ホームステージングは「バーブ・シュワルツ」というアメリカの不動産屋が提唱した販売手法で、近年日本でも注目されています。ホームステージングを行うことで、住宅の売却がスムーズかつ好条件で行えることも多く、不動産売却を考えている人は注目したい手法です。
ホームステージングとはどのようなものなのか、細部まで理解を深めて、上手に活用しながら自宅の売却に役立てましょう。
ホームステージングとはインテリアで買い手に印象を高めること
ホームステージングとは、簡単にいえば売却物件のインテリアコーディネートを行い、買い手に好印象を与える販売手法です。ホームステージングの利用方法はいくつかあり、内覧に向けてインテリアコーディネートを行うことはもちろん、物件写真を取る際に用いられることもあります。
空室の場合は、物件写真や内覧では生活のイメージがしづらいですが、ホームステージングを行うことで理想的な生活空間を演出し、生活するイメージを買い手に与えやすいです。ホームステージングは、ホームステージャーという資格を持ったプロが演出を行うため、買い手に与えたいイメージを模索しながら、その物件に適したインテリアを選んでコーディネートしてもらえます。
家具や小物はレンタルできる
空室で利用する場合は、家具や小物のレンタルが可能で、ホームステージング用に購入する必要はありません。不動産売却は長引くことも多いため、数カ月単位でレンタルできるサービスも増えています。
また、レンタル業者は複数ありますが、写真撮影のみ可能ということも多いため注意しなければなりません。
居住中でもホームステージングは可能
ホームステージングは空室時のみ利用できるサービスではなく、居住中の物件でも行うことができます。居住中の場合は、ホームステージャーのアドバイスを元に、自宅を片付けたり新たなインテリアを配置したりして、コーディネートを行います。
物件写真の撮影や内覧に向けて、家具の一時預かりやレンタルなどのサービスを提供しているところも多く、住んでいる状態のまま物件をより魅力的に見せることが可能です。
ホームステージングをする4つのメリット
部屋の片づけやインテリアコーディネートをしたり、こだわって物件写真を撮影したりすることは、面倒だと感じる人も多いでしょう。しかし、手間をかけてホームステージングをすることで、次の4つのメリットが得られます。
- 買い手の興味を引きやすい
- 内覧時の第一印象を変える
- 売却期間の短縮につながる
- 結果的にコスト削減につなつながることもある
4つのメリットから、ホームステージングの魅力的なポイントを知っていきましょう。
買い手の興味を引きやすい
ホームステージングをすることで、魅力的な物件写真を撮影することができ、買い手の興味を引きやすくなります。買い手が物件を選ぶ際には、価格や築年数などの情報も確認しますが、写真を見て興味が持てるかどうかを判断することも多いです。
つまり、物件写真の時点で興味を持たれなければ内覧にすら至らず、別の物件に目移りされてしまいかねません。同じような条件の物件が他にある場合は、物件写真の印象で内覧先を決めることもあります。そのため、ホームステージングをしてこだわった写真を提供することで、他の物件との差別化を図りやすいでしょう。
まずは買い手の目を引き、内覧までこぎつけることが重要であるため、興味を持ってもらう第一段階として、ホームステージングで撮影した物件写真は、高い集客効果を発揮します。
内覧時の第一印象を変える
内覧に備えてホームステージングをする場合は、内覧時の第一印象をイメージ通りに変えることができます。どのような生活空間を演出するのかによって、購入希望者に与える印象は変わるため、その物件に合ったコーディネートをすることで、より魅力的な第一印象を与えられるでしょう。
内覧時の第一印象は購入の意思に大きく影響するため、ここでいかに好印象を獲得できるかが重要です。ホームステージングをしていないと、生活感が出過ぎて魅力的に思ってもらえないかもしれません。また、空室の場合は家具がなくがらんとしていて、生活のイメージがつきづらかったりもします。
ホームステージングをすると、いわばモデルハウスを提供している状態で、好印象を与えて生活のイメージも持ってもらいやすいため、好意的な評価を獲得しやすいでしょう。
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売却期間の短縮につながる
物件の特徴や、今後の生活について明確なイメージを与えられるホームステージングは、売却期間の短縮につながることも少なくありません。物件を購入する際には、そこでの生活のイメージが膨らむかどうかを考慮する人が多く、これを想像するのに時間がかかって意思決定が遅れることも多いです。
しかし、ホームステージングをした物件なら、理想的な生活イメージを印象付けることができるため、実際に住む際のイメージも湧きやすく、早期の意思決定につながることが多いといえます。実際に2016年から2017年に行われた「第1回ホームステージング実態調査」では、ホームステージングの有無による売却期間の違いが証明されています。
ホームステージングを行わずに売却した物件は、売れるまでに平均約120日かかったのに対して、ホームステージングを行った物件は平均約40日と、3倍もの違いが出ています。明確な生活イメージの提供が、買い手の購入決定を後押ししやすいことは確かで、早期に売却を目指したい人には特におすすめです。
結果的にコスト削減につながることもある
プロに依頼してホームステージングを行う場合は、アドバイス料や家具のレンタル代金など、複数のコストがかかって、通常の売却よりもコストは増大します。しかし、ホームステージングを行うことで物件の魅力を高めることができ、強気な値段設定でも売れやすくなるため、費用を差し引いても結局コスト削減ができることも少なくありません。
ホームステージングとは、いわば物件の魅力を高めるための投資であり、これによって売却価格が上がる、あるいは希望価格より値下げせずに売れるようになることは多いでしょう。ホームステージングなしで売却すると、強気の値段設定では見向きもしてもらえなかったり、大幅な値引きに応じなければ購入してもらえなかったりすることもあります。
