不動産を売りたい時に、「不動産鑑定」「不動産査定」の両方を目にするのではないでしょうか。
文字面を見れば同じような意味に感じられるかもしれませんが、それぞれは違った意味を持ちます。一番の違いとしては不動産鑑定は有料である一方で不動産査定は無料で利用できます。
そこで今回は、不動産鑑定の費用相場を中心に、不動産鑑定と不動産査定の違いを紹介していきます。
不動産鑑定の費用相場
そもそも不動産鑑定とは、不動産の経済価値を判定することを目的に不動産鑑定士という専門資格者に不動産評価額の算出を依頼することを指します。
不動産鑑定については以下の記事で詳しく解説しています。
では、不動産鑑定を依頼する際には費用がどれほど発生するのでしょうか。
不動産鑑定の費用は20万円程度が相場
不動産鑑定の費用は、鑑定する不動産の種類によって異なるのが一般的です。
ここでは典型的なパターンである「土地のみ」「建物のみ」「土地と建物」「マンション」の鑑定費用の相場を紹介します。
不動産の種類 | 詳細 | 費用相場 |
---|---|---|
土地のみ | 戸建住宅程度の土地 | 20万円~ |
大規模な土地 | 30万円~ | |
建物のみ | 戸建住宅 | 20万円~ |
土地と建物 | 戸建住宅 | 25万円~ |
マンション | 一室の所有権 | 30万円∼ |
これらはあくまでも目安ですが不動産鑑定の費用は20万円∼30万円が相場となります。
ただし、上記の価格はあくまで相場です。鑑定する不動産によって作業量等が変わるため、最終的な費用は どの程度の作業量なのかを確認してから確定されます。
例えば、小さい土地と大きな土地では、作業の手間が異なるのでその程度に応じて費用は異なります。
簡易な不動産鑑定もある
法的なシーンで利用できないことを前提として、不動産の評価額を知りたい場合などには価格調査報告書や意見書のみを作成する簡易的な不動産鑑定もあります。
鑑定価格の効力が落ちてしまうのはデメリットですが、安い費用で鑑定依頼できることはメリットです。
「会社の人しか見ない」、「自分だけの参考資料にしたい」という場合は、不動産鑑定評価書ではなく、簡易な不動産鑑定でも問題ないでしょう。
不動産鑑定の費用は各社バラバラなので詳しくは各社のホームページを確認してみましょう。鑑定費用の見積もり自体は無料でできるので電話で問い合わせてみるのもいいでしょう。
不動産の鑑定費用を決める3つの体系
不動産鑑定士による鑑定費用は、以下のような3つの費用体系から算出されます。
多くの鑑定企業が採用する「報酬基準型」
報酬基準型は物件種別ごとの鑑定報酬額表に合わせて料金を設定する体系です。
あらかじめ支払う金額が決まっているため、依頼者としても分かりやすく多くの企業が報酬基準型を採用しています。
作業量によって費用が変わる「積み上げ型」
積み上げ型とは、鑑定の作業量によって費用が上乗せされる体系です。
土地の大きさや鑑定作業が複雑になる不動産の鑑定時に用いられるのが一般的です。
一定の費用で鑑定する「定額型」
定額型は物件種や作業量に関わらず一律の費用が発生する体系です。
利用者にはわかりやすい仕組みである一方で、物件によって、鑑定士の手間が大きく異なるため定額制を採用している鑑定会社はほとんどありません。
不動産鑑定と不動産査定の違いは?
法律に基づいた不動産鑑定と、よく耳にする不動産査定には明確な違いがあります。
不動産鑑定は、「不動産の鑑定評価に関する法律」に基づいて、合理的な不動産価格を鑑定するので信頼度が高く不動産売却時のリスクを回避することができます。
一方、不動産査定は、不動産会社のサービスの1つで信頼度としては高くありません。こうした不動産鑑定と不動産査定の相違点について詳しく見ていきましょう。
無料で利用できる不動産査定
不動産査定は不動産業者のサービスの一環で、不動産の売り手に対して、売り出し価格の参考値を近隣の相場などを参考にして意見することです。
不動産査定額は業者によって異なり、無料で査定してくれる分正確さに欠けているため法的な効力はありません。
そのため、裁判所や税務署などの公的機関に提示する際は、査定価格を提示しても証明根拠が低いため採用してもらえません。
一方「不動産の売り出し価格の参考にしたい」といった法的効力を必要としない場合は不動産査定で十分です。
不動産会社に査定をしてもらえれば、査定額や査定までの対応を見ることで仲介を依頼する会社選びにも役立ちます。
不動産売買を依頼する会社を選ぶ際、「大手企業だから」といった理由のみで選択することは避けてください。
なぜなら、業者それぞれに強みとしている分野があり、地方エリアであれば、中小企業に依頼したほうが良いケースも考えられます。
また、不動産会社によっては媒介契約を獲得するためにわざと高い査定額を出す企業もいるので注意が必要です。
担当者の実力によって売買は大きく影響されてしまうので、その人の実績や仕事ぶりを確認できると安心です。
不動産査定とは?査定を依頼する前に知っておきたい基本を解説!
