新型コロナウイルスが世間を騒がせている中、不動産の価格にはどのような影響があるのか気になっている方も多いのではないでしょうか。
不動産の価格はさまざまな要因によって変動するため、不動産の購入や売却、投資を考える場合にはタイミングの見極めが重要です。
そこで本記事では、近年の不動産価格の動向を、エリアや用途別に解説します。
この記事を読んで、直近の不動産価格の動向や今後の不動産市場の状況を掴みましょう。

- 監修橋本 秋人
- 30年以上住宅メーカーにて顧客の相続対策、不動産活用を担当。早期退職後FPとして独立。セミナー、コンサルティング、執筆を中心に活動。
【保有資格】ファイナンシャル・プランナーCFP® 1級FP技能士 公認不動産コンサルティングマ スター 住宅ローンアドバイザー 終活アドバイザー
【URL】FPオフィス ノーサイド
2022年の不動産価格の動向は?
まずは、近年の不動産価格の動向をチェックしましょう。
不動産価格の動向を表す指標はいくつかありますが、この記事では国土交通省が発表している下記2つの価格を中心に考えます。
- 不動産価格指数
不動産市場の動向を表す指数。国土交通省が毎月公表している。 - 公示地価
国土交通省が調査・公表している毎年1月1日時点における全国の標準地の土地価格。全国約26000地点について調査している
不動産価格指標
不動産価格指数は、IMFの勧告により、国際基準に基づき国土交通省が調査・公表している不動産の動向を表す指数です。住宅総合、マンション、商業用など用途別のデータを、全国、ブロック別、都市圏別、都道府県別に作成し毎月公表しています。
国土交通省『不動産価格指数』令和3年7月30日発行より
上記のグラフを見てもわかる通り、2013年以降の不動産価格指数は全体として上昇傾向にあります。
2020年6月から7月にかけて新型コロナウイルス感染拡大の影響で住宅総合価格は一時的に下落しましたが、その後はプラスに転じ年間ではプラスとなりました。
住宅のなかでも、戸建住宅よりマンションの価格の上昇率が高くなっています。
東京だけではなく、都心部にある新築マンションは高額物件になっている傾向があります。
公示地価の推移
公示価格は、国土交通省が取引価格の参考として毎年調査・公表している公的な価格です。毎年1月1日時点における全国約26,000地点の標準地を対象としています。
下の図は、2021年までの全国の公示地価の推移です。
国土交通省「地価不動産鑑定『変動率及び平均価格の時系列推移表』(令和3年)」より編集部作成
公示価格は毎年1月1日時点を基準日としているため、2020年の公示価格には新型コロナウイルスの影響は反映されませんでしたが、2021年は下落に転じました。
特に、大きな影響を受けたのは商業地の価格です。
インバウンド需要の消滅や緊急事態宣言による外出自粛などの影響で繁華街を中心に地価が下落した地点が増加しました。
一方、「住宅地」の公示価格平均はほぼ横ばいとなっています。居住ニーズに対する新型コロナの影響は商業地に比べると軽微で、反対にリモートワークなどの新しい生活スタイルに対応するため、建売住宅やマンションに対する需要の増加が見られました。
エリア別の不動産価格の動向
ここからはエリア別の公示価格の推移を見ていきましょう。
下のグラフは、エリア別の公示価格の推移です。
国土交通省「地価不動産鑑定『変動率及び平均価格の時系列推移表』(令和3年)」より編集部作成
2021年の公示価格全体の平均は、全国平均では6年ぶりに下落に転じましたが、圏域別にみると東京、大阪、名古屋の三大都市圏は全て下落していることが分かります。
これは、大都市圏の商業地の地価下落の影響が大きいと考えられます。
東京の公示地価変動率
2020年には5%を超える上昇だった東京都心の商業地の地価も2021年には下落に転じました。
国土交通省「令和3年地価公示価格説明資料『東京圏_商業地』」より
東京都の商業地を見ると、繁華街や観光地を抱えている台東区、中央区、新宿区、千代田区、渋谷区の順に下落率が大きく、新型コロナウイルスの感染拡大によるインバウンド需要の減退や営業自粛が原因と考えられます。
コロナウイルスの流行によって、外国人観光客が減少したり飲食店の経営状態が厳しくなったことがその要因です。
