住宅を購入する際の強い味方となる住宅ローンですが、適切な金額で組めていないと自らの首を絞めることになりかねません。住宅ローンは経済状況によって組める金額が異なり、条件さえそろえば4,000万円という高額な借入も可能です。
しかし、借りられることと確実に返済できることはイコールではないため、きちんと資金計画を練ってから借入額を決めましょう。
4,000万円の住宅ローンは組めるのか?
そもそも4,000万円という高額な住宅ローンが組めるのかどうかですが、基本的には年収の条件をクリアしているなら組めます。年収が一定水準まであり、かつこれまでローンを滞納していないなど、金融履歴がクリアな状態なら、組めない金額ではないでしょう。
年収650万円が一つの基準
住宅ローンの基準はさまざまありますが、年収の6倍程度が借入額の目安とされています。逆算すると4000万円の住宅ローンを借りるには年収が650万円ほどあることが1つの目安となります。
ただし、金融機関が貸してくれる最大額は、年収の8倍程度までとも言われており、4,000万円の住宅ローンを組むためには年収500万円が最低ラインとなるでしょう。
年収の条件をクリアし、金融履歴に問題がなければ4,000万円の借入も可能でしょう。
ただし、年収が500万円あれば4,000万円のローンが組めるというだけに過ぎず、適正金額として確実に返済できると保証されているわけではありません。むしろ年収の8倍の基準は上限いっぱいの数値で、実際にローンを組むと返済に苦しむ可能性が高いです。
金融機関が、8倍という高い基準でローンを組んでくれるのは、ローンを組んだあとは証券化して、住宅金融支援機構というところに売却してしまうためです。つまり、もし借入をした債務者の支払いが滞ったとしても、最初に貸し出す金融機関にダメージはないため、貸し出せる金額いっぱいまでローンを組ませてくれるということになります。
もちろん、金融機関によってはもう少し厳しい基準を設けていることもあり、一般的には年収の5~6倍程度の金額が適正な借入額であることを知っておきましょう。
適正な借入額の考え方
借りられる金額が適正な借入額ではないため、実際にいくら借りても大丈夫かを考えるうえでは、別の基準を用いなければなりません。適正な借入額は、年収における支払いの割合から考えることが重要で、安全策を取るなら20~25%程度がおすすめです。
例えば年収を500万円とするなら、年額100万~125万円程度、月額約80,000~10万円程度の支払いが妥当ということになります。もちろん、実際にはもう少し高額なローンを組むケースもあり、貯金額などに応じて借入額を増やしても構いません。
金融機関の上限においては、年収の35~40%をローン支払いに充てるという計算で、融資額を決めることもあります。ただし、年収におけるローン返済の割合が35%以上になると、生活に困窮するレベルで出費が出やすいため、よほど貯金が潤沢にある場合以外は注意しなければなりません。
住宅ローンが組める年齢には制限がある
住宅ローンを組む際には年齢制限があり、基本的には80歳までに完済することを目指して、借入の金額と期間を決めます。そのため、完済年齢が80歳を超えるローンは組めないことが多かったり、高齢になってからではローンが組みづらくなったりします。
つまり、高齢になればなるほど住宅ローンは借りずらくなります。
なぜなら、高齢になるほど安定して収入を得ることが難しく、特に定年後は現役の頃よりも収入が減少しやすいことが理由です。また、住宅ローンを組むためには、多くの場合で団体信用生命保険に加入しなければなりません。
これは、主たる返済者に万が一のことがあった場合に、生命保険の保険金によって住宅ローンの返済が滞らないようにするためです。しかし、団体信用生命保険は補償期間が80歳までで、年齢によってこのセーフティネットもなくなってしまいます。
金融機関もリスクが高すぎるローンは組めないため、生命保険の補償が残る80歳までを、借入期間の目安とすることが多いです。
住宅ローンの金利に影響する2つの要素
4000万円の住宅ローンを借りるなら、金利分を上乗せした返済額がトータルでいくらになるか気になりますよね。
金利の増減に影響するポイントを分かっていないと、適切な借入額を決めることも難しいです。そのため、まずは基礎知識から身につけ、理解を深めておくことが大切です。
- 借入期間の長さ
- 3つの利息パターン
