共有名義の不動産を売却する場合や、遠方の不動産を売却する場合には、「委任状」が用いられることがあります。
委任状があれば、不動産の名義人が不在の場合でも、代理人が不動産売却を行うことができます。
とても便利な委任状を用いた不動産売却ですが、きちんと注意点を抑えていないと、詐欺・トラブルに巻き込まれるリスクもあります。
この記事では、委任状を用いた不動産売却について、基礎知識や注意点を解説していきます。
不動産売却における委任状とは?
はじめに、不動産売却における委任状とはどのようなものなのかを見ていきましょう。
委任状は、不動産の売買契約に不動産の名義人が立ち会えない場合に、代理人を立てるために必要になります。
不動産の売買契約は、原則名義人全員の立ち会いのもとで行われます。
しかし、売却する不動産が遠方にあるケースや、名義人が複数人いて日程調整が難しいケースでは、名義人全員の立ち会いが現実的でないこともあります。そのような場合に、立ち会えない不動産の名義人が代理人を任命するのに委任状を用いるのです。
代理人には法定代理人・任意代理人の2種類がありますが、委任状により任命されるのは任意代理人です。
代理人は本人に代わって法律行為を行うことができるので、実質的に本人と同等の権限を持ちます。
そのため、信頼できる人にだけ委任状を渡すということが大切です。絶対に裏切らないと思える、もしくは、裏切られても許せる間柄の人を代理人に指名することをおすすめします。
不動産売却の委任状の書き方と注意点
この章では、実際に委任状を書く際に気をつけるべきポイントを確認していきましょう。
不動産売却で委任状を書く場合には、以下のことに気をつけましょう。
- 委任状の書式には指定がない
- 委任する内容は限定して明記する
- 委任事項の最後に「以上」と記載する
- 曖昧な表現を用いない
- 実印で押印する
- 捨印は押印しない
それぞれのポイントの詳細について、以下で詳しく確認していきます。
①委任状の書式には指定がない
はじめに知っておいて頂きたいのが、委任状の書式には指定がないということです。
そのため、本人と代理人の名前・住所と委任内容が記載され、押印がなされていれば、内容に関わらず委任状として成立してしまいます。
このことを知らず、「これは決まった書式だから……」と不当な委任事項を記載した委任状に判を押してしまうケースもあります。
委任状の記入を頼まれた場合は、記載事項をすべて確認し、おかしな点がないか確認してから記入しましょう。
また、委任状の内容に不備・不足があれば、必ず追記した上で押印してください。
②委任する内容は限定して明記する
委任状によって任命された代理人は、本人同様の強い権限を持ちます。そのため、委任する事項を限定しない委任状に押印すると、何をされても文句が言えないというような状況に陥ります。
委任状を作成する際には、必ず細かな委任事項を明記しましょう。
委任内容に制限をつけない「白紙委任」を行ったために、非常に不利な条件で売買契約を結ばれてしまうといったトラブルはよくあります。
この場合、代理人と売り主は共謀しており、売り主から代理人にキックバックを渡すなどの密約が交わされていることが多いです。
不動産売却の委任状の場合は、以下のような情報を委任状に記載するべきです。
特に気を付けてほしいのが、委任日と委任状の有効期限です。
委任状による不動産売買で万が一トラブルに巻き込まれた場合に、代理権の有効だった期間を限定することができます。
ただ、制限をかけすぎると、かえって契約がうまく進められないといったケースもありえます。そのため、可能であれば、起こり得るケースに応じて権限を少しずつ変え、委任状を複数枚用意するのがよいでしょう。
③委任事項の最後に「以上」と記載する
委任事項の最後には、必ず「以上」の記載をしましょう。
これは、委任事項の終わりを明示し、第三者による追記を防ぐためです。
④曖昧な表現を用いない
委任状の内容について、「すべて」「一切の件」などの曖昧な表現は使わないようにしましょう。
先の委任事項の明記の話とも繋がりますが、限定的でない委任事項の記載は、代理人の権限を限りなく広げてしまいます。
代理人の権限を広げることで代理人が自己判断できる部分が増え、結果的に本人の望まない条件での不動産の売買に繋がることもありえます。
