不動産売却の方法には、不動産会社に買い手を探してもらう「仲介」と、不動産会社が直接買い取ってくれる「買取」という方法があります。
この記事では不動産売却時に買取を検討している方向けに「仲介」と「買取」の違いや、買取が向いている方の特徴、買取のメリット・デメリットを解説します。
なお、不動産売却について詳しく知りたい場合は、「不動産売却の抑えるべき基本知識。宅建士が流れやコツを解説します」の記事も参考にしてください。

- 監修逆瀬川 勇造
大学卒業後は地元の地方銀行に入行し、窓口業務・渉外業務の経験を経て、2011年9月より不動産会社に入社。新築や土地の仕入れ、不動産売買に携わる。
【保有資格】AFP(2級FP技能士)/宅地建物取引士/相続管理士


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不動産買取とは
不動産買取とは、不動産買取業社が物件を直接買い取る方法です。
不動産会社の仲介による売却では買い主が個人になるのに対し、不動産買取では、買い主が不動産会社となります。売主は不動産会社と直接価格交渉をし、条件がまとまればすぐに契約に結ぶことができます。
そのため、市場に向けた販売活動は行われません。
不動産買取には、「即時買取」と「買取保証」の2種類があります。特徴を見ていきましょう。
即時買取
即時買取は、不動産会社にすぐにでも買い取ってもらうことです。
市場での販売活動は一切行われず、現金化までの時間も短くて済むため、すぐにお金が必要な時にオススメです。
例えば、引越しなどの都合で売却期間が迫っている人や、相続税の支払いや離婚による財産分与のために、すぐにでも売却したい人は即時買取がいいでしょう。
ただし、不動産会社に買い叩かれてしまう可能性は高く、相場より安い価格でしか売れません。
買取保証
買取保証は、仲介で一定期間を過ぎても不動産が売れなかった場合に、不動産会社が買取をしてくれるという保証を指します。
最初の3カ月間は仲介で売り出せるので不動産会社に買い取ってもらうよりも高く売れる可能性が高くなります。
その後、売れ残った場合は不動産会社が買い取ってくれるため、「高く売れるチャンスがあり、確実に売ることもできる」という見方もできます。
ただし人気物件の場合、不動産を安く買い取りたい不動産会社が仲介での売却活動を積極的に行ってくれない可能性があります。
ご自身の状況や時間的な状況を踏まえた上どちらの方法を選ぶか判断しましょう。
不動産を売却する方法として買取保証という選択肢があります。買取保証についての理解を深めることで不動産を早く確実に売却できるかもしれません。しかし、買取保証について詳しく知っている人は多くないと思います。リナビ[…]
不動産買取と仲介の違い
不動産を売却するにあたって、買取と仲介の2つの方法があります。
それぞれの違いはどんな点にあるでしょうか?
買取と仲介には、以下のような違いがあります。
買取 | 仲介 | |
---|---|---|
売却価格 | 安い(仲介の7割程度) | 比較的高い |
期間 | 1~2カ月 | 3~6カ月 |
仲介手数料 | かからない | 売却価格の3~5%程度 |
瑕疵担保責任 | 問われない | 問われる |
近隣や知人へのばれにくさ | ばれにくい | 比較的ばれやすい |
それぞれ詳しく見ていきましょう。
買取と仲介の違い①:売却価格
不動産の買取の市場価格は、仲介の市場価格の7割ほどです。
つまり、不動産買取で2500万の売値がついた物件は、仲介で販売すると3500万円ほどになるということです。
買取を行う場合、新たに買主を見つけなくては不動産会社に利益は出ません。
さらに、リフォーム代も不動産会社の負担となります。
上は、不動産会社が買取を買い取った後リフォームにいくらかけたのかを表したグラフです。
250万以上かける会社が過半数となっていることからも、不動産会社はなるべく安く不動産を買い取りたいと考え、買取価格を抑えるでしょう。
買取と仲介の違い②:期間
不動産買取では、売却完了までおよそ1~2カ月で売却できます。
不動産会社と条件面に合意したら、すぐに契約を結ぶことができるためです。
一方、仲介では買い主を見つけて売買契約を結ぶまで3カ月から半年かかります。
上記の図からもわかる通り、買取のほうが手間もかかりません。
買取と仲介の違い③:仲介手数料
不動産買取では仲介手数料がかかりません。一方不動産仲介では売却価格の3~5%程度の手数料が発生します。
不動産買取と不動産売却では、不動産会社が利益を得る仕組みが異なります。
不動産買取では、不動産会社は物件の購入価格と販売価格の差分から利益を得ます。
仲介の場合、売り主の売却価格と買い主となる個人の購入金額は一緒です。不動産会社は仲介手数料から利益を得ます。
このような仕組みであるために、不動産買取では仲介手数料が発生しないのです。
