不動産の所有者が亡くなったり変わる場合には、不動産の名義変更手続きが必要です。
しかし、不動産の名義は頻繁に変更するものではありません。そもそも不動産の名義変更をどうやって行うのか、どんな費用や必要書類が必要なのかなどわからないことが多いと思います。
この記事では、不動産の名義変更の流れや費用、必要書類などから詳しく解説しています。
不動産名義変更の流れ
不動産の名義変更は、以前の所有者と新しい所有者が共同で行います。不動産売買の場合は、不動産の決済時に売主・買主だけでなく双方の不動産会社・金融機関・司法書士も立ち会います。
ただし、所有者が亡くなっていて不動産を相続する場合などは新しい所有者が単独で手続きをします。また、司法書士などの代理人に手続きを依頼もできます。
この章では、不動産名義変更手続きの流れを解説していきます。
必要書類を集める
まずは、不動産名義変更に必要な書類を各市町役場などで集めましょう。必要書類は、相続・離婚・贈与・売買契約などによって異なるので、よく確認してください。
不動産名義変更に必要な書類で解説しているので、こちらを参考にしてください。
登記申請書を作成する
法務局のホームページで書式をダウンロードして、「登記申請書」を自分で作成しましょう。登記申請書には決まった形式はありませんが、いくつかルールがあるので注意しましょう。
登記申請書の書き方で不安がある場合、法務局の名義変更の手続き案内で相談できたり、司法書士に依頼できます。
法務局に申請をする
登記申請書と書類を不動産を管轄する法務局に提出して、申請をしましょう。登記申請書の提出方法は、以下の3つから選択しましょう。
- 法務局の窓口で直接提出する
- 登記申請書や書類を法務局に郵送する
- 法務局が提供する登記・供託オンライン申請システムでオンライン申請する
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不動産名義変更で必要な費用・書類とは?
こんな疑問を持っている方もいらっしゃると思います。本章では、不動産名義変更に必要な費用や書類について詳しく解説していきます。
不動産名義変更にかかる費用
不動産名義変更時に必ずかかる費用は以下の通りです。
税金名 | 概要 | 目安 |
---|---|---|
登録免許税 | 不動産の所有者を変更する時に必ずかかる税金 | 固定資産税評価証明書に記載された不動産の評価額×0.4% |
必要書類の取得費用 | 不動産名義変更に必要な各書類の取得費用 | 1通300~600円 |
司法書士への報酬 | ※不動産名義変更を司法書士に依頼する場合にかかる報酬費 | 4~5万円 |
参考:国税庁「登録免許税の計算」日本司法書士会連合会「報酬費アンケート結果(2018年)」
登録免許税は、固定資産評価額によって決まります。以下は、固定資産評価額の応じた登録免許税を算出した表です。
固定資産評価額 | 相続の場合の登録免許税 | 贈与、財産分与、不動産売買の場合の登録免許税 |
---|---|---|
500万円 | 2万円 | 10万円 |
1,000万円 | 4万円 | 20万円 |
2,000万円 | 8万円 | 40万円 |
3,000万円 | 12万円 | 60万円 |
5,000万円 | 20万円 | 100万円 |
8,000万円 | 32万円 | 160万円 |
1億円 | 40万円 | 200万円 |
また、相続・離婚・贈与・不動産売買など変更するきっかけによってその他にかかる税金・費用があります。
きっかけ | 税金名 | 概要 | 目安 |
---|---|---|---|
相談 | 相続税 | 亡くなった人の財産を引き継いだ際にかかる税金 | 不動産の価格×10%~55% ※金額が多いほど税率が上がる |
離婚 | 譲渡所得税 | 不動産を売却・譲渡した際に発生した利益にかかる税金 | 不動産の売却価格-不動産を売却した時にかかる費用-不動産を購入した時にかかる費用-特例の控除額 ※不動産を所有した人にかかる |
贈与 | 譲渡所得税・贈与税 | 贈与税:無償で財産をやり取りする際にかかる税金 | 不動産の価格×10%~55% ※金額が多いほど税率が上がる |
不動産売買 | 譲渡所得税・不動産取得税 | 不動産取得税:不動産を新たに取得した時にかかる税金 | 建物の固定資産税評価額×3%+土地の固定資産税評価額×3% |
参考:国税庁「相続税の税率」「譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」「贈与税の計算と税率(暦年課税)」総務省「不動産取得税」
ご自身で全て把握することが難しい場合は、税金についてのプロである税理士に相談しましょう。
不動産名義変更で必要な書類
