不動産を売却する際には、所有している土地の面積や形状を明らかにするために、測量を行う必要があります。測量には複数の種類があり、きちんとやっておかないと売却時にトラブルが起きることもあるため、注意しなければなりません。
土地の売却をスムーズに行うためにも、測量の基礎知識を身につけ、どのような作業が必要なのかを知って、売却活動に活かしましょう。


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確定測量とは隣接地の所有者等の立ち会いのもと境界を確定させること
測量の方法として代表的なものは、「確定測量」と呼ばれます。これは文字通り、その土地の境界線を確定させるための測量で、隣接する土地の所有者が立ち会って行う点が特徴です。
土地の所有者同士が確認したうえで測量を行うため、どこまでが境界線なのかを双方でチェックしながら、異議申し立てがある場合は適宜行います。隣接地の所有者が複数人いる場合は、全員で立ち会うのでやや手間がかかりますが、複雑な土地でもそれぞれの所有分が明確にできるため、行っておくべきでしょう。
確定測量では、専用の器具などを使って測量をしたあと、石やコンクリートなどの境界標と呼ばれるものを地面に打ち込みます。これは、簡単にいえば境界線を示す杭であり、複数打ち込み線で結ぶことで、境界線を示すことができます。
地面に直接線を引いても、風化して分からなくなるため、杭を使って目印を残すことも特徴です。確定測量は立ち会いが必要で、かつ厳密な作業になることから1~4カ月程度かかることも少なくありません。
確定測量以外の測量の種類
測量の主な方法として確定測量がありますが、それ以外にも種類はあります。
測量の種類 | 特徴 |
地積測量 | ・一筆の土地の地積(面積を明らかにする) ・道路や隣接する土地との境界線を定めて測量する |
現況測量 | ・該当地の現在の状況をそのまま測量する ・境界標をいれない |
測量の種類は、大きく「地積測量」や「現況測量」が挙げられ、それぞれで特徴が異なります。
地積測量
土地の地積、つまり面積などを明確に測量する方法が「地積測量」です。地積測量は、隣接地や道路との境界線を明らかにして測量するだけでなく、図面に引く線の種類や太さなどが定められているほど、厳密な測量です。
そのため、測量結果の図面は登記簿に登録され、法務省の定めによって作成された測量図のため、法的な効力も強いでしょう。地積測量では、次の内容を図面に記載します。
- 地番と土地の所在
- 地番
- 基準点の凡例
- 面積の計算法
- 面積の結果
- 測量した年月日
測量時のデータが複数記載され、何をどのように調べたのかも、図面を見ると確認できるようになります。
現況測量
現況とは該当する不動産の現在そのままの状態であり、この状態で測量を行うのが「現況測量」です。現況測量には複数のケースがあり、境界線が明確になっているかどうかに関係なく、行われることも少なくありません。
図面を参考にするというよりは、現物の不動産をありのままに測量する方法のため、境界線の把握状況に関係なく行える手法といえます。土地はもちろん、そこにある建物や設備なども含めて測量して、現況をそのまま残すため、境界標を入れないことも特徴のひとつです。
境界標を入れないため、時間が経過するとどこまでが土地の境界線なのかが、判別できないこともあります。現況測量は、あくまで今の状態を反映したものであり、将来の状態を知るためには再度測量が必要になることは覚えておきましょう。
測量が必要な主な6つの理由
そもそもなぜ測量をしなければならないのか、理由が分からない人も少なくないでしょう。基本的には、不動産売却時に必要になることが多いですが、測量をすべき理由はそれだけではなく、次のようなケースがあります。
- 売却したい土地がある
- 境界が分からない
- 分筆登記をする
- 相続税として物納する
- 土地が高額
- 新築する場合
主な理由は6つ挙げられるため、それぞれを知ってどのようなケースに測量をしなければならないのか、把握しておきましょう。
売却したい土地がある
測量が必要な主な理由として不動産売却があり、売りたい土地の境界線が明確ではない場合は、測量をする必要があります。特に、隣接する土地との境目が分からないと、どこまでが自己所有分の土地として売却できるのか分かりません。
何となくで土地を区分して売ってしまうと、隣接地の所有者とトラブルになることもあります。また、隣接地がなく、独立した土地でも、売却時に面積を明確に示すためには、土地の測量は必要です。
測量は、境界線を明らかにするだけではなく、土地の面積や形状、性質など、売買に必要な情報を明らかにするための作業で、土地売却には欠かすことができません。
境界が分からない
