日本の国土には、山林や農地を守るために、開発が規制されているエリアがあります。そうした地域は「市街化調整区域」と呼ばれています。
売却や処分を検討している土地が市街化調整区域である場合は、住宅地の土地の場合とは異なるポイントに注意が必要です。
この記事では、市街化調整区域の土地を手放す際の注意点や、売却しやすい土地・しにくい土地について紹介しています。
また売却方法や、売却が難しい場合の土地の活用方法についても紹介しています。
市街化調整区域とは
市街化調整区域とは、都道府県の指定する都市計画区域の中で、行われている3つの区域区分の内の1つです。
- 市街化区域
- 市街化調整区域
- 非線引き区域(区域区分が定められていない都市計画区域)
「市街化区域」は人が住みやすくなるような市街地形成の計画のために、用途地域に基づいて建物が建てられ、都市基盤やインフラの整備が行われています。
一方で、「市街化調整区域」は山林や田畑を保全するために開発が規制されています。都市施設の整備も原則行われません。
都市計画区域を「市街化区域」と「市街化調整区域」に分けることは、「区域区分」や「線引き」と呼ばれています。
(「非線引き区域」は現状はどちらにも指定されていないエリアのことで、両者に比べて規制が緩やかになっています。)
市街化調整区域における建築の制限
市街化調整区域は都市化を抑制する地域であり、建物を建てるには都道府県に開発許可を受ける必要があります。
市街化調整区域における開発許可の基準は、都市計画法第34条に示されています。
既存の住宅の建て替えにも制限があります。
市街化調整区域には家を建てられないの?
域内で農業・林業・漁業を営む人の住居は、開発許可なく建築が可能です。
また以下の場合は、建築許可を得て行うことが可能です。
- 既に住んでいる農林漁業の従事者(本家)の家族(分家)が自宅を建てる
- 住宅兼用店舗(地域住民に有益と認められる場合)
- 既存住宅の建て替え
既存住宅の建て替えについては、線引き前に建てられた住宅を、「同規模(床面積が以前の住宅の1.5倍以下)」「同用途」で建て替えする場合には許可が不要な自治体が多いです。
その他の場合には、都市計画法第34条に基づいて、個別に自治体に審査してもらい、開発許可を得る必要があります。
市街化調整区域の土地評価
市街地調整区域の土地は、近隣の市街化区域の土地と比べると、固定資産税評価で通常2割~3割ほど評価が低くなっています。
市街化調整区域内ではインフラの整備も積極的に推進されていないため、住居を建てる時には、水道や電気の引き込み工事が必要になることがあります。ほかにもスーパーやコンビニといった暮らしに便利な商業施設がない・遠いという環境のため、買い手からの人気の低さから、価格が安くなってしまうのです。
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市街化調整区域を手放す前に確認したい注意点
市街化調整区域内の土地は、場合によって利用が大きく制限されるため、売却のしやすさが異なってきます。手放す前に、「どのような土地」を売却しようとしているのか、確認をしておきましょう。
自治体の区域指定制度を確認する
「区域指定制度」とは、市街化調整区域であっても、各市町村が指定した区域であれば、「誰でも」住宅や店舗・事業所の建築の許可を得ることができるという制度です。
手放したい土地が区域指定されているエリアにある場合、比較的土地の利用度が高くなるため、売却がしやすくなります。
まずは自治体のHPなどを確認して、条例によってその土地が区域指定されていないかどうか確認しましょう。
区域指定される条件には、近隣が宅地で50戸以上の集落がある、上下水道が整備されている、公道に接しているなどさまざまなものがあります。そしてこれらの条件は市町村の運用次第で変わります。ここでも地域の実情が反映されることになります。
また都市計画事業や土地区画整理事業など、事業として開発された地域であれば建築行為への許可が不要です。要件が緩和された地域ということになるので、やはり売買には有利に働きます。
土地の地目を確認する
