分譲マンションや戸建てにお住まいの方は、売却物件を募集する不動産会社のチラシを目にする機会が多いでしょう。
なかには、
といった、ドキっとするようなキャッチコピーのチラシもあります。
しかし、このような魅力的なチラシの内容は、残念ながらほとんどがウソです。
この記事では、信ぴょう性の低い不動産の売却募集のチラシについて、紹介します。
また、このようなチラシ・ビラを不動産会社が送ってくる理由についても、解説します。
不動産売却の注意点を流れに沿って解説!売却時のトラブルを防ごう
不動産売却募集のチラシは信じられる?注意すべき内容を解説
売却物件を募集するチラシの中でも、「買いたい顧客がいるので売却してほしい」という趣旨のチラシには、注意が必要です。
チラシを作成した不動産会社が売り物件を確保するためにでっち上げているだけで、実際にはそのような客は存在しないことがほとんどです。
この章では、具体的に注意すべきキャッチコピーを紹介・解説します。
「当マンション/地域限定で探しているお客様がいます!」
既に購入希望者の顧客がいて、物件を募集しているというキャッチコピーはよくある内容ですが、この「お客様」は、架空のお客様であることがほとんどです。
実際に売却を申し込むと、「チラシのお客様は他の物件の購入を決めてしまったので、他の購入希望者を探しましょう」という流れになります。
「チラシを投函しているマンションや地域ならよく売れるだろう」という不動産会社の思惑はあるかもしれません。
しかし、売り手が「既に買い手がいるならすぐに売却できるだろう」と期待して売却を依頼すると、アテが外れる可能性が高いです。
「予算○○万円で購入したいお客様がいます!」
高額な予算で物件を購入したい顧客がいると謳ったキャッチコピーも、嘘である可能性が高いです。
この場合も、問い合わせると「既に他で成約してしまった」という流れになります。
ご自身がお家を購入しようと思った時のことを思い浮かべてみてください。
立地や築年数の条件と予算を天秤にかけて、物件を1つ1つ検討することはあっても、この物件を絶対に買うために相場よりも予算を積む……ということは、なかなかしないのではないでしょうか。
特に、中古マションの購入検討者は、価格に対してシビアな目線を持っていることが多いです。
「他社よりも高く査定します!」
仲介で売却する場合、不動産会社が高い査定金額を出したとしても、その金額で売れるという保証は全くありません。
不動産売却には、「仲介」と「買取」の2つの方法があります。
買取の場合は、「不動産会社の査定金額=売却価格」です。
しかし、そもそも買取は仲介で売却するよりも2~3割ほど売却価格が安くなります。
仲介は、不動産会社が購入希望者を斡旋して売却する方法です。
仲介の場合の「査定金額」とは、あくまで「売却が見込める予想金額」です。
そして、実際にはその金額で買い手がつかなかった場合でも、特に罰則はありません。
そのため、不動産会社はその気になれば、いくらでも査定金額をつり上げられるのです。
なぜ不動産会社はチラシで売却物件を募集するのか
どうして不動産会社は、たくさんのチラシを撒き、時に架空のお客さんをでっち上げてまで不動産の売却を募集しているのでしょうか。
理由には、以下の3つのような事柄が挙げられます。
不動産会社が売却物件を募集する理由
1つずつ詳しく解説していきます。
購入よりも売却の方が業務の効率がいいから
理由の1つ目は、不動産会社にとっては、買主側について希望に合う物件を探すよりも、売主側につく方が「割がいい」からです。
不動産会社は、不動産の売買価格の割合に応じて「仲介手数料」を貰い、収益を得ます。
両手仲介が狙いやすくなるから
両手仲介を狙いやすくするためにも、不動産会社にとって「売り物件」は重要です。
「両手仲介」とは、1つの物件において、売主と買主のどちらも自社の顧客で売買契約を結ぶ行為です。

売却物件は集まり過ぎても在庫リスクがないから
売り物件は、不動産の仲介取引における言わば「商品」ですが、一般的な商取引とは異なる点があります。
それは、不動産会社はどれだけ売却物件を集めても、物理的な在庫を抱えないという点です。
また仲介による不動産取引では、不動産会社は売主から「買主を探すこと」を委任されているだけで、お金を支払って物件を仕入れている訳ではありません。
つまり、物件募集の広告にかかる費用を除けば、商品の原価もありません。
買主に紹介できる物件は多ければ多いほど契約を取れる可能性が上がる一方で、売却物件を抱えておくリスクがほとんどないため、売却物件の募集は際限なく行われるのです。
悪質な不動産業者に連絡してしまった場合のリスク
チラシの投函自体は、一般的で古典的な営業集手法です。
ただし大げさなキャッチコピーのチラシを送ってくる不動産会社の中には、悪質な業者もいます。
悪質な不動産会社に依頼してしまうと、たとえ不動産を売却することができても、不満の残る結果になる恐れがあります。
悪質な業者に依頼するリスク
悪徳業者に依頼するリスクについて、1つずつ見ていきましょう。
「値こなし」されて希望価格で売却できない
値こなしとは、売れもしない高い価格を提示して、売却仲介の契約をさせる手法です。
特に不動産売却についての知識に疎いまま、チラシの連絡先に問い合わせをすると、高い査定金額につられて契約してしまうことが起きやすいです。
しかし、相場よりも高すぎる価格の不動産は、当然買い手がつかず、売れ残ります。
値こなしをする不動産会社は、頃合いを見て、売れ残っている不動産を大幅に値下げさせます。
