「路線価」とは、地域の路線(道路)に面した標準的な宅地1㎡あたりの評価額のことです。路線価が定められている地域の土地を評価するときに用いるもので、課税価格を計算する基準になります。
一般的に「路線価」は「相続税路線価」を指すことが多いのです。
しかしもう1つ、「固定資産税路線価」もあります。この固定資産税路線価は、不動産の価値基準の1つになるものです。
路線価から固定資産税をもとめる計算方法を知り、不動産の価値を把握しましょう。
固定資産税路線価とは?
路線価には種類があり、そのうちの1つが「固定資産税路線価」です。固定資産税路線価についてさまざまなことを学びましょう。
固定資産税路線価の定義
固定資産税路線価は、市町村長(東京都区部では東京都知事)が固定資産税を課税するにあたり、定めるものです。
宅地を評価するために道路に面した標準的な宅地の1㎡あたりの価格のことをいいます。
このように、固定資産税路線価は、道路に対して評価される価格で、1㎡あたりの単価です。
国土交通省が公示する地価公示価格の7割を目処にした価格が設定されています。
3年に1度、評価が見直されています。
この固定資産路線価を基に、それぞれの宅地の状況に応じ、各宅地の固定資産評価額をもとめています。
路線価は公示されていて誰にでも分かるようになっている
路線価は「全国地価マップ」というサイトで公示されていて、誰にでも分かるようになっています。
住んでいる地域の「固定資産税路線価等」「相続税路線価図等」「地価公示価格」「都道府県地価調査価格」の4つの公的土地調査情報を閲覧できます。
この全国地価マップは、一般財団法人資産評価システム研究センターが提供しているサイトです。
知りたい情報マップの地図検索をクリックすると、検索トップページに遷移します。
国や地方公共団体が一般に公開している宅地価格に関して収集した情報を公開しているのです。
【参考:全国地価マップ】
固定資産税路線価は市町村の資産税課でも調べられる
住んでいる地域の固定資産路線価を調べる方法は全国地価マップのサイトを閲覧する以外にもあります。固定資産税路線価は市町村長(東京都区部では東京都知事)により決定されるので、役所の資産税課に行くことで、固定資産税路線価図を閲覧することが可能です。
インターネット環境が身近にあれば、全国地価マップのほうが簡単に調べることができますが、ネット環境が身近ではない人は、直接資産税課に行く方法をおすすめします。
土地の価格は1物5価とされる
不動産を売却する際の基礎知識として、土地の価格は「1物5価」とされるという言葉があります。1つの土地に5つの異なった価格があることをいますが、その詳細について確認しておきましょう。
「1物5価」とは
1物5価は、「公示価格」「基準地標準価格(都道府県地価調査価格)」「固定資産税路線価」「相続税路線価」「実勢価格」の5つの価格のことです。
物には「定価」と「実勢価格」があります。
取引価格となる「実勢価格」に加え、定価(公的価格)である「公示価格」「基準地標準価格(都道府県地価調査価格)」「固定資産税路線価」「相続税路線価」の4つの価格があるのです。
土地の値段は、国土交通省では対応しきれない部分を都道府県が補完するなどし、異なる価格が上手く補完し合って機能しています。
調査対象や発表の時期をずらすことで、細かい地価の動向を把握できるのです。
土地の固定資産税評価額から売値を計算する方法!実際の売却価格はいくら?
