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戸建ての減価償却について基本から解説。計算までできるようになろう

  • 更新日:2023年3月14日
戸建ての減価償却について基本から解説。計算までできるようになろう

戸建てを売却した時には、自宅用に使っていた戸建てであっても減価償却費を計算する必要があります。これは、譲渡所得を正しく計算するためです。

また、事業用として賃貸経営や店鋪用として利用している戸建ての減価償却費は、確定申告で費用として計上できます。

しかし、不動産の売買が初めての人や、初めて確定申告を行う人にとっては、どのように減価償却費を計算したらいいのかわからない方も少なくないでしょう。

この記事では、戸建ての減価償却とはどのようなもので、どのように計算すればいいのか詳しく解説します。

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戸建ての減価償却の基本

そもそも「減価償却」とはどのようなもので、なぜ計算することが必要なのでしょうか。

この章では、減価償却についての以下の基礎知識を解説します。

この章のポイント!

減価償却の意味

減価償却とは、資産の価値を年が経つごとに減少させる会計上の手続きのことです。

建物や車両、機械といった事業に必要な資産を購入した時、購入した年にかかった費用を全額経費に計上してしまうと、購入した年と翌年の収支には大きな差ができます。

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納税額にも年ごとに大きな差ができてしまいます。

一方で、建物や車両、機械は、長期にわたって事業で使用します。
ただし永続的に使えるわけではなく、やがて劣化し、使用できなくなります。

そこで、資産の取得にかかった費用を、資産を使用できる期間の各年ごとの経費に配分することで、事業の収支を安定させられるのです。

減価償却は、各年ごとに経費を配分する=少しずつ価値を減少させる手続き。

建物や車両、機械などの資産は、実際の劣化具合とは関係なく、国税庁が定めた資産の種類ごとの法定耐用年数と、償却率によって毎年その価値を減じていきます。

なお、土地については減価償却をしません

「土地は、建物のように経年劣化することはない」という考え方に基づいて、法律で定められているからです。

したがって、戸建ての購入費用を減価償却する時には、建物部分の購入代金だけ減価償却の計算をします

戸建てで計算した減価償却費の使い道

事業用ではなく、自宅として用いていた戸建てで減価償却をするのは、戸建てを売却して譲渡所得を計算する時です。

事業用資産と同じ考え方で、自宅の戸建ても、数が経つごとに劣化していきます。

そこで、戸建て売却の利益である譲渡所得を計算する時には、取得した当時の価格から経年劣化によって下がった価値の分を差し引きます。

差し引かれる価値を表す金額を「減価償却費」といいます。

なお、戸建てを貸家にしていたり、店鋪や事務所にしていたり、事業に利用している場合は、毎年申告する事業所得の計算に減価償却費を計上していきます。

耐用年数の種類と特徴

建物の耐用年数をどう数えるかについては、以下の3種類の考え方があります。

  • 物理的耐用年数
  • 法定耐用年数
  • 経済的残存耐用年数

物理的耐用年数とは、建物の構造や材質などが物理的な面で使用に耐えられなくなるまでの年数のことです。建物そのものの劣化具合を考慮した考え方になります。

法定耐用年数は国が法律で定めた基準です。不動産の価値を公平に計算するために、不動産の種類と構造、用途によって一律の基準を設けています。

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譲渡所得を求めるのに使う減価償却費は「法定耐用年数」に基づいて計算します。

経済的残存耐用年数は、建物の経済的な価値を持つ期間を表すものです。物理的耐用年数に加えて、今後の修繕や補修の費用と効果も算定して考えます。

戸建ての構造別の耐用年数と償却率

戸建てを売却時の譲渡所得の計算に用いる「減価償却費」は、法定耐用年数に基づく「償却率」で算出します。

法定耐用年数の期間と、毎年どのくらいの価値が減っていくのかを表す償却率は、国税庁が建物の材質と構造によって定めています

建物の構造別の耐用年数と償却率は、次の表のとおりです。なお償却率は定額法の場合です。

建物の構造非業務用(自宅用等)
耐用年数
非業務用
償却率
業務用(住宅・店鋪)
耐用年数
業務用業務用
(住宅・店鋪)償却率
鉄骨鉄筋コンクリート造または
鉄筋コンクリート造
70年0.01547年0.022
れんが造、石造またはブロック造57年0.01838年0.027
骨格材の肉厚4mm超の金属造51年0.02034年0.030
骨格材の肉厚3mm超4mm以下の
金属造
40年0.02527年0.038
骨格材の肉厚3mm以下の金属造28年0.03619年0.053
木造または合成樹脂造33年0.03122年0.046
木骨モルタル造30年0.03420年0.050

