戸建てを売却する際、何から始めるべきかわからず、なかなか行動を起こせない方も多くいます。
この記事では、戸建てを売却するために知っておくべきことを、売却の流れと同じ順番で解説していきます。
この記事を読むことで、戸建て売却の全体像と、段階ごとに行う準備や手続きまで把握できます。

- 監修逆瀬川 勇造
大学卒業後は地元の地方銀行に入行し、窓口業務・渉外業務の経験を経て、2011年9月より不動産会社に入社。新築や土地の仕入れ、不動産売買に携わる。
【保有資格】AFP(2級FP技能士)/宅地建物取引士/相続管理士
【URL】P.D.Pの金融・不動産情報ブログ
一戸建て売却の流れと期間を把握しよう
まずは、一戸建て売却のスケジュールを立てやすくするために、一戸建て売却の流れと期間、査定をうけるために必要な書類を把握しましょう。
一戸建て売却の流れは以下になります。「売出し前」「売り出し中」「売出し後」の大きく3つにわかれます。
また、一戸建てを売りにだしてから売れるまでの期間は平均8ヶ月と言われています。
以下は、2015年にアットホーム株式会社が自宅の戸建てを売却した111人を対象に、売却期間についてアンケートした結果です。
売却物件種(アンケート対象人数) | 売却までの期間 |
---|---|
一戸建て(111人) | 11ヶ月 |
マンション(184人) | 8ヶ月 |
※参考:アットホーム株式会社
平均売却期間が11ヶ月のマンションに対し、戸建は売却期間が長引くなる傾向にあります。
戸建はマンションと比較して築古であるほど建物の価値が大きく下がる傾向にあり、売却期間が長引いてしまう可能性があるためです。
築古の物件はなかなか買い主が見つからず、場合によっては1年以上かかる場合があります。
いつまでに売却したいか明確であれば、不動産会社に相談しながら売却スケジュールを立てるようにしましょう。
戸建て売却の期間を詳しく知りたい方はこちら
ステップ | 内容 | 期間 | |
---|---|---|---|
売出し前 | ①査定依頼 | 不動産会社は物件状況から査定価格を設定をします。査定価格によって、売出し価格が決められます。 | 1~4週間 |
②媒介契約 | 不動産会社に依頼する場合、契約を結びます。 | ||
売出し中 | ③売却活動 | 不動産会社が物件の情報を広告に掲載するなどして、販促活動を行います。 | 3~6ヶ月 |
④内覧の対応 | 購入希望者が物件を見学します。売り主は準備と案内を行います。 | ||
売出し後 | ⑤売買条件の決定 | 購入者が決まり、売り主との間で売買契約を結びます。 | 1~2ヶ月 |
⑥引き渡し | 売り主は物件を引き渡し、購入者は代金支払を行います。 |
家を売る方法を詳しく知りた方は下記の記事をご覧ください。
一戸建て売却に必要な書類を準備しよう
不動産会社によっては、書類が無くても査定を進めてくれますが、書類の有無が査定価格に影響する場合もあるのでできる限り揃えておきましょう。
以下は一戸建売却のために必要な書類リストです。
▼査定依頼のための必要書類
「身分証明書」や「実印」、「印鑑証明」など、不動産の共有者が複数いる場合には、全員分の書類と印鑑が必要です。
また、登記上の住所と現住所が異なる場合には「住民票」「権利書(登記済み証または登記識別情報)」「固定資産税納付書」が必要になります。
相続で引き継いだ戸建であれば境界線がはっきりしていない場合があり、境界線の確認には時間が必要です。
書類を用意するのに時間がかかることがあるので、書類は早めに手配しておきましょう。
査定の日程調整と合わせて必要書類について不動産会社に問い合わせを行い、調整した査定日までに必要書類をそろえておきましょう。
一戸建ての売却相場を調べよう
一戸建ての売却準備をする中で、最も大切なことは「査定前に売却相場を調べること」です。
この章では、自宅の売却相場とその理由を把握できるようにするために【一戸建相場の調べ方】について解説しています。一戸建ての相場の調べ方として、同じ条件の物件情報と比較して相場観を掴むことが大切です。
調べ方としては、以下がおすすめです。
- すまいステップ匿名査定で調べる
- レインズマーケットインフォメーションで調べる
- 築年数から調べる
すまいステップ匿名査定で調べる
1つ目の方法として、すまいステップの匿名査定を紹介します。
以下の入力フォームにご自宅の情報を入力して「査定」ボタンを押すだけで、相場を大まかに見積もることができます。
レインズマーケットインフォメーションで調べる
2つ目の方法として、レインズマーケットインフォメーションがあります。
レインズマーケットインフォメーションとは、国土交通大臣指定の不動産流通機構が運営・管理している不動産流通標準情報システムです。実際に売買が行られた物件の価格や、その物件の条件(駅からの距離、土地面積、建物面積)を調べることができます。
過去の類似する物件の取引情報から、あなたの一戸建てが実際に売れる価格に近い金額を調べることができます。
相場の調べ方についてもっと詳しく知りたい場合は、こちらの記事をご覧ください。