不動産売却に限らず、土地の取引や活用、相続など、各種土地利用をする際に境界が分からない場合は、測量をしておかなければなりません。境界線が不明なまま土地を利用していると、隣接地の所有分のエリアを侵害してしまい、トラブルに発展することもあります。
特に、複数の土地に囲まれている場合は、境界線を明確にしておかないとトラブルが頻発しやすいため、測量は必須といえるでしょう。また、一度境界を調べている土地であっても、境界標が朽ちたり、地震や自然災害などによって地形変動や境界標の劣化があったりすると、境界線が分からなくなってしまうこともあります。この場合も、改めて境界標を打ち込み、それぞれの所有分を明確にするために測量を行います。
分筆登記をする
ある程度大きな土地なら、分割して複数人で所有権を持つために、境界線を明確にすることがあります。これを「土地分筆」や「分筆登記」と呼び、分割地の購入や売却の際に用いられることが多いです。
例えば、ある程度広い土地を持っていて売却を考えているものの、少しは自己所有分として残しておきたいときなどに、分筆して一部を売り出すということがあります。また、広すぎる土地は購入希望者が限定されてしまうため、大きくなりすぎないよう区分けする意味で、測量を行い境界線を明確にすることもあるでしょう。
単に他の土地との境界線や、土地の面積などを調べるためだけではなく、分筆の際に利用できることは覚えておく必要があります。
相続税として物納する
遺産を相続する際には、相続する内容に応じて相続税を支払わなければなりません。相続税は、基本的には金銭で支払いますが、ケースによっては土地をそのまま納める「物納」という方式を取ることがあります。物納の場合は、納める土地部分は一部になり、その範囲を明らかにするために測量をすることもあります。
金銭で相続税を支払える場合は問題ありませんが、費用の捻出ができない場合は、測量した土地の一部を物納して精算できることは、覚えておくと便利でしょう。
土地が高額
土地の価値は場所によって異なりますが、高額な場合ほど、それぞれの持ち分や境界線を明らかにするために、測量を行うことが多いです。例えば、平方メートルあたりの金額が1,000円の土地と10万円の土地では、境界線がずれることで発生する価値の増減が、あまりにも違い過ぎます。
平方メートルあたり1,000円の土地なら、1平方メートル小さく境界を取られていたとしても、1,000円の損失しかありませんが、もう一方の土地では10万円もの損失です。
このように、土地の価値が高いほど誤差が出たときには大きな問題になりやすく、トラブルになることも少なくありません。不動産やお金が絡むと近隣トラブルも激化しやすいため、これを避けるためにも測量は必要といえるでしょう。
新築する場合
新たに土地を取得してそこに家を建てる場合も、測量をして土地の正確な面積や周囲との境界を、明らかにしておかなければなりません。所有している土地の広さや形状によって建てられる物件の選択肢も変わり、正確な情報を持っているほどスムーズに建築しやすいです。
土地についての情報が明確でないと、どのような家を建てられるのかが分からず、設計段階から作業が停滞してしまいます。また、測量をしないまま無理に建てようとすると、建築段階で不備が出て、当初予定していた通りに建てられないということも少なくありません。そのため問題なく建築したり、思い描いた通りに仕上げたりするためには、事前の測量作業は必須といえます。
不動産売却時の一般的な測量の流れ
測量をするケースはさまざまありますが、特に多いのは不動産売却時です。不動産を売却する際に測量を行うなら、次の流れで作業を進めていきます。
- 調査と挨拶
- 事前調査と境界確定
- 境界杭の打ち込み
- 書類の作成
大きく4つのステップがあるため、それぞれの工程で何をすべきなのか、詳細まで知っておきましょう。
調査と挨拶
まずは業者に測量を依頼しますが、その際にいきなり実地調査をするわけではありません。測量をする業者に依頼すると、該当の不動産の事前調査を行い、情報収集をするところから始めます。
情報収集は法務局や市区町村の役場などで行い、土地に関する過去の資料や測量に使う書類などを集めます。その後、測量をする土地の隣接地の所有者や近隣住民などに挨拶をして、本格的に調査がスタートです。
事前調査と境界確定
測量は複数回に分けて行われることが多く、まずは「事前調査」と呼ばれる仮の調査を行います。事前調査では、資料をもとに現地の測量を行いますが、この時点でのデータはまだ仮であるため、持ち帰って詳細な分析を行います。
現地での調査結果と分析結果をもとにして、どこを境界線とするかを決め、境界線を確定させていくと考えましょう。
境界杭の打ち込み
