不要になった不動産を売りたいと考える人は多いものの、方法が分からず困っている人は少なくありません。不動産売却は何度も行うものではないため、戸惑う人がいても不思議ではないでしょう。
上手に売却するためには、売るまでの手順やポイントを知ることが大切です。不動産売却についての知識を深めて、スムーズに取引を完了させましょう。
まずは不動産売却の流れを把握しよう
スムーズに不動産を売りたいなら、売却の流れを知ることが大切です。不動産売却のステップは、大きく次の7つが挙げられます。
- 情報収集
- 査定
- 媒介契約
- 売却活動
- 売買契約
- 受領 / 引き渡し
最初に売りたい不動産の情報として、主に売却価格の相場を調べますが、ここまでで1~4週間程度かかることが多いです。次に不動産会社と媒介契約を結び、本格的に売却活動を実施します。その後、購入希望者と契約を結べるまで売却活動を継続します。
売り出しの条件やタイミングによっても異なりますが、大体1~3カ月程度かかるでしょう。契約後は手付金を受け取り、契約書で定めた日付けに引き渡しをして、残金の決済を行います。これに1~2カ月程度はかかるため、不動産売却はスムーズに進んで3カ月程度、長引くと半年以上になります。それぞれの流れについて詳細に理解するために、まずは情報収集の部分から見ていきましょう。
不動産の相場価格の調べ方
売却活動に臨む前に、売りたい不動産がどれくらいで売れるのか、相場価格を把握して必要があります。相場価格を調べる方法は、土地と建物で異なります。該当する不動産の種類から、それぞれの相場価格の調べ方を知っておきましょう。
【土地編】相場の調べ方
まずは、土地の相場価格を調べる方法を見ていきます。土地の価格を調べる方法は、次の3つが挙げられます。
- 過去の取引事例を調べる
- 売り出し中の土地と比較する
- 路線価や公示価格を元に調べる
それぞれの方法を駆使して、平均的にいくらかを算出するとよいでしょう。
過去の取引事例を調べる
過去に取引された土地の事例から、ある程度の相場は調べられます。自分が売りたい土地と似たような取引事例を探し、成約価格を参考にすることで相場感覚はつかめるでしょう。ただし、過去の取引事例を参考にする際は、当時の物価や時代背景、該当する土地の所在地や形状、性質なども考慮しなければなりません。
そのため、完璧に同じ土地はひとつもなく、単に面積が同じというだけで、同じ価格で売れるとは限らないことは覚えておきましょう。取引事例を調べるには、不動産会社が公表している取引実績を参考にするか、国土交通省が運営している「土地総合情報システム」で調べることがおすすめです。
参考:土地総合情報システム
売り出し中の土地と比較する
土地の価格を知る方法として、現在売り出されている土地の提示条件を確認することもおすすめで、自分が持っている土地と性質が似ていれば、より参考になるでしょう。売り出し中の土地は、不動産会社で情報を確認したり、ネットからでも不動産購入者向けのサイトで調べられたりします。
ただし、売り出し中の土地の売却価格は、あくまで売主が自由に設定しているものであり、その土地の実際的な価値を示すものではありません。実際の価値よりも高いか低い価格設定になっていることも多いため、参考程度に留めておくようにしましょう。
路線価や公示価格を元に調べる
公式に発表されている路線価や公示価格を参考にして、相場価格を算出する方法もあります。路線価とは主要な道路に面する土地の1m²あたりの価値を定めたもので、国税庁が税基準のために発表しています。
公示価格は国土交通省が定めた基準で、不動産売買の指標として発表されており、それぞれ信頼度は高いです。路線価は「路線価図」で、公示価格は「標準地・基準地検索システム」でそれぞれ調べられます。これらの値から相場価格を調べるためには、次の計算式を用いましょう。
路線価÷0.8×1.1=相場価格
公示価格×1.1=相場価格
路線価は主要な道路にしか設定されていないため、定められていない場合は公示価格を参考にすることがおすすめです。
参考:標準地・基準地検索システム
参考:路線価図
【建物編】相場の調べ方
次に、建物の価格相場の調べ方を確認していきましょう。
- 売り出し中の物件と比較する
- 実際に取引された価格を調べる
建物の価格相場は、これら2つの方法で確認できます。
売り出し中の物件と比較する
土地と同じで、現在売り出されている物件と比較することで、相場価格はチェックできます。購入者向けのポータルサイトで、自宅と同じ条件を設定して検索すると、似た物件の売却条件をチェックしやすいでしょう。
ただし、売り出し価格はあくまで参考であるため、個人で自由に設定できる金額であることは忘れてはなりません。
実際に取引された価格を調べる
成約価格で調べるなら、「REINS Market Information」で検索をかけることがおすすめです。このサイトでは過去の取引データを確認でき、実際にいくらで売れたかを調べられます。地域や各種条件を入力することで絞り込みができ、売却予定の物件と似た情報も見つけやすいでしょう。
自分で相場価格を調べ終わった後は一括査定サイトを利用しよう
