課税がかけられ、50万円までの部分には15%、それ以上の場合は20%の税率がかけられることがあります。また、無申告分の税金には延滞税もかけられ、納付期限超過後2カ月は約7%、2カ月以降は約14%と、高い税率がかけられてしまいます。
さらに、悪質な所得隠しと判断された場合は重加算税となり、35~40%の重たいペナルティを課せられることもあるため、固定資産税の清算分も、利益として必ず計上しておきましょう。
固定資産税以外も清算するケースがある
不動産売却時の清算は固定資産税に限らず、その他税金も含めて清算することがあります。これも法律上の取り決めではないため、双方合意のもとに行う慣例といえます。そのため、何をどのように清算するのかは自由に決めて構いませんが、清算して受け取った代金は、全て利益として計上しなければなりません。
どの区分の税金や費用を清算したとしても、売却時に売主が受け取った金額は、全て売却価格として一括で計算することは覚えておきましょう。また、固定資産税以外の清算も可能ではあるものの、実際には何をどのように分担するのか、取り決めが複雑化しやすいため、詳細まで決めることは現実的ではありません。
起算日さえ決めれば、所有期間から割り出しやすい固定資産税は、分担も簡単なので清算されやすいです。しかし、それ以外の税金は割合を決めるのが難しいことから、清算金として持ち出されるケースは少ないといえます。
固定資産税以外で計算することが多いのは、税額の一部に含まれる都市計画税です。都市計画税は、固定資産税と同じ区分であるため、清算時には忘れないようにしましょう。
不動産会社に清算依頼しても別途費用はかからない
固定資産税やその他税金の清算は、売主と買主の双方の合意で決めますが、内容が複雑化しやすくて決めることは難しいです。そのため、不動産会社に負担額を計算してもらうのがおすすめで、清算分の取り決めを依頼しても、別途費用はかかりません。
清算金の取り決めは、売却価格や契約条件の設定に該当するため、無理に自分で計算せずにプロに依頼したほうがよいでしょう。不動産会社に決めてもらうことで双方納得できる金額に設定しやすく、お互いに合意したうえで税金の負担額を決めやすくなります。
不動産売却時は固定資産税にも注意しよう
少しでもよい条件で不動産を売却するためには、売却価格の設定だけでなく、固定資産税の清算にも注意しなければなりません。固定資産税を双方で負担できるよう不動産会社に相談して、売却価格を調整しつつ損なく売却しましょう。
また、少しでも高値で売って不動産売却を成功させたりしたいなら、一括査定サイトの利用がおすすめです。一括査定サイトを使うことで、より好条件で売却できる不動産会社を見つけやすく、高値で売りやすくもなります。
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