これら2つは基礎知識として重要なため、必ず頭に入れておきましょう。
住宅ローンの借入期間の長さ
借入期間の長さは、金融機関が扱っている商品によっても異なりますが、もっとも短いもので10年からというケースがほとんどです。10年から15年、20年、35年までが比較的多い商品で、中には50年というより長期間を設けるところもあります。
同じ金額を借り入れるとしても、期間によって毎月の支払額は違い、返済期間が短いほど1回の支払い金額が増えるため、負担は大きいです。ただし、返済期間が長くなると、1回の支払い額は小さくできますが、その分利息が発生するため、実際の購入代金よりも返済額は増えます。
また、借入期間が長いものは、利用時の条件が厳しく設定されていることもあり、誰でも使えるとは限りません。期間ごとに最終的な返済額や月々の負担額、利用条件などが異なることは覚えておきましょう。
金利は3パターンから選ぶ
住宅ローンを組むと金利に応じた利息が発生し、この利息分が実際の借入額よりも多く支払わなければならない部分です。利息は次の3つのパターンがあり、それぞれで特徴が異なります。
利息の種類 | 特徴 | 注意点 |
---|---|---|
完全固定金利型 | ・金利相場が上がっても利息は最初に決めたときから変わらない ・返済額が明確に分かる | ・金利相場が下がると相場よりも多く支払いが必要 ・金利水準が高い |
変動金利型 | ・金利相場が下がると返済額も減る ・金利上昇は従来の返済額の1.25倍までという制限つき ・金利水準が低い | ・金利変動で返済額が上がるリスク |
固定期間選択型 | ・一定期間固定金利で返済を行う ・一定期間後に固定金利か変動金利かを選び直せる | ・再設定の際の利息タイプの選び方が重要 |
完全固定金利型は、借入時から金利が決まっているため、金利相場の変動を受けずに支払い額も一定です。金利相場が上がった際にも、返済額は増えないためお得ですが、反対に下がると相場よりも高い金利で支払わなければならない点には注意が必要でしょう。
また、借入時点で将来の金利が決まるため、将来的な返済額もあらかじめ確定する安心感がありますが、金利水準は変動金利型より高いです。
変動金利型は固定金利型とは真逆で、金利相場の変動の影響を受けるため、相場が下がるとお得になり、上がると支払額は増えます。ただし、「従来の返済額の1.25倍までしか金利上昇の影響は受けない」という制限があるため、再現なく金利が上昇し続けるわけではありません。なお、金利水準も固定金利型より低いのが一般的です。
固定期間選択型は両者の特徴を合わせたもので、最初は固定金利で進み、数年後に固定金利を継続するか変動金利に変更するかの選び直しが可能です。柔軟な対応が可能ですが、再設定時にはその後の金利の変動を読む必要があり、よりお得な選択をするためには、金融についての理解が必要になるでしょう。
年収別で見る4,000万円の返済プラン
実際に4,000万円を借りた場合には、どのような返済プランになるのか、年収別に見ていきましょう。毎月の支払額が同じでボーナス返済はなし、金利は固定が1.3%で変動が0.7%と仮定すると、返済期間30年と35年では次のようになります。
項目 | 固定金利30年 | 固定金利35年 | 変動金利30年 | 変動金利35年 |
---|---|---|---|---|
総返済額 | 4,833万円 | 4,981万円 | 4,436万円 | 4,511万円 |
利息額 | 833万円 | 981万円 | 436万円 | 511万円 |
年間返済額 | 161万円 | 142万円 | 148万円 | 129万円 |
毎月返済額 | 13万4,242円 | 11万8,593円 | 12万3,218円 | 10万7,408円 |
借入金額や利息、支払い額の条件が同じだとしても、年収が違うと金銭的な余裕は違ってきます。
年収が500万円の場合
年収を500万円と仮定すると、上記の固定金利30年のケースでは、年収におけるローン支払いの返済負担率は約30%程度となります。年収の30%程度をローン支払いに充てなければならないため、金銭的にはやや負担が大きいでしょう。
また、変動金利で35年を選択する場合は、返済負担率は約25%でこちらは妥当な割合です。ただし、返済期間が長いことや利息分の支払いが多くなることには注意しなければなりません。
年収が600万円の場合
