「路線価」は土地の評価額を求めるための指標で、税の計算に用いられるものですが、その土地の売却価格の目安を求めることにも活用できます。
取引実績の少ない地域だったり、公示地価から目安を求めにくい土地の価格を知りたい人は、この記事で紹介している計算方法をぜひ試してみてください!
また、土地の売却相場の調べ方は以下の記事で詳しく解説しています。
土地売却相場の調べ方!いくらで売れるか自分で調べる方法をわかりやすく解説!
「路線価」には2種類ある
「路線価」と呼ばれるものは2つあります。実際に調べる前に、まずはその違いについて押さえておきましょう。
相続税路線価
「路線価」というとき、一般的には相続税路線価のことを表します。相続税や贈与税の基準となる土地の評価額(相続税評価額)の計算に用いるものです。
国税庁がその年の1/1時点を基準として毎年評価を行い、7/1に発表します。価格の水準は公示地価(国が公表する土地の時価の目安)の約80%程度になるように設定されています。
固定資産税路線価
固定資産税の課税の基準となる土地の評価額の計算に用いるものです。そのほかに都市計画税、不動産免許税、登録免許税の課税の算出にも用いられます。
こちらは各市区町村が3年に1度、評価の見直しを行います。評価替えが行われる基準年の前年の1/1時点を基準として、基準年の4月に公表されます。価格の水準は公示地価の約70%程度になるように設定されています。
相続税路線価と固定資産税路線価の違いを以下の表にまとめました。
発表する機関 | 更新頻度 | 発表時期 | 評価の基準日 | 用途 | |
---|---|---|---|---|---|
相続税路線価 | 国税庁 | 毎年 | 7/1 | その年の1/1 | 相続税・贈与税の算出基準 |
固定資産税路線価 | 各市区町村 | 3年に1度(基準年) | 基準年の4月初旬 | 3年に1度の1/1 | 固定資産税などの算出基準 |
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相続税路線価が設定されていない地域においては、固定資産税評価額を代用して相続税評価額を求めることもあります。
こちらについては後の章でより詳しく説明します。
路線価図で路線価を調べてみよう
土地の価格は日々変動するため、いま現在の土地の価額に近いものを知りたいときには、毎年地価が反映される相続税路線価の方を利用しましょう。
路線価の載っている路線価図は、国税庁のサイトや全国地価マップから見ることができます。
ここでは国税庁のサイトに掲載されている路線価図から、「東京都渋谷区幡ヶ谷」の路線価を調べる手順を例に見ていきましょう。
まずはサイトを開きます。
国税庁「財産標準基準書 路線価図・評価倍率表」(https://www.rosenka.nta.go.jp/)
(出典:国税庁「路線価図・評価倍率表」(https://www.rosenka.nta.go.jp/))
次に調べたい都道府県のテキストか、地図上の位置をクリックします。
ここでは「東京都」の路線価を調べるので「東京都」をクリックします。
「路線価図」をクリックします。
調べたい市区町村をクリックします。ここでは「渋谷区」の路線価を調べるので「渋谷区」をクリックします。
ページ上部のご利用方法の横にある「この市区町村の索引図ページへ」をクリックし、知りたい場所をクリックしてください。
ここでは「幡ヶ谷」の含まれる場所をクリックします。
※地名から調べたい場合は五十音順に地名が整列しているため、その横にある路線価図ページ番号をクリックします。
(ページ番号複数ある場合は、クリックすると地図が表示されるので、自分の調べたい場所が地図に含まれているかどうか、実際に開いて確かめてください。)
この地図に表示されている「560C」や「680C」といった英数字が「路線価」となります。
数字の部分の「560」はその道路に面した土地の1㎡当たりの価額を1,000円単位で表すものです。
つまり
560×1,000=560,000円
が、この道路に面した土地の路線価になります。
数字の後ろについているアルファベット(「C」など)は、土地の借地権割合を表すものです。自用地(自分が土地の権利まで所有している)の場合は計算に用いません。
詳しくは後の章でご説明します。
実際の土地の評価額は面積だけでは決まらず、道路からの奥行などの土地の形状や条件も関わってきます。詳しい計算方法は次章以降で紹介します。
路線価による評価額の計算方法
路線価によって土地の評価額を求める方法を「路線価方式」といいます。この章では路線価方式の計算方法を具体的な例と共に見ていきます。