次に土地の地目がどうなっているかを確認しましょう。土地の地目は、田・畑・宅地・山林・雑種地など23種類に区分されています。
農地なら要注意
地目が農地になっていたなら、売却に「農業委員会」の審査と許可が必要です。また実態のある農業従事者にしか売却することができません。
農地以外の用途で土地を売却したい場合には、「農地転用」をしなくてはなりません。農地転用も農業委員会に申請を行い、都道府県知事の許可を得る必要があります。
線引き前の建物か線引き後の建物か
土地に建物が建っている場合、「線引き前からある建物」なのか「線引き後に建てられた建物」なのかということを確認しましょう。
確認は、土地登記簿の登記事項証明書や固定資産税課税台帳の写しによって行えます。線引き前の年月日が登記の日付であるかどうかや、線引き前から現在に至るまで「宅地」として課税されているかどうかをチェックしましょう。
その自治体で、線引きがいつ行われたかは、HPなどで確認できます。
(都市計画法が昭和43年に制定されたため、昭和45年前後に線引きが行われているケースが多いです。)
線引き前の建物
線引き前に建てられた建物は、もともとそこにあったわけで、行政の都合で後から市街化調整区域という規制をかけていることになります。そのため売却には許可は必要ありません。
既存宅地制度の廃止に伴い、自治体独自の基準で建て替えに関する基準が設けられています。手放したい土地の都道府県や市区町村の条例などを確認しておきましょう。
建て替え可能な物件は売買取引が行いやすくなりますが、注意点があります。それは線引き後に建て替えを行っていないかどうか、ということです。すでに線引き後に建て替えを行っていた場合、その建物は「線引き後の建物」として取り扱われることになります。
線引き後の建物
線引き後に建てられた建物の場合は、開発許可を受けて建設されています。
これが農家であることを理由に建てている住宅など、使用者制限のある建物である場合、権利を引き継げるのは、許可を得た人の相続人や近親者だけです。新たに購入しようとする買主は申請をして使用者制限の解除ができなければ購入できません。
さらに所有者変更の許可が下りても、建て替えや増改築を行うための申請は買主が購入後に行わなければなりません。建て替えや改築を行えないリスクを買主が負うことになるので、該当する場合は売却しづらくなるでしょう。
売却しやすい物件と売却しづらい物件
この章では、市街化調整区域内でも、売却しやすい物件と、売却しづらい物件について、まとめて紹介しています。
売却しやすい物件とは
市街化調整区域であっても、土地の利用がしやすいと、売却しやすくなります。
開発許可を取って建てられた物件
市街化調整区域には、工場や倉庫などが見受けられることが多いです。開発許可を取って建てられた建物は、同じ用途で同規模の大きさであれば、取得後に建て替えができます。もちろん同じ用途ということは、取得者が同業者であることが対象です。
市街化調整区域内では、新たな開発許可を取ること自体が難しいので、すでに開発許可がとってある建物は相対的に価値が高まります。売買のしやすい物件といえます。
開発許可が受けられる土地
今は更地で果樹園などにしているが、将来的に開発許可が受けられて宅地に地目変更ができる土地であれば、売買がしやすくなります。市街化区域に隣接・近接している地域ほど、開発許可が下りやすくなっています。各市区町村の都市計画課や町づくり推進課で確認すれば、開発許可が受けられる土地かどうかがわかります。
用途地域内にある土地
原則からは外れますが、かつて大規模開発がされた時代には、市街化調整区域内に用途地域に準ずる規制が定められていたことがあります。
その規制の中で建て替えも十分可能ですので、売却がしやすい物件といえます。
売却しづらい物件とは
反対に、特に売却しづらい物件は以下のようになります。
農地
農地のままでは実態のある農家にしか売却することができず、また農地以外の土地にする(農地転用を行う)にも申請をして許可を得なくてはなりません。
国の施策としては、これ以上農家を減らしたくないため、農家をやる気のない人に農地を転売したくないのです。そのため農地法で、農地の売却について規制しています。
