何世代にもわたる古い土地であったり、一部を畑として利用していた土地などには、今現在に利用していない部分があったりします。
もちろんその部分にも税金や維持費が発生します。
そこで、「全部とは言わず、使わない一部の土地だけを売却したい」と考える方も多いでしょう。実際そんな都合のいいことができるのでしょうか?
- 土地を一部だけ売却することは可能
- そのためには『分筆』が一般的
- 土地家屋調査士に依頼し『分筆』を行い売却しよう
土地の一部だけを売却できる方法
結論から言うと、土地の一部を売却することは可能です。
以下で解説する売却方法は、あなたの売却事情に適切なものが異なるので確認していきましょう。
- 分筆し土地を分割して売却する(推奨)
- 共有名義の持分を売却する
分筆し土地を分割してから売却する
土地の一部分を売却する際は、一般的に分筆という手続きを行い、一部の土地を登記上別の土地とした状態で売却します。
その土地の所有権のすべて、登記の情報が買主に代わるので最もトラブルの心配なく売却することができます。反対に分筆を行わない売却方法はトラブルを招きやすいので注意しましょう。
この記事の2章以降は、この分筆について詳しく解説していきます。
分筆しないで売却する流れ
- 不動産会社に査定を依頼する
- 売却する所有権の割合に応じた土地の範囲を決める
- 購入希望者を見つける
- 購入希望者との合意が取れた時点で売買契約を結ぶ
- 決済確認後、引渡し
分筆の場合と違い、買主・売主間で同意が取れれば売却できるので、測量を行う必要がありません。
共有名義の持分を売却する
例えば相続した土地などでは、共有名義での所有になっていることが多くあり、その土地の権利の1人当たりの所有率を『持分』といいます。
持分は、一般的に取得する際に出した金額に応じた割合になります。
自分の持分のみを売却する場合
例えば、3人の共有名義の土地でそれぞれが持分1/3ずつだとします。
この場合、あなたが所有する1/3の部分に関しては、共有者の同意なく売却することができます。
土地を売却するというわけでなく、持分という権利を売却することになります。
共有者からしたら、第三者が権利の一端を握るわけですから比較的トラブルが起きやすくなります。
そのため、共有者間や親族間での売買によく利用されます。
共有者全員で売却する
持分を持った共有者全員が同意した場合は、土地全体の売却が可能になります。
この場合は共有者に遺恨を残す心配も少なく、買主も権利面で制限を受けることがありません。
通常の土地売却と変わりがないため、相場価格での売却が可能です。
売却する流れ
- 共有者に同意を得る(自分の持分のみの場合は同意不要)
- 不動産会社に査定を依頼する
- 購入希望者を発見する
- 購入希望者との合意が取れた時点で売買契約を結ぶ
- 決済確認後、引渡し
自分の持分であれば、共有者に同意を得る必要はありませんが、今後のトラブルを回避するためにはしっかりと話しあっておくといいでしょう。
基本的な土地の売却の知識についてはこちらの記事をご参照ください。
土地の一部売却に必要な『分筆』とは
『分筆』という手続きは、1つの土地を登記上2つの土地に分断する行為で、別れた一方の土地を自由に売却できるようになります。
分筆を行うと土地の地番が変わり、まったく別の土地として扱われます。
「〇丁目1-1」と「〇丁目1-2」に分かれるようなイメージです。
1章でも解説しましたが、分筆しない土地の一部売却は非常にトラブルが起こりやすくなります。
土地一部の売却では分筆することが一般的であることを覚えておきましょう。
共有持分の土地も分筆が可能
共有持分の土地であっても、持分の割合に応じて分筆を行うことができます。
土地の価値は面積だけではなく、形状や接道の状況も関係します。そのため、単に持分に応じた面積だけで分筆範囲を決めてしまわないよう注意しましょう。
幅員4m以上の道路と土地が2メートル以上接していないと建物は建てられなくなっちゃうからね…。
分筆前には「分筆案」を作成し、どのように分筆してくかを決定します。土地家屋調査士に依頼して相談しながら作成していきましょう。
建物を新たに立てるのなら『分割』でも可
1つの土地には、原則1つの建物しか建てることができません。
では、新たに土地を建てるには『分筆』が必要かというと、そんなことはありません。同じ土地に新たに建物を建てるには、『分割』でも可能です。
分割とは、登記上は別の土地に分けず、建築基準法を満たす任意のラインで机上の線引きを行うことです。
『分割』は登記なし!