国税庁「耐用年数(建物/建物附属設備)」国税庁「『減価償却費』の計算について」をもとに作成

※業務用の住宅とは、賃貸収入を得るための物件のことです。

戸建ての減価償却費の計算方法

この章では、戸建ての減価償却の計算方法である定額法と定率法をそれぞれ解説します。

2016年度の税制改革で定率法は廃止されました。
以後、新しく購入する戸建ておよび付属設備の減価償却費の計算方法は、定額法のみとなります。

毎年の償却費が一定の定額法

定額法とは毎年同じ金額の減価償却費を計上する方法です。

定額法の計算式は次のとおりです。

減価償却費=取得価格×定額法の償却率

例えば、建物部分の取得価格が3,000万円の自宅用木造モルタル住宅の場合には、償却率が0.034であるので、次のような計算式となります。

減価償却費=取得価格×償却率
=3,000万円×0.034
=102万円

したがって、毎年102万円ずつ価値が下がっていき、法定耐用年数の30年後には価値が0円になると計算されます。

初年度の償却費が一番多い定率法

定率法とは、定額法とは違い毎年減価償却される金額が少なくなっていく計算方法です。

減価償却費が少なくなる理由は、減価償却率をかける取得費の計算方法が、取得費から減価償却累計額を差し引いた金額になるためです。

そのために、取得してから1年目が最も高額な減価償却費となり、次の年からは少なくなっていきます。

建物附属設備について、以前は定額法と定率法を選択して償却できましたが、2016年の法改正によって選べる償却方法が定額法のみとなりました。

現在は、2016年3月31日以前に取得されて定率法が選択されている建物附属設備のみ、定率法での償却ができます。

戸建ての3パターンの減価償却計算例

ここからは、以下の3つのケースにおける売却時の減価償却費の計算方法を、具体例で解説していきます。

新築で建てた戸建ての減価償却の計算

新築の土地付き木造戸建てを3,500万円で購入して、築10年で売却する場合の減価償却費の計算方法について見ていきましょう。

土地付き建物を購入した場合には、まずは建物部分の価格を計算しなくてはいけません。

新築の場合には、売買契約書や明細書に土地と建物が明確に分けて記載されていることもあります。建物部分の価格の記載があればそちらを参照しましょう。土地と建物の総額しか記載されていない場合には、消費税から建物部分の価格を計算できます。土地は消費税が非課税なので、消費税は建物部分のみに課税されているためです。

消費税から建物部分の価格を算出する計算式は次のとおりです。

建物部分の価格=(消費税額÷消費税率)+消費税額

10%の消費税で消費税が180万円と記載されていれば、次の計算になります。

  • 建物部分の取得価格:(180万円÷10%)+180万円=1,980万円
  • 土地部分の取得価格:3,500万円-1,980万円=1,520万円

減価償却を計算するべき建物部分の取得価格は1,980万円、減価償却の対象にならない土地部分の取得価格は1,520万円になります。

実際に売買や確定申告などで減価償却費を計算するときの計算式は次のとおりです。経過年数は6ヶ月未満は切り捨て、6ヶ月以上は切り上げで計算します。今回は10年で計算しましょう。

減価償却費=建物部分の取得費×0.9×償却率×経過年数

自宅用の木造住宅なので償却率は0.031です。この場合の計算式は次のようになります。

1,980万円×0.9×0.031×10年=552万4,200円

減価償却費は552万4,200円です。

中古戸建ての減価償却の計算

次は、自宅用に購入した中古住宅を耐用年数を超えてから売却するときの減価償却の計算方法について見ていきましょう。

築10年の木造の中古住宅を3,000万円で購入して15年後に売却したときの減価償却費の計算方法です。売買契約書に建物と土地の記載は明確でなく、消費税が5%で65万円と記載されています。