一方で住宅地は、商業地に比べると地価の下落が緩やかでした。
国土交通省「令和3年地価公示価格説明資料『東京圏_住宅地』」より
むしろリモートワークの増加で郊外の住宅への需要が高まり、東京都から隣接県への人口の流出が見られ、横浜周辺や埼玉、千葉の一部では地価が上昇した地域も見られます。
地方の公示地価変動率
大都市圏以外の地方の公示価格は前年の価格を維持しています。
下の地図は、都道府県別の住宅地の公示価格の動向を表したものです。
国土交通省「都道府県別地価動向『住宅地(地図)』(令和3年度)」より
地価が下落した地域でも、下落率が2%以上だった都道府県はなく、ほとんどが微減に留まりました。
北海道、宮城県、千葉県、福岡県、佐賀県、熊本県、大分県、沖縄県の8道県が上昇しました。



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用途別の不動産価格の動向
前述の通り、新型コロナウイルスの感染拡大が不動産価格に与えた影響の大きさは、不動産の用途ごとに異なります。
本章では「住宅地」「商業地」「工業地」に分けて、2022年の公示価格の動向を考えていきましょう。
住宅地
下のグラフは全国の住宅地の公示価格の推移です。
国土交通省「地価不動産鑑定『変動率及び平均価格の時系列推移表』(令和3年)」より編集部作成
全体的に見て、住宅地の公示価格はコロナ禍においてもほとんど影響を受けませんでした。
しかし、物件の価格は不動産の種類によっても傾向が変わることがあります。
それぞれの不動産の種類別の価格の動向を見ていきましょう。
- 中古マンション
- 一戸建て
- 土地
中古マンション
中古マンションの価格変動は以下のグラフのようになっています。
コロナショックを受けて、2020年4月に中古マンションの成約件数は大きく減少しましたが、その後は徐々に回復し、2021年3月には直近の最高値だった2020年2月を超えました。
平米単価についてはコロナ禍以前より下落傾向にありましたが、コロナ禍の2020年6月からは上昇傾向に転じています。
新築マンションの価格は、都心を中心に頭打ち気味と言われてはいるものの、マンション需要は依然として旺盛です。
一戸建て
一戸建ての流通市場は、2020年4月時点で成約件数、成約価格ともに過去数か月で最低に落ち込みましたがその後は増加に転じ、2022年に入っても増加傾向は続いています。
外出自粛やリモートワークによって「おうち時間」が増えたことをきっかけに、すまいの環境をより充実したものにしようとするニーズの高まりが推察できます。
土地
土地についても他の用途と同様に順調に回復を見せています。
コロナ禍による大きな落ち込みは、今のところ一時的なものであると考えられます。
一方で、地価の下落が続いている地域もあり、土地価格は二極化が進んでいます。
商業地
下のグラフは全国の商業地の公示価格の推移です。
国土交通省「地価不動産鑑定『変動率及び平均価格の時系列推移表』(令和3年)」より編集部作成
工業地の公示価格は、2021年も引き続き上昇しました。
これは、「巣ごもり重要」に伴うインターネット通販の需要拡大により、物流施設を建設する用地確保の動きが強まったからと考えられます。
ただし上昇幅は縮小しており、今後のニーズの動向が注目されます。
工業地
下のグラフは、全国の工業地の公示価格の推移です。
国土交通省「地価不動産鑑定『変動率及び平均価格の時系列推移表』(令和3年)」より編集部作成
工業地の公示価格は、2021年も引き続き上昇しました。
これは、「巣ごもり重要」に伴うインターネット通販の需要拡大により、物流施設を建設する用地確保の動きが強まったからと考えられます。
ただし上昇幅は縮小しており、今後のニーズの動向が注目されます。
不動産価格を調べる方法
上記で説明した不動産価格は、全国と幅広い不動産の価格指数を紹介してきましたが、この章では自分が住んでいる不動産価格を調べることが可能です。
以下では、不動産価格を調べる方法を4つ紹介していきます。
- すまいステップエリアページ
- 土地総合情報システム
- レインズ・マーケット
- 不動産サイトの物件情報
すまいステップエリアページ
すまいステップのエリアページでは、各県の市区町村を対象に不動産価格を確認できます。
- 市区町村の地価推移