詳細な調査や分析によって境界が決まったあとは、該当する場所に「境界標」という杭を打ち込み、正式に区分けを行います。境界標の打ち込みの際には隣接地の所有者も立ち会い、それぞれの言い分も参考にしながら、慎重に杭の打ち込みをしていきます。
杭の打ち込みが終わると境界線は確定しますが、測量としての作業はまだ残っているため、最後のステップまで必ず行わなければなりません。
書類の作成
測量が終了して境界線が確定したら、境界確認書を作成して作業は終了です。境界確認書には署名捺印が必要で、それらを行うことで書類は完成します。この書類は、今後境界線を確認する際の必要なので、紛失しないように大切に保管しておきましょう。
確定測量にかかる費用
隣接地との境界線を確定させる「確定測量」を行うためには、当然費用がかかります。確定測量にかかる費用は、ケースによって異なりますが、基本的には数十万円単位で必要と考えましょう。費用はかかるものの、不動産売却時における重要度は高いため、確定測量は確実に行う必要があります。
立ち会いの有無で変わる
確定測量は、官民の立ち会いが必要なケースと不要なケースがあり、官民立ち会いの場合は60万~80万円程度かかることが多いです。立ち合いが必要なのは公用地などと隣接する場合で、市区町村役場の担当者が立ち会って測量を行います。
官民立ち会いが不要な場合は35万~45万円程度と、費用は若干安くなります。ただし、官民立ち会いがなかったとしても、費用が高額になるケースはあることは覚えておきましょう。
費用が高額になる主な場合
測量の費用が高額になるケースとしては、次の3つが挙げられます。
- 隣接地所有者と境界トラブルがある
- 所有者が多い
- 複雑な形状の土地
これらに該当する場合は、官民立ち会いが必要かに関係なく高額になりやすいです。
隣接地と境界トラブルがある場合
隣接地があり、その所有者と境界についてのトラブルがあると、それぞれの境界線を決める際に手間がかかり、費用もかかりやすいです。境界線についての取り決めは、双方で折り合いをつけなければならず、合意を取るのに余計な手間がかかることも少なくありません。
もちろん、専門業者に依頼することで最終的に境界線の確定はできますが、トラブルがない場合よりは費用がかかりやすい点には注意が必要です。
所有者が多い場合
境界線の取り決めが難航しやすいのは、土地の所有者が複数人いる場合も挙げられます。所有者が何人もいると、立ち会いのスケジュールを決めることが難しく、測量期間が伸びてしまうことも少なくありません。
また、隣接地の所有者がいる場合と同様で、境界線確定の手間がかかりやすいことからも、費用が高額になりやすいと考えましょう。もちろん、所有者が多くてもスムーズに測量が終了すれば、それほど費用がかからないこともあります。
複雑な形状の土地の場合
土地の形状によっても測量にかかる費用は異なり、複雑な形状のものほど手間と時間がかかるため、費用が高くなりやすいです。土地によっては飛び地になっていたり、そもそもそこにたどり着くまでに時間がかかったりすることもあり、手間がかかるものほど費用も高くなると考えましょう。複雑な形状をしていて、作業車が入りづらい狭い場所など、条件が悪くなるほどに費用は高くなります。
測量を行わなくてよい2つのケース
土地売却をする際には、できるだけ測量をしておいたほうがよいですが、絶対というわけではありません。特に、次の2点に該当する場合は、無理に測量を行わずとも大丈夫でしょう。
- 地方の広大な土地
- 土地の価値が低い
これらのケースでも測量ができないわけではありませんが、やってもメリットが低かったり、損をしたりするため注意しなければなりません。
地方の広大な土地
広い土地で地方にある場合は、無理に測量をする必要はありません。測量にかかる費用は広さに応じて高くなり、広大な土地を隅々まで計測するとなると、莫大な費用がかかってしまいます。また、地方という点もポイントで、隣接地がない場合や隣接地の所有者との関係性が悪くない場合は、分かっている限りの境界線を確認するだけで、スムーズに売却できることも多いです。
都市部では、そもそも広大な土地はあまりありませんが、ある程度の広さを持っていると隣接地ができやすいため、この場合は測量をしたほうがよいでしょう。土地の周囲に何もなく、見渡す限り自分の土地という場合は、費用ばかりがかさんでしまうため、売却するにしても測量を行うことはおすすめできません。
土地の価値が低い
そもそも土地の売却時に測量が必要なのは、それぞれの所有分を明確にして、売却にかかる金銭トラブルをなくすためです。そのため、土地の価値が低い場合は、多少の誤差があってもそれほど問題視されないケースが多く、測量をせずに売却することも少なくありません。