買取と仲介の違い④:瑕疵担保責任に対する取り扱い
瑕疵担保責任(2020年4月からは「契約不適合責任」に改正)とは、不動産を売却したのちに瑕疵(雨漏りやシロアリ被害などの欠陥)が見つかった場合、売り主が損害賠償や代金の減額などを行う責任のことです。
不動産買取では瑕疵担保責任を免除されることが多いです。
一方、仲介の場合は売主は瑕疵担保責任を負います。もし瑕疵が見つかった場合、売主の損害賠償額は大きなものとなります。
買取と仲介の違い⑤:近隣や知人へのばれにくさ
不動産買取は不動産会社が直接買い取るため、近隣に売却活動中であることがばれにくいです。
仲介では、ポータルサイトへの掲載や近隣へのチラシ投函など、市場に向けた売却活動が行われます。そのため、近隣の知り合いがそれを目にする機会があるかもしれません。
不動産買取のメリット
次に不動産買取のメリットを詳しく見ていきましょう。
仲介と比較して売却価格が低くなるデメリットがある一方で、買取を利用すれば仲介と比較してメリットも多くあります。
メリット①:早く売却できる
即時買取であれば、不動産会社との話し合うだけですぐに不動産を売却できます。
早ければ最短で1週間、長くなっても1カ月程度で物件の売却金額を現金として支払ってくれます。
また、買取保証の場合であっても、売却期間を定めているので「いつまでも買い手が見つからない」といった状況になることがありません。
仲介では、決済までスムーズに進んだとしても3カ月以上かかってしまいます。早く売却したい、早く現金化したいといった場合には買取は最適でしょう。
時間的、経済的な余裕があれば仲介で売ってもいいですが、そうでないのなら、期限を区切るために買取保証を付けて不動産を確実に売却する方向で考えましょう。
メリット②:内覧準備が不要
現在住んでいる不動産を仲介に出した場合、購入希望者による内覧が行われます。
場合によっては、毎週末に2組から3組の内覧が行われて、毎回同じような質問に答えなくてはいけない、ということもよくあります。
共働きのご不動産庭の場合には、内覧のために不動産を掃除するのも大変で、かなりのストレスになるという人も多いものです。
また自分の生活を見ず知らずの人に覗かれる、というのもプライバシーの観点からストレスになります。
買取であれば、不動産会社によるビジネス的な視点による内覧が1回だけで済むので内覧の準備が必要ありません。
メリット③:仲介手数料が不要
仲介では、売主と買主の間に入って売買をサポートするため仲介手数料が必要となります。
しかし、買取の場合は不動産会社との直接取引のため仲介する人がいないため、仲介手数料が不要です。
仲介手数料は、法律で上限が決められていますが、その範囲内であれば不動産会社が自由に決めることができます。
例えば、4,000万円で売却できた物件であれば136万800円の仲介手数料となります。
(4,000万円(物件価格)×3%+60,000円)×10%(消費税)=138万6000円 |
つまり、買取の場合は、この138万6000円分の手数料を支払わなくて良い事になります。
不動産買取のデメリット
次に、不動産買取のデメリットを2つ紹介します。
デメリット①:売却価格の相場が低い
不動産買取1つ目の欠点は、買取額の相場が仲介で売却する価格の70%程度と低くなることです。
例えば、市場価値が3000万円の物件を不動産会社に買い取ってもらうと2100万円程度の価格にしかなりません。
買取価格が安くなる理由は主に2つあります。
1つ目は「修繕費用が差し引かれる」からです。
不動産会社は買い取った物件に対して、リフォームを施したうえで再販をするので修繕費用分を差し引いた額でした買い取ってくれません。
2つ目は「不動産会社の利益分が差し引かれる」からです。
不動産会社は安く買い取った不動産を高く売ることで利益を出しているので、必ず自社の利益になる価格でしか不動産を買い取りません。
不動産会社は人件費や買取後の物件広告費等も買取で得た利益で賄うことになるため、買取金額が相場より安くされてしまうのは仕方がありません
上記の理由により、不動産を高く売ることを優先したい方には買取はオススメできません。
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デメリット②:買取してもらえない不動産もある
どんな不動産でも買取してもらえるわけではありません。
買取業者は再販を前提に買い取るので「買い手が見つからない」不動産は買い取ってもらえません。
例えば、以下のような条件の不動産は買取してもらえない可能性が高いです。
- 新耐震基準を満たしてない( 1981年6月1日以前に建築確認を取得した物件)
- 広さが40m2以下
- 過疎が進んでいる田舎の土地
買取してもらえるの条件は買取業者によって異なります。買取を検討している方は、自分の不動産が買取条件に当てはまっているか企業に問い合わせてみましょう。