相場価格を調べたら一括査定サイトを利用して、不動産会社が提示する金額を確認しましょう。事前に相場を調べておくことで、不動産会社が提示する金額が妥当かどうかの判断ができ、かつ一括査定サイトなら比較情報が多いため、判断しやすいことも魅力です。
すまいステップは最大4社の査定結果が比較できるため、よりスムーズに相場価格をチェックできるでしょう。登録も1分程度と簡単で、無料で利用できる点も嬉しいポイントです。
参考:すまいステップ
不動産売却にかかる費用
不動産を売却する際には、次の費用がかかります。
- 住宅ローン返済にかかる費用
- 仲介手数料
- 売却にかかる税金
- 抵当権抹消にかかる費用
- 他の諸費用
かかる費用について理解し、さらに費用削減の方法も知っておきましょう。
住宅ローン返済にかかる費用
現在の住まいを住宅ローンを組んで購入し、支払いが残っている場合は売却前に完済が必要です。一括返済する際には残債に加えて、数万円から10万円程度の手数料がかかることがあります。ただし、住み替えに伴いローンを組み替えるなら、新居のローンに統一されるため、まとまった出費は避けられます。
不動産会社に支払う仲介手数料
不動産会社に仲介を依頼して売却する場合は、成功報酬として仲介手数料を支払わなければなりません。仲介手数料の上限は法律で決められており、段階的に計算方法が違いますが、400万円以上の取引は全て次の式で計算できます。
仲介手数料の上限=売却価格×(3%+60,000円)+消費税
ただし、算出できるのはあくまで上限で、不動産会社によっては上限以下で請求することもあります。下限についての定めはなく、不動産会社は上限の範囲内で自由に仲介手数料を定めることが可能です。
売却にかかる税金
売却の際には税金も発生し、次の2つが課税対象です。
- 印紙税
- 譲渡所得税
印紙税は取引に必須ですが、譲渡所得税は状況次第では課税されないこともあります。
売買契約書にかかる印紙税
印紙税は、売買契約書に貼り付ける収入印紙の代金で、売却価格に応じて次のように税額が異なります。
契約金額 | 本則税率 | 軽減税率 |
10万円を超え50万円以下 | 400円 | 200円 |
50万円を超え100万円以下 | 1,000円 | 500円 |
100万円を超え500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
500万円を超え1,000万円以下 | 10,000円 | 5,000円 |
1,000万円を超え5,000万円以下 | 20,000円 | 10,000円 |
5,000万円を超え1億円以下 | 60,000円 | 30,000円 |
1億円を超え5億円以下 | 10万円 | 60,000円 |
5億円を超え10億円以下 | 20万円 | 16万円 |
10億円を超え50億円以下 | 40万円 | 32万円 |
50億円を超えるもの | 60万円 | 48万円 |
なお、2020年3月31日までは本則税率ではなく軽減税率が適用されるため、印紙税の負担は少し減ります。
利益があれば譲渡所得税がかかる
売却によって利益が出ると、利益分に対して所得税と住民税が異なります。課税対象となるのは、次の計算式でプラスが出た場合です。
譲渡所得=売却価格-取得費-売却費用-特例控除
取得費は、不動産の購入費用やリフォームなどの代金を指し、売却費用は売却にかかった各種費用です。特例控除は、状況に応じて適用できるかどうかが異なります。
譲渡所得税の税率は不動産の所有期間で異なり、売却する年の1月1日で5年以下だと短期譲渡所得に、5年を超えていると長期譲渡所得に該当します。
区分 | 所得税 | 特別復興所得税 | 住民税 | 合計 |
短期譲渡所得 | 30% | 2.1% | 9% | 41.2% |
長期譲渡所得 | 15% | 2.1% | 5% | 22.1% |
特別復興所得税はどちらも変わりませんが、所得税と住民税は区分によって大きく異なる点には注意しましょう。
抵当権抹消にかかる費用
抵当権が設定されている場合は、これを抹消するための費用がかかります。抵当権の抹消は不動産の数×1,000円で行えますが、売却時の所有移転登記では登録免許税がかかります。
また、これらの手続きは司法書士に依頼することが一般的で、依頼先によって異なるものの30,000~50,000円程度の代行手数料がかかると考えましょう。
他の諸費用
売却にかかるその他費用としては、次のものが挙げられます。
- 引越し費用
- 売却活動にかける実費
新居への引越し費用は必須で、15~30万円程度かかることが多いでしょう。売却活動における実費は、活動内容によって異なります。例えば、宣伝広告を強化してもらう場合は別途費用が請求され、物件の魅力を高めるために行うハウスクリーニングやリフォームは、内容によって金額は変動します。
ケースバイケースで金額は違いますが、実費は30万円程度と想定しておくとよいでしょう。もちろん活動内容次第では、ほとんど実費精算なしで終えられることもあります。
不動産売却にかかる費用を抑える方法