- 人口・世帯数の推移
- 市区町村の不動産売却相場
- 市区町村の不動産取引例
上記の情報をすまいステップのエリアページで確認できます。ぜひ利用してみてはいかがでしょうか。
不動産価格を知りたい方は→すまいステップエリアページ
土地総合情報システム
国土交通省が不動産購入者に対して行ったアンケート調査に基づき、実際に取引された不動産価格の情報などを掲載しているサイトです。
物件の特定はできませんが、自分の住んでいる地域を指定すると、以下の情報が確認できます。
- 取引総額
- 土地面積
- 土地坪の単価
- 建物延べ面積
- 構造
- 取引時期
以上の情報が確認でき、地図上からの検索も簡単にできます。
レインズ・マーケット
国土交通大臣が指定した、全国指定流通機構連絡協議会が保有している、実際に売買が行われた物件価格などの情報を知れるサイトになっています。
物件の特定はできませんが、マンションや戸建て、特定の地域を指定すると過去に売買が成立した物件価格や製薬時期などが確認できます。
不動産サイトの物件情報
不動産サイトでは現在売却中の物件情報が掲載されており、特定の地域と物件情報を検索することで、現在の不動産価格を知ることが可能です。
ここで注意点があり、あくまで売り出し価格であり、成約価格ではありません。
そのため、相場より価格が高く設定されている可能性もあります。
相場を調べてから、不動産サイトの物件情報を調べると良いでしょう。
売却相場を知りたいなら一括査定もおすすめ
不動産売却を考えているのであれば、不動産査定をおすすめします。
また、不動産一括査定の依頼をすれば、複数社の不動産会社から査定額が提示され、自分が所有している不動産の相場を確認できます。
一括査定サイトはたくさんあり、その中でもおすすめなのが「すまいステップ」です。
すまいステップは2020年に誕生したサービスながら、すでに全国47都道府県中、43都道府県をカバーしています。(2022年現在。一部対応エリア外あり。)
そのため首都圏に限らず、地方の不動産を売却したい人にもおすすめできる不動産一括査定サイトです。



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今後の不動産価格はどうなる?
今後の不動産価格の変動についてはさまざまな見解がありますが、現状では「これまで上昇し続けていた価格が一時停滞する」という意見も多いようです。
不動産の価格変動にマイナスの影響を与える要因には以下の問題が考えられます。
- コロナウイルスの影響
- 2022年問題
- 東京オリンピック後の影響
- 2025年開催の大阪万博
本章ではそれぞれの観点から今後の動向を詳しく見ていきましょう。
コロナウイルスの影響
一つ目の大きな要因は「新型コロナウイルス感染拡大の影響」です。
現在も新型コロナウイルスは経済に大きな影響を及ぼしており、不動産取引にも一部影響を与えています。
現状かなりの経済的なダメージがあると予測されている為、不動産価格の一時的な下落は避けられないのではないかと考えている専門家もいます。
しかし、「下落は一時的なものである」との声も多く、それほど時間がかからずに回復するのではないかという見方もあります。
その理由として、特に住居系不動産の需要が高いことがあります。新型コロナの影響で在宅時間が増えたことにより、新築建売住宅やマンションの販売が増加している傾向も見られます。
とはいえ、変種のウイルスも拡大しており、今後の動向をしっかりと見守っていく必要がありそうです。
2022年問題
2022年問題とは、2022年以降に宅地の供給が急増し不動産価格の下落や空き家が増える可能性があるという問題です。
1992年施行の改正生産緑地法により、30年間または終身営農の義務を負うことで市街地にある一定の農地は「生産緑地」として固定資産税や相続税が大きく優遇されていました。
しかしその当時に生産緑地の指定を受けた農地が2022年に期限を迎えます。
その結果、固定資産税の増加に耐えられない農家が農地を宅地に転換し大量の農地が宅地が供給されるために土地価格が下落するのではと懸念されています。
不動産の購入を検討している人にとっては、戸建てが安く買えるチャンスと捉えられます。
一方、売却や投資を考えている人にとっては、不動産の売却価格や賃料が下落する可能性があります。