農地転用を行う場合は、農地法と都市計画法の両方の規制を受けるため、売買しづらい物件の筆頭といえます。
無許可の建物
市街化調整区域内では、農家の住宅や温室などは許可がなくても建てることができます。その反面、通常の住宅などには行政の許可が必要なのですが、無許可の建物も見受けられることがあります。
市街化調整区域が線引きされた当初は、手続きもあやふやな時期があって、手続き上の混乱に紛れて建ててしまった建物も少なくないのです。このような物件は建て替えすることができないため、市場価値が大きく下がり売却しづらくなってしまいます。
開発許可が受けられない土地
多くの市街化調整区域では開発許可が受けられないことが多く、基本的に市街化調整区域内には建物が建ちません。そうなってくると利用者は資材置き場や駐車場として利用するなどの制限がかかってしまいます。
もともとそのような目的で土地を購入するのならばともかく、住宅を建てることができないのであれば一気に利用価値が下がります。売却できても低い金額が予想され、売却しづらい物件といえます。
市街化調整区域の物件を手放すには
市街化調整区域の物件を売買・活用するには、専門業者への依頼や空き家バンクへの登録、オークション、個人売買の方法があります。またどうしても売却が難しい場合・長引く場合は、賃貸も検討してみましょう。
専門の仲介業者へ依頼する
一般の不動産業者の手数料は、通常売買価格の3%です。市街化調整区域は流通価格が低いため、たとえうまく売却できたとしても不動産業者の利益は少なく、郊外にあることが多い物件の現地調査や顧客の案内などの手間を考えると、経費ばかりがかかり赤字になることすらあり得ます。
そんな中でも市街化調整区域の物件の売買専門の仲介業者がいます。このような業者は市街化調整区域を売買する実績があり、ノウハウにも長けています。売却が難しい場合の土地の活用方法についても相談ができるため、専門の業者を探して売却を依頼するとよいでしょう。
空き家バンクに登録する
近年、自然の多い環境への移住希望者が増加しています。手放したい住宅のある地域が、移住者向けの空き家バンクのサービスを行っている場合、そちらに登録して売却先を探すという手段もあります。
オークションに参加する
ヤフーオークションでも土地の売買が行われています。ヤフオクで、「土地」と入力すると数千件がヒットします。出品をする際には、「市街化調整区域である」とはっきり明示する必要があります。
個人的に売買する
知人に個人として土地を売買する方法もあります。メリットは手数料等がかからないことですが、契約書や重要事項説明書などの書類を自分で作成しなくてはなりません。さらに市場が狭くなってしまい、自分で購入希望者を探さなければならないのが一番のデメリットでしょう。あまりおすすめできない手法です。
売買以外の方法
売却が難しい場合や長引いてしまう場合には、建物や土地を賃貸に出すという方法もあります。
たとえ古い家だとしても、手入れが行き届いていれば、通常の家賃より安い市街化調整区域内の住居を好む人もいるはずです。
また更地でも資材置き場や駐車場として貸し出すこともできます。
仲介業者に売却を依頼して、なかなか売れずに手数料を支払い続けることを思えば、たとえ賃貸料は安くても固定資産税を支払って利益が出るのであればよしとしましょう。月に6万円の賃貸料でも、10年で720万円もの収入になるのです。
市街化調整区域を上手に売却しよう
市街化調整区域は通常、建物の建築を制限されている地域なので、売却しづらいといわれています。実際には、その土地の立地や地目、建っている建物の状況によって売却のしやすさが異なってきます。
まずは自分の持っている市街化調整区域の物件が、どのような状態にあるのかを知っておくことが先決です。
また売却においては、信頼のおける不動産会社を見つけることも重要です。特に市街化調整区域の場合、その特性や、地域での売買に強みのある不動産会社を選ぶとよいでしょう。
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