年収を600万円と仮定すると、より余裕を持った返済プランを立てやすいです。例えば固定金利30年と考えても、返済負担率は26~27%程度で、ある程度支出を切り詰められるなら問題なくローンは組めます。また、25%程度の返済負担率で考えるなら変動金利の30年も可能で、利息額が少ないためお得に返済できるでしょう。
ただし、変動金利は0.7%で計算していますが、実際には金利相場に応じて変化するため、支払い額が増える可能性もあります。そのため、よりリスクを回避したいなら、利息額は高くなっても余裕のある35年返済を選ぶことがおすすめです。
年収が700万円の場合
年収を700万円と仮定すると、固定金利の30年の場合で、返済負担率は22~24%程度です。つまり、問題なくローンを組める負担率で、よほど無理な使い方をしない限りは支払いに困ることはないでしょう。また、固定金利35年で考えるなら、返済負担率は約20%となり、さらにリスクを下げることができます。
年収が800万円の場合
年収800万円だと、固定金利の30年の場合で返済負担率は約20%です。その他の例で計算するなら返済負担率は20%を切るため、余裕を持ってローン支払いがしやすいです。年収が800万円あるなら、4,000万円の住宅ローンも無理なく組みやすいといえるでしょう。



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住宅ローン4,000万円を完済する3つのコツ
4,000万円という高額な住宅ローンを完済するためには、年収が高いに越したことはありません。
しかし、年収がそれほど高くなくても、工夫してローンを組むことで無理なく完済することも可能です。4,000万円の住宅ローンを完済するコツは、大きく3つ挙げられます。
頭金の支払い金額を増やす
ローンの支払総額や月々の負担額を減らしたいなら、頭金の支払い額を増やしましょう。頭金の有無によって、月々の負担額や支払総額は次のように変化します。
項目 | 頭金の金額 | 借入額 | 月々の返済額 | 頭金を含む総支払額 |
---|---|---|---|---|
頭金なし | 0円 | 4,000万円 | 12万523円 | 約5,062万円 |
頭金1割 | 400万円 | 3,600万円 | 10万8,471円 | 約4,956万円 |
頭金2割 | 800万円 | 3,200万円 | 96,419円 | 約4,850万円 |
これは、35年ローンで金利1.4%で計算した場合です。頭金を1割増やすと総支払額は100万円程度違い、頭金が多くなるほど、より少ない負担でローンを借りられるでしょう。
お金に余裕があれば繰り上げ返済する
返済プランによっても異なりますが、基本的にはローンの支払い額は毎月固定です。しかし、お金に余裕がある場合は、繰り上げ返済で多く支払うことも可能です。繰り上げ返済をすることで、返済期間を短縮できるため、支払い利息額も少なくなります。
余裕がある場合は積極的に繰り上げ返済をすると、総支払額が小さくなり、かつ支払い期間も短縮できて完済を目指しやすいでしょう。
金利の安い銀行で住宅ローンを組む
少しでも利息の負担額を小さくしたいなら、金利の低い銀行で住宅ローンを組むことがおすすめです。金利はその時々で変動しますが、2019年11月時点では次のものがおすすめです。
- 住信SBIネット銀行:当初10年金利0.7%
- 住信SBIネット銀行:変動金利0.418%
- ARUHI:35年固定1.35%
- イオン銀行:変動金利0.57%
条件はその時々で変わるため、契約時に詳細まで確認しておきましょう。
住宅ローン控除を活用する
住宅ローン控除を利用すれば、各年末ローン残高、またはマイホーム購入価格の内、いずれか少ない方の金額の1%が10年間にわたって所得税から控除されます。最大400万円までの控除が可能で、長期優良住宅であれば最大500万円までの控除が可能です。また所得税から控除しきれなかった額は、翌年の住民税から減額も可能となっています。
ただし、住宅ローン控除を利用するには以下の要件を満たしておかなければいけません。
②:控除を受ける年の合計所得金額が3000万円以下であること
③:新築や購入した住宅の床面積が50㎡以上で床面積に2分の1以上が事故の居住用に使用されていること
④:返済期間が10年以上の住宅ローンを借り入れていること