築年数から売却相場を調べる
戸建ては「家」と「土地」から成り立ちますが、そのうち「家」は築年数によって大きく影響をうけます。築年数が古い建物であるほど価値が下がってしまうため、買い手がなかなか見つからなかったり、売却価格が安くなったりします。
以下は、平成22年度に国土交通省によって調査された「築年数と戸建て住宅の資産価値」の関する調査結果を基に、新築年数別での売却相場は新築価格対比でならべたものです。
築10年までに新築の約5割まで相場が下落し、築20年までに新築の2割、築20年を超えると緩やかに市場価値がゼロに近づいていきます。
- 築10年まで:新築価格の約5割
- 築20年以内:新築価格の約2割
- 築20年超え;市場価値はほぼゼロ
▼【築年数別】戸建て住宅における資産価値(新築価格対比%)
(参考:国土交通省)
【築10年まで】新築価格の約5割
最も急速に相場が下落する期間が築10年までの家です。築年数が10年になるまでに、一般的には新築の約半分まで相場が落ちます。
築10年までは価値の下落スピードが速いため、築年数が1年違うだけでもその価値は大きく変わってきます。築年数10年未満の家売却に悩んでいる方は、出来るだけ早い決断をすることが大切です。
【築20年以内】新築価格の約2割
築10年を過ぎた家は価値の下落速度が少しなだらかになる傾向にあります。目安としては、築15年時点で新築価格の3割、築20年で2割程度まで相場が下がると言われています。
基本的に木造建築の一戸建ては、耐用年数が22年と定められているため、築20年時点で価値ほとんどなくなってしまいます。
戸建ての価値の限界は築20年が1つの目安になると覚えておきましょう。
【築20年超え】市場価値がほぼゼロ
築20年を超えた木造の家は、建物価格自体の価値はほとんどなくなり、相場は横ばいの状態が続きます。築30年を超えると建物を解体して更地の状態にした方が売却しやすいこともあります。
リフォームなどを施した場合は別ですが、何も改善していない場合は、戸建の不動産として売り出す価値は基本的にありません。
一戸建ての査定ポイントをチェックしよう
売却したい戸建ての相場を大まかに把握できたら、相場を決定するために必要な査定のポイントを把握しましょう。
「建物」と「土地」にわけて査定価格が設定されるため、相場価格に影響を与える因子をそれぞれ把握しましょう。
建物の査定ポイント
チェック箇所 | 影響度 |
---|---|
1. 築10年以内か、築10年以上の場合はリフォームしているか | ★★★★★ |
2.外装(屋根、傾き)に損傷や修繕余地はないか | ★★★ |
3.内装(間取り、生活動線、雨漏り、異臭有無)に損傷や改善余地はないか | ★★★ |
4.設備(水回り、破損状況)に損傷や改善余地はないか | ★★ |
土地の査定ポイント
チェック箇所 | 影響度 |
---|---|
5.交通の便などの立地条件がよいか | ★★★ |
6.土地の面積は広く、利用しやすい形状をしているか | ★★ |
7.日照・眺望はよいか | ★ |
8.土地の境界線は明確になっているか | ★★ |
チェックできる箇所が多いほど、査定の際に高く評価されるポイントが多いということになります。
特に、影響度が大きい(=★の数が多い)査定項目に該当する場合、その分だけ評価が高くなるといえます。
一戸建ての売却が得意な不動産会社を選ぼう
査定価格は不動産会社により大きく異なります。 そのため、より好条件で売却するには、複数の不動産会社を比較したうえで売却を始める必要があります。
- 査定価格に根拠はあるか
- 一戸建て売却の実績は豊富か
- 売却活動を行う担当者の力量はどうか
1.査定価格に根拠はあるか
不動産会社の中には、根拠のない査定額を提示してくるものもいますので、1章で確認した売却相場と著しく離れているように感じたら査定額の根拠を担当者に直接質問してみましょう。 曖昧な説明や、すぐに回答できない担当者はあまり信用できません。
2.一戸建て売却の実績が豊富か
選ぶ不動産会社が『一戸建て売却』の実績があるか確認しましょう。 査定の際に必ず、一戸建て売却の実績について質問するようにしましょう。 一括で複数社に査定依頼を送ることができるすまいステップは、不動産売却を得意とする、実績豊富な優良企業のみと契約を交わしています。 査定依頼に一切の料金は発生しませんのでぜひご活用ください。
3.売却活動を行う担当者の力量はどうか
不動産会社を比較する際は、担当者の力量も確認しましょう。 正しい担当者選びのポイントはしっかりコミュニケーションが取れ、自分と相性が合う人か、不動産取引のスキルや提案のレベルが高いかどうか、という点です。 以下のような質問を用意しておくと、判断しやすいでしょう。
- 「どういったときに価格を下げますか?」
- 「購入されるターゲットはどのような人ですか?」
- 「広告活動は、どの程度やってくれますか?」
どれも販売戦略上重要なことばかりですので、上記の①~③の質問に曖昧に答えるような担当者や不動産会社はおすすめできません。