平方メートルあたりの単価が高い場合は、厳密に区切っておかなければトラブルに発展しやすいですが、単価の低い土地ならもめることも少ないでしょう。価値が低い土地だと測量を行うことで、場合によっては費用が高くつきすぎて、利益がほとんどでないこともあるため、注意しなければなりません。
ただし、土地の価値が低いからといって測量が絶対に不要というわけではありません。万が一、隣接地の所有者との間にすでに境界線トラブルがあるなら、価値の低さに関係なく測量してから売却したほうが、余計なもめごとも起きないでしょう。
不動産売却時の測量に関する4つの注意点
不動産売却時の測量について考えるうえでは、次の4つの注意点を知ることも大切です。
- 測量は正確にしてから売却する
- 時間に余裕を持つ
- 自分で測量するのは難しい
- 信頼できる不動産会社に相談する
余計なところで失敗したり、トラブルを生んだりしないためにも、注意点は正しく守って売却を行いましょう。
測量は正確にしてから売却する
土地売却に向けて測量を行うなら、隣接地との境界線を正確に分けてから売却することが重要です。質の悪い業者に任せてしまうと、測量をいい加減に行い、間違った境界線をつけてしまうこともあります。
信頼できる業者に任せないとトラブルに発展しやすいため、実績の高い業者に依頼することを心がけなければなりません。また、業者に測量を依頼したなら、結果が完全に出てから売却することが大切です。測量をしてもらいながら平行して売り出しをすると、土地の詳細が分からない状態で買い手がつくこともあります。
途中経過を提示して売却してしまうと、最終的な結果が変更となることもあり、これもトラブルにつながりやすいです。したがって測量が完全に終わり、該当する土地のデータを正しく提示できるようになってから、売却を行いましょう。
時間に余裕を持つ
土地の所在地や広さ、形状や所有者の数などによっても変わりますが、測量は数カ月かかることがほとんどです。そのため、土地売却に向けて測量を行うなら、時間に余裕のあるスケジュールを組まなければなりません。
数週間から1カ月程度で終わるつもりで予定を組んでいると、思いがけず時間がかかってしまい、売却活動のスケジュールが押してしまうこともあります。特に、複雑な形状だったり所有者が複数いたりすると、相場よりも期間が伸びやすく、当初想定していた通りの期間で終らないことも少なくありません。また、隣接地が多く、関係者が増えるほど、測量作業が完了するまでに時間がかかりやすいことは覚えておきましょう。
測量結果が完全に出てから土地を売却するためには、売却を予定している3~4カ月程度前には測量を依頼して、業者に調査をしておいてもらわなければなりません。
自分で測量するのは難しい
各種条件によって、測量の費用がいくらかかるのかは異なりますが、測量では10万~30万円以上かかることが多いです。そのため、費用節約を考えて自分で測量したいと考える人もいるでしょう。しかしこれは難しく、不完全な結果しか得られないことがほとんどのため、おすすめはできません。
業者が行う測量作業には専門知識が必要で、測量のための機材も多数必要です。機材を購入することは現実的ではなく、仮に購入したとしても、結局コストが高くついたうえに上手に扱うことができず、土地の測量はできません。
単純にメジャーで測るだけで完了するほど、測量は簡単なものではないため、実施するなら必ずプロに頼み、素人作業で適当な測量図を作成しないようにしましょう。
信頼できる不動産会社に相談する
土地の売却をスムーズに行いたいなら、信頼できる不動産会社を見つけ、業者経由で測量士や土地家屋調査士を紹介してもらうことがおすすめです。土地の売却には測量が必要なケースも多いため、提携先を持っている不動産会社もあります。
また、提携していないとしても、業界内でのつてを使って紹介してもらえることはあるため、土地売却に強い不動産会社を選ぶとよいでしょう。信頼できる不動産会社を見つけるには、一括査定サイトの利用がおすすめです。
一括査定サイトなら、複数社の査定結果を見比べることができ、会社ごとの違いを簡単に比較しやすいです。査定で好条件を出すなら、土地売却に強い不動産会社であれば、測量についての悩みも相談しやすいでしょう。
すまいステップは独自の運営方針に従って厳選された優良企業のみと提携を組んでいるため、信頼して仲介を依頼できる不動産会社のみに査定依頼ができます。
不動産売却時の確定測量の重要性を把握しておこう
土地や家付きの土地を売却する際には、確定測量をして、土地の境界線を明確にしておくことが大切です。不動産やお金が絡むとトラブルが起きやすく、実際に土地売却時に、隣接地の所有者ともめることも少なくありません。
トラブルなくスムーズに土地売却を終えるためにも、確定測量の重要性はきちんと把握し、適切な手順を踏んで売却完了を目指しましょう。