その他細かい条件もあるため詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
4,000万円の住宅ローン借りてよくある5つの失敗
無理のない返済プランを考えるためには、ローンを組む際に、よくある失敗についても知っておくことが大切です。どのような点で失敗しやすいのかを知り、自分も同じ失敗をしないように対処法も含めて知っていきましょう。
手取りで計算せずに家計が赤字になる
返済プランを考える際には、年収を手取りではなく額面で計算すると、返済が苦しくなりやすいため、ローンを組む際の計算では手取り年収額を基準にしましょう。
例えば、世帯年収が600万円の家系で年間150万円のローンを借りると返済負担率は25%(150万円÷600万円)となり、適正な範囲内だと言えます。
しかし、年収から所属税や住民税、社会保険料を差し引いた手取り収入は、年収の80%程度に低下します。このケースでは、手取り収入が480万円となり返済負担率は31%強(150万円÷480万円)の水準となります。
実際には、住宅取得後は「住宅ローン控除」という減税を受けられ、中学生以下の子供がいれば「児童手当」も支給されるので可処分所得は増えますが、手取りの年収が税金等で差し引かれていることは考慮しておきましょう。
離婚して住宅ローンの支払いを滞納
住宅ローンは個人ではなく、世帯年収で考えて借入額を決めることも可能です。
しかし、もし離婚してしまった場合は、パートナーの年収を考慮できなくなるため、個人年収では負担が重くなり、支払いを滞納してしまうこともあります。
実際に国内では結婚後5年未満で離婚をする人は、全体の32.1%もいます。そのなかでも5年未満の離婚する方の割合が最も多く、ローンの返済に困る夫婦が多いのが実態です。
世帯年収で組むと、より高額なローンも借りやすくなりますが、万が一の際のリスクが高いため、おすすめはできません。離婚以外でも妊娠や出産、育児などで仕事への復帰が難しく、世帯年収が減ってしまうケースはいくらでもあります。
そのため、どちらか一方を主たる返済者として、個人年収でも確実に返済できるプランで、住宅ローンを組むほうが賢明でしょう。
繰り上げ返済ができずに退職後まで返済
最初から繰り上げ返済をプランに組み込み、完済の年齢を設定していると、実際にはその通りにいかずに、想定していたタイミングで払い終えられないこともあります。
繰り上げ返済は、あくまで余裕ができた場合に行うもので、最初から計画に組み込むものではありません。そのため、ローン計画は繰り上げ返済は一切考慮せずに、完済年齢を決めることをおすすめします。
団体信用生命保険に未加入で返済が困難
一部の住宅ローンでは、団体信用生命保険に加入しなくても、ローンを組める場合があります。生命保険の加入が不要なら、保険料がかからないため金銭的な負担は減ります。ただし、万が一主たる返済者が死亡した場合に、ローンの残債が重たくのしかかりやすいため、この点には注意しなければなりません。
万が一のことを考えると、生命保険への加入は必須でなくても、何らかの保険には加入しておき、死亡リスクには備えておいたほうがよいでしょう。
最悪の場合返済できなくなる
実際に計画通りにローンが返済できるとは限らず、病気や失業、会社の倒産、災害による甚大な被害、家族の増加などによって、当初のプランから大きく外れることは多いです。最悪の場合は返済ができなくなり、抵当権を設定した住居を手放さなければなりません。
抵当権を行使されて競売にかけられると、安い金額でしか売れなくなるため、返済が厳しくなった場合は自ら売却して、少しでも高値で手放すことを考えましょう。住み替えに伴い、ローンを組み替えることもできるため、返済が難しい場合は、住み替えを選択肢のひとつに入れておくことがおすすめです。
住み替えで住宅ローンを検討している場合は一括査定サイトがおすすめ
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住宅ローン4,000万円の借り入れは慎重に返済計画を練ってから
4,000万円という高額な住宅ローンを組むなら、返済プランを綿密に考えることが大切です。
仮に年収が高くても、予期せぬ事態が起きて返済が滞ることもあるため、万が一の場合の対応策も考える必要があります。計画は綿密に練り、あらゆるリスクを想定して、無理のない返済プランを考えましょう。