不動産買取を選ぶべきケース
ここまで不動産買取と仲介の違いについて見てきました。
ところで、「買取」と「仲介」のどちらを選ぶのが良いのでしょうか。
悩んでいる場合、基本的には「仲介」がおすすめです。
買取で売却する場合、相場より3割も安い価格で売却することになるからです。下のグラフを見てください。

2018年に成立した不動産取引の中で、買取再販の占める割合は17%に留まります。
つまり、ほとんどの人が「仲介」で不動産を売却しています。
そうはいっても、不動産買取がおすすめのケースもあります。以下のような場合です。
- 安くていいから早く売却したい
- 仲介で売れない
- 内覧対応ができない
- 瑕疵のある物件を販売したい
詳しく見ていきましょう。
買取向きのケース①:安くていいから早く売却したい
不動産売却のメリットの一つに、早く売却できることが挙げられます。
東日本レインズの2019年のデータによると、仲介で売り出してから売却にかかる期間は戸建て住宅で平均99日、マンションで81日かかっています。
一方買取の場合は、不動産会社との合意が取れ次第すぐに売却することが可能です。
買取場合は「売り出した日」=「不動産会社との売買契約締結日」となります。
なかなか不動産が売れず、やきもきする時間がない点は安心感にもつながります。
売却を完了させなければならない日が決まっている人にも買取はおすすめです。
買取向きのケース②:仲介で売れない
「仲介で不動産売却をしてみたけど、なかなか売れない…」という場合にも買取がおすすめです。
下のグラフは、株式会社Speeeが「売却にかかった期間」をアンケートした結果です。
売却に成功した1500人のユーザーのうち、半年以上かかった人は3割未満です。
そのうち、1年以上かかった人に至っては全体のたった6.4%です。
このデータを根拠に、売り出して半年以上で買取を選択肢に入れ、1年以上売れない場合は買取を行うことをおすすめします。
買取向きのケース③:内覧対応ができない
仲介で不動産を売却する場合、内覧対応が必要です。
内覧対応に来た人が成約する割合を、歩留率と言います。
中古住宅を売却する場合の歩留まり率は、およそ20%と言われています。
言い換えると、平均的には不動産を売却するまでに5組の内覧に対応することになります。
また、1回の内覧は1~2時間程度です。
つまり成約まで10時間も内覧対応に費やさなければならない計算になります。
子供やペットがいるなどの事情で内覧対応が難しい人もいるでしょう。
不動産買取の場合、不動産会社がそのまま買い取ってくれるため内覧対応は必要ありません。
不動産買取は、事情があって内覧を受け入れられない人におすすめです。
買取向きのケース④:瑕疵ある物件を販売したい
「瑕疵」とは、建物の不具合を指します。例えば、以下のようなものです。
- 雨漏り
- 柱や屋根の腐食
- シロアリによる被害
- 給排水管等の破損
瑕疵のある物件を売却する場合、買主にその旨を説明して売買契約を結んでもらう必要があります。
そのため、買い手は見つかりにくいです。
そのため、大規模なリフォームを実施することもあります。リフォーム代の数百万円は売主の負担となります。
しかし不動産買取の場合、リフォームや補修の代金は必要ありません。
まとめ
この記事では不動産買取とは何かやメリット・デメリットについてみてきました。
仲介なら高く売れるかもしれませんが、自分でリフォームや修繕費用を捻出すると、手元に残る売却益が少なるなることもあります。
一方、買取であれば売主のリフォームは不要で、業者にもよりますが、引越し時にいらない不動産具は、そのままにしておくこともできます。
手間がかからなかったり、買い手が付くかどうかわからない物件を確実に買ってもらえるという安心感は仲介にはない大きなメリットです。
物件が売れなくて困っている人や、速やかに物件をお金に変えたい人は買取での売却を検討してみてはいかがでしょうか。
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また、不動産売却について詳しく知りたい方は不動産売却の抑えるべき基本知識。宅建士が流れやコツを紹介しますをご覧ください。
不動産買取はすぐに売却でき、手間がかからず、仲介手数料も不要など、不動産仲介と比べて多数のメリットがありますが、唯一最大のデメリットとして、売却価格が安くなってしまうということが挙げられます。このため、多くの方が不動産買取より不動産仲介を選びます。
仲介を選ぶか、買取を選ぶかについてはこの点に注意して判断することが大切だといえるでしょう。
なお、本記事でもご紹介している通り、買取の場合査定額=買取価格なので、複数の不動産会社に査定を依頼し、高い査定額を提示してくれる不動産会社を選ぶことがより重要となります。少しでも買取を検討しているのであれば、まずは一括査定サイトを活用して査定依頼してみるとよいでしょう。