不動産名義変更では、必ず必要な書類と変更するきっかけによって必要な書類があります。不動産名義変更で必ず必要な書類は以下の通りです。
不動産名義変更に必要な書類は、変更するきっかけによって異なります。この章では、相続・離婚・贈与・不動産売買にわけて解説していきます。
必要書類 | 概要 | 取得場所 |
---|---|---|
登記申請書 | 必要な事項を記載した申請書 | 自分で作成する ※法務局のHPから様式を取得可能 |
登記事項証明書 | 不動産の今までの権利関係の変動などを表す情報 | 法務局 ※法務局が提供する登記・供託オンライン申請システムや法務局のHPでダウンロードできる登記事項証明書交付申請書で取得可能 |
登記識別情報 | 登記所から通知される情報で名義人の本人確認のための書類 | 自分で保管してある書類を使用する ※不動産を取得された際に発行された書類 |
印鑑証明書 | 名義人の登録した住所、氏名、旧氏、通称、生年月日などを証明する書類 | 住所地の市区役場 ※発行して3か月以内の書類のみ有効 |
住民票 | 名義人の本籍及び登記上の住所と同じ住所が記載されている書類 | 住所地の市区役場 |
固定資産評価証明書 | 登録免許税を算出するために使う固定資産の価格を証明する書類 | 不動産の住所地の市区町村役場から毎年6月に送られてくる課税明細書に記載してある |
戸籍謄本 | 当事者が名義人の権利を有していることを証明する書類 | 住所地の市区役場 |
必要書類については、原則、原本で提出する必要があるので、コピーは不可となっています。
相続による名義変更時のみに必要な書類は以下の通りです。
必要書類 | 概要 | 取得場所 |
---|---|---|
相続人全員の印鑑証明書 | 登録した住所、氏名、旧氏、通称、生年月日などを証明する書類 | 住所地の市区役場 ※発行して3か月以内の書類のみ有効 |
相続人全員の住民票 | 相続人の本籍及び登記上の住所と同じ住所が記載されている書類 | 住所地の市区役場 |
相続人全員の戸籍謄本 | 当事者が相続人の権利を有していることを証明する書類 | 住所地の市区役場 |
相続人全員の除籍謄本 | 死亡、婚姻、離婚、転籍等の事由により戸籍から除かれた経緯があるか証明する書類 | 住所地の市区役場 |
被相続人の出征から死亡までの連続した戸籍謄本 | 被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの経緯が分かる書類 | 住所地の市区役場 |
被相続人の除籍謄本 | 被相続人が死亡、婚姻、離婚、転籍等の事由により戸籍から除かれた経緯があるか証明する書類 | 住所地の市区役場 ※、「被相続人の登記上の住所」が「戸籍謄本、除籍謄本」に記載された本籍」と異なる場合 |
被相続人の住民票 | 被相続人の本籍及び登記上の住所と同じ住所が記載されている書類 | 住所地の市区役場 ※、「被相続人の登記上の住所」が「戸籍謄本、除籍謄本」に記載された本籍」と異なる場合 |
被相続人の住民票の除票 | 被相続人の本籍及び登記上の住所と同じ住所が記載されている書類 | 住所地の市区役場 ※、「被相続人の登記上の住所」が「戸籍謄本、除籍謄本」に記載された本籍」と異なる場合 |
被相続人の戸籍の附票 | 戸籍の表示及び登記上の住所と同じ住所が記載されている書類 | 住所地の市区役場 ※、「被相続人の登記上の住所」が「戸籍謄本、除籍謄本」に記載された本籍」と異なる場合 |
遺言書 | 被相続人が生前に作成した被相続人の家を引き継ぐ割合などを示した書類 | ※被相続人が作成した場合のみ |
相続関係の図説 | 被相続人と法定相続人の続柄を証明する書類 | ※戸籍謄本の原本の返却を希望する場合のみ |
遺産分割協議書 | 被相続人の不動産をどのように分けるかを法定相続人で話し合い、その結果をまとめた書類 | 自分で作成 ※法定相続人全員の署名捺印をする必要がある |
ケース | 必要書類 | 概要 | 取得場所 |
---|---|---|---|
離婚 | 財産分与契約書 | 不動産などをどのように分けるかを夫婦で話し合い、その結果をまとめた書類 | 自分で作成 |
贈与 | 贈与契約書 | 不動産の贈与の内容(当事者や対象となる物件)を記載した書類 | 自分で作成 ※法務局HPで様式が取得可能 |
不動産売買 | 売買契約書 | 売買契約で決められた内容を記載した書類 | 不動産会社が作成 |
不動産名義変更はどこで行うの?
不動産の名義変更は、不動産の所在地を管轄する法務局で行います。
法務局は、土日休みで平日の8時30分から17時15分まで空いているので注意しましょう。管轄の法務局は以下のページから参照できるので、是非活用してください。
不動産名義変更は自分でできる?