分筆して売却活動を始める手順
土地の一部分を売却する場合は、通常の売却の流れとは少し異なり、土地面積や境界線を確認し分筆の手続きを進めるところから始めなければいけません。
この手続きの複雑な部分は土地家屋調査士に依頼して進めてもらうことが一般的です。
それでは分筆から売却活動を始めるまでの手順を確認していきましょう。なお、分筆登記完了までは早くて1ヶ月で、周辺との調整に時間がかかる場合は6ヶ月以上かかるケースもあります。
土地家屋調査士に依頼する
法務局や役所で調査する
分筆案を作成する
現地調査・確定測量を行う
境界票を設置する
現地立合い
分筆登記を行う
不動産会社に査定を依頼し売却活動を開始する
①土地家屋調査士に依頼する
まずは土地家屋調査士に分筆の件を相談し、同時に依頼をしましょう。これから行う手続きや作業には土地家屋調査士の存在が必要不可欠です。
ここで、先に不動産会社に相談しておくのもおすすめです。
というのも、土地を分筆する際にどのような形に土地を分筆するかで土地の価値が変わります。不動産会社なら、ターゲットや使用目的に合わせた分割方法をアドバイスしてもらえるので、高い価格で売却したい場合はこの方法を選びましょう。
不動産会社は土地家屋調査士ともつながっている場合が多く、そのまま紹介してもらえることもよくあります。
不動産会社への相談を先にする際は、先に『手順8』を進めてください。
土地家屋調査士にかかる費用
分筆登記の申請自体はおよそ5~10万円が相場です。
分筆登記には、境界線確定測量が必要なことがほとんどなので、さらに50~100万円程度がかかります。
そのため、土地家屋調査士に支払う費用はおよそ55万円~になることがほとんどです。
②法務局や役所で調査する
土地は正確な大きさがわからなければ売却できません。そして、隣家との境界が曖昧だと売却後にトラブルになる可能性があります。そのため、土地の売却時には初めに土地の正確な寸法や面積の確認を行います。
また、1つの土地だと思っていても、公図で確認すると2つに分かれて登記されていることもあります。
そのため、法務局や役所に出向いて、登記簿謄本や公図、地積測量図などから売却する土地について確認することが必要です。確定測量図があると正確な境界線や土地の大きさがわかるので、手間や時間、費用が省けます。
このようにして、土地の正確な情報を確認することが初めの作業です。
土地の売却にあたって必要な図面については、こちらの記事で詳しく解説されています。
土地情報の書類集めにかかる費用
現在の土地情報を知るために登記簿謄本や測量図を発行する必要があります。
それらにかかる費用は以下通りです。
区分 | 手数料額 | |
---|---|---|
登記簿謄本 | 書面請求 | 600円 |
オンライン請求・送付 | 500円 | |
オンライン請求・窓口交付 | 480円 | |
地図等情報 (公図・測量図) | 書面請求 | 450円 |
オンライン請求・送付 | 450円 | |
オンライン請求・窓口交付 | 430円 |
③分筆案を作成する
どのように分筆していくかを決定するため『分筆案』を作成します。
土地家屋調査士と相談しながら作成していくのが一般的なため、作成方法に頭を悩ませる必要はありません。
④現地調査・確定測量を行う
土地家屋調査士が、どのような作業が必要になるかの計画を立てるために現地調査を行います。現地調査が終わったら、次に測量が行われます。
実際に登記を行っていくには現地の状況を的確に把握する必要があります。(例えば、正確な境界線の位置、面積や形状など。)測量はそのために行われます。
⑤境界標を設置する
設置する箇所に適した方法で境界線の目印となるコンクリート杭、プラスチック杭、金属標、鋲などを打ち込みます。
⑥現地立合い
土地の所有者、隣地の所有者、道路や水路などの管理者を含めた関係者が現地にて境界線の確認を行います。
市道や県道に面している土地では、役所の職員が立会う場合もあります。
⑦分筆登記を行う
分筆登記の手続きも基本的に土地家屋調査士が行ってくれます。そのため、登記手続きを任せるための委任状が必要になります。