⑤実印で押印する
委任状に押す印鑑に指定はありませんが、不動産などの高額なものの売買契約を結ぶ場合、実印を用いることが通例です。
シャチハタ・三文判などを使用すると、売買契約の相手方に不安を感じさせる可能性があります。
売買契約は両者の合意がなければ成立しませんので、信頼を損なうような行為は避けるべきです。不動産売却で委任状を書く場合は実印を使いましょう。
⑥捨印は押印しない
捨印とは、文書の余白部分にあらかじめ判を押し、内容に訂正がある場合に訂正印として使えるようにしておくものを指します。
捨印に押印してしまうと、代理人が委任事項の範囲などを自由に変更できてしまいます。
そうなると売買契約の条件を本人の望まないものにされる可能性があるので、委任状には捨印を押さないことが原則です。
委任状に捨印を押してしまったことで、あとから委任する権限を変更されるというトラブルが実際に起こっています。
いくら信頼して委任するとはいえ、このような状態を作り出すのは非常にリスキーなので、絶対に避けましょう。
もし「捨印を押してほしい」といった要望を関係者からもらっている場合でも、応じないようにしましょう。
不動産売却の委任状のひな形
この記事をお読みの方の中には、このように思われている方もいるかもしれません。
自分で委任状の作成をするのが不安な方のために、この章では不動産売却の委任状のひな形をご紹介します。
以下のテキスト・画像に沿って不動産売却の委任状を書いてみてください。
不動産売却のひな形コピペ用テキスト
【委任状】
委任者 は を代理人とし、下記の条件で下記不動産の売買契約を結ぶ権限を委任します。
1. 売買物件の表示項目
(土地)
所在:
地番:
地目:
地積:
(建物)
所在:
種類:
構造:
床面積:
2. 売却の条件
(I)売却価格:金 円
(II)引渡し予定日:令和 年 月 日
(Ⅱ)契約解除時の違約金額:売却価額の %相当額以上で、協議の上決定する。
(Ⅲ)公租公課の分担起算日:引渡し日
(Ⅳ)そのほかの条件:上記の条件に定めのない項目や履行に変更が生じた場合は、その都度協議の上決定する。
3. 委任状の有効期限:令和 年 月 日
以上
令和 年 月 日
委任者氏名: ㊞
委任者住所:
代理人(受任者)氏名: ㊞
代理人(受任者)住所:
こちらを使う場合は、WordやGoogleドキュメントなどにテキストを貼り付けて委任状を作成して印刷がおすすめです。
もしくは、上記に掲載されている内容を手書きで1枚の紙に書き写したものでも問題ありません。なお、手書きで委任状を作成する場合は、勝手に変更が行われないよう、鉛筆・シャープペンシルやフリクションボールペンは使用しないようにしましょう。
不動産売却のひな形テンプレート画像
こちらの画像をダウンロードし、A4サイズの紙に印刷したものを委任状として用いることもできます。
不動産の委任状の記入例
委任状を用いて不動産売却をする際の必要書類
委任状を用いて不動産売却を行う際には、以下の書類を用意する必要があります。
- 委任状
- 不動産の名義人(委任者)の印鑑証明書
- 不動産の名義人(委任者)の住民票
- 代理人の印鑑証明書
- 代理人の住民票
住民票・印鑑証明書は、売買契約時においては発行から3ヶ月以内のものが必要です。
また、売却する不動産の鍵や固定資産税通知書などを所有している場合は、代理人に預けておきましょう。
まとめ
この記事では、委任状を用いた不動産売却について、基礎知識や注意点を詳しくご説明しました。
不動産トラブルや詐欺に巻き込まれて不利な状況に陥ることがないよう、委任状の記入・作成には細心の注意を払いましょう。
「自分で委任状を作るのは不安……」「この委任状って判を押して大丈夫な内容なの?」
不動産売却の委任状に関して心配事がある場合は、不動産会社に相談してみることをおすすめします。
不動産会社は不動産売却のプロなので、委任状の記載内容等についてもアドバイスをもらうことが可能です。
以下のフォームから複数の不動産会社に不動産査定を依頼することができるので、委任状の必要な不動産売却を行う際にはぜひご利用ください。
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