まずは消費税から建物部分と土地部分の取得費を計算します。

  • 建物部分の取得価格:(130万円÷5%)+130万円=1,365万円
  • 土地部分の取得価格:3,000万円-1,365万円=1,635万円

自宅用に購入した物件の場合には、減価償却率は新築時とまったく同じ数字が適用されます。経過年数も築年数ではなく購入したときからの年数で計算できます。この場合の減価償却費の計算式は次のようになります。

1,365万円×0.9×0.031×15年=571万2,525円

減価償却費は571万2,525円です。

事業用戸建ての減価償却の計算

次に、不動産投資用の賃貸戸建てや店鋪用として利用する事業用戸建ての減価償却の計算方法について見ていきましょう。

3,000万円で新築で購入した木造戸建てを賃貸に出した場合の減価償却について見ていきましょう。今回は購入時の明細に土地1,000万円、建物部分2,000万円と記載されています。建物部分の減価償却の計算方法は次のとおりです。

事業用不動産の場合には木造の法定耐用年数は22年で償却率は0.046です。事業用不動産を売却する場合の減価償却費の計算式は次のとおりです。

減価償却費=建物の取得費×償却率×業務に利用した月数÷12

この物件を5年3ヶ月(63ヶ月)賃貸に出したあとで売却する場合、減価償却費は2,000万円×0.046×63ヶ月÷12=483万円となります。

戸建ての減価償却で損をしないコツ

戸建てを売却するときには、減価償却費の計算方法で大きく損をしてしまうこともあります。特に、不動産売買についての知識がない人でも行う自宅の売却では、売却後に課税される譲渡所得税の税額が減価償却費の計算で大きく変わってしまう場合もあります。戸建ての減価償却の計算方法で損をしないためにはどうしたらいいのか、そのコツを解説します。

減価償却する戸建ての価値を正確に算出

売却するときには、取得費を正確に計算するようにしましょう。取得費とは、戸建てを購入したときの購入金額から減価償却費を差し引いた金額です。取得費を証明するためには、購入時の売買契約書や領収書などの正式な書類が必要です。もしも契約書や領収書がなく、取得時の購入金額を正式に証明できない場合には、概算法で計算することになります。

概算法とは、売却した時の売却価格の5%を取得費としてみなす計算方法です。2,000万円で売却した場合には、その5%の100万円が取得費となります。しかし、購入後の資産価値がよほど上がった場合を除き、取得費が売却価格の5%ということはまずありません。

取得費は正確に計算できないと、売却金額から取得費と売却時の手数料を差し引く譲渡所得が高額になり、譲渡所得税の課税額が高額になる可能性があります。戸建ての価値と減価償却は正確に計算して、節税に努めましょう。

確定申告の減価償却の計算間違いはすぐに修正

事業用として戸建てを利用している場合に、確定申告で減価償却の計算を間違えてしまった時にはどのように対応したらいいのでしょうか。

確定申告で減価償却の計算間違いをしてしまった場合にはすぐに修正しましょう。5年以内なら修正することが可能です。申告額が多すぎて税金を多く納めすぎた場合には、構成申告を行って払いすぎた税の還付を受けられます。申告額が少なすぎた場合には、修正申告をして税金の不足分と延滞税を収めましょう。

また、次の年からは正確に計算して申告するように気をつけましょう。

税金の専門家に減価償却について相談

戸建てを売却したときの、減価償却費の計算方法がよくわからない、事業用として利用している戸建ての減価償却の確定申告に自信がない、という場合には税金の専門家に相談することをおすすめします。

国税庁の電話相談センターや最寄りも税務署なら無料で相談に乗ってもらえます。税理士にも相談できますが、税理士への相談は2回目以降は有料になることがあります。

よく理解できないままに自分で適当に計算してしまうと、後から更生申告や修正申告が必要になる場合もあります。そのようなことにならないように、自信がないのなら確定申告の前に早めに専門家へ相談してみましょう。