売却費用を抑えるためには、ハウスクリーニングやリフォームはせずに売り出したり、仲介手数料が安い不動産会社に依頼したりすることがおすすめです。税金部分はどうしても費用がかかるため仕方ありませんが、特例控除や積極的な費用の計上によって、譲渡所得税については非課税で済ませられることもあります。
売却費用は活動内容で大きく変動するため、不動産会社に「できるだけ費用を抑えて売却したい」と伝えておくとよいでしょう。
不動産売却に必要な書類
スムーズに不動産を売却するには、必要書類を集めておくことが大切です。
種類 | 書類の説明 | 取得場所 | 取得にかかる費用 |
身分証明書 | 免許証など | – | – |
実印 | 購入時に使用したもの | – | – |
印鑑登録証明書 | 発行から3カ月以内のもの | 市区町村役場など | 数百円 |
住民票 | ・発行から3カ月以内のもの ・登記情報と現住所が違う場合に必死 | 市区町村役場など | 数百円 |
登記済権利書または登記識別情報 | 物件の登記情報を記したもの | ・購入時に取得 ・再取得は弁護士に依頼する | 再発行時は数十万円程度 |
固定資産税納付書・固定資産税納税通知書 | 固定資産税額を知らせる書類 | 毎年送付される | – |
土地測量図面・境界確認書(一戸建てや土地の売却に必要) | 該当する土地の測量をした図面 | ・境界線が未確認の場合に業者に依頼 ・書類作成までに3カ月程度かかる | ・10万円~が多い ・土地の広さや形状によって違う |
売買契約書 | 該当不動産の売買について定めた契約書 | 不動産会社が作成 | 取引価格に応じた印紙税 |
建築確認済証・検査済証(一戸建ての売却に必要) | 設計段階で建築基準を満たしているか確認する書類 | ・購入時に取得 ・紛失時は市区町村役場の建築家で再発行 | ・建築計画概要書・台帳記載事項照明書ともに数百円 |
物件購入時の重要事項説明書 | 不動産についての重要事項を記載した書類 | 購入時に取得 | – |
物件の図面・設備の仕様書 | 不動産の間取りや設備の使用を記したもの | 購入時に取得 | – |
マンションの管理規約 | マンションの管理規約を定めた書類 | 購入時に取得 | – |
マンション維持費関連書類 | マンションの維持費について記載した各種書類 | 購入時に取得 | – |
耐震診断報告書 | 耐震基準についての診断書類 | 業者に依頼 | 5~10万円程度が多い |
アスベスト使用調査報告書(新耐震基準が導入される前の物件を売却する場合) | アスベストの使用状況について調査した書類 | 業者に依頼 | 20,000~30,000円以上 |
売りたい物件が一戸建てかマンションかによって、必要な書類は異なります。
売主に関する書類
売主についての書類は、次のものが必要です。
- 身分証明書
- 実印
- 印鑑登録証明書
- 住民票
住民票は必須ではなく、登記上の住所と現住所が異なる場合のみ用意します。また、共有名義の物件を売却する際には、名義者全員がこれらの書類を用意しなければなりません。
権利に関する書類
権利関係の書類は、次のものが必要です。
- 登記済権利書
- 登記識別情報
これらは物件購入時に取得している書類のため、保管しているものを出しておきましょう。もし紛失してしまった場合は、弁護士に依頼して再発行してもらわなければなりません。
物件に関する書類
物件情報についての書類は多く、一戸建てとマンションで必要なものが異なります。共通して必要なのは、次の通りです。
- 固定資産税納付書・固定資産税納税通知書
- 売買契約書
- 物件の図面・設備の仕様書
- 物件購入時の重要事項説明書
- 耐震診断報告書
- アスベスト使用調査報告書(新耐震基準が導入される前の物件を売却する場合)
一戸建ての物件、あるいは土地の売却で必要な書類は次の通りです。
- 土地測量図面・境界確認書
- 建築確認済証・検査済証
マンションの場合は、次の書類を用意しておきましょう。
- マンションの管理規約
- マンション維持費関連書類
他にも、物件購入時のパンフレットなどがあれば、参考資料として提示できます。
信頼できる不動産会社を見つける場合は一括査定サイトがおすすめ
不動産の売却を成功させたいなら、信頼できる不動産会社を見つけることが大切です。不動産会社の選定には一括査定サイトの利用がおすすめで、査定結果を比較して好条件の業者を選ぶことで、信頼できるパートナーを得やすいでしょう。
同じ不動産の売却でも、不動産会社が違うだけで、売却のスムーズさや条件が違ってくることは少なくありません。不動産会社によって得意分野も異なるため、一括査定サイトで上手に絞り込みを行い、売却する不動産の種類に適する得意分野を持った業者を見つけましょう。
参考:すまいステップ
まず不動産売却の基本知識を理解して準備を進めよう
手持ちの不動産を好条件で売りたいなら、不動産売却についての知識を深めることが大切です。売却の流れや各種ポイントを知ることで、よりスムーズな取引ができて好条件での売却も期待しやすくなります。必要な知識を蓄えて念入りな準備を行い、不動産売却の成功を目指しましょう。
不動産売却の費用について気になる方は「不動産売却でかかる費用は?費用の一覧と節約する方法を解説!」も参考になります。