土地の一面が道路に面している場合
路線価が「1㎡あたりの土地の価額」であることは前章で確認しました。
つまり、路線価に面積を掛け合わせることで、土地の評価額を計算することができます。
以下の例で見ていきましょう。
この土地は面積(地積)が250㎡の土地で、路線価が200Dの道路に接しています。
自用地であるとすると、評価額を求める計算式は以下のようになります。
200×1,000×250㎡=50,000,000(円)
[路線価]×[地積]=[評価額]
更に実際の土地は、その「利用のしやすさ」によって価値が変動します。
土地の利用のしやすさを計算式に加味するために、「補正率」が用いられます。補正は以下の条件を加味して行われます。
- 土地の奥行の深さ(奥行価格補正率)
- 間口の狭さすぎないか(間口狭小補正率)
- 土地の形状がいびつであるか(不整形地補正率)
- 間口に対して奥行の割合が高すぎないか(奥行長大補正率)
- 土地の一部ががけ地状になっているか(がけ地補正率)
実際の補正率は国税庁ホームページの調整率表をご参照ください。
土地が複数の道路に面している場合
土地が複数の道路に面している場合、一面に面している場合よりも土地は利用しやすくなり、その価値が高まります。
そこで土地の評価を求めるときには、2種類の加算率を用いて価額を上乗せする補正を行います。
側方路線影響加算率
調べる土地が角地・準角地(※)に立地している場合に使用する補正率です。
路線価に奥行補正をかけた評価額が高い方の道路を「正面路線」、他方の道路を「側方路線」とし、正面路線の路線価に、側方路線の路線価に「側方路線影響加算率」を掛けた値を加算した値がこの土地の1㎡あたりの土地の評価額になります。
上図の例で具体的に見ていきましょう。
まず、道路Aと道路Bのどちらを正面路線にするかを検討します。
【道路Aの路線価を用いて計算した場合】
200×1,000×1.00=200,000(円)
【道路Bの路線価を用いて計算した場合】
205×1,000×0.97=198,850(円)
計算の結果、道路Aの路線価を用いて計算した場合の方が1㎡あたりの価額が高くなったため、道路Aを正面路線、道路Bを側方路線とします。
側方路線の影響の数値を、側方路線影響加算率を用いて求めます。
205×1,000×0.97×0.03=5,965.5(円)
[路線価]×[奥行価格補正率]×[側方路線影響加算率]=[側方路線の影響の価額]
円未満は切り捨てとなるので、5,965円が影響の価額になります。これを正面路線の路線価に加算します。
200,000+5,965=205,965(円)
最後に地積を掛け合わせて、土地の評価額を算出します。
205,965×250=51,491,250(円)
以上の計算により、この土地の評価額は51,491,250円であると求められました。
なお側方路線影響加算率は地区区分や角地・準角地の条件(※)によって異なるため、詳しくは国税庁ホームページの調整率表をご参照ください。
二方路線影響加算率
土地の正面と背面が道路に接している場合に使用する補正率です。
計算は側方路線影響加算率による補正と同様に行います。
評価額の高い方の道路を「正面路線」、低い方の道路を「後方路線」とし、正面路線の路線価に、後方路線の路線価に「二方路線影響加算率」を掛けた値を加算した値がこの土地の1㎡あたりの土地の評価額になります。
詳しい加算率は国税庁ホームページの調整率表でご確認ください。
借地権割合について
路線価を見るときに「460C」のように数字の後ろにアルファベットがついていました。
このアルファベットはその土地の借地権割合を表しています。
借地権とは、土地の所有者(地主)から土地を借りて建物を建てるなど利用する権利のことで、相続の対象になります。
借地権割合とはその土地における借地の権利の割合を示すものです。
自用地(自分が所有し使用する土地)の場合は路線価の数字のみを使用し、借地権の価額や賃土地の価額を求めるときにアルファベットに対応した割合を計算に使用します。
A | B | C | D | E | F | G |
90% | 80% | 70% | 60% | 50% | 40% | 30% |
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路線価から売却価格の目安を求めるには
路線価は公示価格の80%程度の水準になるように設定されています。
そして公示価格は平均して実勢価格の90%程度になっているため、求めた土地の評価額を1.1~1.2倍することで売却価格の目安を見ることができます。