『売却価格を下げたら不動産会社の収益も減ってしまうのでは…?』と思われるかもしれませんが、次に解説する「囲い込み」と併せて値こなしをすることで、不動産会社は自身の収益を確保します。
「囲い込み」で売却期間が長引く
囲い込みとは、両手仲介を成立させるために、他の不動産会社に正しい売買情報を共有しなかったり、他社を通じて不動産を購入しようとしている人の仲介を断る行為です。
囲い込みは不動産会社にとってはメリットがありますが、売主にとっては買主発見の機会が減り、売却が長期化するデメリットがあります。
また、不動産の仲介は本来、広く情報を公開して買主を募ることで、より高値での売却を目指せる売却方法です。
しかし、不動産会社が囲い込みをすると、購入希望者が競り合いにくくなるため、売却価格も低くなりやすいです。
著しく安い価格で「買取」される
最悪のケースでは、値こなしや囲い込みの末に、『この物件は仲介では売却できない』として、著しく値下げされた価格で「買取」を迫られます。
買取自体は、急いで不動産を売りたい人や、売れにくい事情のある物件を売りたい人が利用する、よくある売却方法です。
しかし中には、そもそも「売れそうな物件を安く買取する」ことを目的に、値こなしや囲い込みをする悪徳業者もいます。
まず悪徳業者は、著しく値下げをさせた価格で物件を買取再販業者に売却させます。
そして、買取再販業者がリフォームなどをして手を入れた物件の仲介を、再度請け負います。
悪質な手法ですが、売却期間が長引き、値引きを重ねるほど売主は「このままずっと売れないのでは」と不安になりやすく、提案に応じてしまうケースがあります。
不動産売却の募集のチラシはどうして家に届くのか
それでは、不動産会社が売却物件を募集するチラシは、なぜあなたのポストに届くのでしょうか。
理由は、以下の通りです。
売却募集チラシがポストに届く理由
無作為に投函しているから
チラシが届く理由の1つ目は、不動産会社が無作為に投函しているからです。
マンションや地域にターゲットを絞って、無差別にポストに投函しているため、該当するマンションや地域の家に住んでいるあなたのポストにも、チラシが届くのです。
登記簿で調べているから
チラシが届く理由の2つ目は、不動産会社が登記簿で不動産の情報を調べているからです。
ポストに届くチラシの中には「○○マンションの○○号室にお住まいのあなた」と書かれていたり、「○○様」と名前まで書かれたチラシもあるでしょう。
『住所氏名がどこかから流出しているかもしれない…』と心配になる方もいるかもしれません。
しかし、管理会社から名簿が流出しているという訳ではありませんので、ご安心ください。
不動産の登記簿は、法務局に申請すると、誰でも閲覧できます。
登記簿には「誰がいつ購入したのか」や、「所有している人がどこに住んでいるか」などの情報が載っています。
不動産会社は、こうした情報をチェックして「そろそろマンションの売却を考えているかもしれない人」に向けて、チラシを作成しています。
不動産売却のチラシが迷惑な場合の対処法
投函されるチラシは、不要ならすぐに捨ててしまって構いません。
それでも、次々に投函されるチラシが迷惑でなんとかしたいという場合は、以下の方法で対処しましょう。
「チラシお断り」をポストに貼る
チラシが投函されるポストに、「チラシの無断投函お断り」といったステッカーを貼り付けるのも、ある程度効果があります。
トラブルを避けたいポスティング会社のアルバイトなどからは、投函を避けてもらいやすいです。
ホームセンターやインターネットのショッピングサイトで、様々な文言やサイズのステッカーが販売されています。
不動産会社に連絡して止めてもらう
それでも売却募集チラシが投函されて迷惑な場合は、配布元の不動産会社に連絡して止めてもらいましょう。
周辺地域の評判を落としたくない不動産会社は、クレームに発展しないよう努めています。
そのため、ほとんどの不動産会社はチラシ配布を止めてくれます。
行政機関の相談窓口に連絡する
直接連絡してもチラシの投函をやめてもらえない場合は、行政機関の不動産取引業者に関する相談窓口にて相談しましょう。
宅地建物取引業法では、以下のように、不動産会社が繰り返し勧誘する行為を禁止しています。
相手方が契約を締結しない旨の意思(勧誘を引き続き受けることを希望しない旨の意思を含む。)を表示したにもかかわらず、勧誘を継続することを禁止
チラシの投函をやめるように「意思を示した」にもかかわらず、ポスティングが止まらないようであれば、宅建法を根拠に、行政による指導・処分を求められます。
相談窓口は、相手の不動産会社が、宅地建物取引業免許を国土交通大臣に発行してもらっているか、都道府県知事に発行してもらっているかによって異なります。
不動産を売却したい時はチラシではなく自分から依頼先を探すのがおすすめ
本記事では、不動産会社が「あなたのマンションを○○万円で買いたい人がいます」「あなたの家を売ってください」というチラシを送ってくる理由について解説してきました。
中には自社の利益のために、連絡してきた売主にとって結果的に不利な条件で売却をさせる悪徳業者もいるため、注意が必要です。
もしも本当に家やマンションを売りたい場合は、自分から情報を集めて、不動産会社を探すのがおすすめです。
不動産売却の募集チラシが迷惑な場合は、ポストに「お断り」の旨を貼り付けたり、チラシの配布元の不動産会社に投函をやめるように連絡を取るとよいでしょう。
連絡した不動産会社からのチラシの投函が続く場合は、各行政機関の窓口に相談しましょう。
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