「公示価格」とは
地価公示価格(公示地価)は、国土交通省の土地鑑定委員会が毎年刊行している「地価公示」で調べることができます。
公示地価は、選定した標準地に対し、国土交通省が毎年1月1日時点の正常な価格を鑑定して3月下旬頃に公表。その価格が、一般の土地価格の指標になります。
公表対象は、原則として都市計画法による都市計画区域内です。
都市計画区域外でも、省令で定められた土地取引が相当程度見込まれる区域もあります。
公示された価格は、「一般の土地価格の指標」「公共事業用地の取得価格算定の基準」「適正な地価の形成に寄与する」ことが目的です。
価格は、「住宅地」「商業地」「宅地見込地」「準工業地」「工業地」「調整区域内宅地」に分類されて公示されます。
【参考:国土交通省「地価公示」】
「基準地標準価格(都道府県地価調査価格)」とは
基準地標準価格(都道府県地価調査価格)は、国土交通省が毎年公表している「都道府県地価調査」により、基準地価格(都道府県地価調査価格)を調べることができます。
都道府県地価調査価格は、毎年7月1日時点の各都道府県の基準値の正常価格を、9月下旬頃に公表しているものです。一般の土地取引の指標を目的にしており、公示地価の補完のような役割をします。
公示地価が1年間の間に動いたとしても、基準値標準価格(都道府県地価調査価格)を比べることで、ある程度の動きを知ることが可能です。
公示地価は都市計画区域内が主な対象ですが、基準値標準価格は、都市計画区域外の「住宅地」「商業地」「宅地見込地」「準工業地」「工業地」「調整区域内宅地」ではない「林地」なども含まれています。
【参考:国土交通省「都道府県地価調査」】
「相続税路線価」とは
相続税路線価は、土地の相続税や贈与税を算出する際に基準にする評価額のこと。
一般的には、「路線価」というと「相続税路線価」を差すことが多いです。
国土交通省の土地鑑定委員会が毎年1月1日を評価時点として3月に公示する公示地価の8割程度を目処に設定。
そして、国税庁(税務署)により、毎年1月1日時点の価格が7月初旬頃に公表されています。
土地全体の価格を指すのではなく、道路に価格が付くことが特徴。所有地に接している道路に付いた価格に、土地の面積を掛け合わせ、相続税を計算する際の評価額をもとめます。
【参考:国税庁「路線価図・評価倍率表」】
「実勢価格」とは
実勢価格は、実際に売買される際の価格です。
公的な土地価格は、土地の取引の目安になったり、税金の計算の際に利用したりする際に利用します。その公的な価格は、実際の売買の価格とは異なるものです。
土地の売買は、原則としてそのときの時価を基にします。買主と売主が合意することで売買が成立するので、合意した価格が時価に該当する実勢価格です。
不動産会社の広告等にある販売価格は、実勢価格ではありません。
売主が希望する価格を広告等に載せることは自由ですが、あまりにも高すぎると売れないので、周辺の取引事例などを参考に、適正価格を見積もっていきます。
「1物4価」とされることもある
「公示価格」「基準地標準価格(都道府県地価調査価格)」「固定資産税路線価」「相続税路線価」「実勢価格」で1物5価です。
「公示価格」と「基準地標準価格(都道府県地価調査価格)」は測量方法等同じ形式なので、基準地価格を公示価格の補完と捉える場合は、1物4価とすることもあります。
つまり1物4価は、「公示価格」「固定資産税路線価」「相続税路線価」「実勢価格」の4つの価格。「基準地標準価格(都道府県地価調査価格)」を「公示価格」の補完と考えた場合は、この1物4価になります。
「相続税路線価」と「固定資産税路線価」の違い
路線価は「相続税路線価」と「固定資産税路線価」の2種類があります。この2つの価格は混同しやすいのですが、異なる特徴を持つ価格です。その違いを比較すると、以下のようになります。
名称 | 相続税路線価 | 固定資産税路線価 |
---|---|---|
目的 | 相続税や贈与税等を算出する基準になるもの | 固定資産税を算出する基準になるもの |
価格の目安 | 公示地価の8割程度 | 公示地価の7割程度 |
担当 | 国税庁(税務署) | 各市町村(東京23区は東京都)の資産税課 |
路線価から固定資産税をもとめる計算方法
固定資産税路線価は固定資産税を計算するための基準となる価格です。路線価から固定資産税をもとめる計算方法を確認していきましょう。
路線価から固定資産税をもとめる理由
固定資産路線価格の計算方法を知ることで固定資産税が間違いがないか、不動産の価値を正確に把握できます。土地を売買する際には、その土地の販売価格が相場よりも高くなっていないか、適正な相場を把握する必要があります。損をしないために、固定資産税路線価が必要になるのです。
固定資産税路線価は、固定資産税、都市計画税、不動産取得税、登録免許税等の課税の基準となる数字を設定するための金額。この基準となる金額を定めないと税額を計算できません。
土地によって評価基準が異なると不公平です。固定資産税路線価を用いることで、それぞれ定められた道路の価格を基準にできるので、平等に課税できます。また、道路の価格に面積を乗じるだけで評価額が算出できるので、計算がわかりやすいというメリットもあるのです。
固定資産税路線価は土地の形状により「補正」が必要な場合もある