ただし、国も不動産価格の暴落を避けるために2017年に生産緑地法を改正し、生産緑地の面積要件の引き下げや、10年間の特定生産緑地制度の創設、固定資産税の段階的な引き上げなどソフトランディングを図っているため、当初危惧されていたほどの影響は出ないとの観測もあります。
今後の推移を見守りたいと思います。
2025年開催の大阪万博
2025年に大阪万博が控えている関西圏では、不動産価格がどのように影響するのでしょうか。
東京オリンピックの時は、建設やインフラ整備によって早い段階から、地価上昇が始まり、不動産価格を上昇しました。
そのことも考えると、大阪万博でも、都市のインフラや不動産の開発は活発化になり、東京オリンピック同様に早期的に不動産価格、地価の上昇が見込まれています。



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不動産価格が変動する要因
ここまでで、最近の不動産価格の推移や今後の動向についてお話をしてきました。
さまざまな要因によって不動産価格は変動しますが、特にどのような要因が影響を及ぼしているのでしょうか。
不動産価格の変動につながる要因は大きく2つ。
- 経済や社会情勢の変化
- イベントの影響などによる需要の変化
それぞれについて詳しくお話していきましょう。
経済や情勢の変化
1つ目の価格変動の要因は「経済や社会情勢の変化」です。
不動産の価格に限らず、多くのものの価格は経済によって変化が伴います。
実際に、現在コロナウイルスの影響で経済が打撃を受けている為、不動産を含む多くの物の価格は下落する現象が見られます。
また、社会情勢なども価格変動には大きくかかわってきます。
例えば、人が都心に集まるような動きが近年見られており、その影響から都心の不動産価格は上昇している傾向にあります。
反対に、地方からは人が流出するため、不動産価格は下がっています。
このように社会全体でみた情勢も不動産価格の変動要因となります。
イベントの影響などによる需要の変化
2つ目の価格変動要因は「イベントの影響などによる需要の変化」です。
大きなイベントの開催が、不動産価格の変動要因になることがあります。
最もわかりやすい例がオリンピックです。
1章のグラフを見ると分かる通り、オリンピックが開催される年に近づくにつれて不動産価格は上昇し、特に開催地の東京都の不動産価格は高騰しています。
もちろんオリンピックだけが高騰の理由ではありませんが、オリンピックの開催によって多くの人が東京に集まると予測され、東京への投資需要が増加し、不動産価格の上昇につながると考えられるからです。
このような国際的な大規模なイベントは、海外からの日本への投資も生み出すため、不動産価格の変動に影響を与えます。
まとめ
今回は、不動産価格の動向や推移、そして調べ方などについてお話してきました。
現在新型コロナウイルスなどの影響で、不動産価格の動向には注意が必要です。変このような状況の中で、地価の動向に対する知識や情報をしっかりと持っていることはたいへん重要です。
不動産の売却を行う場合も、価格変動の要因や、実際の価格の調べ方を理解し、売却のタイミングをしっかりと押さえて成功を目指しましょう!
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参考:不動産市況見通しと動向・中古不動産の価格と今後の展望(外部サイト)
記事のおさらい
不動産価格が変動する要因は何ですか?
不動産価格は「経済や社会情勢の変化」と「イベントの影響などによる需要の変化」によって変動します。詳しく知りたい方は不動産価格が変動する要因は何ですか?をご覧ください。
現在の不動産価格は上昇傾向ですか?
2013年以降不動産全体の価格指標は上昇傾向でしたが、コロナ禍により2021年は商業地を中心として下落しました。住宅地については2極化が進んでいて、今後も上昇が期待できるエリアとそうでないエリアに分かれるとされます。詳しくは近年の不動産価格の動向とは?をご覧ください。
現在不動産価格の上昇が大きい地域はどこですか?
東京都の不動産価格が上昇を続けてきましたが、2021年はコロナ禍の影響で下落に転じました。詳しく知りたい方は2013年以降不動産価格は上昇傾向をご覧下さい。