土地家屋調査士に登記手続きを任せる場合は委任状以外に書類を用意する必要はありませんが、参考程度にまとめておきます。
分筆登記に必要な書類
- 登記申請書
- 筆界確認書(境界確認書、境界の同意書、境界の協定書)
- 地積測量図
- 現地案内図
- 委任状
分筆登記の申請から約1週間で手続きが完了し、登記完了証と登記識別情報通知書を受け取ることができます。
ここからは通常の売却手段が利用できます。
登記にかかる登録免許税
登記情報を変更した際は登録免許税が発生します。
この場合の登録免許税は、土地1つにつき1,000円です。
そのため、1つの土地を2つに分筆した場合は『1,000円×2=2,000円』がかかります。
⑧不動産会社に査定を依頼し売却活動を始める
売却活動を始めるにあたって、まずは不動産会社からの査定を受ける必要があります。
査定価格から売り出し価格を決定し、実際に売却活動開始です。
ここで、査定額が不動産会社によって異なる点に注意しましょう。
査定には基準こそあれド、明確なルールはありません。
そのため不動産会社によって、百万円単位で査定額に差が出ることも大いにあります。
査定をする際は複数の会社に査定を依頼し、結果を比較検討していく必要があります。
その場合、一括査定サイトを利用すると効率的に優良企業と出会うことができます。
すまいステップは無料の一括査定サイトで、最大4社の厳選された不動産会社に査定を依頼することができます。パソコンやスマホから土地の情報や住所などを入力するだけで依頼が完了するので、複雑な分筆手続きの合間に簡単に行うことができます。
分筆してから売却するのにはもってこいのサービスです。
分筆の際に注意が必要な土地
土地の一部を分ける場合には、その分け方に注意が必要です。分け方によっては、建物が建てられなかったり、宅地として活用しにくくなったりします。
分筆の際には、自分の土地がそうした土地に該当するのか把握しておき、問題の内容土地家屋調査士と相談をしつつ進めていきましょう。
分筆後に0.01㎡未満になる土地
分筆後0.01㎡未満になる土地は、実務上分筆を行うことができません。
というのも、登記の際に記録する地積の最小単位が0.01であるため、それ未満の数字は切り捨てて0とされていますからです。
接道に関する問題がある土地
土地では道路に接しているか、又どのような道路にどれだけ接しているかが非常に大切です。
以下3パターンの接道に関する問題のある土地を紹介します。
- 分筆後に接道義務を満たしていない
- 前面道路が私道
- 敷地延長、旗竿地の土地
分筆後に接道義務を満たしていない
現在の建築基準法では、幅員4m以上の道路と土地が2メートル以上接していないと建物を建築することができません。
これを接道義務といいますが、接道義務が満たされていない土地は購入希望者が非常に見つかりにくく、その価値も低くなってしまいます。
土地を購入する人の多くは建物を建てることを前提としているからです。
前面道路が私道
土地が接している道路は公道の場合もありますし、私道の場合もあります。
土地に家を建てて活用する場合、接している道路を使って出入りをおこないます。
使用許諾を得ていない私道は、トラブルが懸念されるため売却が難しくなります。
必ず使用許諾を得てから分筆、売却のプランを進めていきましょう。
敷地延長、旗竿地の土地
敷地延長とは、敷地の一部が通路上に延び、その通路を使って出入りする必要のある奥まった土地のことです。
旗竿地とも呼ばれるのですが、こういった土地は通路先で接道義務を満たしていることが多いため、分筆後の両方の土地が接道義務を満たすのが非常に難しくなります。
隣地の土地を購入し土地を拡大する、また土地を共有者がいる場合は、持分比率を変えるなどの対処法があります。
市街化調整区域の土地
市街化調整区域とは、無秩序な市街化を防ぐために建築などの開発行為を制限している地域のことです。
市街化調整区域では、分筆後の建築を制限されていることがあるのですが、かまわず分筆を進めてしまったら結局買い手が見つからないことが考えられます。
自分の土地が市街化調整区域内であるかは、『都市計画図+○○市』で検索してみましょう。
又、市役所への問い合わせや窓口で調べることもできます。