一戸建て売却に必要な費用・税金を知ろう
一戸建ての売却にかかる諸費用は、売却金額の5~7%といわれています。費用の内訳は以下です。
カテゴリー | 項目 | 費用目安 |
---|---|---|
売却費用 | 仲介手数料 | (売却額×3%)+ 6万円 + 消費税 |
ローン返済費用 | 1~3万円 | |
その他 | 引越し費用など項目によって異なる | |
税金 | 譲渡所得税 | 譲渡所得金額×税率 ※税率は保有期間が5年以下なら譲渡所得の39.63%。 5年超なら譲渡所得の20.315% |
印紙税 | 1000円∼6万円 | |
抵当権抹消登記 (登録免許税) | 2,000円~4,000円 |
外観と内装を整えて内覧準備をする
内覧では購入希望者があなたの家を訪れ見学するため、購入するかどうかの意思決定に影響します。極端な例ですが、「綺麗に整理された家」を内覧するのと、洗濯物が散乱し汚い「生活感のある家」を内覧するのとでは内覧者が抱く印象が大きく異なります。
「外観」と「内装」にわけてチェックされるので、印象を著しく損ねることがないか確認し、不備があればチェックしましょう。
外観
外観は物件に対する第一印象です。 いくら屋内がきれいに清掃されていいる物件でも、外観が悪いとマイナスな印象からスタートします。 一説によると第一印象は2年間持続するといわれています。第一印象が売却活動を決定づけるとも言えますね。
外観改善の例
- 庭木の剪定
- 外壁の補修
- 塀の修繕
- 土地内のゴミ・落ち葉の掃除
- 換気口の清掃
費用をかけず日曜大工的に行えるものもあるので、予算との折り合いを見ながら可能な範囲で改善していきましょう。
内装
注意すべきは玄関の清潔さ、照明が暗すぎないか、匂いが残っていないかなど。 特に、水回り。浴室・キッチン・トイレなどは印象を大きく左右します。 カビや油じみなど、売却する際は真っ先に水回りを掃除しましょう。
一戸建て売却を成功させるコツ
できるだけ高く・早く売却し、より多く利益を残すためにはどういった対策がとれるでしょうか。 ここからは、より利益を出すための5つのコツを解説しています。
土地の境界線は明確にしておこう
戸建ての土地が古い場合、隣地との境界線が明確でない場合があります。 その場合は、境界線を確定する測量を行ってから売却に移るのが一般的です。 土地の境界線が明確でない土地は、購入希望者が表れにくいだけでなく、土地そのものの価格も低くなりがちです。 境界線の決定は不動産会社の査定が終わった後でも問題ありませんが、正確な査定価格を得るには境界線の確定後、再度査定を受ける必要があります。
査定では訪問査定を必ずうけよう
不動産会社が行う査定には『机上査定』と『訪問査定』があります。 机上査定は、物件の基本情報や過去の取引事例をもとに査定する方法です。 家には赴かずデータだけで計算するため、1日程度で査定結果を得ることができます。
住み替えの場合、「売る」を先行にしよう
買いを先行と売りを先行でどちらもメリットデメリットが存在しますが、金銭的なリスクを抑えるのであれば「売る」を先にすすめることをお勧めします。 買いを先行した場合、2重ローンに陥ることが考えられるためです。 参考記事:【住み替え完全マニュアル】住み替えの流れや住宅ローンまで徹底解説!
高く売るのであれば2月~3月あるいは9月~10月がおすすめ
高く売るのであればたくさんの購入希望者に検討してもらう必要があります。 「売買の需要が高まる時期」という観点で見ると2月3月が最も高い傾向にあります。次に9月10月の秋ごろです。 新学期や、人事異動などのイベントが結果に影響していると予測できます。 そのため、反対に1月と8月は最も需要が低い傾向にあります。 売買需要の高い時期の少し前。例えば1カ月前には動き出し、多くの購入希望者を募りましょう。
築20年を超えた戸建てでも、一旦解体せずに売却を進めよう
一戸建ての売却には『取り壊して更地として売却する』という選択肢があります。 建物自体に価値も需要もなくなった場合、更地の状態の方が高く売れる。又は売れやすいことがあるのです。 しかし、土地のみになると、売れない期間中の固定資産税が通常の最大6倍になります。 さらに、売却までに期間がかかりすぎると通常使えるはずだった節税の特例が利用できなくなります。 現在は、自分好みのリフォームやDIYを加えたいという需要が増しているので、中古の一戸建ても注目されつつあります。 そのため、基本的には解体をせずに売却を進めていくことをお勧めしています。 その地域に強い不動産会社と相談しながら決めていくといいでしょう。 査定を依頼する際に、地域での売買実績を確認したいと伝えましょう。
なかなか売れない場合は不動産会社に理由をヒヤリングしよう
一戸建てが売れない場合には「売れない原因」を特定することが大切です。 例えば、内覧時の対応が売れない原因だったのにも関わらず、価格を下げても効果はありません。 半年以上売れない期間が続くのであれば、これまでアプローチした購入検討者が購入を見送った理由を不動産会社からヒアリングした上で、適切な対策を打っていきましょう。