結論からお話しすると、不動産の名義変更は自分で行う事が可能です。一般的には司法書士などのプロに依頼する事が多いですが、手続き上プロに依頼しなければならないというルールはありません。
自分で名義変更を行えれば司法書士に依頼した場合にかかる費用を節約できます。
おすすめのケース
以下のようなケースに該当する場合、自分で手続きをすると良いでしょう。
▼自分で手続きをするのにおすすめなケース
- 平日に不動産を管轄する法務局に複数回出向ける
- 不動産を管轄する市役所などに直接出向ける
- 戸籍謄本の解読ができる
- 不動産の権利関係を正確に把握している
自分で不動産名義変更を行う場合、法務局が名義変更の手続き案内をしてくれ、不動産名義変更に必要な情報を提供してくれます。
ただし、不動産の権利関係などについては取り扱っていません。また、不動産は高額な財産でトラブルが発生する可能性もあるので、不安な場合は専門家である司法書士に相談しましょう。
以下のURLから「法務局手続案内予約サービス」が活用できるので、相談したい方は利用してください。
注意点
ただし、自分で行うとなると、書類の作成や資料集めなどを全て自分で行わなければならず、労力と時間がかなりかかります。相続など不動産の権利関係が複雑な場合も、自分たちで権利関係を把握・整理する必要があります。
また、必要書類に漏れが発生してしまい不動産の名義変更ができていなかったなどのケースがよくあります。
不動産名義変更は誰に依頼すればいい?
「手続きは誰かに依頼しましたか?」という質問に対して、54%の人が司法書士に依頼しています。
引用:イエウール「不動産相続の手続きと流れ!相続登記の義務化についても解説します」(2024年1月15日閲覧)
司法書士に依頼すれば、必要な書類の収集や法務局での手続きなどを代行してくれます。また、司法書士による不動産登記の手続きは、基本的に不動産が国内のどこであっても対応できます。
おすすめのケース
以下のようなケースに該当する場合、司法書士に依頼すると良いでしょう。
▼司法書士に依頼するのにおすすめなケース
- 平日に自分で手続きを行う時間が取れない
- 不動産を管轄する法務局が遠方にある
- 相続などで権利関係が複雑
遠方にある不動産の名義変更を依頼する時、現地の司法書士に依頼した方がよいのではないかと思うこともあるかもしれませんが、あまり関係ありません。自分が今住んでいる近所に司法書士事務所に依頼すれば十分です。
注意点
司法書士に依頼する場合、司法書士に支払う報酬費がかかるので注意しましょう。報酬費は、事務所ごとに設定されていますが、司法書士に支払う報酬費として平均約4~5万円(参考:日本司法書士会連合会「報酬費アンケート結果(2018年)」)かかります。
不動産名義変更の注意点
不動産名義変更をする上での注意点が、いくつかあるので解説していきます。
現在の名義人を登記情報提供サービスで確認しておく
手続きを行う前に、現在の不動産の名義人を法務局が提供する登記情報提供サービスで確認しておきましょう。被相続人が、家の所有権を持っていなければ、そもそも名義変更ができないからです。
現在の不動産の名義人を確認は「登記事項証明書」を取得して行います。
不動産の名義人や権利関係、過去の取引情報を証明する書類です。
不動産名義変更の申請はオンラインでもできる
不動産名義変更の申請は、法務局が提供する「かんたん登記申請」からオンラインで行えます。
オンラインで申請する場合には、必要書類をオンラインで送信後、後日、法務局に必要書類を郵送又は持参することで、手続を進められます。
不動産名義変更には1か月がかかる
不動産の名義を変更するために、事前に必要な書類などを揃えて準備する必要があります。
相続の場合、手続きに必要な書類が非常に多く、手続き自体も少し複雑です。そのため、名義変更に時間がかかる可能性があります。
スムーズな変更が難しい場合、司法書士に相談できるので是非活用しましょう。相続で不動産を取得した場合の名義変更について以下の記事で詳しく解説しているので、参考にしてください。
不動産名義変更を早めにしよう!
特に不動産をこれから売却しようか検討している方は、「思ったよりも名義変更に時間がかかってしまい、売却がスムーズに進まない…」という状況を避けるためにも準備しましょう。
不動産の売却は、一般的に6か月以上かかります。すまいステップでは、2023年12月28日から2024年1月10日にかけて、戸建て売却の経験者83名を対象に「戸建ての売却にかかった期間」についてアンケートを行いました。
不動産の売却には時間がかかるので、早めに不動産売却会社に相談しましょう。
手軽に不動産に相談したい方は、不動産一括査定サイトを利用してみてください。不動産一括査定サイトは、パソコンやスマートフォンで不動産の物件情報を入力するだけで、複数の不動産会社にまとめて査定を依頼できます。
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