よって、路線価方式および倍率方式で売却価格の目安を求める計算式は以下の通りになります。
(路線価方式による土地の評価額)÷0.8×1.1=(売却価格の目安)
ただし、公示価格と実勢価格は地域によって差異の程度が大きく異なります。計算で求められるものは、あくまでも目安に過ぎないことを心得ておきましょう。
路線価が設定されていない地域の場合
路線価が設定されていない地域で相続税や贈与税の課税の基準を求める場合には、固定資産税評価額に「倍率」という補正率の掛け算を行います。
倍率は、国税庁「路線価図・評価倍率表」の市町村のページ上部の「ご注意」の横にあるリンクから参照することができます。
また、固定資産税評価額は公示価格の70%程度の水準で設定されているため、売却価格の目安については以下の計算式で求めることができます。
(固定資産税評価額)÷0.7×1.1=(売却価格の目安)
ただし、固定資産税評価額の見直しは3年に1度行われるため、路線価による試算よりも地価変動の影響を見づらい点に注意が必要です。
所有している土地の固定資産税評価額は課税明細書で確認できます。紛失などでお手元にない場合は、各市町村または都税事務所に台帳の閲覧や証明書の取り寄せを申請することもできます。
一物五価を状況に応じて使い分けよう
土地の売却相場(売却価格の目安)を知りたいとき、実際の売買の取引価格である「実勢価格」が一番参考になります。
しかしながら土地というものは唯一無二のものであるだけでなく、実際の取引の場面では買主と売主の事情や交渉も価格に影響を及ぼします。そのため似たような条件の土地を売りに出す場合でも、その価格通りの売却価格になるとは限りません。
また実勢価格は成立した売買の取引事例を調査によって掲載しているため、近隣の地域に取引履歴がなければそもそも参考にすることもできません。
そうしたときに、国や自治体の発表する価格指標を用いた試算が相場の把握に役立ちます。
この記事では「路線価」の調べ方と計算方法を解説しましたが、その他の指標についても以下の表で簡単にご紹介します。
本来の用途 | 評価の基準日 | 価格の水準 | 特徴など | |
---|---|---|---|---|
実勢価格 | 実際に売買される価格 | – | – | ・実際の価格 ・買主と売主の事情が大きく影響する |
公示地価 (公示価格) | 土地取引の適正価格の指標とするため | 毎年1/1 | 平均して実勢価格の約90% | ・調査地点は約26,000ヶ所 ・標準地は都市部中心 ・毎年発表されるので地価変動がわかりやすい |
基準地価 (基準地標準価格) | 土地取引の適正価格の指標とするため 公示地価の補完 | 毎年7/1 | 公示地価と同じ | ・調査地点は約2万ヶ所 ・都道府県が調査、都市計画区域外も対象 ・公示地価発表から半年間の地価変動がわかる |
相続税路線価 | 相続税・贈与税の算出のため | 毎年1/1 | 公示地価の約80% | ・調査地点は約33万ヶ所 ・主要都市の道路についてはほぼ指標が設定されている ・毎年発表されるので地価変動がわかりやすい |
固定資産税標準価格 (固定資産税路線価) | 固定資産税などの算出のため | 3年に1度の1/1 | 公示地価の約70% | ・その土地の固定資産税を支払っている人なら知ることができる ・評価見直しは3年に1度 |
土地評価額の調べ方と計算方法を解説!調べる評価額は目的に応じて決まる!
公示地価や基準地価は、土地の取引を前提に、公的機関が調査して発表する客観的な価格ですが、調査地点には限りがあることから自分で土地の価格の目安を調べたいというときには参考にできないケースもあるでしょう。
路線価は本来課税額の算出に使用するものではありますが、これを用いた査定は「自分の土地に合わせた価格の試算を自分でしたい」という場合には適しているといえます。
より明確に土地の価格を知るためには
路線価によって、その地域における土地の大まかな相場を知ることはできますが、実際に売却する場合にはより細かな条件が価格に関わってきます。
ご自身の土地の価格について、より明確に知りたい方は不動産の一括査定サービスを利用してみましょう。
1度に複数の不動産会社に見積もり依頼をすることができるので、土地の評価のポイントを比較することで、より有利な売却をめざせます。
記事のまとめ
- 路線価を調べるには路線価図を利用しよう
- (路線価)×(土地の面積)×(各種補正率)=(土地の評価額)
- (土地の評価額)÷0.8×1.1=(売却価格の目安)
- 計算で求められるのはあくまでも目安であることに注意しよう