戸建ての売却で税金・費用を抑える方法

戸建ての売却時には、取得費から減価償却費を差し引きます。

そのため、売却する戸建ての築年数が経っていると、思いがけず譲渡所得が高額になってしまうことがあります。

譲渡所得が高額になると、支払わなければならない譲渡所得税も高くなります。

そこで、この章では譲渡所得税を抑えるための控除の制度や、税金以外で手取り額を増やすための方法について解説します。

適用できる控除・特例の申請

自宅として使っていた戸建てを売却した時には、要件を満たせば、確定申告で申請することで税金を軽減できる特例があります。

マイホームの売却で利用できる控除や特例は、以下の通りです。

利用できる控除・特例解説
特定の居住用財産の買換え特例マイホームを売却して新しいマイホームを購入した場合に、売却で発生した譲渡所得を次の売却時に繰り延べできる。
3,000万円特別控除マイホームの譲渡所得から最大3,000万円まで控除される。
10年超所有軽減税率の特例10年を超えて所有している物件の場合には、6,000万円までの譲渡所得に対する税率が所得税は10.21%、住民税は4%に軽減される
譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例マイホームの売却で損失が出た場合に、給与所得や事業所得と損益通算して、全体の所得を抑えることができる

なお、3,000万円特別控除は住宅ローン控除と併用できないなど、特例ごとに併用できるもの、できないものがあります。

どの制度を利用する方が得になるか、事前によく調べてから選びましょう。

売却にかかる税金以外の費用を節約

戸建ての売却には譲渡所得税の他にもさまざまな費用がかかります

譲渡所得税以外の費用を節約することで、最終的に手元により多くの金額が残るように工夫しましょう。

戸建ての売却にかかる費用は次のとおりです。

  • 仲介手数料
  • 印紙税
  • 登記費用
  • 住宅ローンを一括返済する場合の金融機関への手数料
  • 引越し費用
  • ハウスクリーニング代
  • 土地の測量費用

この中で特に金額が大きくなるのが仲介手数料です。仲介手数料は売却に成功したときの成功報酬として支払うもので、売却金額の3%から5%という上限金額が法律で定められています。

場合によっては数十万円から数百万円の費用がかかることがあります。仲介手数料の割引交渉をしてみたり、仲介手数料が安い不動産会社を探したりすると費用を大幅に節約できます。

また、ハウスクリーニングや引っ越しをできるだけ業者に依頼せずに自分で行うなどの節約方法も考えられます。

戸建てを適正価格で売却

戸建ての売却でできるだけ手元に残る金額を多く残すために、色々と節約するのもよいですが、仲介手数料の割引交渉は不動産会社がやる気を無くしてしまうことも多いので、実はあまりおすすめはできません。

仲介手数料は成功報酬なので、万が一売却に失敗したら不動産会社は損をします。また、チラシをポスティングしたり、不動産情報サイトに掲載料を支払って掲載したりといった宣伝活動の費用はすべて不動産会社の負担です。割引交渉をやりすぎると、宣伝の内容や量を減らされてしまう可能性も高まります。

経費の節約よりも確実に手元により多くのお金が入ってくる方法は、適正価格で戸建てを売却することです。複数の不動産会社に相見積もりをしてもらったり、周辺地域の不動産相場を自分で調べたりすることで、不動産会社の査定額が適正な価格かどうかを自分でしっかりと判断しましょう。

より適正価格での売却を目指すのであれば、すまいステップで一括査定を依頼してみることをおすすめします。一括査定サイトのすまいステップには、全国から厳選した良心的な不動産会社が100社以上登録されています。

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戸建ての減価償却は正確に計算をして、売却や賃貸経営で損をしない

減価償却費の計算方法というのは、初めて減価償却を行う人にとってはかなりややこしく、大変なものです。しかし、正確に計算して申告しないと売却時の譲渡所得税が高額になったり、賃貸経営での費用の計上額が少なくなってしまい、大幅に損をしてしまいます。

減価償却費の計算は大変ですが、しっかりと理解して計算すれば初めての人でもできないことはありません。また、税務署などでも相談に乗ってくれます。ぜひ、自分で計算することに自信がない場合には、専門家へ相談して減価償却で損をしないようにしましょう。

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