信頼度が高い不動産鑑定
不動産鑑定は、不動産鑑定士資格を持っている人が鑑定評価を行います。
この資格は国家資格であり、鑑定評価は独占業務となるため、信頼度は非常に高いと言え公的な証明書として有効になります。
不動産鑑定士による評価が役立つシーンは、遺産分割したい時、生前贈与を行う時、土地の相続税評価を下げたい時、財産分与の時、不動産の売買や交換する時などが挙げられます。
ただし、鑑定費用は20万円以上かかるので上記のように裁判や納税など法的な効力が必要な場合にのみ利用されます。
不動産の参考価格が知りたい程度であれば、不動産鑑定でなく不動産査定で十分です。
不動産鑑定士に依頼すべきケース
具体的に不動産鑑定士に依頼すべきケースを見ていきましょう。併せて、不動産鑑定評価書が必要とされるシーンについて解説します。
不動産鑑定士の鑑定はさまざまなシーンで役立つ
不動産売買は、基本的に買い手と売り手、業者などが話し合って交渉し進められるものです。こうしたシーンにおいては不動産鑑定士に依頼する必要はないでしょう。ただし、病院やゴルフ場のような特殊な不動産の売買では交渉材料として不動産鑑定を依頼することもあります。
そのほか、鑑定評価は次のようなときに役立ちます。
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不動産鑑定士による鑑定を受けると、適正価格を把握できるだけでなく、財産分与の際に公平な遺産相続が実現できます。また、不動産に関する裁判や納税の根拠を示す場面においては、不動産鑑定士による鑑定価格が必要になります。
また、法人の場合では不動産鑑定士の評価がこのような時に役立ちます。
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法人が不動産を売買する際や地代の分析にも鑑定価格が利用されており、税理士や弁護士が不動産鑑定士に鑑定を依頼するケースもあります。
不動産査定書も有効
不動産鑑定士による不動産鑑定評価書が必要とされるシチュエーションは、不動産価格自体は把握しているけれども、他者にその価格を見てもらう時です。
例えば、交渉を有利に進めたい時や銀行からお金を借りたい時は、不動産鑑定評価書が必要になるでしょう。税金の申告時も同様です。
不動産価格だけを知りたいのであれば、不動産鑑定評価書は必要ありませんし、不動産査定で構いません。しかも、安い費用に抑えることが可能です。
不動産鑑定で分かることは?