金銭的なコストはもちろん、早期に売却しやすいという時間的コストの削減もあるため、ホームステージングを行うことで、結果的に各種コスト削減につながりやすいことは覚えておきましょう。
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ホームステージングの費用相場
ホームステージングを実施するためには費用がかかりますが、いくらかかるかはケースによって異なります。
ケース | 費用相場 |
居住しながらの場合 | 約5万円〜 |
空き家の場合 | 約15~30万円(3カ月の家具レンタル) |
ケースバイケースで費用は変動するため、ある程度の相場を頭に入れて必要なコストを把握しておきましょう。
居住しながらの場合
現在、居住している物件のホームステージングを行う場合は、ホームステージジャーによるアドバイスが基本になります。アドバイスに基づき、自分でコーディネートを行うことになるため、費用は50,000円程度とそれほど高くありません。
また、コーディネートを依頼する場合は費用が増大することもあり、家具のレンタルなども含めると10万~15万円程度かかることもあります。プロに依頼する部分が増えるほど費用は上がり、アドバイスだけで自分で大部分を行えるなら、コストはカットできると考えましょう。
空き家の場合
空き家や空室の場合は、家具を丸ごとレンタルすることになるため、費用は15万~30万円程度と高額になることが多いです。ただし、費用は3カ月レンタルなど、数カ月単位で区切られていることが多いため、1回ごとに支払いが必要なわけではありません。
また、レンタルする家具の数やグレードによって費用は異なり、工夫次第ではコストカットも可能です。ただし、グレードの高いものやレンタルする数が増えると、どうしてもコストは上がり、特に水回りの演出は費用が高くなりやすいため注意しましょう。
ホームステージングをする3つの選択肢
売却物件をホームステージングする選択肢としては、次の3つが挙げられます。
- ホームステージング専門の会社に依頼する
- 一括査定サイトを利用してホームステージングを扱っている不動産会社を見つける
- 自分でコーディネートする
自分に合った方法を用いて、上手にホームステージングを活用しましょう。
ホームステージング専門の会社
ホームステージングは近年日本でも注目されており、サービス提供する会社は増えています。ホームステージングを行う代表的な会社としては、次の3つが挙げられます。
- ホームステージングジャパン
- サマンサホームステージング
- ニトリ
それぞれ特徴が異なるため、自宅の雰囲気に合っているか、費用などの利用条件が合致しているかで比較して選びましょう。
ホームステージングジャパン
ヨーロッパのインテリアブランドである「La Forma」を取り扱う「ホームステージングジャパン」は、西洋系の生活空間を演出したい人におすすめです。サービスプランは、ライトとスタンダード、モデルルームの3つがあります。
ライトとスタンダードプランなら、2万~30万円程度で3カ月間家具や小物のレンタルができ、スタンダードプランなら写真撮影も料金に含まれます。無料相談も受け付けているため、まずは相談から始めてみてもよいでしょう。
サマンサホームステージング
「サマンサホームステージング」は、もともと引っ越しの梱包や開梱を行う会社で、片付けやコーディネートのノウハウが高いです。ホームステージングのサービスでは、空室は68,000円程度から、居住中で50,000円程度からと安く、利用しやすい点が魅力でしょう。
また、プロカメラマンによる撮影も別料金で依頼でき、通常のスチール撮影からVRやCG技術を使った3D撮影も可能です。自宅の片付けからコーディネート、家具の撤去などまで一貫して任せられる点も、魅力のひとつといえます。
ニトリのホームステージング
住宅用品の販売を行う「ニトリ」は、ホームステージングのサービスも提供しています。ニトリはホームステージングに使用する家具の調達からプランニング、配送まで自社グループで実施するため、低コストで利用できる点が魅力です。
単身世帯で、写真撮影のみのプランなら65,000円で利用でき、安価でホームステージングを試したい人におすすめです。また、販売期間が長期になってレンタル料金が高くつく場合は、家具を購入するという方法もあります。
ニトリなら購入も安価でしやすいため、長期的にレンタルする見込みがあるなら、最初から購入しておくことでコストダウンを図れます。
参考:ニトリ
一括査定サイトを利用してホームステージングを扱っている不動産会社を見つける
ホームステージングは専門に行う会社だけではなく、不動産会社がサービスとして提供していることもあります。そのため、ホームステージングサービスを提供する不動産会社を見つけるために、一括査定サイトを利用するのもひとつの方法です。
一括査定サイトを使うことで、条件に合った不動産会社の選定はもちろん、同時に査定もできるため、より効率的に売却活動を進められます。すまいステップなら一度に最大4社の査定を表示できるため、より多くの選択肢から不動産会社を選びやすいでしょう。また、独自の運営方針に従って厳選された優良企業のみと提携を組んでいるため、信頼して仲介を依頼できる不動産会社のみに査定依頼ができます。
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自分でコーディネートする
できるだけコストをかけたくないなら、自分でコーディネートするのもおすすめです。雑誌やカタログなどを参考にすることでコーディネートは可能で、もともとインテリアに興味がある人なら、楽しみながら行えるでしょう。
また、コーディネート力を上げたいなら、ホームステージャーの資格を取得することもひとつの方法です。2級の資格なら受講だけで取得できるため、スキルアップのために受講してみてもよいでしょう。
ホームステージングで売りたい物件を買いたい物件にしよう
近年、日本でも注目されているホームステージングは、実施することで売却にかかる期間を短縮できたり、結果的にコスト削減につながったりと、メリットは多いです。ホームステージングで物件の魅力を高め、売りたい物件を買い手目線で買いたい物件にし、スムーズな売却を目指しましょう。