土地の形状により、補正が必要な場合もあります。そのために「画地補正率」というものを用います。画地補正率は、路線価を基準に各画地の評価額をもとめる際に、その土地の状態に応じて補正を行うための率です。奥行や形状や利用上の法的制限等がそれぞれ異なるので、用地地区ごとに区分されます。
【参考:画地補正率】
固定資産税の計算方法
基本的に固定資産税は、「課税標準額×税率」の計算式を用いて算出します。課税標準額は、土地や建物の価格です。そのため、土地や建物の価格に固定資産税の税率を掛け、固定資産税が算出できます。
通常、課税標準額は固定資産税の評価額と同一額です。しかし、課税標準の特例措置が適用される場合、または土地について税負担の調整措置が適用される場合などは、課税標準額が評価額よりも低くなることがあります。また、固定資産税は市町村ごとに異なることがあり、さらに土地や家屋には都市計画税が加算されることもあるので注意しましょう。
固定資産税=課税標準額×税率 |
固定資産税の計算方法の概要
「課税標準額」を算出するためには「固定資産税路線価」が必要です。路線価は1㎡あたりの価格なので、相当の面積を掛けたものが「固定資産税評価額」。そこに課税標準額の特例に応じた割合を掛けます。
次に負担水準を確認し、負担水準に応じた相当額が課税標準額となります。そして税率1.4%(市町村により異なる場合がある)を掛けたものが固定資産税です。このような流れで計算を進めていきます。さらに具体的に確認していきましょう。
固定資産税評価額を計算
固定資産税路線価を確認し、土地の価格となる固定資産税評価額を計算します。固定資産税評価額は、原則として3年間は同じ金額です。土地の評価額が計算できたら、次は課税標準額の計算をします。
課税標準額の特例に応じた割合を掛ける
住宅用地では、固定資産税と都市計画税で、それぞれ軽減制度があります。住宅1戸について200㎡まで、土地の価格が1/6に、都市計画税では1/3になるなど。このように大きな減額があるのです。
負担水準を確認する
負担水準とは、土地の固定資産税課税標準額を決定する際に必要な数値。その土地の課税標準額が固定資産税額と比較して、どの程度の水準にあるかを示す指標になります。具体的には、「前年度の固定資産税課税標準額÷(今年度の固定資産税課税標準額×課税標準の特例率)×100」で算出。負担水準が低い場合は、固定資産税額が急に増加しないように、一定の調整がなされます。
負担水準=前年度の固定資産税課税標準額÷(今年度の固定資産税課税標準額×課税標準の特例率)×100 |
負担水準に応じた相当額が課税標準額、税率1.4%(市町村により異なる場合がある)を掛けたものが固定資産税
本来は、課税標準額に税率1.4%(市町村により異なる場合がある)を掛ければ固定資産税が算出できます。課税標準額は、負担水準に応じた相当額です。住宅用地やそのほかの特別な土地の場合、軽減税率により税金が安くなります。
固定資産税路線価に関わる注意点
固定資産税路線価に関わる注意点についても知っておく必要があります。
土地の評価額が下がっても「負担水準」によって固定資産税が上がる場合もある
固定資産税路線価では、土地の評価額が下がっても「負担水準」によって固定資産税が上がる場合もあります。その理由は、土地に関わる固定資産税及び都市計画税は、評価額が急に上昇したとしても、税負担はゆるやかに上昇するように、課税標準額を徐々に上昇するという負担水準(負担調整措置)があるからです。
評価額が下がったのに固定資産税が上がる土地は、本来の課税標準額に比べて課税標準額が低くなっています。そのため、負担水準により本来の課税標準額によってゆるやかに上昇。課税の公平により、税負担の均等化を図るために行われています。
土地の地価の下落は3年毎の評価替えを待たずに固定資産税に反映される特例措置(下落修正)がある
土地や家屋は、原則として3年に1度資産を評価し直す「評価替え」が行われ、それまでの間の3年間の評価は据え置きです。固定資産の価格は、固定資産評価基準に基づき、各市町村が行います。宅地は、公示地価及び不動産鑑定評価からもとめられた価格等の7割を目処に評価。これが評価替えの仕組みです。
しかし、価格基準日以降も地価が一定以上下落していると認められた地域は、評価替えを待たずに土地の価格(評価額)の修正を行える特例措置があります。ただし、土地の価格が上昇している際は据え置きです。次回の評価替えの際に、価格(評価額)が上昇します。
価格に対する異議申し立てができる
下方修正があれば、固定資産税も下がります。そのため、反映されているか注意しておきましょう。価格に対する意義は申し立てができます。
固定資産税の価格に対する異議申し立ては、「審査の申出」と呼ばれているものです。納税通知書の交付を受けた日の翌日から3カ月以内に、文書を持ち固定資産評価審査委員会に審査の申出をすることができます。
不動産売却では土地や建物の評価を知ることは大事なこと
不動産を売却する際には、土地や建物の評価を知ることは大事なことです。そのため、適正な評価をされているかを自分で分かるようにしておくと、損をすることがなくなります。また、適正価格の評価をしてくれる不動産会社を選ぶことも重要です。
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