不動産鑑定士は、どのように不動産鑑定をしているのか、その仕事内容について覗いてみましょう。
まずは、現場に行き不動産の調査を開始します。現場で写真撮影を行ったり状況をチェックします。
権利関係などは、市役所や法務局で確認し、取引事例などを調査。土地であれば、土壌汚染の可能性も確認します。
調査した内容を元に、取引事例比較法、収益還元法、原価法などを用いて評価額を計算します。
最後に鑑定評価書を作り、依頼した人に渡して不動産鑑定終了です。不動産鑑定士は、不動産をさまざまな角度から確認し正確な価格を導き出しています。
不動産鑑定士という職業は、不動産の適正価格を出すだけではなく、コンサルティング業務も担っている仕事です。
全国に数千人しかいない職業でもあり、弁護士人口などと比較すると圧倒的に少なく希少価値の高い仕事だと言えるでしょう。
不動産鑑定のフローについて
不動産鑑定を依頼する時の流れを理解することは、非常に大切です。まずは、不動産鑑定事務所を探すところからスタート。
事務所選びには時間をかけてください。依頼した後は、基本的には、依頼者のほうで特別やることはありません。こうした不動産鑑定のフローについて詳しく解説します。
不動産鑑定事務所は慎重に選ぶ
不動産鑑定事務所を選ぶところから不動産鑑定が始まります。1社だけではなく、複数の事務所に見積もりを依頼し、相談するようにしましょう。
事務所選びのポイントは、「実績は豊富にあるのか」、「費用は高すぎないか」、「適切なプランを提案してくれるのか」などを基準にしてください。不動産鑑定事務所を決定したら、委任契約を結びます。
インターネットでさまざまな不動産鑑定事務所について調べることができますが、必ず実際に会い、自分の目で担当者を確認するようにしましょう。
「専門的な用語ばかり使って何を説明しているのかわからない」「他の事務所よりもやけに費用が高い」といった場合は、別の事務所を選ぶようにしてください。
依頼後は不動産鑑定士に任せられる
鑑定依頼後は、必要書類を集めます。納税通知書、全部事項証明書「登記簿謄本」、住宅地図、公図、地積測量図、建物図面・各階平面図、道路台帳、上水道配管図、下水道台帳、ガス配管図などが求められますが、納税通知書以外は、事務所の方で取得することが可能。
こうした必要書類についても事前に相談しておくと良いでしょう。基本的に依頼後は、鑑定士からの連絡を待つだけになります。
不動産鑑定の調査期間は、対象不動産や事務所によってまちまちですが、1カ月前後かかるのが一般的です。
あっという間に不動産鑑定評価書が交付されるとは限りませんので、不動産鑑定が必要になった際は、早めに事務所に相談しましょう。
鑑定士から調査結果の報告がありますので、不明点は質問するようにしてください。
不動産鑑定の費用把握して臨機応変に活用しよう
不動産鑑定は、法律に基づき、不動産の経済価値を判定し、不動産鑑定評価額を決めることです。
鑑定評価は独占業務となり、国家資格を持っている不動産鑑定士が担当。
鑑定評価は、公的な証明物として有効です。似たような言葉に「不動産査定」がありますが、これは法的責任はなく、不動産業者によるサービスのひとつです。
売り出し価格の参考にはなるものの、業者によって査定額が大きく異なる時もあるでしょう。
不動産鑑定士に依頼すべきシーンは、生前贈与を行う時、土地の相続税評価を下げたい時、財産分与の時など。個人だけではなく、法人が不動産鑑定を依頼することもあります。
交付された不動産鑑定評価書は、人に価格を証明する際に非常に役に立つでしょう。
不動産鑑定費用はだいたい20万円~30万円程度。不動産鑑定事務所を選ぶ場合は、1社だけではなく、いくつか鑑定事務所を周り、見積もりをもらうようにしましょう。
担当者の対応や料金体制、事務所の実績などを確認して選ぶことをおすすめします。簡易な不動産鑑定もありますが、見せる人によってはほとんど役に立ちません。
このような特徴を持つ不動産鑑定について理解を深め、不動産手続きをスムーズに進めるようにしましょう。
記事のおさらい
不動産鑑定の費用相場はどれぐらい?
不動産鑑定は、不動産鑑定士の専門資格者に不動産評価額を算出してもらうことで、費用の相場は20万~30万円です。詳しく知りたい方は不動産鑑定の費用相場をご覧ください。
不動産鑑定と不動産査定は違うの?
不動産鑑定は、「不動産の鑑定評価に関する法律」に基づいて行う信頼度の高い鑑定です。一方、不動産査定は不動産会社のサービスの1つで、信頼度の高いものではありません。詳しくは不動産鑑定と不動産査定の違いは?をご覧ください。
どんな時に不動産鑑定を依頼すればいいの?
通常の不動産会社に仲介してもらう売却には不動産鑑定書を必要としません。財産分与や遺産相続、不動産を担保にしてお金を貸し借りする時など、厳密な価格を必要とするときに依頼をしましょう。詳しく知りたい方は不動産鑑定士に依頼すべきケースをご覧下さい。
不動産鑑定を受けるには何をすればいい?
まずは、鑑定を依頼する不動産鑑定事務所を選びます。依頼後は基本的に鑑定士からの連絡を待つだけになります。必要書類に関しては事前に相談してみるといいでしょう。詳しくは不動産鑑定のフローについてをご覧ください。